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An another tale of Z

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機動戦士Zガンダム第3話「カプセルの中」 脚本:川崎知子

あらすじ
 クワトロの先導でガンダムと共にグリーンノアから脱出したカミーユは戦艦アーガマに収容される。しかしアーガマはライラ・ミラ・ライラのボスニア隊に捕捉されてしまう。ボスニア隊との交戦で損傷したアーガマの前にティターンズの戦艦アレキサンドリアが現れ、エマ・シーンがエウーゴとの交渉のためにアーガマを訪れる。バスクはカミーユの両親を人質に取っていた。

Aパート:カミーユとの会話とボスニア隊との交戦
Bパート:アレキサンドリア到着、カミーユ母の死

 嫌な話であるが、「ご都合主義的展開」の一言で片付けてしまいたい。まず冒頭に登場する一つ目のモビルスーツが連邦艦であるサラミスに着艦することでまず面食らう。「ジオンの技術を大々的に取り入れている」と台詞で説明があるものの、地球連邦軍といえばガンダムかGMなので、これは取って付けた感が拭えない。連邦側のエースとしてライラ・ミラ・ライラが登場するが前半で退場、後半はカミーユの母を人質に取るティターンズという暗い暗い話になる。なぜこんな作劇をしなければいけなかったのかという理由を考えると、これはやはりこの作品の構図の分かりにくさに原因がある。

ティターンズを悪役にするための惨劇
 ジオン公国を敵にできなかったZガンダムでは主人公の敵は宇宙を統一した地球連邦の中に求めなければならなかった。しかし、最初に登場した悪の組織であるティターンズという軍隊、実は全くの初見者から見れば実はそんなに悪そうでも極悪でもなかった。
 確かにどうも隊長らしい不気味なゴーグルの男とか、ブライトをぶちのめすティターンズ兵などの描写を見れば、この軍団はいかにも悪そうなのであるが、しかし、侵入したクワトロらを迎え撃つのに彼らが使っていたのはGMであり、有線ミサイルであり、そしてガンダムであった。主人公のカミーユがガンダムに乗ってクワトロ(シャア)と戦う話でも別に違和感はなかったし、ガンダムというのは前作でも正義側が開発して装備する機体である。ジオンの象徴であるザクをティターンズ機として出したりしたものの、ティターンズはそのままでは悪の軍団としてはあまりにも意味不明であった。

カオルのひとこと:かつては赤の機体と言えばシャア専用と決まっていたものですが、本作では赤のモビルスーツだらけになっています。ライラはクワトロとの対戦で「赤い彗星?」と驚愕しますが、「通常の三倍」と恐れられたかつての脅威を感じさせない戦いぶりです。

 そこで、主人公らの敵として観念すべく無理矢理入れられたとしか思えないのが、このカミーユ母惨殺シーンである。この話でティターンズはようやく悪の軍団になれたものの、その後味の悪さは大変なものがあり、この場面を入れたことでZガンダムは全 50話の物語それ自体に恢復しようのない深手を負ってしまった。これほど決定的な描写をここでやってしまった以上、視聴者としてはこれは惰性で最後まで見続けるか、見るのを止めるしかなくなってしまったのである。

カオルのひとこと:カミーユの母を人質にしてガンダム奪還を図るティターンズ。エウーゴのリーダー、ブレックスはこれに対して、アーガマ周辺のハイザックを撃破しろと言い出します。そんなことをしたら人質が殺されるのは目に見えていますが、ティターンズの技術者だから別に構わないのでしょうか。

作劇の犠牲になったキャラクター
 強いて3話に救いがあるとすれば、巡洋艦ボスニアのパイロットとして登場するライラに華があったことくらいだろうか。このライラ(デザイン・安彦良和)もしばらく後にあっけなく殺されるのであるが、このように、良いキャラデザ、メカデザがありながらも生かされず、ただただムダに消費されていったのは、作劇の都合で殺されるカミーユの母同様、この作品が造られた時代の雰囲気と、驕慢な演出家、富野由悠季の増長によるものである。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと:大人を信用できないカミーユは、自力で母を助けようとガンダムで飛び出します。しかし状況や交渉内容を知らないために、結果的に母は惨殺。ティターンズの横暴に反感を抱いてクワトロに帯同したかに見えた主人公ですが、方向性はちょっと違ったようです。これだと「純粋な少年」VS「インチキな大人」の物語にしか見えなくなってきます。言ってみれば、ガンダム版「ライ麦畑でつかまえて」。家出少年の彷徨物語など、ガンダムの続編に期待してはいなかったのですが…。

