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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第47話「姿なき超兵器」

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、、、、やりましょう。

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ガルベストン第11番惑星
 ガルベストン太陽系の外縁にある惑星、ガレイのスペースインパルス隊が駐屯しており、ステルスミサイル攻撃で地球艦隊を苦しめた。

あらすじ

 探査基地で本星の場所を確認し、一路ガルベストン恒星系に向かう地球艦隊、太陽系の外縁にまで達した敵艦隊に総司令カポネーロはスペースインパルス作戦を発動する。

見どころ

 先の地球爆撃以降、戒厳下の地球、戦艦ラガーガードが探査基地でガルベストン本星の位置を掴んだことはまだ警備軍本部には伝えられておらず、艦隊を送った長官若狭は戒厳下の街並みの殺伐さに嘆息しつつ、本部でアシモフ艦隊の勝利を祈る。

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 これまでの戦いでガルベストン側の通信解読能力が地球側のそれを上回っていることが分かっているため、本星発見の情報はラガーガードでも艦長とチーフ以外には秘密にされている。長門らに本星について訊かれた安芸は言葉を濁し、彼らに休息するように言う。そして艦隊はガルベストン太陽系の外縁にまで辿り着く。

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 「諸君に集まってもらったのは他でもない」、皇帝コルセール臨席の下、隊長たちを呼び集めたカポネーロは地球艦隊が真っ直ぐ本星に向かっていることを一同に話す。召集された隊長たちの顔ぶれは、見たところかなりの老人である。黙りこくるコルセールに、たぶん彼のかつての上官もいるはずの老隊長たちにカポネーロがきまり悪そうに訓示する。ある意味、この作品で初めて、このタカ派の領袖に同情したくなった場面である。

老隊長A 「困ったことだ、、」
老隊長A 「地球艦隊とはな、、」
サーク  「カポネーロ総司令、、お願いがございます、、」
カポネーロ 「うわ、、わしは忙しいのだ、、」
サーク  「総司令!」

 久方ぶりの現役復帰で、噂の地球軍について戦々恐々と話す老隊長たちの後方から、いかにもバツが悪そうに退出したカポネーロを夫を亡くした寡婦のような陰気な声で副官の任を解かれたサークが呼び止める。これは切り出し方もタイミングも悪かったように見える。「ガルベストンは非常事態である!」、お宮よろしくテレス復帰を哀願するサークを金色夜叉の一高生のように一蹴し、さらに苛立ったカポネーロは防衛局に向かう。青年のテレスが用いられずに軟禁され、すでに戦士として老いぼれた老人たちが掻き集められて戦場に赴くガルベストン帝国。「外宇宙防衛隊長ガレイを呼べ」、防衛局に赴いたカポネーロはガレイにスペースインパルス作戦の発動を指令する。

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「いかにも予備役から召集されてきたような老隊長たちといい、今までの隊長たちと比べると、だいぶ「チャラい」感じの黄髪のガレイ隊長といい、細かい描写でガルベストン軍の弱体化を分からせる様子が映し出されている。そして彼らの兵器は「スペースインパルス」、鹵獲した地球軍の無人スナイパーのガルベストン版コピーである。「星の崩壊と共に国まで滅んでいく」、市街で車を走らせながらテレス救出の方法を考えていたサークは街角で謎の男たちに襲われて連れ去られる。

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 地球艦隊が11番惑星に近づいたことを見たガレイはスペースインパルスの発射を命じる。地球側の無人スナイパーとの違いはこれがリモコン型のステルスミサイルであることで、ダイラガーの迎撃さえなければ、空間配備された「見えない」ミサイルには地球艦隊は為す術もないはずである。惑星を偵察するカイラガーとリックラガーを探知したガレイは母艦にいるクウラガーも誘い出すため、ラガーマシンにミサイル攻撃を命じる。

「安芸、何をしている! 仲間が攻撃されているのにこんな所でグズグズするな!」、伊勢の見習いで艦長代理を務めていた安芸に部屋から飛び出して来た伊勢は出撃するように命じる。が、それこそがガレイの思う壺だった。3機のラガーマシンが揃ったことを見たガレイはバトルアタッカーを出動させ、同時にスペースインパルスで地球艦隊攻撃を命じる。見えないミサイルに地球艦隊の戦艦は次々と被弾して火を吹いていく。そして惑星では陸奥がアタッカーの攻撃で負傷し、ラガーチームは合体不能の危機に陥る。

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 ステルスミサイルであることを見破ったアシモフによって全機撃墜されるまでに敵艦隊の3分の1を撃沈破したと豪語したガレイのスペースインパルス作戦だが、実はその戦果は少々怪しい。まず「インパルス」自体が地球の無人スナイパーのコピーで、このスナイパーというもの、少なくとも地球側の使用実績では小型艦以外に破壊した艦がないことがある。それと普段は必要以上に描かれている地球側戦艦の爆破シーンが今回に限っては1カットもなかったことがある。バトルアタッカーを撃破されたガレイは惑星から逃走したが、この大戦果は崩壊に瀕したガルベストン本星ではどう受け取られたのだろうか。ラストは気絶させられたサークが収容された路地裏の一角に移る。椅子に座らされた彼女を肩からガンベルトを掛けた粗末な服装の男たちが取り囲んでいる。

