Mobilesuit Gundam Magnificent Theaters 2005.

An another tale of Zeta・・・INTERVIEW


(インタビュー 2017/3/26)




機動戦士Zガンダム ハヤト・コバヤシさん
※本作の記述とは関係ありません。



はじめに

ハヤト: 皆さんこんにちは、カラバのハヤト・コバヤシです。ATZのインタビュアーを務めています。

小林: 作者の小林昭人です。

ハヤト: マア、ウチのサイトもその一つといえるのですが、最近は「リメイク」ということで昔の作品の焼き直し、作り直しが多々見られますが、それも色々な型があるようです。そのあたり話題にしましょうか。



1.原作準拠型



小林: このタイプの代表といえばこれ(009)だ。もっとも最近は違うタイプもやっているようだが、2002年まではこの式だった。元の漫画は1964年だが、時代に合わせて細部は変えているものの、基本的には60年代のストーリーを繰り返している。

ハヤト: 白黒テレビ時代からいますからね、009は、最初の作品に有名な「誰が為に」が主題歌の80年版、そして2000年代の平成版と少なくとも3回はほぼ同じストーリーでやっていますね。先ず島村ジョーが改造された場面があって、敵がブラックゴーストでという。

小林: もっとも、どの作品も石森章太郎の連載したマンガを全てアニメ化したわけではなく、時期に応じて取捨選択しているけどね。例えば「ネオ・ブラックゴースト編」は80年代の作品では映像化されたけど、平成版では採用されず、「ミュートス・サイボーグ編」が代わりに入っている。



ハヤト: あの三兄弟怖かったですよ(80年版)、でも、どの作品も元になる作品がしっかりとあるという点で、原典準拠型とも言えますね。しかし、最近では見られなくなったタイプとも言えます。ワンピースなどのアニメ化との違いは?

小林: あれは連載しているマンガをそのまま映像化しただけだけれども、リメイクという要素が加わる場合は元作品の時代から10~20年経過していることがあるし、場合によっては作者も故人ということがあるから、特に後者の場合は作品の解釈力、時代に合わせた翻案力など相当の力がいる。苦労の割には制作スタッフ自身の功績が認められることは少ないし、ピント外れな映像化は却って作品を古臭く見せてしまう。



ハヤト: ブラックジャック21なんか絵柄も手塚治虫のそれに近いのですが、評価はイマイチでしたね。

小林: この作品はある意味009以上にストーリーが知られているし、医学的知識の翻案は専門家がいなければ困難だ。それに10年先行していた出崎統のリメイクがある意味原作以上のインパクトがあったので、それを超える絵柄は優しい手塚の線そのままでは難しい。一言で言えば、21世紀にやる作品としてはあらゆる点で古臭かった。実は出崎の作品も基本的にはこの型だけどね。



ハヤト: 出崎さんのブラックジャック(96年)は原典準拠型ですが、「あしたのジョー」から続く出崎さんのカラーもしっかり出ていましたからね。

小林: 要するにこれで決まりという方法はないんだ。



2.リメイク続編型

 

ハヤト: これはマア、言わずと知れたウチの作品ですね。続編と銘打っていますが、元の作品の世界をさらに発展させています

小林: 1と同じく解釈力も翻案力も必要だが、1より制作者自身の個性も出しやすい型だ。この型の典型はTNG(新スタートレック)だが、名目上はシャトラーの初代トレックの後継だが、作風などは似ても似つかない。世界観はより緻密だし、そもそもエンタープライズ号が戦闘しているシーンが思い浮かばないほどのディプロマシーと国際政治の話だ。

ハヤト: 前作は敵を見つけては光子魚雷を撃ち込んでいましたからね。宇宙西部劇だった初代トレックとはずいぶん雰囲気が違います。でも、前作(シャトラー)をリスペクトしていますし、スタートレックというブランドを確立した守成の作品ですね

小林: シャトラー時代のトレックはそれでも3シーズン続いて全79話だが、TNGとその派生シリーズは500話を超える。しかも、エンタープライズ号が主役艦じゃない「ボイジャー」「ディープ・スペースナイン」など、世界観の広がりは前作をはるかに凌ぐ、それだけしっかりした作品だったということで。