評点
★★ 無理筋の話、不必要に残酷(小林)
  伏線なく出てきた急展開に口ポカーン(飛田)


関連レビュー「ZZ第3話 エンドラの騎士」脚本:遠藤明吾

あらすじ
 冒頭に登場するネオジオンの勘違い騎士マシュマー・セロ、ハマーンとの対面でZではキツいだけの女だった彼女にもお茶目な一面があることが明らかになる。ハマーンのバラを胸に戦艦アーガマ討伐に向かうマシュマー。一方ジュドーはZガンダムを奪うべく、再びアーガマに侵入していた。

Aパート:ジュドーのヤザン救出、アーガマ入港
Bパート:ジュドーらのアーガマ潜入、ヤザンとの戦い

コメント
「明るいガンダム」という割には主人公のジュドーも艦長のブライトも今一歩乗り切れていないZZだが、本格的なギャグキャラ、マシュマー・セロの登場によってようやく本来のコンセプトを取り戻し始める。「騎士」と自称しながらどこかひきょうな、そして世間ズレしている彼のおかげで前話と異なり一人も死人が出ないのが救いの回である。話の流れ自体はやや緩慢だが、それでも脚本は手馴れたもので(遠藤明吾)、話自体は良くまとまっている。これはキャラ設定などキーになる部分を前作から流用できたため。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★ ゼータの経験が生きた回、出来は並だが前話よりは見られる。


関連レビュー「ガンダムAGE第3 話 ゆがむコロニー」脚本:兵頭一歩

あらすじ
 崩壊するノーラから住民共々脱出するため戦艦ディーバは作業を続ける。一方、謎の少女ユリンの助けを借り、フリットはもう一機のUE軍団の機体を撃破する。司令ブルーザーは単身ノーラに残り、コロニーコア切り離し作業を決行する。

Aパート:ノーラ撤収作業、ユリンの謎の力
Bパート:回想シーン、ブルーザー爆死

コメント
 「なにこれまともじゃん」というのが3話を見ての感想、エンディング以外に面白い場所のなかった1話、2話なので、3話は今度こそ★一つを付けようと手ぐすね引いて待ち構えていただけに意外な印象。突っ込みどころは山ほどあるが、少なくとも「見られる」レベルで話を展開はしている。BGM、回想シーンの挿入も適切で1、2話とは別物に仕上がっている。以降はガンダムでお馴染みの10話近く続く逃避行っぽいが、少なくともハンデ抜きで普通に評価できる俎上には乗った。
 あえて苦言を言うならば、この作品は全話通して科学考証がおかしいのである。まず、話の肝になっている「コロニーコア」は少なくともスペースコロニーで構造上の必然性は全くなく(一応、これを最初に考えたジェラルド・オニール博士はプリンストン大学の物理学教授である)、エンジンまで付いているというのは理解に苦しむ。地球との位置関係も判然としない。それに見せ場のAGEビルダーだが、それがチタンだろうと炭素鋼だろうと銃砲火器があんなやり方で作れるはずはないことは、ちょっと機械工業の知識を噛っていれば分かる話である。あと、謎の「モビルスーツ鍛冶」という職業。RPGの世界ならこういう世界観でも問題は無いだろうが、それはゲームの中だけのお話である。(レビュー:小林昭人)

評点
★★★  とりあえず見れる話、普通に面白い。


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2199第3 話 木星圏脱出」
脚本:出渕裕

あらすじ(人類滅亡まで364日・木星まで1日)
 宇宙に出たヤマトは火星に向かい、人類初のワープテストを行う。木星の引力に捕らえられ、引きずり込まれたヤマトの目前にはガミラスの運び込んだ巨大な浮遊大陸があった。

