小林昭人作
機動戦士広東麺ガンダム 第4話

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プロローグ C・E74年

 プラント最高評議会議長・ギルバート・デュランダルが提唱した「デスティニー・プラン」の導入実行が引き起こした、ザフトとクライン派・オーブ首長連合国の戦いは、デュランダルの戦死と宇宙要塞メサイアの陥落により、クライン派・オーブ連合軍の勝利に終わった。

 デスティニー・プランは中止されプラントの政治経済は強力なリーダーを失ったことで停止状態となってしまった。プラントは拠出国の一つであり、戦後は世界のリーダーとなったオーブ首長連合国の管理下に置かれ、その軍事力は解体され、高度なMS設計技術も失われた。

 やがて世界はオーブ首長連合国初代主席、カガリ・ユラ・アスハが頂点に立つ「宇宙統一連合」となり、世界は平和になったかに見えた。

 しかし、強大な一国の主導によりもたらされた平和は、いつしか各地で貧富の差を生み出し、世界各地でレジスタンスが起こるようになってしまった。統一連合を構成する各国は武力でレジスタンスを抑えようとしたが、レジスタンスの数は一向に減らず、カガリはクライン派の象徴であるラクス・クラインを総帥とする独立部隊「ワルキューレ」を設立。ワルキューレは投降したザフトの技術者が生み出すMS、MAで多くのレジスタンスを鎮圧するが、民衆の嘆きと苦しみは収まらず、新たなレジスタンスが増え続ける結果となった。

 そして統一から2年後、圧制と貧しさに苦しむ民衆に支持されたレジスタンスと、カガリ、ラクスら率いる統一連合・ワルキューレ混成軍の争いとなり、世界は再び、戦いと混迷の時代を迎えようとしていた。




第4話 「暗殺ロボットSWH-A」


<Aパート>

C.E.75 オーブ国際空港



 空港の噴水の近くで二人の男女が立ち止まって見つめ合う。待ち焦がれた女に喜悦の表情が浮かび、男の方はなにやらはにかんだ視線を女に向けている。

ラクス 「キラ!」

キラ 「ラクス!」

 噴水を挟んでタッタッターッと走り寄る二人、互いの体をひしと抱きしめ、グルングルンと回転しながらその存在を確かめ合う。そして、男女は向かい合い、唇を近づけていく、、

 『その日まーで、その日まーで♪ そーの日まーで、愛よ枯れるな崩れーるなー♪』
 (C)沢田研二

 公園に流れるBGM、まるで測っていたみたいだ。

監督 「カーット!」

 キラとラクスは動きを止めた。メガホンを片手に近づくもじゃ髭の男にキラが不服げな顔をする。

キラ 「これで三回目だよ、また撮り直すの?」

ラクス 「お仕事ですから仕方ないですけども、そろそろ良いのではありませんか。」

監督 「いや、これでOKです。北京からお帰りでお疲れの所を申し訳ありませんでした。しかし、この映像は今日のニュースで流されるものですから。」

 絵になる映像でなければなりません、と、監督は二人に力説した。この監督はラクス・キラ専属の映像主任でオーブ政府から俸給をもらっている。彼らの映像は彼の手を経なければ公の場に流すことができない。監督から解放された彼らは腕を組み、ラクス所有の高級乗用車に向かって歩いていく。

ラクス 「アスランはまだ戻りませんの?」

キラ 「うん、ちょっと用事があってね。あいつ、生真面目だから。」

 その言葉を聞き、ラクスがクスッと笑う。

ラクス 「いけませんわ、あの方をそんな風におっしゃっては。」

キラ 「(クスクス、、)実はね、、」



C.E.75 北京 軍事法廷



 ドオオオォォン、、(効果音)

 同じ頃、北京市の司令部では、梁山泊討伐に失敗した将軍の軍法会議が行われていた。

審問官C 「当会議の審問官として将軍の死刑を要求する。」

審問官B 「当然、私も死刑を要求する。」

審問官A 「判決を申し渡す前に申し開きはあるか、将軍。」

将軍 「ご、ございません、、」

アスラン 「待ってください!」

審問官B 「アスラン・ザラ少将か。」

審問官C 「証人に当軍法会議において発言する権利はない!」

 叱責する審問官。しかし、アスランは怯まない。

アスラン 「この裁判は不当だ! あなたたちに将軍を裁く権利はない! ろくな証拠調べもせず、弁護人も付けず、現場にもいなかったあなた達には! 統一連合軍法にも反している!」

