MUDDY WALKERS 

An another tale of Z

 Zガンダム 比較レビュー →ZZレビュー →ガンダムAGEレビュー
 →ヤマト2199レビューGのレコンギスタレビュー鉄血のオルフェンズレビュー

機動戦士Zガンダム第4話「エマの脱走」 脚本:丸尾みほ

あらすじ
 目前で母親のカプセルをジェリドに狙撃され錯乱するカミーユ、そこにライラ率いるガリバルディ隊が乱入し、エマに捕縛されたカミーユはアレキサンドリアに連行される。一方、ガンダムを回収したバスク大佐はエマに「彼女のやり方で」エウーゴの新鋭機リック・ディアスを奪うよう命じた。

Aパート: カミーユ錯乱、ティターンズに連行
Bパート: エマの脱走

 3話でカミーユの母が死んで重要な何かが切れたような感じを覚えたが、切れたのはどうも筆者の感覚ばかりでなく、「本格的なSFドラマをやろう」というスタッフの心のタガであったように思える。以降は当時のSFファンが夜を徹して議論した「SF」性は早々に脇に追いやられ、見せ場重視の演出に変化したことが感じられる。そのせいか話の組み立てがひどく単調で、ひどく直線的である。

リアリティを無視して暴走する脚本
 「停戦信号の見落としは家族共々死刑」、クワトロの台詞であるが、「そんなバカな」というのが普通の感想だろうし、同様のツッコミはティターンズ・エウーゴ双方山ほどできるものである。まじめな人間であるほど、こういった見え透いた「演出」には嫌気が差すに違いなく、4話にして劣化すら感じる作劇である。脚本が練られていないことは登場人物個々のアクション・リアクションの不自然さに見て取れる。
 カミーユに妻の死を知らされるフランクリン大尉については、前話まで一緒にいた妻が突然いなくなれば不審を感じて良さそうなものだが、彼は真相を知った後もむしろ殺害したバスクに感謝するような素振りさえ見せている。愛人や倦怠期以前の問題として、これは立派な殺人なのだが、それに対する怒りは彼には見られない。

カオルのひとこと:前半は母親の死に錯乱して、母のカプセルを撃破したジェリドとモビルスーツで乱闘するカミーユの話。結局彼はエマとクワトロに取り押さえられ3機のガンダムもろともグリーンノアへ。いやな後味を残して話は振り出しに戻り、見る者には脚本に翻弄された徒労感だけが募ります。

 後半のエマが敵陣から最新鋭機を奪うという話には、同様の話にクリント・イーストウッド主演の「ファイアフォックス」があるが、ファイアフォックスの爪の垢でも煎じて飲ませたいような何のサスペンスも緊迫感もない脱走劇である。バスクがエマに手並みを見せろと迫る場面は伏線かと思ったが、そんなこともなく、エマは簡単にティターンズの戦艦を脱走してエウーゴに身を投じ、バスクは地団駄踏んで悔しがる。
 なお、「汚名挽回というのは実績ある者が言う言葉だ」というバスクの言葉に、エリート集団ティターンズが実は未熟者の集団だということが示唆されている。そんな中で一人正論を言うエマ中尉はバスクにとってもうっとおしい存在だったに違いないから、筆者はこれはバスクによるエマ追い出し計画かと思ったが、そんなこともなかったようだ。

カオルのひとこと:前半が暗〜い錯乱話だっただけに、脱走劇というだけで急に面白くなったような気がします。よく考えると、1話からここに繋げても何の問題もないような。エマは敵機奪取の作戦を立てていたようですが、それならもう少し視聴者を「騙して」彼女の裏切りに驚かせて欲しかったです。

何でも説明できる魔法の言葉
「ニュータイプ」

 ブレックス以外のアーガマ幹部(クワトロ、ヘンケン)がティターンズに戻ったエマがいずれガンダムを連れて戻ってくると妙に確信していたのは見ていても変だったが、その通りにエマがガンダム3機を連れて戻ってきた時には思わず笑いが込み上げた。破綻した演出を全部ニュータイプで説明できるなら脚本家なんか要らないに違いない。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと:筋書き通りの展開に拍車をかけるのが、エウーゴのクワトロやヘンケンが、エマのことを最初からエウーゴに寝返るものと「読んで」いたこと。ヘンケンの「また会いたい」と下心みえみえの発言には苦笑するしかありません。組織を裏切って脱走する、というのはものすごく心理的に負担の大きなドラマだと思うのですが、この世界ではそれが、とっても軽くて簡単なことのように思えてきます。それにしても、ニュータイプって何なんでしょうか。そのへんの説明は皆無ですが…。