Aパート:新見の説明、ワープ
Bパート:ガミラス艦隊との戦い、波動砲

コメント
 2199の乗らないダイジェスト編パート2、今度は4話と5話である。前作では月から火星だったワープテストが火星初に変更されたのは、ワープ直前に火星に花束を投げる森雪の姿を見せたかったからである。2199では森雪はイスカンダル人(かも知れない)という設定であり、この思わせぶりな行動のために番組の丸々4分の1が消費される。

島 「救えるんだろうか、あの地球を。」
古代 「救うんだ、絶対に救うんだ! パレードで見送ってくれた人々の叫びをお前は忘れたのか!」

 と、いうのは前作で超大型ミサイルを撃破し、離れていく地球を遠望したクルーの会話であるが、この場面も沖田が土方に敬礼して離れていく場面だけとなっている。彼らの見る地球は赤く焼けただれ、海は干上がり、遊星爆弾によるクレーターが随所に空く惨憺たる姿なのだが、2199の世界では不毛の火星もテラフォーミングできるようなので、このくらいの被害では何でもないのだろう。だったら波動エンジンはヤマトなんかに積まずに発電機に使えば、後は科学者の手で地球は再生でき、かったるい作話ももっと効率よく進んだかもしれない。
 ただ、2199の科学者のレベルは前作では曲がりなりにも説明していたワープ理論の説明を「人為的ワームホール」とごまかす程度のレベルである。波動エンジンを過負荷で廻しただけでなんでワームホールがヤマト前方にできるのか、結局、この話では説明されなかった。
 ヤマトは波動砲を撃ち、浮遊大陸を宇宙の塵にして冥王星に向かう。この大陸もガミラスが持ち込んだものなので壊しても良心の呵責はなく、波動砲の基礎原理は地球人が考えたものだ。そういうものなので、大量破壊兵器を使ったことによる何の悔恨も後悔もなく、話はこれで終わってしまう。これは単に作られたメカが設計通りに作動し、予期された性能を発揮しただけである。もちろん、そんな話を見せられても面白くもなんともない。しかし、ワープと波動砲という本来なら各々1話丸々掛けて説明してもおかしくないイベントを圧縮して時間を稼いで、この制作陣は「ヤマト」でいったい何をやりたいのだろう?
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと:あっという間にワープと波動砲発射。こんなにあっけない話だったっけ? 浮遊大陸はガミラスが人工物なのか〜。じゃあ別に波動砲でぶっ壊したって良心は傷まないよね〜、という話だった。

評点
★★ ヤマトの二大イベントをぞんざいに扱うスタッフに怒りが。(小林)
★★ それにしても、新見という女性キャラのせいで、真田さんの影が薄いような…。(飛田)


関連レビュー
「Gのレコンギスタ第3話 モンテーロの圧力」

あらすじ
 キャピタル・ガードでは扱えないGセルフは調査部に接収される。一方、二回負けた宇宙海賊はエースのクリムがMSモンテーロを駆り、三度目の攻撃を行う。

Aパート:Gセルフ接収、クリム登場
Bパート:クリムの襲撃、キャピタルの空中戦

コメント
 「クンタラ」が差別用語だというのは良く分かったから、いい加減やめてくれということで第三話、それと発狂少女はいい加減見飽きた、調査部の大佐はアイーダを尋問するが、見れば彼女が運んだGセルフのパーツにはアメリア国の製造番号が記されていたらしい。そういえば昔、「合衆国資産」と大書した盗聴ソナーをバレンツ海に仕掛け、ソ連軍に引き揚げられて恥を掻いたアメリカ合衆国という国もあった。どうも宇宙海賊はアメリア国公認の独立部隊らしい。冷戦時代、見つかれば核を撃たれるバレンツ海への潜入は仕掛けたアメリカ軍としても命がけだったが、アメリアの宇宙海賊はどうもそんなに必死でもないようである。クリムの襲撃にモビルスーツをテント代わりに使っていたキャピタル・アーミィーは出撃できないとデレンセンに一喝される。どうもキャピタル・テリトリーには大佐の策略でガードとアーミィーの二つの軍事組織があるようである。
 つくづくアニメはスタッフの総合芸術だなと思わせるのは同じようなテイストの∀ガンダムの場合、脚本はファーストと同じ星山博之、音楽は才能豊かな菅野よう子と人材が揃っていた。が、レコンギスタの場合、こういう比較は双方の才能の差を思い知らされるものになっている。脚本は意味不明だし、音楽もまるで良くない。三話作って富野もできの悪さを観念したのか、次のコピーは「見たくなくても、見る!」である。 (レビュー:小林昭人)

