プラント最高評議会議長・ギルバート・デュランダルが提唱した「デスティニー・プラン」の導入実行が引き起こした、ザフトとクライン派・オーブ首長連合国の戦いは、デュランダルの戦死と宇宙要塞メサイアの陥落により、クライン派・オーブ連合軍の勝利に終わった。
デスティニー・プランは中止されプラントの政治経済は強力なリーダーを失ったことで停止状態となってしまった。プラントは拠出国の一つであり、戦後は世界のリーダーとなったオーブ首長連合国の管理下に置かれ、その軍事力は解体され、高度なMS設計技術も失われた。
やがて世界はオーブ首長連合国初代主席、カガリ・ユラ・アスハが頂点に立つ「宇宙統一連合」となり、世界は平和になったかに見えた。
しかし、強大な一国の主導によりもたらされた平和は、いつしか各地で貧富の差を生み出し、世界各地でレジスタンスが起こるようになってしまった。統一連合を構成する各国は武力でレジスタンスを抑えようとしたが、レジスタンスの数は一向に減らず、カガリはクライン派の象徴であるラクス・クラインを総帥とする独立部隊「ワルキューレ」を設立。ワルキューレは投降したザフトの技術者が生み出すMS、MAで多くのレジスタンスを鎮圧するが、民衆の嘆きと苦しみは収まらず、新たなレジスタンスが増え続ける結果となった。
そして統一から2年後、圧制と貧しさに苦しむ民衆に支持されたレジスタンスと、カガリ、ラクスら率いる統一連合・ワルキューレ混成軍の争いとなり、世界は再び、戦いと混迷の時代を迎えようとしていた。
第3話 「上海へ」
(筆者注・今回は割とシリアスです。)
<Aパート>
C.E.75 梁山泊要塞
がしゃん! ばりん! ぐしゃん!
爆裂して構内に飛び込んできた広東麺ガンダムの残骸は二、三度バウンドして動きを止めた。大破したコクピットに駆け寄る梁山泊のメンバーが負傷したシンを機体から引きずり出す。
シン 「あたた、、痛っ、、やられた、、」
佐助 「大丈夫かシン!」
シン 「ああ、、大丈夫だ、、それと、、」
大破した広東ガンダムのコクピットを見るシン。
佐助 「あの広東ガンダムはもう使い物にならんな!」
シンの肩を助けた佐助がバラバラになった広東ガンダムの残骸を見る。大破し、手足がもげ、首が床に転がっている。これは撃墜されたと言う方がより正確な表現かもしれない。
佐助 「とにかく今は手当が先だ!」
シン 「ちょ、、ちょっと待ってくれ、、」
震える手で、シンが広東ガンダムのコクピットの方を指差そうとしている。
佐助 「もうよせ! シン! その体で喋るな!」
シン 「いや、、そ、、それはいいんだが、、お願いだ、、聞いてくれ、、」
佐助の手を振り払い、ヨロヨロと広東ガンダムの方に歩み寄ろうとするシン。それを見た佐助がシンの直前に廻り込んで立ちふさがる。
ドンッ!
佐助 「武士の情けだ! すまんっ!」
日本忍者・猿飛佐助はシンのみぞおちに一撃を喰わせると、昏倒したシンを担いで医務室に運びこんだ。
シン 「(かすれ声)た、、頼む、、待って、、くれ、、」
哀願するシンをよそに、戦いはなおも続いている。
C.E.75 夜半 戦場にて
カラン、コローン、、
陳達 「しまった!」
暗闇の中、あらかじめ連合兵が仕掛けておいた竹鈴を鳴らしてしまった陳達が小声で叫ぶ。要塞から出陣した梁山泊の切り込み部隊だ。音を聞き、自動小銃を持った連合兵の一団が陳達らに駆け寄って来る。
連合兵A 「いたぞ!」
連合兵B 「出たな、梁山泊!」
楊春 「ええい! 仕方がない! 我が名は梁山泊! 地隠星・白花蛇の楊春!」
陳達 「同じく! 地周星・跳澗虎の陳達!」
連合兵B 「撃て撃てーっ!」
バリバリバリ! ガガガッ!
