◇MUDDY WALKERS
聖書を読もう! ルカによる福音書2章 →全文
「マリヤが心に留めたこと、2つ」
最初に「そのころ、全世界の人口調査をせよ、という勅令が、皇帝アウグストから出た」(2:1)とあります。この皇帝とは、ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスのことです。
当時イスラエルは、ローマ帝国の属州になっていました。イエスが誕生した頃、この国を支配していたのはヘロデ王でしたが、しばらくして死亡し、王国は王の息子たち4人によって分割統治されることになります。そんな中でユダヤ人たちは、ローマ帝国の支配から脱してイスラエルに統一をもたらす「救世主」を待望していました。旧約聖書の預言(神から預言者を通してイスラエルの民に与えられた言葉)によれば、その救世主は、イスラエル王国二代目の王、ダビデ(在位は紀元前1010年〜970年ごろ)の子孫から出るとされていました。また、「救世主」が現れる前に、預言者エリヤが世に現れる、ともされていました。
さて、人口調査では皆自分の家系の出身地で登録しなければならなかったので、ヨセフとマリヤは、ガリラヤの町ナザレから、ユダヤ地方のベツレヘムという町へ向かいました。ヨセフはダビデの子孫だったので、ダビデの生誕地であるベツレヘムに行かなければならなかったのです。ところが滞在中に、身重だったマリヤは男の子を出産します。宿屋が満室だったので、彼らは馬小屋に宿泊していました。そこで生まれた子は布にくるんで飼葉おけに寝かせられました。これは、旧約聖書のミカ書5章2節の預言の成就でした。そこには、このように記されています。
しかしベツレヘム・エフレタよ、
あなたはユダの氏族のうちで小さい者だが、
イスラエルを治める者があなたのうちから
わたしのために出る。
その出るのは昔から、いにしえの日からである。(ミカ5:2)
▼クリスマスに飾られる、イエスの降誕の様子を再現した人形。羊飼いと東方の三博士がイエスを拝みにやって来た様子をモチーフにしている。降誕劇でもおなじみの場面だが、「ルカによる福音書」では羊飼いの来訪だけが記されている。実は東方の三博士が訪れたのは、イエスの誕生から約2年後のことである。
その頃、名もない羊飼いたちの前に天使が現われ、あたりが主の栄光に照らされる、という驚くべき体験をします。彼らは天使が言ったことを信じ、生まれたばかりの「救い主」を一目見ようとベツレヘムに出かけます。普通の人から見れば、ただの赤ん坊なので、きっとまわりの人は「何事か」と不思議に思ったことでしょう。しかし、マリヤはこのことを心に留めて、思いめぐらせていました。
羊飼いというのは、当時最も貧しい層に属する人たちでした。救い主の降誕が、王や当時の宗教エリートパリサイ人ではなく、一番貧しく学のない人に最初に告げ知らされた、というところに、神様のされることの不思議さを感じます。このような人でなければ「さあ、行ってその出来事を見て来よう」と素直に受け取ることが出来なかったのかもしれません。
さて、マリアはどんなことを思いめぐらせていたのでしょうか。彼女は天使から「おめでとう、あなたは聖霊によって身籠りました」と告げられる、という経験をしています。そのことを思い起こしたかもしれません。羊飼いたちの話と、自分が天使から告げられた言葉の間に一致を見いだして、そのことを心に留めていたのでしょうね。
二つ目は、12歳のイエスを連れて、過越の祭りを祝うためエルサレムに上京したときの話を通して、です。イエスは両親からはぐれてしまい、両親が帰路についたあとも3日間、エルサレムに留まっていました。3日後に発見されたとき、イエスは宮の中で教師の真ん中に座って、話を聞いたり質問したりしいていました。人々は、イエスの賢さに驚嘆しました。
エルサレムの神殿は、イエスにとって特別な場所だったようです。その意味を悟れなかった両親ですが、母マリヤは 「これらのことを、みな心に留めていた(1:51)」とあります。
マリヤがそうであったように、聖書を読んでいると、不思議なことや、すぐにはどういうことかわからないことがいろいろあります。そういうことを「心に留めて」おくこと、また「思いめぐらす」なら、やがてその意味がわかるときが来る。そんな風に思いつつ、読み進めていくとよいのではないでしょうか。
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