クンタラ:作中でしばしば触れられる被差別民、かつての窮乏時代に食用にされた人間たちという意味だが、他の市民と比べ肌の色など外見上の相違点はほとんどなく、また、作品の時代にはキャピタル・ガードやアーミィーで枢要な地位につくなど制度上の差別は解消されている。元々キャピタル・テリトリーは軌道エレベータを中心としたエネルギー分配機構のため、食人のニーズはほとんどなく、また、クンタラはキャピタルに多く見られることから、各地で迫害されたクンタラがキャピタルの建設と同時にこの地域に集まったという見方もできる。また、制度上の差別はなくなったものの、第一話でデレンセンがクンタラの少女を引っ叩き足蹴にする描写があり、外見上はともかく、キャピタルにもクンタラ差別が根強くあることを示している。

評点
 どうもこの辺で作品の運命が決まったらしい。


関連レビュー
「鉄血のオルフェンズ第3 話 散華」

あらすじ
 戦いが終わり、多数の戦死者を出したオルガは一番組を粛清してCGS掌握を目論む。ハエダを射殺しCGSを掌握したオルガたちの前にギャラルホルンのクランク・ゼントが姿を現す。

Aパート:給食シーン、オルガの一番組粛清
Bパート:ゼントの挑戦、鉄華団

コメント
 幹部を殺害し、CGS乗っ取りを図るオルガは横に置くとして、冒頭からおかしいのは給食のシーン、一応戦死者(約100名)から概算すると、CGSは一番組と三番組が主要な兵力集団で、各々2〜300名ほどの組織に見えるが、そうなると給食は600人前(1,800食/日)ほど作らなければならない。「包丁の持ち方」以前にスタッフには給食センターや学校幼稚園の給食のおばさんの仕事ぶりを見ることを勧めたい。特に学校のそれはかなりの重労働である。とても子供三人で作れるような量ではない。この話、どうも作っている人間に空間認識力(現実感)が乏しいと感じる時があるが、このシーンなどは後の三日月殺人シーン以上にそう感じさせる場面である。実は「鉄血のオルフェンズ」という話、一歩引いてみると説明は矛盾だらけで設定も穴だらけの話である。
 例によってオルガの指図で三日月はパンパンパンとつい先日まで一緒に暮らしていた一番組の兵士を射殺し、ついでに決闘にやって来たゼントもパパンと殺してしまう。この場面は倫理的に問題だとしてBPOに告発された内容だが、前者については筆者は別に驚かなかった。むしろ先の話で三日月たちを見捨てた一番組がノコノコと戻ってくること自体がおかしいので、遅かれ早かれハエダたちは殺される運命である。何で戻ってきたのかは、スタッフもおかしいと思ったのか、後の話でフォローされている。
 後者のゼント殺害については、「考えることを止めた人間」三日月のサイコパス性が良く出ている話である。子供を殺すことに躊躇していたゼントの話を皆まで聞かず、アッサリ撃ち殺す彼だが、残虐に対しては残虐で応じるのが歴史の教える所である。オルフェンズは今までのアニメと違い、惨たらしい死や死体の場面を故意に映さない。主人公と同様、スタッフも結果から目を背けているのだ。
 作戦は穴だらけ、展開はご都合主義、正直、この作品は幼少年には悪影響の方が大きいと思うので放映禁止にした方が良いと思うが、まともな視聴者なら、ネットで関連する事実の実際を少し調べれば醒める夢でもある。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★ 弥縫策の設定にそろそろアラが、、


その他のZレビュー
「機動戦士Zガンダム回顧録」 Z第3話レビュー
「パラレルユニヴァース」 Z第3話レビュー


関連リンク
An another tale of Z 第3話紹介
An another tale of Z 第3話「新司令官 マシュマー・セロ」(本編)

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