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 SFドラマ レビュー

バトルスター・ギャラクティカ season1:序章・ジェノサイド     


 本作は、1978年から放映されたアメリカのSFテレビドラマシリーズ「宇宙空母ギャラクティカ」のリメイク版で、2003年から放映を開始したシリーズです。といっても、私は元々の作品を観たことがありませんので、リメイク版としてどうか、という視点でのレビューはできませんが、一作品としてどんなふうに楽しんだか?をお伝えしていきたいと思います。

 小林昭人さんからすすめられて、とりあえず何の予備知識もなく観た「序章・ジェノサイド」。序章となっているものの、めちゃくちゃ長いです。なんでも元々ミニシリーズとして2夜連続で放送されたものだそうです。さすがに私も1晩で最後まで見切ることができず、2夜連続で楽しみました。(181分の大作です)

<あらすじ>
 人間が暮らす舞台は、12のコロニーからなるコロニアル連合。人間が開発したロボット「サイロン」が反乱を起こして大戦争になり、激戦の末停戦にこぎつけます。年に一回、休戦ラインに設置した宇宙ステーションで双方の大使が会合するという条件だったのですが、停戦以来40年、サイロン側からは誰も来ることはありませんでした。そして今年も「きっと君は来ない」と思っていたであろうコロニアル連合の大使。しかしその前に、2体のロボットに護衛されて、絶世の美女が姿を現します。驚く大使にその美女は「生きている証拠を見せて」といきなりディープキス。大使はわけの分からないまま籠絡されてしまったようです。悪いことにならなければいいのですが…、って、もちろん悪いことになるんですけどね。

 ところかわって、宇宙空母ギャラクティカ。今や時代遅れになったこの巨大空母は、退役して博物館になる予定。艦内は、実戦配備中の兵士、博物館化準備要員のほかプレスが詰めかけ、てんやわんやの状態です。そんな中、退役式典で述べる式辞の練習に余念のない艦長のアダマ司令官。コロニーからは、この退役式典に出席するためロズリン教育庁長官が旅立ちました。一方コロニー・カプリカでは、天才科学者ガイアスが恋人と濃厚な時間を過ごしていました。しかしこの恋人、冒頭で現れたサイロン側の使者と同人物です。どういうことなんでしょう。と、女癖の悪いガイアス、他の女性と寝ているところに現れたこの恋人から恐るべき真実を告げられます。彼女は人間じゃなくてサイロン、そしてガイアスとのお付き合いで防衛省のメインフレームにアクセスするという特権を得て、サイロンによる全コロニーへの核攻撃が始まると。

 かくして12コロニーの全人類は滅亡し、残されたのは宇宙を航行中の船に乗る人々、そしていまや博物館になろうとしていた宇宙空母ギャラクティカとそのクルーのみ。退役式典を終えてコロニーに戻る途中だったロズリン長官は大統領職を継承すると残された船を集めて船団を作り、サイロンとの戦いに入ろうとするアダマ艦長率いるギャラクティカと合流。わずかに残された5万人の人類は、伝説の故郷「地球」を目指して旅立つのでした。  しかし、実は大きな問題が。ちゃっかりギャラクティカに乗り込んだガイアスですが、例のサイロンの恋人が幻覚のように現われては彼に何かとネタをばらします。ひょっとして、愛なんでしょうか。それはともかく、彼女が言うには他にも人型サイロンがいて、ギャラクティカにも紛れ込んでいると…。

 と、ものすごく大味なあらすじ紹介になりましたが、序章の目的は、本編を構築する世界観はどういうものかをわかりやすく提示するもの、そして本編へと引き込んでいくものです。それに3時間という時間を割いているのは、これがリメイク作品であるということと大きな関係があると思います。  最初の作品が作られたのは1970年代末、そのころの「未来の宇宙空母」は今ではすっかりローテクです。それを現代のテクノロジーの進歩にあわせて飛躍的に口上させるという手もあったと思いますが、本作ではそうではなく、ローテクであり続ける理由が考えられています。コンピュータネットワークを通じてサイロンが侵入してくるのを防ぐため、ギャラクティカではコンピュータは使うけれどもネットワーク化はしていない、というのです。  サイロンとの戦いで、最新鋭の戦闘機はシステムがダウンして行動不能に陥ってしまう、けれどもお蔵入りが決定していた「オンボロ」なら影響なしに戦える。こうして「古い」ものが新しい世界の中でいきいきとよみがえっていく瞬間。これはきっと、前作ファンにとっては痛快の極みなのではないでしょうか。  壮大なドラマシリーズの幕開けだけあって、冒頭から最初の1時間超は、そんなギャラクティカの置かれた現況やクルーたちの人物描写がメインになっています。たくさんの登場人物がいて、まだ名前が覚えきれていませんが、丁寧な描写のなかに、これから繰り広げられるであろう人間模様について想像をかきたてるものがいっぱいあって、わくわくさせられます。

 実在するかどうかも疑わしい「地球」を目指す5万人の残された人々の旅、そして、人型サイロンは12タイプいる、というナゾの文言。「あっ!」という驚きの余韻を残して、いよいよ本編のスタートです。
 個人的にいいなー、と思ったのは「スターバック」ことカーラ・スレイス中尉ですね。粗暴でキレやすそうな、おっかない女性パイロットですが、やることなすこと、実に「男前」で素敵です。
 天才科学者のガイアスもおもしろいキャラです。脳内彼女と語るときの彼が何ともいえません。笑えるけれどもちょっと恐ろしい人。「こいつがサイロンだ!」と彼が断言できるのは、天才のなせる技なのか、良心の欠如がなせる技なのか、と考えさせられちゃいました。
 アダマ司令官と息子のリー・アダマ。親子そろって軍人の道を歩んでいますが、確執があります。二人の関係も、序章の中では重要なポイント。
 アダマ司令官とロズリン大統領。どっちが主導権を握るか、で緊迫したドラマが展開されました。こちらの関係も本編に入ってどうなっていくのか? 気になるところです。

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