陳達 「かかれ!」
梁山泊その他 「ウォーッ! 突貫!」
抜刀した陳達を先頭とする10人ほどの集団が連合兵に斬り込む。同様の光景が戦場の各所で繰り広げられている。既に要塞は砲火の中にあり、梁山泊の兵士達は敵を切り伏せつつ、なおも要塞を砲撃する砲兵陣地に迫る!
参謀A 「ポイントABCに梁山泊出現!」
将軍 「第4、第5、第6砲兵陣地に伝達! ポイントABC! 交戦地点を砲撃せよ!」
連合軍将軍の命令で要塞を砲撃していた砲兵陣地の一部が陳達らに向けられ、155o砲弾が曲射で撃ち込まれる。砲撃で連合兵士と共に吹き飛ばされる梁山泊の豪傑たち。
どかーん! どかーん!
武松 「のわっ!」
花栄 「ぐわっ!」
どばーん!
連合兵C 「のわーっ!」
連合兵D 「どわっ!」
どかーん! どばーん!
味方の犠牲を省みず、あたり一面を吹き飛ばす連合軍の砲撃にさすがの梁山泊も手も足も出ない。追い打ちを掛けるように進出した連合軍装甲車が機関銃の雨を浴びせる。
ドドドドド、、、(戦車の音)
連合大隊長 「撃てっ!」
ズガガガガッ! ズガガガッ!
陳達 「退却!」
飛来したウィンダムにも爆撃され、方々の体で逃げる梁山泊。数人が連合軍が仕掛けた落とし穴や地雷に引っ掛かって倒される。
ウィンダムP 「喰らえ! スーパーナパーム!」
どばーん!
梁山泊その他 「うわーっ!」
逃げ散る梁山泊軍。双眼鏡でそれを見る将軍。
参謀A 「我が軍は敵軍と交戦中! 戦況有利!」
将軍 「この風、この肌触りこそ戦争よ!」
将軍の横顔が砲兵隊の放つ閃光に照らし出される。報告を受けた参謀らが次々と対応の指示を伝達する。その後ろで所在なげにしているキラとアスラン。
参謀B 「フン! チンピラども、夜襲はあらかじめ作戦に織り込みずみよ!」
参謀C 「バカな奴らだ、我らがこれしきの攻撃、備え無いと思ったか!」
参謀D 「蹴散らせ! ウィンダム部隊! 攻撃せよ!」
どばーん! ぐばーん!
キラ 「なんか僕たち、いらなくない?」
アスラン 「無能よりはマシと思うが、ここまで徹底的にやられると、、ちょっとな。」
あまりにもプロすぎる連合軍スタッフの前に行き場を失う二人。
参謀A 「ポイントABCの梁山泊! 退却中!」
将軍 「追えいっ! 生かして返すな!」
参謀B 「第8、10、11陣地砲兵隊! 砲撃せよ!」
どどーん! どかーん! どーん! どごごーん!
夜間、第12砲兵陣地
ズサッ! 暗闇からの斬撃で連合兵士が音もなく倒される。異変に気づいた連合兵が駆け寄ると、男はヒョオッと宙を跳び、砲撃している自走砲の一つに飛び乗った。背後の爆発がマントを翻している長身の男のシルエットをクッキリと映し出す。
バサアッ! マントを振り払った男がにじり寄る連合兵に高らかに名乗る。
楊志 「我が名は梁山泊、青面獣の楊志!」
連合士官A 「曲者め! 撃て撃てーっ!」
オガガガガ! ザシュッ! ドシュッ!