評点
★★ エマ以外に見るべきところなし(小林)
★★ 前半は意味不明、後半はテンポよく何とか持ち直す(飛田)



関連レビュー「ZZ第4話 熱血のマシュマー」脚本:鈴木裕美子

あらすじ
 ハマーンに忠誠を誓うマシュマーはジャンク置き場に潜む戦艦アーガマを捕獲しようと目論む、正々堂々と戦うため、落とし穴や病院を人質に取ってアーガマを脅迫しようとしたゴットンの献策を一蹴したマシュマーだが、すでに彼のモビルスーツ・ガルスJにはアーガマへの再潜入を狙うジュドーが取り付いていた。

Aパート:マシュマーのアーガマ捕獲作戦
Bパート:ジュドー対マシュマー(肉弾戦)、パート2(MS戦)

コメント
 ほぼ全編マシュマーのギャグとハマーンへのおのろけが見られる回。話もこなれており、比較的テンポ良くストーリーが進む。また、最初に「天使」と称したファ・ユイリィとマシュマーとの出会いがラストのオチに繋がっているのもこれまでのゼータには見られなかった手法、ゴットンの策を「卑怯」と一蹴しながら結果的には落とし穴は使うとか、「子供は(戦乱の)犠牲者」とか言いながら逆上するとジュドーを殺そうとするなどマシュマーのエセ騎士ぶりも楽しめる回である。話の組み立て方、カットの切り方など実はゼータの平均よりレベルが高く、また、暗色のモビルスーツを宇宙空間で見やすくするため背景の宇宙を明るくするなどメカ作監の工夫も見られ、ゼータの教訓が生きている。妄想シーンで登場するハマーンも初期のエマやレコアよりずっとキャラの人格、人柄を感じさせる描写である。実はZZの方がZより良作なのではと思わせる回。(レビュー:小林昭人)
評点
★★★ よくまとまっており、これで話がガンダムでなければと思わせる回。3話、4話と合わせて見るとZガンダムは習作レベルの作品だと分かる。


関連レビュー「ガンダムAGE第4 話 白い狼」脚本:木村暢

あらすじ
 ノーラから移動する戦艦ディーバで連邦軍のエース「白き狼」ウルフ・エニアクルが復活する。自分が寝ている(冷凍)間に戦いが終わっていたことを知ったウルフはフリットに挑戦状を叩きつける。デブリでペイント対戦を繰り広げる二人、そこにUE軍団が襲いかかる。

Aパート:ウルフ登場、フリット対ウルフ
Bパート:フリットとウルフのペイント弾対戦、UE巨大戦艦登場

コメント
 まあ、これがゲームのシナリオとかなら可ではないでしょうか。デブリでペイント対戦を始めたあたりから展開はほとんど読んでいたとはいえ、とりあえず見られる話には仕上がっている。しかし、筆者がこれまでレビューしてきた作品とは異なり、この作品の場合、★3つと★4つの壁が厚い。たぶんこの調子で行けばほどんどの回が★3つはクリアできると思うが、★4つはなかなか付けられないのでは。アニメを視聴しているというより、何かドラゴンクエストでもやっているような気分になるのである。
 理由の一つに、こういうSF物を書く上で最低限の常識、設定というものが従来の作品以上に詰められていないことがある。例えば、ガンダムに搭載されているヘッドアップ式の照準装置、描いている人が知らないこととして、本物のこれには見越し射撃のレテクルが出るのである(描いていない)。相対速度や角速度から弾着時の将来位置を弾き出すこれ抜きではライフルとかバルカンといった直射兵器(ガンダムでは標準的な兵器)は射撃すら難しい。あと、未来の戦艦ディーバがどうも地球付近にいるらしいコロニーからコロニーへの移動に7日掛かるというのも遅すぎる。そもそも最初のコロニーがどこにあったのさえ、4話も見ても分からないのだ(そもそも地球が画面に映らない)。これは相当やばい。ちゃんとした設定がないということはちゃんとした宇宙戦争が描けないと同義なのだから。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★  対象年齢向きだが、随所にツメの甘さが目立つ。