審問官A 「衛兵、少将を退廷させよ。」

 審問官の命を受け、アスランの腕を取る衛兵。

アスラン 「何をする! やめろ! 彼の指揮に過失は無かった!」

衛兵A 「こら、抵抗はやめろ!」

衛兵B 「おとなしくしないか!」

 がしっ! ごきっ! ばきっ! (殴りつける音)

 ドバタンッ! (ドアを閉める音)

審問官B 「(憎々しげにドアを見て)法廷侮辱罪に問われないだけ、感謝するんだな。」

審問官A 「書記官、今のアスラン少将の発言を議事録から削除。」

 ドンドン! (ドアを叩く音)

アスラン 「やめろーっ!」 (外から叫ぶ声)



C.E.75 ラクスの車



 ルルルル、、(車の音)

ラクス 「(クスクス、、)そんなことがありましたの、アスランも大変ですわね。」

キラ 「ユーラシアのことはユーラシアの連中に任せた方が楽なのにね。」

ラクス 「でも、その将軍とかいう人、気の毒ですわね。」

キラ 「別に過失があったわけでは無かったからね。過失はむしろシンを倒せなかった僕とアスランにある。ユーラシア側の事情もあるのだけどね。」

ラクス 「カガリ様ならアスランのお力添えになれるかしら?」

キラ 「そうだね、、」



C.E.75
宇宙艦隊司令部



 「エンデュミオンの鷹」という異名を持つ、統一連合軍のムウ・ラ・フラガ大将はメサイアの戦いではキラ、カガリ、ラクス、アスランと並ぶ英雄である。キラらに比べるとかなり年長であり、名家の出身で世知に通じていることから、彼らのアドバイザー役を務めることも多い。そのことから、彼には軍の市場を欲する様々な産業のロビイストが新兵器の売り込みに来ることになり、最近ではもっぱら彼がこれら企業と政府との仲介役になっている。その発言力は統一政府内ではかなり大きいと言われている。

 その日の午前中、彼はフラガ家の縁で訪れたロビイストの一人と面談していた。

実業家 「先の大戦とユニウス・セブンの落下事件、いわゆる「ブレイク・ザ・ワールド」で人類社会は大きな被害を受けました。その傷はなお癒えていません。その上、2年前のディスティニー・プランを巡る大戦争によってさらに損失も生じました。今や軍民問わず人的資源は稀少で滅多なことで浪費してよいものではありません。ここでは大戦で発達したモビルスーツ、いや、ドロイド技術の活用が効果的かと思われます。そのコンセプトの下、我が社が総力を挙げて開発した新型バトル・ドロイド3B3がこれです!」

 パネルに華奢な躯体のいかにも間抜けそうなロボットが映し出された。

ドロイド 『AH...OH....Hello...Hello...』


(C)ルーカスフィルム

フラガ 「モビルスーツじゃないねえ。」

実業家 「バトル・ドロイドです!(強調) 完全自律型で人間と同じ能力を持つ、世界初のヒューマノイド型戦闘ユニット! モビルスーツを越える技術革新で大きさも人間とほぼ同じです!」

フラガ 「コイツに何ができるんだい?」

実業家 「ご覧ください。」

 実業家はパネルを操作するとシューシューとスチームを焚いている空母の艦上の映像が映し出された。轟音と共に発進直前の戦闘機がクローズアップされ、そのコクピットにドロイドが納まっている。頭部に模様と共に”Maverick”とか”Iceman”とか書かれており、どうやら操縦するらしい。

ドロイドA 『AH...OH...シュツゲキ!シュツゲキ!』

ドロイドB 『タタキオトシテヤルゼ!』


 ダラダラッダンダン、、映像と共にハードなヘビメタ調の曲が流れ、ドロイド操縦の戦闘機が次々と空母から発進していく。

 ギューン! ギューン!