連邦兵E、F 「うわああーっ!」 「ぐええっ!」
長剣を引き抜き、次々と連合兵を斬殺する楊志、梁山泊一の剣の使い手、その剣戟は優雅な舞のようだ。また一人、連合兵が倒される。連合兵に向け長剣を横凪ぎに払って威嚇し、地を蹴って跳躍した楊志がその長剣を大上段に構えて振り被る。
楊志 「この吹毛剣の切れ味、受けてみよ!」
ギャンッ!
鋭く鈍い金属音と共に巨大な砲身が一刀両断され、楊志は逃げ回る連合兵を後目にさらに別の砲身に飛び移って斬断する。この楊志の攻撃に第12陣地は大混乱に陥った。続いて現れた雲裏金剛・宋万が切り落とされた砲身を連合兵に向かって投げつける。
宋万 「うりゃあっ!」
ガーン! ゴロンゴロン!
連合兵J 「ば、化け物だ!」
連合兵K 「に、逃げろ〜っ!」
狼狽する連合兵を追い払いながら、次々と砲座を破壊していく楊志と宋万。梁山泊の斬り込み隊で陣地に辿り着いたのは彼らのみ。神業の剣技で自走砲4基を斬り倒し、続く砲座に飛び乗ろうとした楊志は目の前にガスマスクを被った男たちを見た。
楊志 「!!」
連合士官B 「放てーっ!」
シュワワワーッ! シュワーッ!
楊志 「うっ! 青酸ガスか!」
シュオオオオーッ!
宋万 「こりゃたまらん!」
連合兵士 「死ねーっ! 梁山泊ども!」
楊志 「む、無念っ!」
ドガガガ! ズガガガ! ガガガッ!
C.E.75 夜半 梁山泊要塞
どがーん!
斬り込み隊が向かった山向こうに生じた大爆発を見た梁山泊の参謀、智多星・呉用はリーダーの劉備の方を見た。砲撃の合間を縫い、彼らは戦場の見える城塞の欄干に近づいている。
呉用 「楊志の夜襲は失敗したようです。彼らには個々に落ち延びるように言い含めております。無意味な戦いでムダに若い命を散らすことも無いでしょう。」
死ぬときはご一緒にという目で軍師は頭領の方を見た。
呉用 「連合軍の攻撃に備え、梁山泊の婦女子の半数は疎開させましたが、、」
半数はまだ残っている。地下の待避壕にいる劉備や呉用自身の妻子も含む300人ほどの老幼男女のことを彼は指摘した。これらかよわい人々は他の豪傑のように素手でモビルスーツと戦うこともできなければ、剣で連合兵を倒すこともできない。
劉備 「死なばもろともということだな、悪いことをした。」
劉備は傍らの一丈青の方を見た。梁山泊の後方支援の婦女子の一人である一丈青が劉備に付き添っている。その表情から、呉用は彼女が既に死を受け容れていることを察した。おそらく、劉備と共に自決するつもりなのだろう。
呉用 「お一人では逝かせません、私もお供いたします。」
その言葉に主従二人は互いの目を見合わせた。思えば統一連合の成立から2年、来る日も来る日も連合軍と戦い続けたレジスタンスの日々。志半ばにして散るのは不本意だが、いずれ、第二、第三の劉備、そして梁山泊が本懐を遂げてくれるに違いない。互いに手を取り涙を流す三人は背後にぬっと現れた黒ジャンバーの男の影に気づいた。
劉備 「孔明先生、、」
どこにいてもかさばる男、黒ずくめの陳孔明はサングラス越しに三人を見下ろした。
孔明 「貴公らの命、この孔明に預けてもらおう。」
深夜 梁山泊要塞 格納庫
佐助 「いやあ! もっと早く言ってくれたらさ! すぐにやったのになあ!」