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2199第4話 氷原の墓標」
脚本:大野木寛

あらすじ(人類滅亡まで363日・エンケラドゥスで1日)
 ワープと波動砲に成功し、土星付近を航行するヤマトは土星付近から発信されている防衛軍の救難信号を受信する。折しも波動砲の影響でエンジンが壊れ、補修物資であるコスモナイトの採掘と遭難船の救援のため、ヤマトは土星の衛星エンケラドゥスに向かう。

Aパート:ヤマト作戦会議、エンジン故障
Bパート:ガミロイド襲撃、ゆきかぜ発見

コメント
 前作はシンプルな話だったが、混乱した話である。まず、冥王星攻略の是非を議論する古代と島、太陽系脱出の最短航路とは正反対となるために攻略に反対する島だが、会議中に受信した船の救援には賛成する。古代は島と反対の意見だが、なんとも言えず子供っぽい。エンジンが壊れなければ小田原評定のまま、そのまま土星を通過しそうな勢いのヤマトだったが、コスモナイト採掘のためにエンケラドゥスに向かう。なぜこんな複雑な話にしたかというと、コスモナイト採掘場の位置は情報長の新見によって明らかだったからである。そして、採掘は真田に、救援は古代と雪が出動するが、シーガルでの2人の会話はやたら刺々しい。そして、2人はゆきかぜ墜落現場に到着する。
 衛星を原作タイタンではなくエンケラドゥスに変更したのは、その後の天文学の発展により、タイタンが前作ヤマトで描かれたような環境でないことが分かっていたためだが、この話にはそんなことよりもっと深刻な話がある。主人公とヒロインというのは視聴者に対してはいわゆる目で、視聴者は彼らの視点を通して登場人物に感情移入したり、感動したりするのだが、この2199はキャラの性格を変えすぎているのである。キツい言葉で話し、性格も悪い2199の森雪では原作6話のこの話をガイドするには役者不足、いや、不適格といえるだろう。古代が兄の姿を求めて叫んでいる間、この雪は「あ、空に雪が」と、主人公から視線を逸らしているのであるから。前作6話のテイストの一つが狂乱する古代を心配しつつ、不安げに見守る雪の視線であったことを考えると、この変更は非常にまずいものである。2199の雪には家族の記憶もなければ、原作にはあった母性も包容力もないのであるから。
 冒頭の作戦会議の場面でも、制作陣は「古代と島の性格を入れ替えた」と得意満面のようだが、キャラクターの性格というのはこういうリメイク作品では非常に重要な構成要素である。それに無配慮な制作姿勢を見ていると、「ああ、この人たちはヤマトが動いているのが見れれば良いという程度の人たちなんだな」と、ため息ばかりが漏れてしまう。冒頭のゲールがシュルツらを2等ガミラス人とイジメ抜く場面も、ハッキリ言って要らない場面の最たるものである。原作ではヤマトワープの報告を受けたのは総統デスラーだったのだから。 (レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと:墓標に「24名の〜」と刻むからには、遺体を数えたんだろうな? だったら守の遺体がないことに気付いてもおかしくないのに…。え? 数えもせずに死んだことにしちゃったの?

評点
 話は5分でグダグダ、感情の機微を描く素質の欠如、どれを取っても悪い。(小林)
 おかしな変更で原作の古代の慟哭が台無しに。(飛田)


関連レビュー
「Gのレコンギスタ第4話 カットシー乱舞」

あらすじ
 アイーダの操縦でベルリらの乗るGセルフは海賊戦艦に収容される。一方、度重なる襲撃に軌道エレベータを武装したキャピタルはデレンセンにベルリ救出を命じる。

Aパート:海賊戦艦現る、クリム対ベルリ
Bパート:カットシー襲来、デレンセン退却

コメント
 アイーダの操縦するGセルフにベルリのほか、クンタラ少女(ノレド)とムササビ(ラライヤ)が乗っている時点で嫌な予感しかしないのだが、「ああ、今日は○時15分に発狂モード(だろう)」と思いつつ(正直女の金切り声を毎回毎回聞かされるのは番組の内容以前にイヤである)、例の姫様は番組の中頃まで前話で死んだカーヒル大尉を悼んで悲嘆モードだし、次々飛び出す「アグテックのタブー」、「ヘルメスの薔薇」などウィキペディアを読まなければ分からない番組用語に置き去りにされた気分になる。
 この浮いた感じ、何かに似ていると思ったら三谷幸喜の「ギャラクシー街道」が思い浮かんだ。この話も寒い話に受けないギャグと置いてきぼり感満載の作品だったが、これを見て楽しいと思える人はGレコも楽しめるのかもしれない。少なくとも私はウィキペディアを読まなければ分からないような作品をまともと認めない。
 この話で少し面白いと感じるのは、ベルリを救出するために出撃したデレンセンだが、いざ現場に到着すると、たまたまベルリがクリムの指図でGセルフの試験飛行をしており、それを誤解したために助けるはずのベルリ(とガンダムの未知の力)に撃退されてしまうという所だろうか。目の前に当の本人がいるのに全く気づかないという、ありそうで富野作品ではなかった描写はたぶん、これが初ではないだろうか。あと、ありがたいことに今日は金切声はなかった。
(レビュー:小林昭人)

