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機動戦士Zガンダム第38話「レコアの気配」遠藤明吾

あらすじ
 かつてのホワイトベースクルーの助けを借り、ダカールでの演説を成功させたシャアはカミーユ共々宇宙に戻る。ジェリドの襲撃を振り切り、宇宙に出たシャアとカミーユだが、宇宙では戦艦アーガマがヤザンたちの襲撃を受けていた。メガランチャーを構えるクワトロに死んだはずのレコアの気配が蘇る。

Aパート:ジェリドのアウドムラ攻撃、シャアの説教
Bパート:レコア登場、クワトロメガランチャー外す

シャアが語るお先真っ暗な未来宇宙史
 「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀、、」、この毒にも薬にもならない罪のないナレーションがその後30年間、ガンダムUCに至るまで作品を縛る呪いの言葉になろうとはファーストガンダムを制作したスタッフは誰も思っていなかっただろうが、こういった過去の盲腸は70年代を起源に持つ作品ではたいがい持っており、これをどう料理するかがクリエイターの腕の見せ所である。しかし、Zの監督の富野氏という人物、どうもその後を見るに自縄自縛、思考のタコツボに陥りがちな人物でもあったようである。視聴者がほとんど注意を払わなかったこのお題目は、実は制作サイドではかなりマジに(そして見当ハズレに)議論されていた。

 それが分かるのが地球を離脱したシャアがカミーユに説教する場面、そこでZまでの人類史というのが地球連邦による強制移民の歴史だったことが語られる。支配階層は地球に残り、宇宙に追いやられた人々による認識力の拡大がニュータイプだというのだが、ニュータイプは別に良いだろう、注目すべきはこの世界の地球連邦が階層社会だという描写である。実はファーストにも片鱗があった。

カオルのひとこと:(実は予定外だった)演説を終えたシャアはカミーユとともにシャトルで宇宙へ。しぶといジェリドが追って来てアムロと戦闘になります。シャアとカミーユはシャトルの中で、宇宙に上がった人類の歴史について語り合います。宇宙に行ったのはエリートに地球から追い出された人々という暗〜いお話しです。にしても数話前にカミーユに殴られておきながら堂々のお説教、話す方も聞く方も、ええ根性してるわ〜。

前作を乗り越える枠組みを作るこどが出来なかったガンダム
 スタートレックの新シリーズでは宇宙の諸エイリアンを統合し、貨幣経済を放逐した理想社会である「惑星連邦(共産主義ではない)」の概念を打ち出した。資本主義や社会主義を超えたこれは人類の新たなステップ、恒星間国家にふさわしい枠組みであった。だからこのシリーズはその後30年近く続き、その世界観は今でも古びていない。これは70年代的冒険譚である古い作品には必要なかったが、新しい作品には必要であった。宇宙人を見つけ、手当たり次第に光子魚雷を撃ち込むような作品では続かなかったのである。
 基本的に第二次世界大戦の独ソ戦の焼き直しであるガンダムは後継作で前作を乗り越える枠組みを作ることができなかった。彼らが依拠したのは古きを乗り越えて新しい概念を創りだす創造ではなく、古い作品の重箱の隅を啄くこととであり、頼るべきはヲタクの議論であった。ニュータイプの概念も七〇年代に流行していたESP研究だが、その辺も見直されることはなく、専ら超自然の力でレコアは彼女を狙うシャアのメガランチャーの気配を感知するのであった。

カオルのひとこと:一方カミーユとクワトロを欠いたアーガマはヤザン隊の攻撃を受けてピンチに陥っています。ここでファと二人の子供の妙にほのぼの?としたエピソードが入ります。メタスのパイロットをはずれたファは出撃を希望するもブライトは許可せず。そのときクムとシンタがメタスに乗り込んで動かそうとし、一騒動になるのです。これでファは出撃を許可されるのですが、「子供を使った狂言か??」と何だか殺伐とした気分に。

 棄民史観といい、エスパーまがいのニュータイプといい、古い作品の古い概念にいつまでも固執する制作者の態度に呆れ、絶望を感じることはあっても、そこに新しい物語としての希望や可能性を見出すことはできない。そして、その行き詰まり感がその後の作劇をさらに支離滅裂なものにしていく。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと:アーガマのピンチを救おうとZと百式で戦場にかけつけるカミーユとクワトロ、クワトロは当たらないことでは定評のあるメガランチャー砲で敵の戦艦アレキサンドリアを狙います。しかし、その戦艦の艦橋には死んだはずのレコアがいたのでした。ティターンズの制服を身に着けたレコア、そのレコアの気配を感じたカミーユ、レコアも狙われている気配を感じて艦長に艦の後退を指示し、またしてもクワトロのメガランチャー攻撃は当たらずじまい。シャアの説教によると、ニュータイプだけが「希望」だそうですが、はてさてこのお話しに希望があるのか? アウムドラの艦長ハヤトが、息子のカツに伝えることを聞かれて「生きていてくれればそれでいい」と答えますが、その希望を叶えないのがこのお話しです。

評点
★★ なんだかわけがわからない。(小林)
★★ シャトル発進前後の攻防も一体何回目なのか、同じパターンの繰り返し。(飛田)


