盲目将軍・陶金節作
ガンダムSEED・FINALWAR 第5章

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早朝・6時 梁山泊集合場

集合場には、梁山泊のメンバーが全員揃っていた。
劉備はメンバー全員に語りかけた。

「今回の戦いは、敵MSと敵兵士の捕縛が目的である。
湖に待ち構えるメンバーは、

・立地太歳・阮小二
・短命二郎・阮小五
・活閻羅・阮小七
・船火児・張横
・浪裏白跳・張順
・出洞蛟・童威
・翻江蜃・童猛
・矮脚虎・王英
・白花蛇・楊春
・雲裏金剛・宋万
・摸着天・杜遷
・母夜叉・孫二娘
の12人。
MSと兵士を捕縛するメンバーは、
・青面獣・楊志
・花和尚・魯智深
・菜園子・張青
・赤髪鬼・劉唐
・レッテ・ラッテン
・那托
・猿飛佐助
・マヤ・テンム
・大江戸健太
・カン・トンメン
・九紋竜・史進
の10人だ。
敵の部隊の偵察は白勝。このメンバーで敵部隊に立ち向かう。他の者は援護部隊として待機してくれ。
いいか?くれぐれもMSと兵士の捕縛を優先してくれ。皆の者、よろしく頼んだぞ!」
「おーーーー!!」

梁山泊は数多くの豪傑達の声で響いていた。


午前7時30分・統一連合軍・本営陣地

兵士達は湖を見ながら、ざわざわと騒ぎ立てていた。

「な、何だ!?これは!!」

ホイは湖を見て驚愕した。
昨日の夕方にはあった筈の橋が、全部無くなっているではないか!

「これは一体どういうことだ?」

ホイに続き、ダンベールが言葉を表したその時、後ろからドナテロの声が聞こえた。

「きっと梁山泊の連中が、簡単にアジトに来させない様に、昨日の夜辺りに、橋を全部片付けたんじゃないんですか?」
「な、何だと!?気付いた奴はおらんのか?」

ホイは周りの兵士に訊いたが、誰も答えるものはいなかった。
ドナテロが嘲り笑うように喋る。

「そりゃ答えられないでしょう。昨日の夜はスカイグラスパーの見張り番しか起きていませんでした。しかも見張り番は、敵が端を片付けていたことに全然気付いていなかった。こりゃ俺達の落ち度というものですぜ」

ドナテロの言葉に、ヒルダが激しく反応した。

「ドナテロ!上官であるホイ殿に向かって、その口は何だ!!
寝ていたお前が言うことか!!」
「そうだそうだ!!」
「恥を知りやがれっつーの!」

ヒルダに続き、マーズとヘルベルトもドナテロに言った。

「うるせえ!ケバ子、リーゼント、ボヤッキー!!
そういうてめえらも、昨日グースカと寝息を立てて寝ていたじゃねえか!!
しかも俺よりも先にだ!!」
「う・・・!」
「それは・・・」
「・・・」

3人はドナテロの言葉に、何も言えなくなった。
ドナテロはそんな3人に、付け足しの一言を言った。

「人のこといえた義理か?この大飯喰らい共!」
 
3人はさらに黙りこくってしまった。
そんな光景を見たダンベールとジェシカがドナテロに言った。

「ドナテロ大尉!今はそんなことで言い争ってる場合じゃないでしょう!」
「そうです。今はこの湖をどうやって渡るかです。丁度、テントの中にあった救命ボートがあるので、それを使いましょう」

ジェシカの言葉に、ドナテロとホイは「成程」と言った。
ホイは歩兵部隊の兵士達に命令を下した。

「よし!歩兵部隊は救命ボートを膨らまして、アジトに乗り込め!わしも行くぞ!!」

兵士達はテントの中にあった救命ボートを膨らまし、それを湖に浮かばせ、2人ずつ乗って、漕いで渡った。


「敵歩兵部隊、ゴムボートで湖を渡ってきました!」

白勝が高台から劉備に報告をする。
白勝の眼の視力は、両方とも16・0もある。
そのため彼は梁山泊でその能力を活かし、偵察などの任務を行っているのである。

「よし、水中遊撃部隊!出撃だ!!」

劉備は阮三兄弟等に命令を下した。
かくして、作戦は始まった。
統一連合の兵士達は、ボートに乗って湖を渡っていた。
ボートは湖の上を進みながら、梁山泊のアジトへ少しづつ進んでいた。
すると突然、どこからともなく、歌が聴こえてきた。

朝から晩まで魚を獲って
死ぬまで暮らすが一生さ
田んぼも畑も買えぬまま
腐れ役人をぶっ殺す
それが国への奉公さ

「何だ何だ!?」
「一体どこから歌っているんだ!?」

兵士達はオロオロとしながら、辺りを見回していると、
兵士の1人が草村の陰にいる人影を見つけた。

「いたぞ!あそこから歌っていたんだ!」
「あいつを捕まえろ!!」

ボートに乗った兵士達は、ボートを漕いで阮小五に迫った。
小五は高笑いをしながら兵士達に言った。

「はははは!!そんな船でこの俺を捕まえるつもりか!
捕まえたいならここへ来て、俺の頭を掴んでみろ!!
この腰抜けの馬鹿たれ共!!」
「あの野郎!!」
「調子に乗りやがって!!」

兵士達は小五の言葉に激怒して、手に持った銃を発砲した。
阮小五は銃の弾をなんなく回避すると、湖の中に飛び込んだ。

「湖の中へ逃げたぞ!!」
「湖の中を掻き出して探せ!!」

兵士達は槍や棒を持ち、小五を探すが、なかなか見つからない。
と、その時、ボートの1つが湖の中へ沈んだ。
沈んでいくボートに乗っていた兵士たちは、湖の中で慌てふためきながら、童威、童猛兄弟の手によって捕縛された。
ボートが沈んでいく様を見た他の兵士は、三兄弟に捕縛されている兵士を救おうとしたが、乗っているボートは次々と沈められ、
たちまち捕縛されていった。

「ええい!たかがレジスタンス相手に、何をてこずっている!!」

と、歩兵部隊隊長・何進は怒鳴った。
が、その時、1艘の舟が遠くからぬらりと現れた。
舟には2人の男が乗っている。
その舟に乗っている、頭に竹笠を被った男は、こんな歌を歌い始めた。

俺は石喝村の生まれでさ
人を殺すのが大好きだ
悪党共の首を落として
村にさらしてくれようぞ

何進はその歌を聴くと肩を震え上がらせて怯えた。

「な、何をしておるか!皆で力を合わせて、あの舟に乗っている男たちを捕らえるのだ!!」

何進は震える唇で兵士達に叫んだ。
兵士達は、阮小二と阮小七の乗っている舟に向かってボートを漕いでいった。

「へん!誰がてめえらに捕まるかよ!」
「捕まえられるもんなら捕まえてみろ!」

と、小二と小七は言うと、湖の中へ飛び込み、兵士達の乗っているボート二艘に、短剣で穴を開けた。
二艘のボートはたちまち沈み、兵士達はまた捕縛されていった。

「何をやっておるか!!湖の中を突けば、1人や2人仕留められるだろうが!!」

何進は冷や汗をかきながら兵士達に叫んだ。
と、後ろから声が聴こえた。

「そんなに言うんだったら、まずてめえが俺と戦ってみたらどうなんだ?」
「へっ?」

と、何進は振り向くと、湖の中から白い肌をした青年が姿を現し、何進の体をがしっと掴むと、そのまま湖の中へ潜り込んだ。

『俺の名前を覚えとけ!俺の名前は浪裏白跳・張順だ!!』

張順は湖の中でそう言うと、何進を抱きかかえながら、湖の中を上下左右と泳いだ。

『どうだ!俺は7日7晩水の中で泳いでいられるんだ!!
そろそろ苦しくなってきただろう!!』
『ガボガボガボア!?お、お願いだ!!もうやめてくれ!!息が苦しい!!』

何進は顔を緑にしながら、張順に頼んだ。見てみると、何進の眼は白くなっている。

『よし、助けてやるよ!』

張順はそう言うと、湖から出て、兄の張横の舟に何進を乗せた。

「兄貴!敵の隊長を捕らえたぜ!!」
「よし、早速、縛って舟の中へ入れておけ!」

張順は張横の言ったとおりに、何進を縄で縛り、舟の中へと入れた。



ボートに乗った兵士達は隊長の何進を失い、混乱状態に陥っていた。
 
「うわあ!何隊長が捕まった!!」
「もうだめだ!!逃げろ!!」

兵士達はボートを転回させ、陣地の方へと逃げようとするが、突然、兵士達は手足に痺れを感じた。

「な、な・・んだ・・・?」
「急に手足がしびれて・・・」

兵士達は白目を剥いて、次々と倒れて、気絶した。
兵士達の乗ったボートに、孫二娘、楊春、宋万、杜遷、王英の乗った舟が近づき、孫二娘達は兵士達を、舟の中へと乗せていった。
白目を剥いている兵士達の顔を見て、王英は体を震え上がらせた。

