◇MUDDY WALKERS
聖書を読もう! ルカによる福音書3章 →全文
「イエス、ヨハネよりバプテスマを受ける」(3章15節〜38節)
さて、厳しい言葉をもって人々に悔い改めを迫るヨハネを目の当たりにして、民衆たちは、このヨハネこそ救世主(メシア)ではなかろうか、と考えるようになっていましたが、ヨハネはそれを否定して、このように言いました。
「わたしよりも力のある方が、おいでになる。わたしには、そのくつのひもを解く値うちもない。この方は、聖霊と火によっておまえたちにバプテスマを授けるであろう。また、箕を手に持って打ち場の麦をふるいわけ、麦は倉におさめ、からは消えない火で焼き捨てるであろう」(ルカ3:16〜17)
「わたしには、そのくつのひもを解く値うちもない」とは強烈なまでの謙遜ですね。それほど、彼らが待望している救世主とはすごい方らしいのです。バプテスマのヨハネは、救世主が来たらどんなことをするかを語っています。一つは「聖霊と火によってバプテスマを授ける」こと。もう一つは「麦のふるいわけ」です。
どちらも分かりにくい話ですが、二つ目の「麦をふるいわけて…」という話から、どんなことをイメージされるでしょうか。これは譬えによる表現です。麦をふるいわけて、麦は倉におさめ、からは火をつけて焼き捨てる。「天国」と「地獄」かもしれません。
実は、救い主は二回にわたってこの世に降臨することになっているんです。一つ目の「聖霊と火によってバプテスマを授ける」というのが、イエスが一回目に降誕したときにされたこと、そして二つ目の「麦のふるいわけ」は、この世の終わりにイエスが再び来られる(再臨)ときに行われることです。二つ目の預言は、2010年の今も成就していない、ということになります。
さて、そんなヨハネですが、過激なことを言い過ぎたために、後日、領主ヘロデに捕らえられて牢獄に入れられてしまいます。その経緯について、福音記者のルカは 「領主へロデは、兄弟の妻ヘロデヤのことで、また自分がしたあらゆる悪事について、ヨハネから非難されていたので、」(ルカ3:19)と記述するにとどめていますが、別の福音書、マタイの福音書14節にもう少し詳しい説明があります。ヘロデは、兄の奥さんヘロデアを好きになり、妻と離婚して彼女と結婚したのです。ところがヘロデヤとヘロデは、おじとめい、という血縁関係があり、これは律法(旧約聖書で定められた神の戒律)では近親婚にあたるため、律法違反とされていました。ヨハネは、そのことを厳しく非難したというわけです。そのために捕らえられ、獄につながれることになりました。
そんな熱血な正義感の男、ヨハネですが、彼は、来るべきメシアであるイエスの「先駆者」としての役割を担っているんだなあと思います。上記のように、権力者の罪を非難したために獄につながれる(そして、首を切られて殺されます)というヨハネのたどった運命は、イエスがこれから歩む道、パリサイ人を非難して恨みをかい、十字架刑に処されるという将来を予見させるものなんですね。
さて、後日ペロデに捕らえられてしまうヨハネですが、その前に、イエスが彼の所にやって来ます。そして、ヨハネからバプテスマ(洗礼)を受けました。バプテスマとは、罪を悔い改めたしるしとして受ける儀式で、水の中に全身を浸してきよめるというものです。ここには書かれていませんが、マタイの福音書によれば、バプテスマを受けようとやって来たイエスを、ヨハネは思いとどまらせようとします。「わたしのほうこそ、あなたからバプテスマを受けるはずですのに」というのです。自分のことを「そのくつのひもを解くねうちもない」と言うほどの方なのに、そんな人に、「あなたは悔い改めました」と認める立場になるなんて、とんでもないというのです。しかしイエスは「正しいことを成就するのは、われわれにふさわしいことである」と言い、そうするようにと話されました。それで、ヨハネはイエスにバプテスマを授けらせます。すると、不思議なことが起こります。
「さて、民衆がみなバプテスマを受けたとき、イエスもバプテスマを受けて祈っておられると、天が開けて、聖霊がはとのような姿をとってイエスの上に下り、そして天から声がした、『あなたはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である』。」(ルカ3:21〜22)
▼ヨルダン川でのバプテスマの様子
イエスは母マリヤから生まれましたが、人間の父ではなく、天の父の子供だったんですね。そして、天の父なる神の「心にかなう」者である、ということです。
その後、イエスは30歳になって、宣教活動をスタートします。洗礼を受けてから、およそ1年後のことです。「人々の考えによれば、ヨセフの子であった」(ルカ3:23)とありますが、先に見たように、ヨセフによって身籠った子供ではありませんでした。その後に、ヨセフからさかのぼった家系が書かれています。有名なのは「ダビデ」(イスラエル王国2代目の王)、ヤコブ、イサク、アブラハム(3代続くイスラエル民族の祖)、ノア(ノアの箱舟の人)、そして最初の人類、アダムですね。「そして神にいたる」とあるのが印象的です。
(つづく)
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