◇MUDDY WALKERS
SFドラマ レビュー
3時間の長編序章のあとの第1話。この船団の置かれている状況やギャラクティカをめぐる人々の人間関係があらかじめこってりと語られているので、物語は状況を追ってテンポ良く進みます。先に人間関係をたっぷり描写するのは、この作品が、壮大なスケールのSFドラマでありながら、実は密室サスペンスの要素が多分に盛り込まれているからだと思います。
ジャンプから33分後に攻撃してくるサイロン。敵は機械なだけに、疲れを知りません。攻撃そのものよりも、肉体的・精神的に極限まで追いつめることでコロニアル連合を滅ぼそうとしているのです。そして、この攻撃の正確さのカギは、やはりコロニアル側にまぎれこんだサイロン。内部にいる隠れた敵、が本作の面白さですね。
サイロンの脳内彼女にとりつかれているガイアスは、コロニアルの防衛システムにサイロンの侵入を許してしまった張本人。船団の中に、何者かが防衛システムを破る手助けをした、と見抜いた人物がいるらしい、と知ったガイアスですが、サイロン対コロニアル連合の戦いと並行して、ガイアスの自己保身の戦いが繰り広げられるところがユニークです。
ネットワークを廃したギャラクティカ艦内はメモと書類の飛び交う世界。「33分後の攻撃」を周知するのも、とってもアナクロなアナログ時計の文字盤に貼付けられた「33」の数字だったりします。こうした状況をナレーションや説明的な台詞ではなく、演出で見せるところに上手さを感じますね。減り続ける「残された人々」の数を、ホワイトボートに書き入れるロズリン大統領。このアナログ加減もまた、アナログであるがゆえに心に迫るものがあります。序章に続いて、冷酷な判断をしなければならなくなるアダマ司令官ですが、最後に希望の数字が与えられるのが、素敵です。
それにしても、ガイアスの自己保身が結果的には船団を救う、という展開。これは一体何を意味しているのでしょうか?
一方、序章ラストで「実はサイロン?」と思われたギャラクティカのクルー、ブーマーと、カプリカに取り残されたヒロの話が並行して進んでいますが、これは次に続く伏線に。「33分の恐怖」は一件落着しますが、まだまだ、これからの展開に目が離せません。
MUDDY WALKERS◇