「さすが、母夜叉の渾名を持つ孫二娘だぜ・・・」
「ああ、自分の髪に粉末状の痺れ薬をかけて、その長い髪を振り回して、痺れ薬を撒き散らすんだから、抗体を持っている俺達でなきゃ、こいつと行動できないぜ」
「全くだ。阮三兄弟、童兄弟と張順は湖の中に逃げればいいし、
張横は俺達と同じ抗体を持っているからな」
「痺れ薬に慣れるために、何度も何度も痺れた経験を思い出しますね・・・」

王英等は肩を震わせながら、話し合っていた。
孫二娘はそんな4人の会話に興味を持たないのか、黙々と兵士達を乗せていた。
その眼は瞼を開いたままなので、よりいっそう恐怖感をあおる。
さすがの女好きの王英も、孫二娘には近寄りたくないと思っている。
もし近づいたら、何をされるか分からないからだ。

『二度とこいつとは共同戦線を組むものか・・・』

4人は心の中でそう思った。


統一連合本営陣地

「何!?何進率いる歩兵部隊が全滅!?」
「はい!何進様と兵士達は敵の部隊に全員捕縛されました!!」

ホイは兵士の報告を聞いて驚愕した。
何進は統一連合の中でも上の中くらいの強さを誇る者である。
その何進が捕まったということは、敵も只ならない強さを持つというわけか。
ならば、戦車で遠くから攻撃し、ヘリコプターで安全な空から攻め入るまでだ!!

「よし、戦車部隊とヘリコプター部隊を出撃させろ!!」

ホイは兵士達に命令をした。
だが、すぐさま兵士から報告が来た。

「大変です!!戦車とヘリコプターの動力プラグが、何者かによって切断されています!!」
「何だと!?」

ホイはさらに驚愕した。
そんな馬鹿な!
昨日は戦車もヘリコプターもちゃんと動くようになっていたはずなのに・・・。
まさか!
我々が寝ている間に、敵兵の者達が潜入し、戦車とヘリコプターの動力プラグを切断したのでは!?
兵士はさらに報告する。

「ですが、スカイグラスパーやMSの動力プラグだけは、なぜか切断されていませんでした」

ホイはこの報告を聴いて、ほっとした。
スカイグラスパーや、MSの動力プラグまで切断されていたら、我々は手も足も出ない。
不幸中の幸いだったか・・・。

「ですが、どうしてスカイグラスパーやMSの動力プラグは切断されずにすんだのでしょうか?」

ジェシカがホイに訊いた。

「ああ、それは・・・」

ホイが答える前にドナテロが答えた。

「ヘン!決まってるだろ?スカイグラスパーの置いてあった所には、兵士が2人見張っていた。だから敵も切断したくても出来なかったのさ。それに、橋が取り外されていることも考えると、どうやら敵は、橋を取り外すチームと、動力プラグを切断するチームに分けて行動したと考えられる。
そして、橋が全部取り外したからか、あるいは時間が切羽詰まっていたから、MSの方の動力プラグにも手をつけずに撤退した・・・。
こう考えるが筋だろ」

ジェシカとホイとダンベールはドナテロの推理に感嘆した。

「まさか、力だけの男かと思っていたが、推理することも出来るとは・・・」
「やはり、ワルキューレの者はすごいとしか言いようがありませんね」

ホイとダンベールの言葉をドナテロは否定した。

「いや、頭のいい奴は確かにいるが、大半は力に頼り切った奴が多いぜ。特にキラ将軍様と、裏切り者のアスランの奴らがそうだ」
「貴様!キラ将軍とアスラン将軍を侮辱するつもりか!!」

突然現れたヒルダがドナテロに怒鳴った。
ドナテロはヒルダに対し、侮蔑をこめた声で言った。

「ヘン!あいつらを侮辱して何が悪い!
あいつらは己の有利的状況でなくては戦えない、只の小物じゃねえか!!しかも、アスランはザフトを裏切り、大勢の同胞をぶっ殺していきやがった!!
そんなに自分の友人であるキラ将軍の言うことが正しいってか!?只のハードゲイなんじゃねえのか!?アスラン将軍はよ!!」
「貴様!!」

ヒルダはドナテロを殴ろうとした。が、それをジェシカとホイとダンベールが抑えた。

「やめなさい。ヒルダ大佐」
「統一連合の兵士の分際で、ワルキューレに指図するのか!!」
「今は仲間割れをしている場合じゃないだろう!今は梁山泊に連れ去られた生徒たちを救出する方が大事でしょうが!!」
「2人のおっしゃるとおりです!!
ここで我々がケンカしたら、それこそ奴らの思う壺です!!」

ヒルダは3人の言葉を聴くと、握った拳を開き、
「くそ!」と叫び、ドム・トルーパーの方へと去っていった。

「ヘン!ラクスの飼い犬が!!」

ドナテロも自分の専用機であるゲイツRの方に行ってしまった。
3人はドナテロの言った言葉に少し共感を覚えた。
ワルキューレ将軍であるアスラン・ザラは5年前、ザフトを裏切って、当時、ロゴスの残党と呼ばれていたキラ・ヤマト率いるアークエンジェルに入った。
裏切った理由については、キラの言葉に共感したとか言われているが、ドナテロが言ったとおり、
『アスランはハードゲイで、キラのことが好きだから』
という説も囁かれている。
本人はそれを否定しているが、事実、ザフトを裏切ったことには変わりはない。
かつて、ドナテロはザフトの兵士であったと聞いた事がある。
そのため、彼は、ザフトを裏切ったとされるアスランや、
イザーク・ジュール、ディアッカ・エルスマン、シホ・ハーネンフースを蔑視しているという。
軍人である3人は、ドナテロの言うことにも、少し納得がいったような気がした。
ホイは、兵士達に命令した。

「スカイグラスパー、MS部隊、発進せよ!!」


梁山泊・司令室

『阮三兄弟率いる部隊、歩兵部隊を全員捕縛しました!』

司令室に白勝から通信が届いた。
劉備は腕を組み、

「よし!佐助の作戦の第1段階は成功したか」

と、言った。

「なんとかうまくいきましたね」
「ああ。敵が航空部隊を出撃させなかったのが幸いか」

呉用と太公望は作戦成功の知らせに肩をなでおろした。
佐助の考えた作戦は、航空部隊が出撃すれば、失敗する作戦だったのだ。
その作戦がまず成功したのなら、まず安心だ。
しかし、なぜ敵側の者はスカイグラスパーが動かせるのに、出撃させなかったのだろうか?
それほど敵側の指揮官は、軍事面において優れていないのだろうか?
呉用と太公望は心中、そう疑問に思っていた。
そんな2人をよそに、劉備は白勝にトランシーバーで連絡をとった。

「白勝。敵の陣営の様子はどうだ?」
『はい。・・・どうやら戦車とヘリコプターが動かせず、オロオロとしていますね・・・、あっ、スカイグラスパーとMS部隊が発進しました!』

白勝の報告を聴いた劉備は、

「MSは何機出撃している?」

と、白勝に訊いた。

『はい!・・・どうやら、敵は全MS部隊を出撃させたようです!』
「なんと!支援部隊のことも考えずにMS部隊を全機出撃させるとは!!」
「支援部隊のことも考えずに、全て発進させるとは・・・。
やはり敵の者は軍事面において優れてはいないようだのう」

呉用と太公望は、敵の者が軍事面において、浅い考えしか持っていないことに落胆した。

「しかし、呉用、太公望。敵の者が軍事面に優れていなかったことが最大の好機だ!」

劉備は2人にそういうと、副頭領である宋江に連絡した。

「宋江!MS捕縛部隊を出撃させてくれ!!」
『了解しました!MS捕縛部隊出撃!!敵MSと兵士を捕縛するのだ!!』

宋江はMS捕縛部隊に命令した。
修練場にいた楊志、魯智深、張青、劉唐、史進は先発隊として出撃した。

「よし!行くぞ!!魯智深、張青、劉唐、史進!!」
「おっしゃ!!」
「やっと出番が来たか!!」
「出撃するぞ!!」
「全力で行くぜ!!」

5人は手に得物を持つと、湖に置いてある舟に乗り、敵MS部隊に向かっていった。

KONRON社の機体開発研究所で、マヤ達は出撃の準備をしていた。

「いよいよだね」
「ああ。油断をしてると死ぬからな。本気でいかねえと」
「そうだね。死ぬのはやっぱりごめんだからね」

マヤ達はパイロットスーツに着替えながら会話をしていた。
パイロットスーツはかつて地球連合兵士が着ていたパイロットスーツを改良した物らしく、パイロットスーツのカラーは若葉色である。
那托とレッテはマヤ達に、