日本忍者・佐助と梁山泊の杜遷、朱富が寄せ集めた広東麺ガンダムの残骸にデッキブラシでゲル状の物質を塗り付けている。その様子を全身包帯巻きで車椅子に乗ったシンが見守っている。
シン 「サイからもらったナノマシンの粉だ。砂糖20グラムと塩1グラム、モロヘイヤ1キログラムを5リットルの蒸留水で混ぜ合わせ、40℃で3時間発酵させれば一万倍に増える。これをガンダムに塗り付ければ後はナノマシンが機体を修復してくれる。一包で一機、6時間ほどで機体を再生できる。完全なオーバーホールはサイの工場で行う必要があるが、応急措置には十分だ、ゲホッ、、」
佐助 「もう少し早かったらなあ! シン! すごいテクノロジーだなあ!」
シン 「(だからあの時オレは待てと、、)グホッ!」
コクピット常備品のナノマシンの存在を告げようとした途端、佐助にみぞおちに一撃を受けて気絶させられたシンは思った。モビルスーツはこれで直るだろうが、人間の方はあまり大丈夫そうでない。全身骨折の傷の痛みに車椅子に乗ったシンは一瞬よろけた。
杜遷 「いやあ、便利! 便利!」
朱富 「見ろ! もう手足がくっついているぞ!」
佐助 「おおっ! カメラが再生している!」
シン 「先のキラとの戦いも、これがあったから機体を修繕できた。グハッ!」
ぼぼぼぼ、、ぬぼぼぼ、、、
不気味な発酵音を立てながら自己修復する広東ガンダムを佐助らが見守っている。あとは操縦さえできれば、先の衝撃であばら6本と両手足と指5本を骨折したシンは思った。
シン 「この様子なら、朝までには動けるだろうな、、グエッ!」
内蔵から吐血するシン。意識があるのが不思議なくらいだ。全身複雑骨折の痛みに悶え苦しんでいるシンを見てデッキブラシを片手に持った佐助が呟く。
佐助 「こういうことならさ、オレに良い考えがあるんだけどな。」
<Bパート>
深夜 連合軍司令部
<打倒梁山泊! 大祝勝会、前祝パーティー!>
一方、既に勝利は確実と見た連合軍司令部は将軍や参謀らがキラ、アスランを招いて酒盛りを始めていた。冷凍車でキンキンに冷やされたウォッカの大瓶がテーブルに並べられ、北京から来た美人コンパニオンが参加者のグラスに酒を注いでいる。
参謀A 「ユーラシア連邦、ばんざ〜い!」
参謀B 「ささ、将軍、まずは御一献!」
グラスになみなみと注がれたウオッカを将軍がぐいと飲み干す。
将軍 「ウィーッ! 見たか! 我がユーラシア連邦軍の力を!」
『自由なる不動の国♪ 永久に在れ 我がユーラシア♪』
統一連合なんだがな、と、勢いでユーラシア連邦国歌を歌い始めた将軍や参謀達を見たアスランは舌打ちした。ユーラシア連合軍は連邦がC.E.74に主権を返上したため、現在は宇宙統一連合軍の指揮下にある。かつてのロシア軍を中心にしたその砲戦能力には定評がある。
『称えよ自由なる我等が祖国♪ 民族友好の絆♪』
参謀C 「アスラン殿もどうぞ!」
アスラン 「いや、、オレは、いただこう、、」
浮かぬ顔でグラスを煽るアスラン。外では砲声が続いている。赤ら顔で足をふらつかせているアスランと意外と平気そうな顔のキラの二人は酌をする将軍や将校の絶賛を受け続けている。
参謀D 「いやあ! さすがスーパーコーディネーター、あのシン・アスカも鎧袖一触ですな! キュイーン! ビキューン! ドカーン! ガハハハハ!」