フラガ 「おおっ! すげえ!」

実業家 「一般に戦闘機パイロットの養成には3年。一人前になるには8年が必要と言われています。しかし、我が社のドロイドでしたら訓練は不要で、すぐにでも実戦に投入できます! 空母発進は難しいのですが、これは完全自動操縦です。もちろん、着艦もできます!」

フラガ 「そいつは頼もしいねえ。」

 "Rewin`up your engine listen to her howlin`roar..."
  "...Metal under tention beggin`you to touch and go"

<Danger Zone 映画「トップガン」挿入曲>

 ドロイドの操縦で空母から発進した戦闘機は演習場に向かう。それを迎え撃つ連合軍アグレッサー部隊。連合軍の精鋭部隊相手に戦闘機の性能ギリギリの高G機動やインメルマン・ターンなどの高等技術も難なくこなすドロイド戦闘機部隊の能力にフラガが舌を巻く。

 映像も大迫力だ。

フラガ 「これじゃ、人間いらなくなるねえ。」

 しかし、数分後、ドロイド戦闘機は判定負けで次々と撃破されていった。最初が最初だっただけにバックに流れる勇ましい音楽が妙にうら寂しい。最後のドロイド戦闘機がアグレッサー部隊との交戦で撃墜判定され、画面から消えた。ドロイド戦隊の戦果はゼロ。

 “Highway to the Danger Zone...Ride into the Danger Zone...”

 ブツッと音がし、白くなる画面。

フラガ 「ダメじゃん。」

実業家 「やはり柔軟性が無いというべきか、セスナや旅客機相手なら無敵なんですが、実戦レベルのベテラン相手では不利は否めないようでして、、」

フラガ 「使えないねえ、実戦ではそのセスナや旅客機を戦闘機が守っている。これでは気象観測くらいにしか使い道が無いねえ、気象庁と話を付けておこうか。」

 フラガは電話機に手を伸ばした。それを見た実業家が電話機を押しとどめる。

実業家 「待ってください(汗)! 実は映像にはまだ続きが!」

フラガ 「まだあるのかい?」

 受話器に延ばした手を下ろすフラガ。実業家はレコーダーのスイッチを入れた。

 続いて戦車、水上艦艇、モビルスーツ、果ては歩兵でのドロイドの運用事例が紹介される。しかし、どの任務もソツなくこなし、機能も優れるものの、実際の人間相手の戦闘ではドロイド兵器は不利を免れないように見えた。何より柔軟性と応用力が無いことが致命的である。

実業家 「以上の通り、戦闘任務でのドロイドの使用には問題があるものと思われます。我が社は戦闘用としてこれを開発したのですが、この結果を受け、一時は民需用への転換を考えました。ご存じの通り、ユニウス・セブンの事件で地球の穀倉地帯は大打撃を受けました。そこで荒廃し、疲弊した農村にドロイドを投入する案は成功しかけたのですが、、」

 パネルにトラクターを運転したり、鍬で畑を耕したりするドロイドの姿が映し出された。

フラガ 「こりゃあ良いねえ、こっちの方が有用なんじゃないか。」

 フラガは農林水産省への電話を取りかけた、まあまあとそれを抑える実業家。

 『天気良ければ大垣様の城の太鼓の音(ね)の良さよーおい♪』

 優しげな農村老人達の視線を受けつつ、陣笠を被って田植えをするドロイドの姿にフラガはつい頬を緩めた。意匠を変えるだけでずいぶん雰囲気が変わるものだ。

農民A 『花子が来てから田植えも楽だべさ。』

農民B 『ほんにまあ、ぎょうさん働いてもろて。』

 『島原の大夫と呼ばれて♪ アア♪ 今は揚屋の水を汲む♪』

実業家 「零細農家でも使えると農家の方々にも好評でして、我々も100カ国分の田植え歌や民謡をインプットし、親しみやすさをアッピールしました。これで行けると思ったのですが、そうはいっても元は軍事用、あまりに高性能であったことから農業協同組合に睨まれてしまいまして、、」

フラガ 「彼ら、『ゆりかごから墓場まで』がポリシーだからねえ。農業機械のリースに影響が出ると思ったのかな。しかし軍とは関係ない話でもある。」

 実はコストもかなりの赤字であった。フラガの興味が薄れかけたのを見た実業家は汗を拭き拭き説明を続ける。ここで見限られたら彼の会社にはもう後がない。

実業家 「性能は我が社の方がはるかに優れるのですが、より廉価な農業ロボ『ちょきんぎょ君』を作られたりもしまして、方々の体で農村市場から撤退したのが昨月の話です。そこで、我が社が最後の賭けとして、戦闘用という本来のハードボイルド路線を見直し、原点に立ち戻って開発したのがこれです!」

 フラガの眼前で優雅な農村風景が一変し、ブレードランナー調の暗く殺伐とした光景が映し出された。ドン、ドン、ドンとハードなヘビメタ調のBGMが流れ、不気味な雰囲気を盛り上げていく。

 カツ、、カツ、、カツ、、

 そして、「それ」が現れた。

 シュイーン! キュイーン!