メガファウナ:ヘルメスの薔薇の設計図を元にアメリアで建造された宇宙戦艦、建造後外郭部隊の私掠船活動に投入され、アイーダやクリムが母艦とし、後にGセルフの母艦となる。海上を移動できるほか、ミノフスキー・クラフトで浮上航行でき、さらにブースターで大気圏外に離脱することも可能である。かなり性能は高いようであり、後に建造されたアメリアの戦艦サラマンドルが大気圏突入に失敗して空中分解したのと異なり、こちらは作中二回の大気圏突入を全て成功裏にやり終えている。レコンギスタの時代は技術進歩を否定した時代のため、後に作られた艦が高性能ということはない。ただし、他惑星への往還能力まではなく、行動半径は地球圏周辺に限定され、実はGセルフと同程度の航続力である。

評点
★★ 戦闘シーンは多少は見れる。


関連レビュー
「鉄血のオルフェンズ第4 話 命の値段」

あらすじ
 クーデリアの申し出で会社存続のために地球渡航を目論むオルガ、ヒューマンデブリと呼ばれていた昭宏たちを解放して同志に加える。一方、三日月はクーデリアをサクラの畑に案内する。

Aパート:クーデリア渡航計画、ヒューマンデブリ
Bパート:サクラの畑、三日月とマクギリス

コメント
 現実のアフリカの少年兵は悲惨だが、阿頼耶識システムを組み込んだ三日月は現実だったら相互不信で密告が横行する三番組の少年兵たちを「仲間」と呼び、同情するクーデリアやゼントを拒絶する。戦いの合間に少年兵たちの表情には笑顔さえ見え、彼にとっては居心地の良い環境のようである。なお、この話でサクラ姉妹は毎日600人の三食の炊き出しのみならずトウモロコシ畑の畑作までやらされていることが判明する。ホンモノの「少女奴隷」は実はサイボーグの三日月やオルガなどではなく彼女らではないだろうか。
 ここでマクギリスの言葉からCGSが実は民間軍事会社でなく民兵組織であることが分かる。会社と民兵とでは行動原理は全く異なるのだが、これは前話で殺されに戻ってきたハエダたちの不可解な行動のフォローである。CGSの一員ビスケットは農家の出稼ぎで民間軍事会社の社員もしている民兵である。何を今さら、泥縄というエピソードである。
<  後進国で子供が兵士にされるのは誘拐などで容易に調達可能で、洗脳しやすく従順で扱いやすいからである。戦場での彼らは文字通りの「消耗品」であり、不服従には命を奪うような残虐な制裁が行われ、薬物など使って人間性が破壊される。文字の読み書きのできない者も少なくなく、その社会復帰には困難が伴う。多くはトラウマを抱え、再び別の戦場に赴く者も少なくない。この話ではオルガや三日月の人間性にスポットが当てられるが、それ以前に人間そのものが存在できないのが少年兵士の現実である。特にオルガなどは成人前に殺されていてもおかしくない、強い信念と自我のある個人として描かれる。
 つまり、これはファンタジーで、00と同じオルフェ千葉の作った、少年兵を出汁に使った「作りごと」の話である。畑やトウモロコシは、オルフェはたぶん、スーパーでしか見たことがないのだろう。この描写で私はオルフェの出身が高崎と分かった。どうだ、当たっているだろう、そんなことはお見通しだ。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★ 弥縫策その2、騙されるか否か、視聴者の見識が問われる話。


その他のZレビュー
「機動戦士Zガンダム回顧録」 Z第4話レビュー
「パラレルユニヴァース」 Z第4話レビュー


関連リンク
An another tale of Z 第4話紹介
An another tale of Z 第4話「レダ星域会戦」(本編)

<<BACK  NEXT>>

 MUDDY WALKERS◇