部隊長A 「抜群のコンビプレー! さすがはヤギン・ドゥーエの英雄!」
参謀A 「サハリンの戦略(核)ロケット軍に応援を頼もうと思ったが、必要なかった!」
そんなものを使われてたまるか。朦朧とする意識の中でアスランは毒づいた。
部隊長B 「現在地下を掘り進んでいるグーン部隊が明日地下に爆薬を設置すれば我らの勝利は確実! キラ様、アスラン様、そしてユーラシア連邦に栄光あれ!」
『皆称えよ 人民の♪ 力強き ユーラシア連邦を♪』
そこにやって来た赤ら顔の将軍が二人の肩を抱く。
将軍 「諸君! 二人は我が息子です! 弟です!」
酒宴はなおも続き、やがて大勝ムードの将軍と将校達をチラリと見たキラが隅でチビチビとウオッカを飲んでいるアスランに囁いた。
キラ 「ちょっとアスラン、あの連中にまともに付き合う気かい?」
アスラン 「付き合うったって、あんな感じで酌されたんじゃあ、もう飲むしかないじゃないか、、」
既に酔いが回り、赤ら顔のアスランがブツブツと小声で答える。
キラ 「バカだなあ、ユーラシアの連中にまともに付き合ったら、命がいくつあっても足りないよ。行く前にムウさんが忠告してた。僕は飲んだふりして水を飲んでるだけさ。」
『汎ユーラシア主義 その未来♪ 祖国の勝利 我、見たり♪』
笑いながら、キラは携行している『オノゴロの天然水』のペットボトルを見せた。
キラ 「北京の水は美味しくないからって、ラクスがね、、」
アスラン 「キラ、、おまえはなぜ先にそれを俺に、、」
そう言いかけた途端、酔いが回ったアスランは目を白黒させてテーブルに突っ伏した。
キラ 「要領が悪いんだよね、、アスランは、、」
アスラン 「シン、、」
翌朝 梁山泊要塞
シューン! ドカーン! シュン! ドカーン!
一夜明け、既に山に囲まれた要塞の周囲の山間には徹甲弾仕様に改造された改造オルトロスを抱えたストライクダガーが進出している。レールガン特有のシュンという発射音と共に砲弾が撃ち出され、超高速で要塞の装甲をぶち抜いて爆発する。続けざまに撃ち込まれ、要塞の防壁は内側からめくれ上がって崩れ去る。
ズズーン! ズーン!
パラパラパラ、、(土砂の落ちる音)
地下の待避壕に逃れた劉備らは震える天井を見上げている。地上の要塞は既に崩壊し、いつ生き埋めにされてもおかしくない状態だ。劉備の傍には逃げ遅れた梁山泊の妻子や縁者がいる。その数、300人以上。
呉用 「バカな連中だ、失敗したら逃げろと言っておいたではないか。」
怯える住民らの近くに昨夜の戦いに参加した楊春や宋万らの姿があるのを見た軍師は毒づいた。楊志の姿は無いが、ほとんどの斬り込み隊員が砲弾降り注ぐ要塞に戻ってきたようだ。
陳達 「我ら生きるも一緒、死ぬも一緒と誓った身!」
花栄 「そうよ! 滅びるときは我らも一緒に!」
宋万 「オオーッ!」
その言葉を聞き、呉用は何も言わずに主君の方を見ると、婦女子らと共に様子を見ていた劉備が首を振った。陳孔明は群衆から少し離れた壁際に背をもたせ掛けている。知能指数1600の男が何を考えているかは呉用ですら分からない。
呉用 「孔明殿、、」
傍目からは、既に諦めているようにしか見えない。
孔明 「シン、、頼んだぞ、、」
ずーん! ずーん! どどーん! どかーん!