実業家 「これです。」

 <ワタシハ、対レジスタンスヨウソウトウヘイキ、SWH-A。セイシキメイショウ---Supressive Weapon into Humanoid Architecture。>

 ビロンビロンビロン (電子音)

 <ワタシハ、SWH-A。ターゲットヲシンコクセヨ。ターゲットハ破壊、破壊、、破壊>

フラガ 「何かすごそうだな、、」

 照準用レーザーを放ちながら暗闇からぬううんと現れ、原型機3B3の華奢なフレームに専用の革ジャンを着た威嚇的な容貌のドロイドが画面一杯に映し出されている。

 続いて新型ドロイドの仕様が表示される。「特殊工作用」の文字にフラガは目を留めた。

フラガ 「暗殺専用ロボか、使えるのか?」

実業家 「基本的に闇討ちですから。社内での愛称は"ROVOCOP"と言います。」

フラガ 「その名称は特許庁に照会した方がいいぞ。」

 そこでドロイドが起動し、百発百中の精度でターゲットの中心を射抜くのを見たフラガは唸り声を上げた。仮に撃たれてもハイパーメタルの装甲はライフル銃程度ではビクともしない。

フラガ 「これはひょっとしてひょっとすると、、」

実業家 「採用していただけますか!」

 しばし沈黙、、

フラガ 「いや、こいつは治安警察庁の管轄だろう。」

 フラガはそう言うと、逸る実業家をなだめつつ、長官ライヒのオフィスへの電話を取った。



<Bパート>


深夜 オロファト市街
どこかの路地裏にて



年輩の男 「うわーっ! お助けをーっ!」

 ガシャーン! (どんぶりの割れる音)

ばけもの 「キエッ!ギャッ!ギャッ!ギャーッ!」

バサバサバサ(羽音)



翌日 治安警察庁
長官ライヒの部屋



 秘書官のメイリンときつねそばを食べながら、治安警察庁長官ライヒは宇宙艦隊から送られた梱包された箱の山を見上げている。部屋の隅には出前に来た来々軒の主人がおり、小さくなった実業家が汗を拭き拭き長官の様子を伺っている。

ライヒ 「さて、、どうしてくれようか、、ズズッ」

メイリン 「困りますわね、掃除用なら間に合っていますし、、ズルッ、、」

来々軒 「お代の方は、、今回は結構ですので、、」

ライヒ 「長生きしたければ、そうすることだ。」

来々軒 「へい、、」

 昨晩散々脅かしてやったのが効いているらしい。怯えた様子で出ていった来々軒の主人を見送ると、ライヒは隅でかしこまっている実業家の方を見た。今朝方、香港支部から重大ニュースが届いたところだ。

ライヒ 「このガラクタは香港に送れ。」

メイリン 「了解しました。しかし、香港支部も困るのでは?」

ライヒ 「航空便で送れ。あと、航空運賃は宇宙艦隊に請求しておけ。」

メイリン 「了解しました、早速手配いたします。」

 メイリンは顎をしゃくると実業家に運び込んだドロイドの箱を香港に送るように命じた。

ライヒ 「ターゲットは『シン・アスカ』。」

メイリン 「了解。」



中国 上海
サイのアジト



サイ 「やっぱりな、ある程度は自然修復しているが、ほとんどのパーツが破損状態だ。君の目には見えないだろうが、、」

 上海にあるサイの工場に運び込まれた広東麺ガンダムの機体を確認した工場長のサイが唸る。予想以上にダメージが大きい。

シン 「これ、助かったよ。」

 『ナノマシン粉(顆粒)・分包』の薬袋を渡されたサイが微笑む。擬装用の『ナノディスガイズ』の小袋も受け取る。これはトレーラーに偽装して広東ガンダムを運ぶためのナノマシンで使い方は修繕用と同じである。この分包に砂糖20グラムと塩1グラム、モロヘイヤ1キログラムを加え、5リットルの蒸留水で混ぜ合わせ、40℃で3時間発酵させれば一万倍に増え、これを機体に塗り付ければ広東ガンダムは中古トレーラーに変装する。