関連レビュー「ZZ第38話 鉄壁、ジャムル・フィン」脚本:鈴木裕美子

あらすじ
 ビーチャを艦長に出港した戦艦ネェル・アーガマはハマーンの本拠サイド3を視界に捉える。補給中のNアーガマを新鋭機ジャルム・フィンの部隊と元ジオンのディアス隊が襲う。戦いの中、ジュドーは死んだはずのリィナの思念を感じる。

Aパート:ネェル・アーガマ航行、ジャムル・フィン登場
Bパート:シュツルム・ディアス隊登場、ジャルム隊対ジュドー

コメント
 いかにもやられ役の三機の新型機ジャムル・フィンの部隊が登場、この三枚目部隊は後に福井のUCでトライスター軍団として復活する。そこにネェル・アーガマの上方パースが登場し、ああ、この戦艦(超合金)はこういう風にロボット載せるんだなという遊び方例が紹介される。確かにそういう使い方なら納得できるカッコ悪さである。
 「ニュータイプの諸君ならハマーンをやっつけられるだろー」、ブライトの脅迫で戦場に赴くジュドーに何か違うと思いつつ、愚蓮集団ネェル・アーガマの戦いは続く。ここまでがAパートで収まっているのは脚本の腕の良さだが、やっぱ根本的に間違っているような。ジャムル団は「ジャムルの3D」と呼ばれているらしい。やはりトライスターか。
 マシュマーの同盟軍として登場するシュツルム・ディアス隊は元ジオンの部隊で昔懐かしいやられメカ「リック・ディアス」で登場する。さて、今日も手が飛ぶ足が飛ぶ、旧デザイナーに対する制作陣のイヤガラセ節は今日も炸裂するのだろうか。どうも前よりさらに脆くなり、手が飛ぶ場面もなく撃墜されているようである。もはや過去の「ガンダム以上の高性能機」の面影は皆無でハイザックのように撃墜されていく。
 一応最終決戦に向け、ジュドーもニュータイプとして覚醒しつつあるので、戦闘の最中ジュドーは妹リィナの思念や敵の意思を感じるが、これはこういう設定と分かっているものの、その設定自体に文句がある。
 話の組み立ては文句ないのだが、やはりなにか無理があるというか、ここでこれを書いても仕方ないが、こういう割り切れない話は今後も続いていく。 (レビュー:小林昭人)

評点
★★★ 組み立ては良い、しかし、筋が悪い。


関連レビュー「ガンダムAGE第 38話 逃亡者キオ」脚本:加藤陽一

あらすじ
 イゼルカントから、ガンダムAGEの生体認識デバイスの解析の協力依頼を受けたキオは、薬と引き換えに協力することに。翌日手に入れた薬を持ってキオはルーの家を訪れ、兄ディーンからも認められるようになる。そして兄の許しを得て、二人は外出するのだった。一方アセムはセカンドムーンに侵入し、キオを救出する。去り際にルーのもとを再訪れたキオは、彼女が死んだことを知る。

Aパート:イゼルカントとの取引、ルーと外出するキオ
Bパート:アセムによるキオ救出、ルーの死

コメント
 風土病に苦しみ、長く生きる希望もなく人が死んで行くヴェイガンの世界の現実を目の当たりにしたキオ。町で出会った少女ルーに心奪われた彼は、イゼルカントの求めに応じて、風土病の進行を遅くする薬と引き換えに、ガンダムAGE解析に協力する。「恋は盲目」というわけだが、そのツケは、多分次の話に回ってくるのであろう。
 要約すると、自分たちは劣悪な環境で風土病で命の危険にさらされている。それなのに地球は環境に恵まれ、連邦市民は自分たちの苦しみを気にかけることなく、のほほんと気楽に暮らしている。悔しい。こうなったら地球を奪ってしまえ、というのがヴェイガンの主張らしい。
 これまでの人類の歴史を振り返ってみると、確かに移民が移住先の劣悪な環境に悩まされ、苦しみながら開拓していくということはこれまでにもあった。しかし、その環境が劣悪だからといって、移住元の本国に戦争を仕掛けるなど、前代未聞ではないだろうか。人類は、ガンダムの制作者が思っているよりずっと前向きである。連邦を圧倒するほどの技術力を持っていたなら、戦争を仕掛けるよりもコロニー環境をより快適にし、産業を興し、風土病を克服する方策を探ってこの環境に適応して生きてゆく道を切り開く方を選ぶであろう。
 ネクラなヴェイガンの志向に触れて、キオはどう変わっていくのか、その悲しみは、自分自身のマイナス思考が生み出しているということにいい加減気付こうよ、制作者のみなさん。

評点
★★ ルーが死ぬのはお約束。作者のネガディブな世界観が、いやになる。


その他のZレビュー
「機動戦士Zガンダム回顧録」 Z第38話レビュー
「パラレルユニヴァース」 Z第38話レビュー


関連リンク
An another tale of Z 第49話紹介
An another tale of Z 第49話「合体戦艦エイジャックス」(本編)
An another tale of Z 第50話紹介
An another tale of Z 第50話「ダイクンの娘」(本編)

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