正午 梁山泊要塞周辺
連合軍司令部への有線電話の受話器を握った佐助が司令部と通話している。
佐助 『こちら梁山泊放送ですよ〜ん♪ ボクちゃんたちは逃げちゃったの、ゴメンネ♪』
将軍 『貴様ーっ! 統一連合軍を愚弄するとは!』
都合の悪い時だけ統一連合軍を名乗るユーラシア連邦上がりの将軍。
要塞を地下から爆破するため、20時間前に地中に侵入したグーン隊が掘削した坑の入り口から彼らは姿を現した。劉備をはじめ呉用他の梁山泊の面々とその家族、関係者、、
そして、陳孔明。
呉用 「爆破した、のではなく、してやったんだということは、彼らももう気づいたでしょうな。」
劉備 「シン君が三機のグーンを倒してくれなければ、我々は既に死んでいた。」
梁山泊のリーダーは先に地中坑から這い出し、陽光の中、天空に向かってそそり立っている広東麺ガンダムの勇姿を見た。コクピットには、シン・アスカがいる。
シン 「まさか人体にも有効だとは、、副作用無いだろうな。」
コキコキポキッ!
両手の指を何度も折り曲げながら、シン・アスカは広東ガンダムのコクピットハッチを開け、地上の劉備らを見下ろした。サイのナノマシン、、佐助らによって、広東ガンダムに塗り付けたデッキブラシでマシンを全身に塗り付けられたシンは数時間後には完全に回復し、同じく再生した広東ガンダムで地中戦を戦い、要塞に侵入しようとしていたグーン三機を撃破した。倒した後、グーン隊の通信の声色を真似ていた佐助に指を立てる。
孔明 「そろそろエターナルとジャスティスが来る。広東はそのまま逃げ延びろ。」
シン 「了解!」
孔明の呼びかけにシンは再びハッチを閉めた。変装した梁山泊の面々も各自落ち延びていく。迂闊にも機体を後方に置き去りにしていたキラとアスラン、そして連合軍の部隊が侵入坑に到着した時には、広東ガンダムも含め、地上に這い出した数百人の姿は既に消えていた。
数日後 中国 大沽港
とある桟橋
ボオーッ、ボオオーッ! (汽笛の音)
楊志 「おまえは梁山泊と一緒には戦わないんだな。」
それから数日後、長剣を背負った男が桟橋で貨物船に乗り込もうとしている水夫の身なりをした赤い瞳の少年に声をかけた。青面獣の楊志は別行動で梁山泊を脱出し、今は天津市にいる。
シン 「上海に行く、オレの仲間が、そこで待ってる。」
楊志 「あまり大したことは言えんが、死ぬなよ、シン。」
シン 「あんたもな。」
腕組みした姿で船に乗るシンを見送った楊志は隣に追いついて来た黒ジャンバーの男の姿を認めた。シンの乗船後に船は桟橋を離れ、間に合わないことを知った男はチッと舌打ちする。
孔明 「遅かったか、、」
楊志 「アンタは言いたいことがあったようだな。奴は上海に行くそうだ。」
孔明 「上海か、まあいい、機体の修理も必要だろうからな。」
楊志 「あんな奴、シンのような子供が戦う世の中が良い世の中とは思えない。」
孔明 「だが、時代は奴の力を必要としている。これ以上、ラクスの連合によって泣く人間を増やさないためにも。」
ラクス・クラインの名を聞いた楊志の表情がふと曇る。
楊志 「アンタの考えは知らないが、俺はラクス・クラインは別に嫌いじゃない。配下のスーパー共も奴らは奴らなりに真剣に世界のことを考えているのだろう。守護神のつもりなのかな? それはそれで構わない、そういう使命感それ自体は、、ただ、、」
押し黙った剣豪の横顔を孔明はじっと見た。何か言いたいのだろうが、言葉にならない。キラ、アスラン、、シン、、かつては楊志もそういう男であった。
しばらく様子を見ていた孔明はポツリと呟いた。
孔明 「いずれにせよ、俺たちの戦いはまだ続くということだ。」
そうだな、楊志は孔明の肩を叩くと、愛用の長剣を携え、そのまま桟橋を歩き去った。
機動戦士広東麺ガンダム「第3話」完
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