「3人とも。これがお前たちの初陣となる。しっかりやれよ」
「そうそう。私らだって、死にたくないからね。気を引き締めていきなよ!」

と言って、3人の肩を叩いた。

『は、はい!分かりました!!』

と3人は同時に返事をした。

「よし。では、行くぞ!」
「はい!」

マヤ達と那托とレッテは、自分達のMSの所へと歩いていった。


「うわあ。すごい・・・」
「見事に改良されてるな・・・」
「これがKONRON社の力なのか・・・」
マヤ達は、自分達のワークスジンが、見事に改良されているのに、感嘆としていた。
マヤの乗るワークスジンは、重斬刀の代わりにビームソードが装備され、健太の乗るワークスジンの肩には、2つのキャノン砲が付け加えられていた。
カンの乗るワークスジンは、両腕にガトリングガンが装備されていて、カラーリングもオレンジから緑色に塗り替えられていた。

「すごいだろう!僕達KONRON社の技術力は!」

3人は後ろから聴こえた声に反応し、振り返ってみると、そこには黒い髪をした若い男性がいた。

「あ、あなたは誰ですか?」
「見た所、MSパイロットではなさそうですね」
「もしかして、KONRON社の人ですか?」
「その通り!僕の名前は太乙真人!KONRON社のメンバーの1人さ!君達が軍学校の生徒達だね。初めまして」

太乙真人という名の青年は、3人に挨拶をすると、3人も頭を下げて、「初めまして」と言った。
マヤは太乙に訊いた。

「ところで、このワークスジンは一体・・・?」
「ああ。このMSについてだね。
このMSは、楊志達が君達と一緒に盗んだワークスジン3機を改良したものでね。
このビームソードを装備したワークスジンは、『ジンソード』と言ってね。重斬刀の代わりにビームソードを装備させた。
接近戦に有利なのは、重斬刀よりもビームソードだからね。
肩にキャノン砲を装備したのは、『ジンキャノン』遠距離戦に有利になるように、キャノン砲を2つ装備した。
この両腕にガトリングガンを装備したのは、『ガトリング・ジン』、遠距離・中距離戦にぴったりのMSさ」

マヤ達は太乙の説明を聴いて、
ジンにここまで改良を加えるなんて、KONRON社の人達はすごい、と思った。
太乙はさらに話を続ける。

「そして、僕の秘蔵っ子である那托が乗るダガーLと、レッテの乗るスカイグラスパーにも改良を施してあってね。
那托のダガーLにはジンキャノンのようなキャノン砲を装備させていて、レッテのスカイグラスパーにはホーミングミサイル8つと反応弾を2つ装備、さらに回避能力を高めて・・・」

太乙が自分の長話に花を咲かせていると、太乙の肩をちょんちょんと突く者がいた。
太乙は「なんだよ!人が話しているのに!」と後ろを振り向くと、そこには佐助の姿があった。

「ああ!佐助君じゃないか!どうしたんだい、こんな所へ来て?」
「あのさ、太乙さん?もう那托とレッテが発進してるんだけどさ」
「えっ!?もう発進したの!?」
「もうとっくに発進しましたよ!!発進してないのは、マヤ達3人だけです!!
それに、マヤ達もぐったりとしていますよ」

佐助はマヤ達の方向に指を指した。
太乙がマヤ達の方を向くと、マヤ達が肩をがっくりと落としながら、

「太乙さん・・・。もう発進させてくださいよ・・・」

と、太乙に言ってきた。
「あ・・・。あはははは、いやあ、ごめんごめん。今発進させるからさ」
「太乙さん。最初からそうしてくださいよ・・・」
マヤ達はそう言いながら、自分の乗るMSに乗った。
佐助もマヤの乗るジンソードの肩に乗り、マヤ達に通信をした。

『マヤ!今回の作戦は分かってるな?』
「はい!敵MSと兵士を捕縛すること・・・ですよね?」
『その通り!健太、お前たちの乗ってるMSは殺傷能力の高いMSだ。力は最低限に抑えとけよ?』
「分かりました!」
『よし!カン、気合を入れて頑張れよ!」
「はい!」
『その意気だ!アビー、3機が発進する!出してくれ!」

佐助はアビーに通信を入れた。
アビーは佐助の通信を聴いて、

「はい、分かりました!」

と返事をし、マヤ達のジン3機を発進させた。

『それでは、ガトリング・ジン、出撃OK、どうぞ!!』
「はい!カン・トンメン、ガトリング・ジン、行きます!!」
『続いて、ジンキャノン、出撃OK、どうぞ!!』
「おう、大江戸健太、ジンキャノン、行くぜ!!』
『最後に、ジンソード、出撃OK、どうぞ!!』
「はい、マヤ・テンム、ジンソード、行きます!!』

3機のジンは戦場へと飛び立った。
湖は、豪傑達とMSの戦場と化していた。
ワークスジンとゲイツRの大群が、76mm機関砲を豪傑達に撃って攻撃した。
しかし、豪傑達はそれを難なく回避して、MSのコックピットを剣でこじ開けて、中にいるパイロットに棒を突きつけた。

「よし!!1つ目MSのパイロット、捕まえたぞ!!」
「ひええ!!た、頼む!!殺さないで!!」

ゲイツRのパイロットは、史進に命乞いをした。

「大丈夫だ!!殺しはしない!!その代わり、お前をアジトへ連れて行く!!」
「そ、そんなあ〜!!」
「はははは!それじゃあ、このままゆっくり降下して、張横の舟へ乗るんだ!!」

史進はゲイツRのパイロットに命令した。
パイロットは泣き泣き「はい・・・」と返事をし、ゲイツRを湖へと降下させた。
パイロットは張横の舟に乗り、ゲイツRは、KONRON社の開発した潜水艦に搭載された。

「まさか、KONRON社の者達が、極秘裏に潜水艦を開発していたとはな・・・。空中に浮かぶ戦艦を開発していたと思っていたんだがな・・・」

KONRON社のメンバーは、色々な戦いを想定して様々な兵器を開発している。
そのため、戦艦も水中用の潜水艦や、空中用の戦艦などを開発しているのである。
史進は次々と降下するMSが、潜水艦に搭載されていくのを見て、湖での戦いを想定するとは、さすがKONRON社の連中だと思った。
キラ・ヤマトの真似をするのは少し癪だが、一回やってみる価値はありそうだ。

「よし!コックピットを狙わずに空中にいる軍勢を仕留めてやるか!!」

史進はそう叫ぶと、空へと飛び、様々な武器を振り回し、MS部隊に襲いかかった。

「受けよ!!武芸十八般!!」

剣、槍、槌、弓、弩、・・・。
様々な武器がMSの腕を、足を、頭部を破壊していく。
センサーを破壊されたMSは、戦闘不能となり、自分達の陣地へ逃げようとするが、たちまち王英や楊春等に捕らえられた。

「なかなかやるじゃねえか史進!!」
「この調子で行きましょう!!」
「ああ!!王英!!楊春!!俺達の力を見せてやろうぜ!!」

史進は王英達と共にMS部隊に立ち向かっていった。

那托のダガーLは、ダンベールの乗るワークスジンと戦闘を行っていた。
那托専用のダガーLは、フライヤーパックにメビウス・ガンバレルパックを装備してあり、ダンベールのワークスジンを圧倒していた。

「くっ!!梁山泊にこんなMSが存在していたとは・・・!!」

このMSを操縦しているパイロットは、おそらく優れたパイロットに違いない!!
ダンベールはダガーLのパイロットに通信を取った。

「ダガーLのパイロット!聴こえるか!?お前の名前を聴かせてくれ!!」

那托はダンベールの通信を聴くと、ダンベールの話を聴くため、ガンバレルを元に戻した。

「・・・ワークスジンのパイロットだな?俺の名前は那托だ。
お前の名前は?」
「俺の名はダンベール・タンベール。お前に訊きたい事がある!
俺の教え子3人は無事か!?」
「ああ・・・。無事だ」

2人はMSに乗って取っ組み合いをしながら話をしていた。
那托の言葉を聴いたダンベールは「そうか」と言って安堵した。

「俺にとって生徒は我が子供みたいな者だ。その生徒をお前達はどうして連れ去ったんだ!!」
「楊志が『あの3人はいい精鋭になる』と言っていた。だから楊志はあの3人を連れてきた」
「精鋭だと!ふざけるな!!あの3人はまだ軍人として未熟なんだぞ!!それを自分達の戦力にするとは、何たる外道共だ!!」
「外道・・・?権力という笠を被って、多くの人を苦しめておいて、よく言うな!人々を苦しめるお前達こそ、真の外道なんじゃないのか!?」
「それは一部の者達だけだ!!俺は弱い立場にいる者を苦しめたりはしていない!!」