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サーク 「あなた方は?」
バッキ 「我々はコルセール帝を倒すために立ち上がった市民のグループです。」
サーク 「ええっ?」
バッキ 「我々は仲間としてあなたを迎えたいのです。ガルベストンを崩壊から救うために、まずテレス司令を救出することです。それには貴女が必要です。」

 長い名前だが、この「コルセール帝を倒すために立ち上がった市民のグループ」の存在をサークは知っていたと思われる。44話で彼女はテレスにこういう組織の存在を話している。しかし、テレス抜きの自分が彼らにマークされていたとは思っていなかったようだ。いかにも北斗の拳なキャラのリーダーの筋肉質の男(バッキ)が彼女にテレスのことを話す。

バッキ 「司令が宮殿内に軟禁されたことはもう知っています。また、新たな情報によれば、地球艦隊は第11惑星も撃破してガルベストンを目指しています。行政府はその対応で混乱しているはずです。揺さぶりを掛けるのは今しかありません。どうか、決意してください!」

 男の風体は北斗の拳だが、行政府内部の事情にまで精通している情報力はただごとではない。いずれにせよ、地球艦隊進撃による行政府の混乱は報告されても、新兵器スペースインパルスの大戦果が全く報告されていないことで、この兵器の戦果のほどが分かる。おそらくほとんど減らなかったのだろう。

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バッキ 「コルセール帝とその配下どもに、我がガルベストンを崩壊させたくはないのです!」
その他 「サーク副官!」
(一同の前でサークが隊長の襟章を外して目の前に差し出す)
サーク 「、、、、やりましょう。」

 今週の言葉はサーク副官、ガレイらのスペースインパルスの「大戦果(自称)」にも関わらず、地球艦隊は相変わらず本星に向かって進軍しており、ガルベストンは滅亡への道をひた走っている。にも関わらず戦争を止めない軍部の暴走を止めること、そしてテレスを救うため、サークは襟の徽章をむしり取って彼らに差し出し、王宮警護隊長の身分を捨ててレジスタンスに合流することを表明する。リーダーにサークを迎えたレジスタンスも加わり、銀河を二分する戦いはいよいよクライマックスを迎えようとしていた。

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 タイトルの「姿なき超兵器」、話ではステルスミサイル「スペースインパルス」のことを指すと思うが、このミサイルはあまりにもあっけなく地球軍に見破られ、ラガーガードの偏光サーチライトで照らし出されて掃滅されてしまう。「超兵器」という言い回しも、バトルマシン戦以外はオーソドックスに戦っていたこの作品の戦いに似合わないものである。むしろ「姿(実体)のない」超兵器ではないだろうか。艦隊も壊滅し、無人兵器に頼らざるを得なくなったガルベストン、そういう藁にもすがる心理をタイトルにしたと考えれば、「超兵器などないのだ」というスタッフの皮肉を感じることができ、このタイトルは難解だが納得の行くものである。

キャラクター紹介

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ガレイ

 ガルベストン外宇宙防衛軍、第11番惑星守備隊長でガルベストンの石田純一の仇名を持つガレイは隊長らしからぬチャラい外見にケレン味のある策略を得意とする隊長である。地球側の誘導ミサイル「無人スナイパー」、「ピラニア―(改良型スナイパー)」を鹵獲してガルベストンが製造した「スペースインパルス」の運用を任されており、11番惑星で地球艦隊を迎え撃つ。兵士の報告で地球艦隊の3分の1を撃破したと報告したガレイだったが、すでにガルベストンは熟練した兵士の多くを過去の戦いで失っており、その戦果は事実誤認又は虚報の可能性が高い。ダイラガーにバトルアタッカー・ゴーヴァを撃破され、基地を放棄して逃走する。本土に逃げ帰ったのか、そのまま外宇宙に逃走を図ったのか、その後は不明である。


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バッキ

 王宮で配膳係を務めるバッキは「コルセール帝を倒すために立ち上がった市民のグループ」のリーダーである。王宮の配膳係といういわば体制派そのもののような彼がなぜレジスタンスに加わったのか、その真意は不明である。職場を通じて王宮の警護隊長だったサークのことを知っていたが、サークは彼のことを知らなかった。レジスタンスの中心人物であり、秘密であるはずの第11惑星での敗戦の情報もつかむなど、その組織力、統率力は侮れない。彼の推挙でサークがレジスタンスのリーダーに収まった後はその片腕としてテレス救出に活躍する。このバッキといいサークといい、ガルベストン王宮は軍部とは折り合いが悪いのか、皇帝自身が主戦派であるにも関わらず、反抗者が多いようである。

今週のバトルアタッカー(50秒)

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武器:氷柱

 ガレイ隊のバトルアタッカー「ゴーヴァ」は本当にアタッカーか否か疑わしい機体である。まず、この機体はビームなど飛び道具を一切持っておらず、また、ソードなど格闘戦用の装備もない。アタッカーやバトルマシンと共通する点は二足歩行くらいで、運動性も特に傑出しているとは言いがたい機体である。頑強な装甲と特殊機能である氷柱構成機能はおそらく氷結した11番惑星の自然に合わせて開発されたものであり、基地建設用の作業マシンをアタッカーに仕立てたものと見ることもできる。もちろんこんな機体でダイラガーに歯が立つはずもなく、氷柱による棍棒攻撃はラガーマシンをそれなりに苦しめたが、合体後は空中戦で敗れ、スピンカッターは突き刺され、最後はラガーソードに袈裟斬りにされて氷床から転落して爆発し、ラガーソードの刀の錆となった。

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