▼聖書の舞台、イスラエルのガリラヤ湖◇MUDDY WALKERS
聖書を読もう！ ルカによる福音書１章 →全文
「どうしてそんなことが？」
福音書とは、イエスの生涯や教えについて伝え広めるためにまとめられたもので、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネという４人の弟子が、それぞれ４つの福音書を著しました。「ルカによる福音書」は、冒頭で著者のルカが記しているように、テオピロというローマの高官にルカが伝聞したことと信仰について知ってもらうために書かれたものです。初代教会の使徒と弟子たちの多くはユダヤ人で、ユダヤ人の文化、文脈を土台に書かれていますが、ルカが読み手としてあげているテオピロ閣下はローマ人、つまり異邦人なので、同様に異邦人である私たちにも、比較的分かりやすく物語のように書かれているのが特徴です。またルカが書いているように、４つの福音書の中で、起こったことやエピソードがもっとも順序正しく書かれています。
▼聖書の舞台、イスラエルのガリラヤ湖
ルカ１章では、信じられないような２つの出来事が語られています。一つ目は、年老いた不妊の女、エリザベツが子を宿したこと。この子どもはのちのヨハネ（バプテスマのヨハネ）です。夫のザカリヤの前に天使があらわれて、生まれてくる子どもがどういう人物になるのかを語っています。その子は
・喜びと楽しみをもたらす
・多くの人々が誕生を喜ぶ
・主の前に大いなる者となる
・ぶどう酒や強い酒はいっさい飲まない
・母の胎内にいる時からすでに聖霊に満たされている
・イスラエルの人々を、主なる神に立ち返らせる
などなど、ものすごい人物になるであろうと、天使はザカリヤに語っています。１７節「彼はエリヤの霊と力をもって、みまえに先立って行き、父の心を子に向けさせ」というのは、旧約聖書の一番最後のマラキ書４：５〜６にある預言でした。
二つ目はその６ヶ月後、処女マリヤが聖霊によって身ごもったという知らせです。「受胎告知」として有名なエピソードですね。ちなみに当時のユダヤでは、成人年齢は１３歳、女性はそれぐらいに婚約して、１年の婚約期間を経て結婚するならわしになっていました。マリヤはヨセフと婚約中で、このとき１３歳ぐらいではなかったかと考えられています。
生まれてくる子どもについて、天使は
・その子の名前はイエス
・彼は大いなる者となり、いと高き者の子ととなえられる
・神から「ダビデの王座」を与えられる
・永遠に「ヤコブのいえ」を支配する
と告げます。これは、旧約聖書のイザヤ書７：１４にある預言です。
旧約聖書には、このように救世主の登場の預言がありますが、この信じられないこと２つは、これからいよいよ、預言が成就するときがきた、と知らせるものだったんだなー、ということです。
天使によって、信じられないことを告げられた祭司ザカリヤとマリヤ。それぞれの反応が、面白いです。
「どうしてそんな事が」のあとの言葉が、微妙に違います。
ザカリヤは「どうして、そんな事が、わたしにわかるでしょうか。」と言いました。すると、「時がくれば成就する主の言葉を信じなかった」といって、口をきけなくされてしまいます。ザカリヤには、有無を言わさず厳しいですね。きっと「わたしにわかるでしょうか」というのが、まずかったのでしょう。彼は祭司なので、聖書にある預言の言葉を知っているはず。だけどザカリヤは、言われてすぐにそうとはわからなかった、つまり、それが本当に起こるとは期待していなかった、ということなのかもしれません。
マリヤは「どうして、そんな事があり得ましょうか。」と言いました。それに対して、天使はこれから起こることと理由を答えてマリヤの反応を待っています（理由といっても「神にはなんでもできないことはありません」という、ものすごい理由ですが）。きっとマリヤは、ザカリヤとちがって聖書の知識も十分でない女性なので、そのへん優しく対応したんだろうな、と思いました。
それに対するマリヤの答えは「お言葉どおりに、この身になりますように」でした。
結婚していない女性が身ごもるって、大変なことです。当時は、婚前、婚外の性交渉は「姦淫の罪」として石打ちの刑、そして村八分。さらに婚約解消でした。マリヤもそういうことは分かっていたはず。それでも、「お言葉どおりになるように」と信じて受け入れました。ザアカイと違うところです。聖書を知っていたけれど、それが本当に起こるとは思っていなかったザアカイとは反対に、マリヤは信じて、「神のされることは良いこと」と素直に受け取ったのです。
この二人の反応から、聖書の言葉や知識を知ることも大事だけれども、それだけではなくて、そこに期待を持つこと、それを信じること、そのことがもっと大事なんだな、ということが語られています。
MUDDY WALKERS◇