那托とダンベールは機関砲を激しく打ち合いながら口論をしていた。
那托はダンベールに対して、強く言葉を放った。

「・・・弱い人を苦しめていないと言うのなら、お前も梁山泊に入れ!このままでは、いずれお前も、腐った軍に呑まれてしまうぞ!!」
「腐った軍だと!?軍はまだ腐ってはいない!!俺やジェシカ先生達がいる限り!!」

ダンベールのワークスジンは、重斬刀でダガーLの左腕を切り裂いて、さらに、ダガーLの懐へ飛び込み、右足で蹴りを入れた。

「うわあ!!」

那托のダガーLは湖の中へ落下しかけたが、ギリギリの寸前でバランスを取り戻し、空中へと再び舞い上がった。
が、そこにダンベールのワークスジンが突進を仕掛けてきた。

「もらったああ!!」

やられる!!那托はそう思った。
と、その時、ダンベールのワークスジンが、緑色のジンに後ろから掴まれた。

「先生!」
「そ、その声は、マヤなのか!?」

そのジンは、マヤの乗るジンソードであった。

(5)へ続く
「そんな馬鹿な!なんでお前が戦場にいるんだ!?」

ダンベールは突然の出来事に驚いた。
ダンベールは、マヤに言った。

「マヤ!何で梁山泊軍の味方をするのだ!?」
「・・・統一連合のやり方に、疑問を持ったからです」
「疑問だと?」

マヤとダンベールが会話をしていると、那托から通信が入った。

『マヤ!こいつを俺に渡せ!話をするのは、戦ってからでもいいだろう!!』
「は、はい!!と、いうわけで先生。また後で!」
「マ、マヤ!!」

マヤはダンベールをワークスジンごと那托のダガーLに渡した。那托のダガーLはワークスジンを連れて、アジトの方へ戻った。

「さてと、わたしもMSと兵士の人達を捕縛しに行かなくちゃ!」

マヤはジンソードを動かすと、アジトに向かってくるワークスジン3機の腕をすれ違い様に切り落とした。
腕を切り落とされたワークスジンを、ジンソードの上に乗っていた佐助が、金糸で縛り上げた。

「いいぞ!マヤ!!その調子で頑張れよ!俺はちょっと健太とカンのところへ行って来るぜ!」
「はい!佐助さんも頑張ってください!!」

佐助はひゅんと跳び、健太とカンの所へと行った。

ジェシカのワークスジンは、楊志と張青、魯智深の3人と戦いを繰り広げていた。
ジェシカのワークスジンは、修理をされたおかげなのだろうか、
以前よりも敏捷性が上昇としている。

「くっ!前よりも速度がアップしているな!!」
「こいつ・・・できるな!!」
「なかなかの腕前のパイロットだぜ!!」

3人は剣、拳、禅杖を振り回しながらジェシカのワークスジンの機関砲をかわしていた。
ジェシカは戦いながら楊志に訊いた。

「ちょっと!そこの青痣のあなた!あなた、青面獣・楊志でしょ!?」
「・・・俺の名前を知っているようだな?」
「ええ!!元宇宙統一連合軍少佐・楊志。中国統一連合軍第一将軍・蔡京への貢物を盗賊に奪われ、その後都へ戻るが、怒った八十万禁軍大元帥・高?等に軍職を剥奪され、その後、刀を売って金にしようとしていたところ、没毛大虫・牛二とのいざこざで、牛二を殺害。殺人罪によりお尋ね者となり、その後行方不明になった・・・」
「・・・良く知っているな」
「ええ。私も色々と軍人の情報について調べているから。けど、どうして梁山泊に入ったの?聞かせて頂戴!」

楊志はジェシカの問いに答えなかった。
代わりに張青と魯智深が答えた。

「ふん!統一連合の連中が腐っているからここへ来たんだろうが!!」
「そうだ!!当たり前のことを訊くんでないわ!!」
「確かに、あなた達の言うとおり、統一連合にも非道なことを行う人はいるわ!けど、そうやってレジスタンスに走っても、何も変わらないわよ!!」
「ところが変える奴がいるんだよ!!」
「そう、俺達の頭領は徳のある素晴らしいお方だ!!何もわかっとらん癖に、えらそうなことを言うでないわ!!」

張青と魯智深はジェシカに向かって怒号を浴びせる。
ジェシカは2人の熱気に気を押されそうであった。

「・・・と、とにかく、楊志!!どうしてあなたは梁山泊に入ったの?答えなさい!!」

楊志はゆっくりと言葉を開いた。

「腐った軍に見切りをつけたのさ」
「な、なんですって!?」

ジェシカが楊志の言葉に驚いていると、ジェシカのワークスジンは後ろから攻撃を食らい、湖の中へと落ちた。

「い、一体、誰!?」

ジェシカは叫ぶと、聞き覚えのある声が聴こえた。

「へへへ!先生!俺達ですよ!お・れ・た・ち!!」
「先生!久しぶりです!!」

そこには、両肩にキャノン砲を装備したジンと、両手にガトリングガンを持ったジンが立っていた。
2つのジンに乗っているパイロットは、健太とカンであった。
「健太君!?カン君!?」

ジェシカはMSに乗った健太とカンを見て驚愕した。
どうして捕まっているはずの生徒がMSになんか乗っているの!?
しかも敵側のMSに!?
ジェシカがそう思っていると、突如、ジェシカのワークスジンは、何かに縛られ、身動きが取れなくなった。
ジェシカのワークスジンを縛ったのは、佐助であった。

「佐助さん!?」

健太とカンは佐助の名前を呼ぶと、佐助は2人に手を振って、

「よお!健太!カン!頑張っているか?」
「頑張っているか?じゃないですよ!」
「そうですよ!マヤと一緒にいたんじゃないんですか?」
「いやあ、ちょっとした気まぐれでね。それよりも、だ」

佐助は腰に下げた忍者刀で、ワークスジンのコックピットをこじ開けると、ジェシカをコックピットから引きずりおろした。

「はいはい、お姉さん。あなたはもう俺達に捕まりました。
俺と一緒に梁山泊に行きましょう」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよあなた!!」

ジェシカは佐助に声を上げて言った。

「どうして連れ去られた健太君とカン君があなた達の味方になってるのよ!?もしかしてあなた達、生徒達を妖術か何かで洗脳したんでしょ!?」

ジェシカの言葉に、健太とカンと佐助、そして楊志達は同時に首を横に振った。

「いやいやいやいや!俺達はプラントの電波議長様じゃないんだから!!誤解されちゃあ困る!!」
「妖術使いならいるが、そんな術はもってはいない」

佐助と楊志が言った後に、健太とカンが言った。

「先生。俺達は自分の意思で戦っているんです」
「健太の言うとおりです。僕達は決して洗脳なんてされてません」
「でも、どうして梁山泊のメンバーと戦っているのよ?」
「それは・・・」

健太が言おうとしたその時、遠方からバズーカ砲の弾が飛んできた。

「!?」

その場にいた全員が飛んでくるために気付くと、

「先生!!危ない!!!」

カンのガトリング・ジンはジェシカのワークスジンの前に立ち、両方のガトリングガンを発射した。
ガトリングの弾はバズーカの弾を相殺した。

「皆さん!!大丈夫ですか!?」

カンは大きな声で叫んだ。
カンの声に健太と佐助達は答えた。

「ああ!!大丈夫だ!!」
「先生も楊志達も無事だ!!」
「安心しろ。大した傷は受けていない」
「見事だ!カン!!」
「なかなかやるな!!」

ジェシカはカンの姿を見て唖然とした。
敵の撃った弾を相殺するとは・・。
私の教えていた生徒が、ここまでMSを操縦できるようになっていたのね。
ジェシカはそう思っていた時、向こうから黒のMS3機が、湖の上を走りながら突進してきた。
ドム・トルーパーの3人組である。

「さあ!!梁山泊の賊共!!今日こそ仕留めさせてもらうよ!!」
「へっ、味方の兵がいるのに弾を撃つなよ」
「梁山泊!!今度こそ手前らをぶっ殺してやるぜ!!」

健太とカンはドム・トルーパーの姿を見て驚いた。

「なっ!?ドム・トルーパー三戦士!?」
「まさか本物を見るなんて!」

楊志は佐助に言った。

「佐助。その女を早く梁山泊へ連れて行け。あいつらは俺達の敵だ」
「分かった。健太、カン!!あのドム・トルーパーは楊志達に任せろ!!2人は他のMSの相手をするんだ!!」

