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機動戦士Zガンダム第39話「湖畔」鈴木裕美子

あらすじ
 アーガマは観光コロニー13バンチに寄港する。一方ティターンズはコロニーレーザー砲の建造を進めており、強化人間ロザミアはカミーユと接触する。ミネバはハマーンと共に同じコロニーで休養しており、パトロール中の百式をハイザックが襲う。

Aパート:アーガマ13バンチ入港、ロザミィ出現
Bパート:ミネバ出現、百式ザクを倒す

第3クールの最後でこの話?
 また冒頭から悪の作戦会議、前作での大要塞を3つも一箇所に集めるのは却って白ける。で、いかにもティターンズの餌食になりそうな繁栄しているコロニー13バンチが登場で、さっそくロザミア(ティターンズの強化人間)と戦艦アーガマのいつもの面子が出会う。どうも13バンチは保養コロニーらしい。
 で、この辺で説明しておくと、39話というのは実は大事な話である。第3クールの最後で、ファーストで言えば実質的にはザンジバル追撃あたりだが、それでも話の全容というものは、この辺りでは視聴者の目に既に明らかになっていなければいけないはずである。
 が、いろいろと問題の多いこの作品ではそんな風には話は進まず、平和なコロニーで戯れる主人公らの姿が描かれる。それだけだったら「たまにはこういうのも良い」なのだが、微笑ましい気分になれないのは、カミーユらが牛さん馬さんと戯れてボート遊びに興じているその間に、近くで百式がティターンズの機体相手に同じコロニーを壊して歩いていることである。それにしてもコロニーの壁薄い。

カオルのひとこと:サイド2の13バンチコロニーで補給を受けるアーガマ。その間休養となったカミーユらはこの保養地コロニーで観光を楽しみます。私服姿で意気揚々のご一行は馬車に揺られてお楽しみですが、そこへカミーユのことを「お兄ちゃん」と呼んでなれなれしく寄ってくるナゾの美女が。バスクが送り込んだ強化人間ロザミアです。いわゆるフォウの後釜の、これから不幸になるキャラです。

輪郭のないキャラクターたちの白々しいドラマ
「何で今ごろこんな話やってんの」、視聴者のしらけた気分をよそに話は進み、カミーユらはミネバと接触する。その接触というのも「会っても会わなくても同じ」くらいの簡単なもので、一話から見ていると、この作品の制作者は対人恐怖症かと思えるほど人と人との接触の仕方、話し方がぎこちなく、そして異様に淡白である。が、ファーストガンダムはそんな作品ではなかった。偉そうに「現実認知」とか、人間の業を描き切るその前に、人間そのものの描写に失敗しているのがこのゼータなのである。どのキャラクターにも輪郭がなく、制作者の気分次第でいかようにも変容しうる。それはとても見ていてフラストレーションが溜まる。

カオルのひとこと:一方コロニーの外周をパトロール中のクワトロ大尉は、張り込み中のティターンズのハイザックと戦闘状態に。やむなく応戦するものの、クワトロの配慮をよそに相手は容赦なく攻撃してコロニーの壁に穴を開けまくります。しかし、名もないキャラのハイザックごときに翻弄されるクワトロさん、これでいいんでしょうか? あまり、見ていて戦いの意味がよくわかりません。

 強いて言うならメインキャラたちの私服姿が見られたのが取り柄と言える39話だが、第3クールの最後にしては特にインパクトも無い話である。この種ドラマのお約束であるまなじりを決しての大決戦はおよそ起きる気配もないが、それはそういう作劇というよりは、ことこの話に至るまで、あまりにも無計画、無軌道にダラダラとルーティンワークで作劇をしてきたことのツケと言うべきで、実際、Zガンダムの最後の戦いは2話くらいでお手軽に終わってしまうし、それまで表現されて来たメインキャラたちの生きざまも、その2話で総括されてしまうほどに薄く軽いものなのである。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと:ロザミアに「お兄ちゃん!」と迫られて困惑するカミーユ。湖でボート遊びを楽しむところに、なんとミネバとハマーンが現われます。コロニーの保養地の湖畔、羽ばたく白鳥、「アムロがいるような感覚」とつぶやくシャア。ファーストガンダムで、サイド6の湖畔の別荘でアムロがララァと出会うシーンをダブらせようとする意図が透けてみえますが、これで運命の出会いを演出したつもりなのでしょうか。あの名場面とは比べ物にならないご都合主義な展開に唖然としますが、要するに、次にカミーユのターゲットになる不幸な女たちはこの人たちですよー、というイントロダクションみたいなお話し?としか言いようがありません。ストーリーは終盤にさしかかっているのに、今もってわけの分からない話が続くことにゲンナリします。

