MUDDY WALKERS 

 SFドラマ レビュー

バトルスター・ギャラクティカ season1:第1話「33分の恐怖」

<あらすじ>
  サイロンの核攻撃で故郷を失ったコロニアル連合の人々は、宇宙空母ギャラクティカを中心に船団を組み、伝説の惑星「地球」を目指す旅に出る。しかしサイロンは執拗に彼らの後を追ってきた。ギャラクティカと船団は、超高速ジャンプを繰り返して追っ手から逃れようとするが、サイロンは、なぜかジャンプの後きっかり33分後に現われて攻撃を仕掛けてくるのだ。そんな逃走劇がもう5日も続き、アダマ司令官をはじめギャラクティカのクルーたちは疲労の色を隠せない。
 そんな中オリンピックキャリアという船に乗るアマラク博士が、ロズリン大統領との面会を申し出る。博士は、何者かがコロニアル連合の防衛システムを破ったというのだ。近くの席で聞き耳を立てていたガイアスは、自分のことを指摘しようとしている人物の存在に真っ青になる。しかし、オリンピックキャリアは、ジャンプの際に行方不明に。すると不思議なことに、これまで続いていた33分後の攻撃がやんだ。オリンピック・キャリアの中にまぎれこんだサイロンが、船団の場所を漏らしていたのか? 遅れて現われたオリンピック・キャリアの前で、ロズリン大統領とアダマ司令官は、ある決断を迫られる…!

  3時間の長編序章のあとの第1話。この船団の置かれている状況やギャラクティカをめぐる人々の人間関係があらかじめこってりと語られているので、物語は状況を追ってテンポ良く進みます。先に人間関係をたっぷり描写するのは、この作品が、壮大なスケールのSFドラマでありながら、実は密室サスペンスの要素が多分に盛り込まれているからだと思います。

   ジャンプから33分後に攻撃してくるサイロン。敵は機械なだけに、疲れを知りません。攻撃そのものよりも、肉体的・精神的に極限まで追いつめることでコロニアル連合を滅ぼそうとしているのです。そして、この攻撃の正確さのカギは、やはりコロニアル側にまぎれこんだサイロン。内部にいる隠れた敵、が本作の面白さですね。
 サイロンの脳内彼女にとりつかれているガイアスは、コロニアルの防衛システムにサイロンの侵入を許してしまった張本人。船団の中に、何者かが防衛システムを破る手助けをした、と見抜いた人物がいるらしい、と知ったガイアスですが、サイロン対コロニアル連合の戦いと並行して、ガイアスの自己保身の戦いが繰り広げられるところがユニークです。

 ネットワークを廃したギャラクティカ艦内はメモと書類の飛び交う世界。「33分後の攻撃」を周知するのも、とってもアナクロなアナログ時計の文字盤に貼付けられた「33」の数字だったりします。こうした状況をナレーションや説明的な台詞ではなく、演出で見せるところに上手さを感じますね。減り続ける「残された人々」の数を、ホワイトボートに書き入れるロズリン大統領。このアナログ加減もまた、アナログであるがゆえに心に迫るものがあります。序章に続いて、冷酷な判断をしなければならなくなるアダマ司令官ですが、最後に希望の数字が与えられるのが、素敵です。

 それにしても、ガイアスの自己保身が結果的には船団を救う、という展開。これは一体何を意味しているのでしょうか? 
 一方、序章ラストで「実はサイロン?」と思われたギャラクティカのクルー、ブーマーと、カプリカに取り残されたヒロの話が並行して進んでいますが、これは次に続く伏線に。「33分の恐怖」は一件落着しますが、まだまだ、これからの展開に目が離せません。

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