佐助は2人に叫んで言った。

「でも、楊志さん達は大丈夫なんですか?」
「相手はあのドム・トルーパー三戦士ですよ!?」

健太とカンは心配そうな声で言う。
楊志は二人の声を聴くと、

「安心しろ。俺達は勝つ。お前達は他のMSを捕縛しろ」

と言った。
2人は楊志の言葉を聴いて、少し安心した。

「・・・分かりました」
「絶対に負けないでくださいよ!!」

2人は他のMSの所へ行った。
それを見たマーズは舌なめずりをして、

「へっ!逃すかよ!!」

と、バズーカ砲を発射した。
しかし、その弾は真っ二つに割れ、爆散した。

「なに!?」

マーズはバズーカの弾が爆破されたのを見て驚くと、前方から声が聞こえた。
楊志達は舟に乗りながら、ドム・トルーパーを睨みつけている。
彼の手には、日本刀のような刀身を持つ剣が光り輝いていた。

「お前達の相手は、俺達のはずだ。あのMSじゃないだろう?」
「楊志の言うとおりだ。さっさと俺達の首を取りたいんだろう?」
「とっととかかってこんかい!!」

楊志に続いて、張青、魯智深も言った。

「へっ!よっぽどぶっ殺されたいみたいだな!!俺は昨日、あのドナテロとかいう奴にぶっ飛ばされて、イライラしてるんだよ!!」
「ぶっ飛ばされたのはお前だけじゃないぞ?」
「うるせえ!ヘルベルト!!」
「マーズ!ヘルベルト!!ケンカはおよし!!」

マーズとヘルベルトの口喧嘩を、ヒルダが止めた。

「今はそんなことしてる場合じゃないよ!!世界3大レジスタンスの1つ、梁山泊。ラクス様のために、死んでもらうよ!!」

3機のドム・トルーパーは、楊志達に向かって突進してきた。

「ふん、あの独裁者のために死ぬのはごめんだ」
「ああ、全くだ!」
「俺達はここで死ぬわけにはいかん!!」

楊志達3人も、ドム・トルーパーに向かって、湖を駆けていった。
ドム・トルーパー3機は楊志達にバズーカ砲を同時に発射した。
3つのバズーカの弾は楊志たちに向かって唸りを上げて襲い掛かった。
楊志は吹毛剣から繰り出される真空波でバズーカの弾の1つを切り裂き、張青と魯智深は残りのバズーカの弾を素手で受け止め、そのままドム・トルーパー3機に向かって投げ飛ばした。
ヒルダの搭乗するドム・トルーパーは、戻ってきたバズーカの弾を、ヒートサーベルで切り落とし、難を逃れた。

「フン!やってくれるじゃないか!!」

ヒルダは鼻で笑うと、マーズとヘルベルトに言った。

「マーズ!ヘルベルト!いつものいくよ!!」
「おう!!」
「今度はしくじらねえぜ!!」

ドム・トルーパー3機は法則的に並び、そのまま楊志達に向かって一直線に走行してきた。
一番前のドム・トルーパーはビームシールドで相手の攻撃を防御し、残りののドム・トルーパー2機は後方でバズーカ砲を発射する。

「ジェットストリームアタック!!」

これが、ドム・トルーパー三戦士の必殺技である。

「フン、また同じ手で来たか!」
「ああ、前の戦いと全く同じ戦法できやがったぜ」
「何度も何度も同じ手で来れば、いつか手の内がばれるって事をあいつ等は全然わかっておらんようだな、楊志!!」
「ああ、魯智深。お前の言うとおりだ」

楊志達はドム・トルーパーのジェットストリームアタックの猛攻を避けながら会話した。
楊志はさらに2人に話した。

「しかもここは俺達の領域。あの3人は水上ホバーを足に装着し、上手く水上での戦闘をこなしているつもりだろうが、水上での戦いなら、俺達の方が有利だ!!」
「よし、そんじゃ行くか?」

張青が楊志に訊いた。
楊志の返事は「ああ!」であった。

「おっしゃああ!!そんじゃ、梁山泊の戦い方を見せてやるぜ!!」

魯智深はそういうと、湖の中へと潜り込んだ。
楊志と張青も魯智深の後に続いた。
ヒルダは突如湖の中へ消えた楊志達に驚愕した。

「や、奴らが消えた!?」
「消えたんじゃない、湖の中へと潜ったんだ!!」
「くそう!!どこへ行きやがった!?」

マーズは焦るばかりか、怒号を上げる。
と、その瞬間、ヘルベルトのドム・トルーパーの右足が爆発した。

「ぐわああ!!」
「ヘルベルト!?」

ヒルダとマーズはヘルベルトに向かって叫んだ。
ヘルベルトのドム・トルーパーは片足が湖の中へと沈み、移動が出来なくなっていた。
すかさず、左足の方も破壊され、ヘルベルトのドム・トルーパーは湖の中へと沈んでいった。
ヘルベルトは何が起こったんだと思っていると、コックピットが何者かによってこじ開けられている。
コックピットが開くと、そこには、張青の姿があった。
そう、ドム・トルーパーの両足を破壊したのは、張青であったのである。
張青は湖の中へ潜った後、ヘルベルトのドム・トルーパーの右足を自分の拳で破壊し、そのまま左足も拳で破壊した。
岩を持ち上げる両腕は、時には鉄をも砕く拳となるのだ。
張青はその拳をヘルベルトに向かって振るい上げた。

「うわあああああああああああああああーーーーー!!!!」

ヘルベルトは悲鳴を上げたその瞬間、3発の拳がヘルベルトの顔に穴を開けた。


ヒルダとマーズはヘルベルトのドム・トルーパーが沈んだのを見て、さらに焦った。
ヒルダはヘルベルトのドム・トルーパーに通信を入れたが、応答が無い。

「ええい!ヘルベルトがやられるなんて!!」
「畜生あいつら!!どこだ!!どこにいる!!」

マーズは楊志達の姿が見えなくて苛立っていた。
マーズがそうやって楊志達を探している時、ヒルダは何かの気配を掴み取った。
そう、魯智深がマーズの後方に立っていたのだ。

「マーズ!後ろだ!!」

ヒルダは叫ぶがもう遅い。マーズのドム・トルーパーは、魯智深の楊杖の刃によって貫かれ、木っ端微塵に吹き飛んだ。
魯智深はドム・トルーパーを倒すと、また湖の中へと飛び込んで姿をくらました。

「ええい!なんてこったい!!マーズもやられるなんて!!」

ヒルダはそう叫ぶと、湖の中へヒートサーベルを突き刺した。湖は湯気を上げ、熱を帯びていく。
このままヒートサーベルを突き刺しておけば、いずれあの三人もたまらず熱くて出てくるに違いない。
ヒルダはそう思った。
しかし、その考えは大きく外れた。
楊志、張青、魯智深の3人は、ヒートサーベルが突き刺される前に湖から出て、そのまま空中に飛び上がったのだ。
ヒルダは自分の下へ降りてくる青痣の男達の姿に気付いたが、ヒートサーベルを湖から出した時間が遅かった。
張青はドム・トルーパーの左腕を両腕で引きちぎり、魯智深は楊杖で右腕を切り落とした。
そして楊志はコックピットに剣を突き刺し、そのままコックピットをこじ開けた。

「フン、前と同じ戦法でかかってくるとは、愚かなものだな。ドム・トルーパー三戦士」

楊志はヒルダに言った。
ヒルダは銃を楊志に向けようとしたが、銃を持った右腕は、楊志の持つ吹毛剣によって切り落とされた。

「ひ・・、ひぃやあああああああああああ!!」

ヒルダは自分の右腕の感覚がなくなり、そしてすかさず痛感が襲ってきたことに悲鳴を上げた。
吹毛剣には、ヒルダの赤い血は一滴も付いていなかった。

「フン、銃で俺を殺せるとでも思ったか?残念だが、俺はその程度の武器の対処法は知っているんだよ」

銃は大抵、銃を持つ相手の手を握るか、銃を持つ手を動けなくしてしまえば使えなくなってしまう。
軍にいる者なら誰でも知ってる常識だ、と楊志は言った。

「軍にいる、だって!?じゃあ、お前はまさか・・・!!」

ヒルダは驚愕した顔で言った。
楊志は剣を眼にも止まらぬ速さで振り回しながら言った。

「そう、元・宇宙統一連合・中国軍少佐、青面獣・楊志。それが俺の名だ」

楊志は剣を鞘に納めようとした時、こう言った。

「その名を地獄の冥土の土産とするんだな」

楊志が剣を納めた時、ヒルダの体は見事に輪切りにされた。
「むっ、ケバ子とリーゼントとボヤッキーが殺られたか」

ドナテロは那托のダガーLと戦いながら、ドム・トルーパー三戦士の死を感じ取った。
ドナテロの乗るゲイツRは、彼の軍服の色である紫色にカラーリングされており、ヒートクローの代わりにヒートアックスを持ち、両肩にはショルダーガトリングガンを装備している。
さらにモノアイの色は彼のエメラルドグリーンの瞳の色を意識してか、赤色ではなく緑色のモノアイだ。
ドナテロ専用ゲイツRは、那托のダガーLのビームライフルをヒートアックスで切裂く。