評点
 この場所でこの話は意味不明。(小林)
 また変な人が出てきました。よく分からない話。(飛田)


関連レビュー「ZZ第39話 サラサ再臨」脚本:鎌田秀美

あらすじ
 サイド3に向かうネェル・アーガマと追うマシュマーのエンドラII、航行中のネェル・アーガマは攻撃を受ける民間船2隻を救助する。しかし、そこにはムーン教団のサラサ姉妹と変装したハマーンが乗っていた。

Aパート:サイド3に接近、ムーン船救助
Bパート:ガ・ゾウム登場、ハマーン対サラサ

コメント
 ジオンの本拠地サイド3、実はファーストでも戦場にならなかったし、ゼータでも出なかった場所だがダブルゼータではたびたび登場している。ある意味感慨深い光景だが、風俗とかコロニーの描写があまりなかったのは残念である。例えばあのものすごい形の宮殿はどうなっているのかとか、知りたい話はあまたあるのだが(北爪宏幸の作品では博物館として登場している)。
 14話で登場したムーン姉妹が再登場するのもこの回で、やはり一発キャラではなく、ただでさえ美形揃いのダブルゼータ美女団にさらに二人が加わる。で、新型機ガ・ゾウムとの小戦闘の後、戦艦ネェル・アーガマはサイド3の中立コロニー「タイガーバウム」に向かう。
 前回、前々回は技術的には優れていたが、根本的にプロットが狂っているので、さすがにこれはまずいと思ったのか、今回と次回は女首領ハマーン自身が戦艦に潜入という意外性のある話である。ラサラとモンドの恋愛模様やハマーンとサラサの超能力者対決も見物。
 この作品を書いている遠藤氏と鈴木氏、前作の時には大学を出たばかりの若い脚本家であった。それから2年余、その成長は著しい。 (レビュー:小林昭人)

評点
★★★ 女性陣の顔ぶれと駆け引きが眩しい話。


関連レビュー「ガンダムAGE第 39話 新世界の扉」脚本:木村暢

あらすじ
 イゼルカントは、ガンダムを模して造られた専用機ガンダムレギルスに搭乗し、アセムとキオの前に立ちはだかる。さらにヴェイガンの援軍に包囲されるが、そこにアセムの仲間がかけつけ、戦闘になる。イゼルカントはキオに一対一の戦いを挑み、その中で「プロジェクト・エデン」の計画内容について話す。そして、彼についてくるよう説得するのだが…。

Aパート:ガンダムレギルス登場、プロジェクトエデンの内容
Bパート:キオ対イゼルカント、宇宙海賊の援護

コメント
 いつも思うのだが、ストーリーの内容と各話タイトルがズレている。新世界の扉、確かにそうだが、タイトルから受けるポジティブな印象は、イゼルカントの語る新世界にはどこにもない。今回は、「プロジェクト・エデン」という理想郷をつくる計画について、イゼルカントがキオに打ち明け、キオがそれを拒絶して逃げる、という話である。戦闘シーンは確かにあるが、これはイゼルカントのキオへの「布教タイム」で、聞いていてうんざりする話、退屈な戦闘、で見るのが苦痛な一話であった。
 イゼルカントの語る「プロジェクト・エデン」とは、殺し合いばかりしている地球の人類の中から、平和で穏健に生きている人だけを選び、あとは全部殺せばエデンの園のような平和な理想郷ができるのだー!という計画である。なんだか、幸福の科学かオウム真理教の布教アニメ(といっても現物は観た事ないけど)を観せられているかのような気持ちになった。エデンの園を地上に再び、という教義は統一教会にも似ている。自分の考えは特別だ!と思っている人の考えは、実はよく似たようなものである。
 イゼルカントがキオに執着するのは、彼が死んだ息子に良く似ているからだが、終いには、死んだ息子の生まれ変わりと信じ切っている節さえ見受けられた。認知症が進んでいるのかもしれない。終始迷惑そうなキオの表情に哀れを感じざるを得なかった。

評点
 息子を亡くした恨みで、人類を滅ぼす決意をするイゼルカント。宗教じみたトーンが気色悪い。


その他のZレビュー
「機動戦士Zガンダム回顧録」 Z第39話レビュー
「パラレルユニヴァース」 Z第39話レビュー


関連リンク
An another tale of Z 第51話紹介
An another tale of Z 第51話「女帝の帰還」(本編)
An another tale of Z 第52話紹介
An another tale of Z 第52話「湖畔」(本編)

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