サイ 「広東ガンダムの損傷はある程度ならこれで直せる。ケガやキズが自然に直るように、ナノマシンの働きもそれと同じだ。しかし、、」

シン 「あまり時間が無いんだ。北京から連合軍に追われてる。能書きはいいから応急修理だけしてくれればいい。」

 焦るシンをサイがキッと睨む。真剣なサイの視線に息を呑むシン。

サイ 「このままではエターナルの攻撃を受けただけでコナゴナになると言っているのです。」

 何度コナゴナにされかけたことか。

サイ 「特にシン、君はナノ修復された肉体で戦うつもりですか? 断っておきますが、エターナルはそんなに甘いものではありませんよ。」

シン 「サイ、、」

サイ 「エターナルフリーダムとは君が考えている以上に強大なモビルスーツなのです。君がエターナルを1と考えたのなら、その何十倍も何百倍も隔たりがあると言ってよい。」

 百倍はともかく、十倍は余裕で違っている。シンはゴクリと唾を飲み込んだ。

サイ 「、、それはエターナルがモビルスーツの究極を掴んでいるからです。その究極とは、、」

 ガシャーン!

 不意の破壊音に講釈をしていたサイとシンは音のした方向に振り向いた。工場のシャッターを破り、ズラッと並んだ白銀色に黒の革ジャンを着た暗殺ロボの集団にサイとシンは目を丸くする。

<ワタシハ、SWH-A。ターゲットハ『シン・アスカ』ターゲット破壊、破壊、、>

サイ 「何つーものを連れてきたんだシン!」

シン 「こんなもん知らん! これは俺じゃない!」

<ターゲットハッケン、破壊、、破壊、、>

 ビキュビキュビキュ!

サイ 「うわーっ!」

 どかーん! ぐわーん!

シン 「こいつ!」

 ドキュ!ドキュ!

 シンが腰のコンバット・マグナムを引き抜いてロボを銃撃する。しかし、超硬ハイパーメタル製のロボはマグナム弾を跳ね返すと腕のビーム砲をシンに向けた。ピタリと向けられた銃口に目を丸くするシン。軍用の携帯ビームガンじゃねえか、こんなもの人間に使ったら。

シン 「!!」

 人間は跡形もなく消し飛ぶ。

サイ 「シン! 危ない!」

 サイがショットガンを連射し、散弾がロボの筐体に当たって跳ね返る。全く効き目がない。振り返ったロボの赤いレーザー光がサイの顔を照らし出した。

<ターゲットハ『シン・アスカ』、キョウリョクシャヲ認識、スベテ破壊、、破壊、、>

 ビキュビキュ!

サイ 「ひええええっ!」

シン 「サイ!」

 ビキュビキュビキュ! ビキュビキュ!



上海 アスランの乗用車



 ブロロロロ、、(車の音)

アスラン 「間に合えば良いが、上海にモロヘイヤ粉を大量に買い付けている修理工場があるという情報が確かなら、、」

ルナマリア 「そこにシンがいるって事?」

アスラン 「逃走経路の先々の街や村でシンがモロヘイヤを買い付けていたのは事実だ。理由は分からないが、奴は何らかの理由で大量のモロヘイヤを必要としていたんだ。まだ間に合う、俺とルナが奴を説得すれば、、」

 アスランはハンドルを切り、路地裏を廻った。

ルナマリア 「すぐそこだわ、ちょっと! あれは何!」

アスラン 「シン!」

 車を停めたアスランは百体以上のドロイドに包囲されている自動車修理工場を見た。工場の看板は『(株)アーガイル自動車工場』。間違いない。中で銃撃戦が行われているらしく、破裂音がアスランらの耳にも聞こえてくる。その彼らの近くを増援のドロイドが隊列を組んで歩いていく。

 ザッザッザッ

<ターゲットハ『シン・アスカ』ターゲット破壊、破壊、、>

アスラン 「ちょっと待て!」

ルナマリア 「アスラン!」

 ドロイドに向かって拳を振り上げようとしたアスランをルナマリアが止める。アスランの袖を引っ張った彼女はドロイド各機に貼り付けられている備品シールを指差した。

 『治安警察庁備品 220558』

アスラン 「ゲルハルト・ライヒか、、奴め、余計なことを、、」

ルナマリア 「一足遅かったわね、でも、何とかして止められないのかしら?」

実業家 「やあやあ、これはヤギンの英雄、アスラン・ザラ少将。」

 二人が振り向くと立派なスーツを着た実業家風の男がそこにいた。


機動戦士広東麺ガンダム「第4話」完


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