「成程、これが梁山泊の連中のMSか・・・。あちこちから盗んできたMSのパーツを改造し、自分達独自のMSに変化させている」

ドナテロのゲイツRと那托のダガーLはビームライフルの打ち合いから、白兵戦へ戦いを持ち込んだ。
ゲイツRのヒートアックスとダガーLの光の刃が激しくぶつかり合う。

「これがワルキューレの兵士の力か・・・。MSの操縦も他の兵士とは一味違う」

那托は戦っている最中に思った。
こいつ、もしかしなくてもワルキューレの者だろう。
敵のMSの操縦を見れば分かる。
しかし、今戦っている奴には、何かもう1つの力がある。
それは一体なんだ・・・?
那托のダガーLのビームサーベルは、ゲイツRのヒートアックスを切裂いた。

「ちい!!こいつ、やりやがるな!!」

ドナテロのゲイツRはショルダーガトリングガンを発射した。
那托のダガーLはガトリングガンの弾を軽やかな動きで回避し、
敵のゲイツRに近づき、すかさずショルダーガトリングガンを両腕で引きちぎり破壊した。
自分の乗るMSの武装を破壊されたドナテロは舌打ちをした。

「くそ!こうなれば奥の手を使うぜ!!」

ドナテロはそう言うと、両眼に力を入れて、緑色の眼を光らせた。
緑色の光は那托を捉え、那托の体を縛った。

「・・・体が動かなくなったか・・・」

自分の体の異変が起きても、那托は冷静だった。
那托は突然の出来事などでも常に冷静的な性格である。
そのため、このように体が動かなくなっても冷静になり、どうして体が動かなくなったかを分析するのである。

「さて、これで奴の体はしばらくの間、身動きが取れなくなった。これで白兵戦に持ち込めるぜ」

ドナテロは瞼を開閉しながら言った。
ドナテロの持つ特殊能力にも欠点はある。
それは自分の眼に大きな負担をかけてしまうことだ。
相手の動きを止める能力「惨朴眼」は、自分の両眼を光らせることにより、相手の筋肉を硬直させてしまう能力である。
だが、相手の筋肉を硬直させる能力のため、眼には相当の負担がかかり、後2回使えば失明の恐れもある能力である。
そのため、一回能力を使ったら、24時間能力を使ってはいけないのである。
ドナテロのゲイツRは那托のダガーLの頭部に右の拳を入れた。
ダガーLの頭部は陥没してしまった。
頭部のセンサーも役に立たなくなってしまった。

「頭部のセンサーに損傷・・・。体が動けないんじゃどうしようもないな・・・」

那托は自分が窮地に立っている時でも冷静だった。
なんとかダガーLの装甲が駄目になる前に、体が動くようになってくれればいいのだが・・・。
那托はそんなことを考えながら、ドナテロのゲイツRの攻撃に耐えた。
先にヒートアックスとビームライフルを破壊しておいたのは正解だった。
もし破壊していなかったら、即刻コックピットをビームライフルで撃ち抜かれていただろう。
ドナテロのゲイツRは攻撃を絶えず続け、最後にダガーLに蹴りを入れた。
ダガーLはそのまま湖に落ち、湖の中にいるメンバーもろとも、木っ端微塵になる、はずだった。
ドナテロのゲイツRが那托のダガーLに蹴りを入れる直前、マヤのジンソードが間に割って入ったのだ。

「な、なに!?」

ドナテロは突然の出来事に驚愕した。
マヤは那托に通信を入れる。

「那托さん!大丈夫ですか!?」
「ああ、大丈夫だ。ダガーLの装甲が見事持ったな。只、体が動かなくてな」
「え?体が動かない?」
「ああ。どうやらあの敵のゲイツRのパイロットの特殊能力らしい。おそらく、ワルキューレの者だろう」
「わ、ワルキューレ!?」

マヤは敵のゲイツRを見た。
旧来のゲイツRとは違い、かなりダークなカラーリングである。
しかも見た所、武器は全て那托が破壊したらしいのか、素手で攻撃するしか方法は無いようだ。
だが、ここには操縦が出来ない那托がいる。
もし、放っておいたら他の兵士に狙われるのは当然。
ここは何とか敵の攻撃を振り切って、アジトの所へ連れ帰るしかない。
マヤは那托に言った。

「那托さん。これからあなたをアジトへ連れ帰ります!」
「アジトへ!?」

那托はマヤの言葉に驚いた。
まさか体の動かない自分をMSごとアジトへ連れ帰るなんて!
マヤのジンソードは那托のダガーLを担いで、アジトの方へと戻ろうとしていた。
ドナテロはこの光景を見て、アジトへ逃げる気だなと思った。
そうはさせるものか・・・。

「待ちやがれ!梁山泊!!てめえらはこのドナテロ・フェルビラブドがぶっ殺す!!」

ドナテロのゲイツRは、ダガーLを担ぐジンソードに向かって襲い掛かってきた。
ドナテロのゲイツRは、那托のダガーLを担ぐジンソードに向かって、蹴りや拳打の嵐を浴びせた。
しかし、ジンソードはダガーLを担ぎながらも、何とか交わし、梁山泊のアジトへと向かっていた。
このままやつらを行かせてなるものか!
ドナテロは自分の特殊能力「惨朴眼」を使おうかと思った。
しかし、2回目を使えば自分の片方の眼が見えなくなってしまう。
だからといって、ここで出し惜しみすれば、奴らはアジトへ帰還してしまう。
ここは使うしかない!
ドナテロはそう思うと、マヤのジンソードを、エメラルドグリーンの眼で睨みつけた。

マヤはジンソードを操縦していると、突如、自分の体が鉄のように重くなっていくのを感じた。

「えっ!?何!?か、体が動かない!?」

マヤは突然の出来事に混乱した。
那托はマヤの乗るジンソードが停止したのを見て、あのゲイツRのパイロットが、自分の能力をもう1回使ったな、と感じた。

「マヤ、体が動かなくなったのか!?」
「は、はい。突然体が言うことを利かなくなって・・・」

マヤは那托の問いに答えた。
那托はやはりと思い、マヤに言った。

「マヤ、お前はあの紫色のゲイツRのパイロットの特殊能力で、体が動かなくなったんだ。俺もさっきあのパイロットの能力で、体が動かなくなってしまったんだ」
「ええ!?じゃあどうすれば動けるようになるんですか!?」
「おそらく時間がたてば元に戻ると思うが・・・、それまであのパイロットが待ってはくれるわけが・・・」

那托がそう言ってると、ドナテロのゲイツRが、ダガーLとジンソードに追いついた。

「・・・ないみたいだな」

那托は区切った言葉を言った。
ドナテロのゲイツRは、ダガーLとジンソードをがしっと掴み、動かなくなった。
ドナテロは右眼を閉じながら自分のMSのコックピットを開くと、所持していたダガーナイフを持ち、そのままジンソードのコックピットに立った。
そして、ジンソードのコックピットを両腕でむりやりこじ開けた。
コックピットをこじ開けた瞬間、ドナテロは驚愕した。
ジンソードの中に乗っていたのは、軍学校から連れ去られた生徒の1人だった。

「ど、どうも、おはようございます・・・」

マヤは顔を引きつらせながら、ドナテロに挨拶をした。
ドナテロは思った。
何で軍学校から連れ去られた生徒が、梁山泊の味方をしているんだ?
過去の歴史の文献にある、人質にされている奴が敵に同調して、その敵の仲間になるという、ストックホルム症候群という奴か?
まあいい。どうせ戦場に出れば死ぬのは必然。
この女に死ぬ覚悟があろうと無かろうと、これが戦いというものだ。
ドナテロは右手に持ったダガーナイフの刃先をマヤに向けた。
マヤは刃先を向けられた瞬間、この人は自分を殺すんだということを感じた。
ドナテロはマヤに言った。

「敵の味方をしてるのなら、ここで死んでもらうぞ。これが戦いというものだ」

嫌だ・・・。

嫌だ・・・。

わたしはここで死ぬの・・・?

わたしが死んだら、父さんや母さんが悲しむだろうな・・・。
健太君やカン君も涙を流すだろうな・・・。
梁山泊のメンバーの人達はどうだろう・・・?
きっと佐助さんや楊志さん達も悲しむだろうな・・・。
ロイ君やコレットちゃんやギロ君も大声で泣くだろうな・・・。
いろんな人がわたしのために泣くのは・・・、
そんなのは嫌・・・。

ドナテロはダガーナイフをゆっくりと振り下ろした。

わたしは・・・。

わたしは・・・。

ここで死ぬわけにはいかない!!


「動けええええええ!!!」

マヤはドナテロのダガーナイフを右手で掴んだ。
ドナテロは驚愕した。
こんな年端もいかぬ少女が自分の能力を破るなんて!?
マヤの右手はダガーナイフの刃で、赤い血に染まっている。
マヤはダガーナイフをドナテロから奪い、そのまま湖へ放り投げた。

「わたしは・・・、ここで死ぬわけにはいかないの!!」
「まさかこんなガキが・・・、俺の能力を破れるのは、ワルキューレ27楽奏だけかと思っていたが・・・」
「生きたいという思いが、あのゲイツRのパイロットの能力を破るとはな・・・」

那托はダガーLのコックピットの中で、マヤの力を実感した。

「マヤはこれからもっともっと成長するかも知れんな」

マヤはドナテロの片眼を睨みつけていた。
那托は体が少しづつ動かせるようになっていくのを感じた。
後もう少しでダガーLを動かせる!
那托はそう思うと、マヤに言った。

「マヤ!俺の体が少しづつ動かせるようになってきている。
もう少しすれば動かせるようになる。マヤはしばらくの間、そいつをMSに乗せないようにしてくれ!」
「はい!分かりました!!」

那托の声を聴いたマヤは、ドナテロに向かって体当たりをした。

「うわあ!?」

マヤのタックルでバランスを崩したドナテロは、マヤと一緒に湖へ落ちた。
2人は湖の中でもがきながら、取っ組み合いをした。

「ええい!!惨朴眼を解くわ、俺を湖の中へ落とすわ、一体何なんだよ、こいつは!?」
「がぼがぼごぼ!ごぼごぼがばがば!!」

マヤは夢中でドナテロを羽交い絞めにしようと、懸命にドナテロの後ろを取ろうとするが、水の中での呼吸法を覚えていないためか、次第に顔を青くした。
マヤが息ができなくなっていることを感じたドナテロはチャンスだと思い、急いで海面へ顔を出そうとしたが、マヤがそれを阻止しようと、ドナテロのヘルメットを脱がそうと、頭に飛びついてきた。

(絶対に、離さないんだから!!)

マヤはドナテロのヘルメットを外し、やっと羽交い絞めをすることが出来た。
このまま海面へ出て、佐助さん達のところへ連れて行かなくちゃ!!
マヤは必死になってドナテロを離さずに、ぎこちなく泳いでいたが、ドナテロはマヤの顔に後頭部で頭突きを食らわした。
マヤの鼻から赤い血が吹き出た。
赤い血は湖に溶け込み、やがて薄まった。
ドナテロはもう1発後頭部で頭突きを食らわせようと、首を前に傾けた。
こっちだっておめおめと敵に捕まるわけにはいかない。
俺にだって軍人としてのプライドがあるんだ!
ドナテロは勢いをつけて首を後ろへ反らした。
しかし、ドナテロの後頭部に衝撃が走った。
マヤはドナテロが後頭部で頭突きを食らわせようとした瞬間、自分もドナテロの後頭部に頭突きを食らわせたのだった。
マヤの額はドナテロの後頭部に見事当たった。

(こ、この野・・ろう・・・)

ドナテロは後ろを振り返りながら、マヤの顔を見ながら気絶した。

(いたたた・・・。この人、すごい石頭だ・・・。とにかく、この人を佐助さんの所へ連れて行かなくちゃ・・・)

マヤはそう思うと、海面へ行こうとした。
しかし、長い間湖の中にいた為、マヤは意識が朦朧とし、ドナテロを羽交い絞めにしたまま、湖の底へと沈もうとしていた。
そこへ、童威、童猛兄弟がマヤを見つけた。

「おい、兄貴!あれは新入りのマヤじゃないのか!?」
「ああ、確かに。しかも敵の兵士を羽交い絞めにしたまま気絶しているぞ!」
「急いで助けに行こうぜ!」
「当たり前だ!!」

童兄弟は平泳ぎをしながら2人に近づき、そのままマヤとドナテロを担ぎ、海面から出た。

「おい、マヤ!大丈夫か!!」

童猛はマヤに声をかけるが、全く返事をしない。

「全然返事を死ねえぞ!!」
「こっちの敵の兵士もだ。急いで張横の舟へ行こう!」
「ああ!」

童兄弟は急いで張横の舟へマヤとドナテロを連れて行った。
レッテ専用スカイグラスパーは、敵のスカイグラスパーの翼をバルカン砲で破壊していた。

「そらそら!!死にたくなけりゃあ、さっさと脱出しな!!」

敵兵はコックピットから脱出し、パラシュートを広げて着地しようとしたが、たちまち宋万、杜遷、楊春の手によって捕らえられてしまった。
レッテのスカイグラスパーに、ジンキャノンとガトリング・ジンが加勢する。

「レッテさん!俺達も手伝います!」
「一緒に頑張りましょう!!」
「あんた達、加勢に来るとはね!よし、それじゃあいくよ!!」

スカイグラスパー、ジンキャノン、ガトリング・ジンはいっせいに弾を発射し、敵機の翼を次々に落としていった。



「・・・い、マヤ!しっかりしろ!!」

マヤはゆっくりと眼を開いた。
目の前には、那托、張横、そして、マヤを助けた童兄弟がいた。

「ここ・・・は?」
「俺の舟の上だ」

と、答えたのは、張横であった。
彼の左目には、刀で切られたらしい傷跡がある。
しかし、眼球は破裂していないようである。

「お前はそこの奴と一緒に湖の中で気絶していた所を、童威、童猛が助けてくれたんだ」

張横がマヤの隣を指差すと、そこには、縄で縛られたドナテロの姿があった。

「全く、敵を捕まえるのに夢中になってるから気絶しちまうんだよ!」
「今度から水の中での呼吸法も学ばなくてはな」

童威、童猛は笑いながらマヤに言った。

「そう・・・だったんですか・・・。ありがとうございます!
童威さん!童猛さん!」

マヤは2人に頭を下げながら礼の言葉を言った。

「いやあ、礼にはおよばねえよ!」
「ああ。・・・それよりもだ。まさかワルキューレの兵士を捕まえるとは、大それたことをやるもんだなあ」

童猛はドナテロを見ながらマヤに言った。
マヤは少し戸惑いながら童猛に言った。

「えっ!?・・・あの、それは・・・、あの人がわたしを殺そうとしたから、死にたくないと思って・・・、それでつい・・・」
「要するに、火事場の馬鹿力ってことか・・・」

那托は感心しながら言うと、ドナテロの方を見た。

「で、マヤ。早速この男を自分で説得してみたらどうなんだ?」

那托はドナテロを縄で縛ったまま、マヤの方へ連れてきた。
マヤは那托の言葉を聴くと、

「ええ!?わたしが敵の人を説得するんですか!?」
「こいつはお前が捕らえたんだ。こいつを説得することが出来る権利は十分にある。それに、こいつは見た目からして、説得しづらい性格だろう。頭領が説得しようとしても、こいつは頭領に唾を吐きかけることをしそうだ。
だから、こいつは捕まえたお前が説得するんだ」
「わ、分かりました・・・」

マヤは心を落ち着かせるため深呼吸を2回して、ドナテロに言った。

「・・・えっと、あなたの名前は何て言うのですか?」
「・・・ドナテロ。ドナテロ・フェルビラブドだ」
「ドナテロさんですね。
では・・・単刀直入に言います。わたし達梁山泊の仲間になりませんか?」

ドナテロはマヤの言葉を聴くと、マヤを睨みつけて言った。

「てめえら反乱分子の仲間になれだと?」
「はい。この世界は悪い役人や軍人達の手によって、大変乱れています。ですから、梁山泊は悪い役人や軍人達を倒すために戦っているのです。わたしは近くの街で、ぼろぼろの服を着ながら木の根を噛んで暮らしている人達を見ました。わたしはその時に決めたんです。あの人達みたいに貧しさと飢えに苦しんでる人達を助けようって。ですから、あなたも・・・」
「フン。それがどうした」
「えっ?」

ドナテロの言葉に、マヤは驚いた。
ドナテロはそのエレラル度グリーンに輝く眼で、マヤを蔑視するような目つきで言った。

「俺達軍人はその悪逆非道の役人共の命令に従うのが仕事。例え民が苦しんでいようと、役人に逆らうことは許されないんだよ」
「だ、だからその役人たちを一緒に倒そうとわたしは・・・」
「俺は軍の仲間を裏切りたくねえ!裏切れば、あのハードゲイのアスラン将軍様や、イザークのカス共と同類になっちまう!!
仲間を裏切ることは、万死に値するんだよ!!」

ドナテロはそう叫ぶと、自分を縛り付けていた縄を引きちぎり、隠し持っていた短剣を抜いて、堂々と立ちながら高らかに叫んだ。

「俺は二将に従う義理はねえ!敵に捕まり、捕虜にされるという恥をさらすくらいなら、ここで腹を掻っ捌き、あの世の仲間の元へ逝く!!」

マヤ達はドナテロを押さえようとしたが、ドナテロは素早く自分の腹に短剣を突き刺し、そしてそのまま腹を横一線に切裂いた。
ドナテロの血が大量に噴出した。
ドナテロの血はマヤの顔にべっとりと付いた。

「まさか、割腹するとは・・・」
「なんと言う壮絶な最後なんだ・・・」
「こいつはまさに軍人だな・・・」

張横、童威、童猛がそういってる中、マヤは1人立ちながらかたまっていた。


どうして?
どうして死ななくちゃいけないの?


マヤには、ドナテロの考えは理解できなかった。
ドナテロは、自分が捕虜にされ、軍の恥をさらすのなら、死んで恥をそそごうという考えの下、自分で腹を割ったのだ。
しかし、マヤにはそのドナテロの考えは理解しがたいものであった。
仲間になれば皆と仲良くなれたはずなのに、どうしてここで死ななくてはいけないの?
マヤには分からない。
マヤは血に塗れた顔を手で覆いながら泣き崩れた。
那托達は泣いているマヤに言葉をかけた。

「マヤ・・・。あの男、ドナテロは軍人の立場にいる者として、俺達の方へ寝返ることを善しとしなかったんだ。だから、お前に捕まったという恥を許すことが出来なかったんだ」
「でも、死ななくても・・・」
「軍人には軍人の誇りがあるんだ。マヤには分かり難いだろうがな。でも、いずれ分かるようになる・・・」

那托はマヤの頭を撫でながら、ドナテロの遺骸を見つめた。
ドナテロの顔は、いかにも満足したような顔をして眼を閉じていた。
『惨朴眼』の光は、もう2度と光ることは無かった。

ドナテロ・フェルビラブド 死亡 

「ホイ隊長!ヒルダ・ハーケン、マーズ・シメオン、ヘルベルト・フォン・ラインハルト、そしてドナテロ・フェルビラブド4名が死亡した模様です!!」
「なに!?」

兵士の報告を聴いたホイは驚愕した。
兵士はさらに報告する。

「さらに、ダンベール・タンベール、ジェシカエッセンスの2名も、梁山泊に拘束された模様です!!」

ホイはさらに驚愕した。
まさか、ワルキューレである者達がこうもあっけなく戦死するなんて。
梁山泊の力は侮れないということなのか・・・。

「・・・仕方が無い。残った兵士を集めろ。撤退だ!!」
「しかし、ホイ隊長!!」
「ここで味方の軍勢を全滅させるわけにはいかない。
軍学校に戻り、体勢を立て直す!!わかったら、信号弾を撃て!」
「は、はい!!」

兵士は慌てて信号弾を撃った。
信号弾は赤、青と光り、空に消えた。
統一連合軍の兵士達は信号弾を見ると、たちまち撤退した。

「・・・撤退したようですね」
「・・・どうやらそのようだな」

楊春と王英は撤退していく兵士を見ながらつぶやいた。

「あっ!敵の兵士が撤退していくぞ!」
「本当だ!それに昨日の夜、ヴィーノさんとヨウランさんがポンコツにした戦車やヘリコプターをトラックに急いで入れてる!」

健太とカンはMSのモニターで敵兵が撤退して行く様子を見て言った。

「ふーん。どうやら、あたい達の勝ちみたいだな!」

レッテは笑いながら言った。
健太とカンはやっと終わったのかと安心して、肩をなで下ろした。

「撤退したか・・・」

那托は舟の上で撤退していくスカイグラスパーを見ながら、マヤを慰めていた。
マヤはドナテロの死を忘れることが出来ず、下を向いて座っていた。

「那托さん・・・」

マヤは那托の名前を呼んだ。

「・・・どうした?」
「・・・軍人の人って、自分の命を簡単に捨てることが出来る人達ばかりなんですか?」

那托はマヤの問いを聴いて、マヤが軍学校の生徒であったということを思い出した。
もし、マヤ達が軍学校の生徒として暮らしていたら、ドナテロのような兵士になっていたかもしれない。
那托は首を横に振り、マヤに言った。

「マヤ。軍人の中には己の信念に殉ずる者もいれば、自ら可愛さに戦場を逃げ出す兵士もいる。軍人と言っても様々だ。あいつのような軍人がたくさんいるわけじゃないんだ」
「那托の言う通りさ」

那托がマヤに言っている所へ、張順と劉唐がやってきた。

「あいつのような性格の軍人は、ごくまれだ。己の信念に殉じる奴はほとんどいない。只、あいつのような信念を持っていなくても、自分の家族のため、愛する者のために戦う者がたくさんいる。それは俺達も同じことだ」
「俺達だって自分の居場所を守るため、傾いている国を救うため、そして弱い者達を救うために戦っている。俺達も敵も考えていることは同じなんだ」

劉唐はそう言うと、マヤの頭をぽんと触った。

「だから、マヤ。お前はドナテロと言う男の意思を背負って生きていけ。あいつはお前の心の中で生きている」
「心の・・・中で・・・」

マヤは自分の手を胸に当てて、ドナテロという男を思い浮かべた。

(ドナテロさん。あなたの意思は、わたしが背負って生きます。どうか、やすらかに眠ってください・・・)

マヤはドナテロの意思を背負い、そして、これから出会うであろう者達の意思を背負っていこうと、心に誓った。


「敵軍、次々と撤退していきました!俺達の勝利です!!やったあ!!」

白勝は劉備に報告した後、司令室の周りを飛び跳ねた。

「敵は撤退してくれたか・・・」
「敵も兵を引いてくれたか。よかった・・・」

劉備と宋江は腰を下ろし、額の汗を拭いた。
と、その時、太公望は劉備に言った。

「ですが、これで安心するのはまだ早いですぞ!」
「太公望。まだ早いとは・・・?」
「そうですよ!敵も撤退したんだし、これで一件落着でしょう!」
「白勝。あなたはまだ何も分からないのですか?」

呉用は白勝を睨みながら話を続けた。

「我々梁山泊が敵兵を多く捕縛して、かつ、有力な兵士を倒したとなれば、当然、統一連合軍も強力な新手の者を送り出してくることでしょう」
「そうなれば梁山泊がまた狙われることは必至。ここは我々も捕縛した敵兵を説得し、さらに各地に散らばった十二神将を呼び戻し、今後の敵の侵攻に備えましょう!」

呉用と太公望の言葉を聴いた劉備と宋江は、成程と思い、2人に言った。

「分かった。では捕縛した兵士達を説得した後、各地の十二神将
達に戻ってくるように連絡しよう」
「我々も気が引けませぬな」
「うむ」
劉備はこれから起こるであろう戦いを見据えていた。


中国統一連合軍・司令室

「というわけで、ホイ隊長率いる軍は梁山泊の力の前に敗北。
ワルキューレのドム・トルーパー三戦士とドナテロ・フェルビラブドも、戦死したとのことです」

報告をする兵士の前には、3人の将軍が座っていた。

「まさか、ドム・トルーパーの3人が死んじゃうなんてね。あの3人、ちょっとかわいそうね」
「しょうがないだろ。所詮あの3人はドム・トルーパーが無ければ戦えない、ワルキューレの中では雑魚中の雑魚さ。やっぱ、ワルキューレは特殊能力を持った奴にかぎるっしょ!」
「童貫の言うとおりだ。蔡京」
「高?・・・」
「統一連合の中にも素手や刀でMSを倒せる兵士は存在するが、
ワルキューレの兵士達には劣る。とはいっても、中にはドム・トルーパーの3人のような役立たずも少数存在する。何でラクスはワルキューレの兵士を超能力者に統一しなかったのか・・・」

高?という名の男は、ワルキューレの兵士のプロフィールを見ながら言った。

「だが、もうすぐだ。ワルキューレの中でも最強の能力を誇る戦士『ワルキューレ27楽奏』がやってくる時が!」

高?は3枚のプロフィールを見ながらにやにやと笑った。