ハヤト: シリーズで10年続きましたが人気も衰えませんでしたね。最後の「エンタープライズ」だけはいただけなかったですが。



小林: 俳優が歳を取らなければもっと行けたと思うよ。TNG最後の映画「ネメシス」では主演のパトリック・スチュワートは62歳だった。もう10年若ければたぶん2010年くらいまで続いていた。派生作品も「ヴォイジャー」以外にもう1~2隻、エンタープライズ以外の艦が活躍する話もできただろう。「エンタープライズ」だけは何かの間違いだったが。

ハヤト: シリーズ終了はその「エンタープライズ」が打ち切りになった2005年です。結果的にリメイクした世界観で18年間も続いたわけで、これはやはり「続編型」リメイクの金字塔でしょうね。ウチ(ATZ)が手本にした作品でもあります。このタイプの作品は、今は見かけませんね。

小林: ある意味、いちばん難しいんじゃないだろうか。前作をあまりに無視すると作者の独善に陥るし、新しい要素を入れなければ「ブラックジャック21」みたいに陳腐化するし、続編は続編なんだが前作からかなり時間が経ってのそれは(TNGは20年)いろいろな要素のバランスを取る必要がある。その点、TNGはやはりすごいよね。



3.前作ぬりかべ型

  

小林: 最近多いのがこれだな、またの名を「押井守型」とでも言おうか、私は大嫌いなんだが。

ハヤト: 私も好きではありませんね。しかし、アニメータ主導で絵に凝る分、アニメ技術の進歩に一定の貢献はしていると思うのですよ。

小林: 一応リメイクなんだが同じなのはキャラクターと設定だけで、まるで違う話を原作と同じ時系列でやろうという神経がそもそもおかしい。上の作品、私が原作者だったら怒り狂うよ。



ハヤト: 例はあります。80年代にすでにあるんですよ。高橋留美子さん原作の「うる星やつら」で勝手な話をした「ビューティフル・ドリーマー(押井守監督)」、原作の作風としてありえない内容で、高橋さん激怒したそうですよ。



小林: そういえばこれもあった。これも作者の和月伸宏は「別の話だと思って欲しい」と言っていたが、腸煮えくり返っていたと思うよ。

ハヤト: 最近はともかく、以前も10年に一回くらいの割合であるんですよね。こういう問題作

小林: 問題作だから話題にはなるのよ。でも、作品に致命的ダメージを与えてしまい、以降の作品が鳴かず飛ばずになってしまうというのはあった。

ハヤト: うる星やつらの映画は押井守さんの出世作ですが、以降は高橋さん、押井さんには映画を作らせなかったそうですね。

小林: 評判が先に立つからな、自分の作品をダシに浅薄な理解で手前勝手なマネをされて怒らない原作者はいない。少なくとも「ビューティフル・ドリーマー」や「るろうに星霜編」を見た人間が同じ監督に自分の作品をやってほしいとは思わない。だから押井も古橋も映画以降はロクな仕事がないんだ。最近では出渕裕がこの系譜に連なったが。次は小林誠だな。

ハヤト: 星霜編の古橋一浩さんは確かガンダムUCの監督ですね。ま、良い点もあるんです。全員アニメータ上がりですから絵は良いですし、ストーリーの弱さを補う様子で設定や理論武装に余念がないとか。そうそう、難解と言われていますが、視聴者を煙に巻くような作風も特徴ですね。ウチは騙されませんが

小林: まあ、連中も少しは学習したせいか、最近は作者が故人とか、著作権を主張できないとか弱みのある作品ばかり狙う傾向はあるな。作家性に乏しいことも福井晴敏みたいに自分らと同程度のナードを引き込めばなんとかなるというのはある。ネット工作とか自己正当化に汲々とするのも特徴だな。

ハヤト: 何か悪口みたいになってますね。まあ、どんな作品かは示せているので良いでしょう。


4.まとめ



ハヤト: 一応リメイクの3つの型ということで挙げましたが、アナタの言い分によればどの型も一応考慮の必要はあるということですね。

小林: 実は明確にこの作品はこの型という分類はできないんだ。たいていの場合、リメイク作品はどの作品も上記の型の要素を少なからず持っている。例えば出崎統の「ブラック・ジャック」はストーリーなどは手塚作品準拠だが「ぬりかべ型」の特徴も強い。また、時代が違う分、ストーリーをアレンジするなど「続編型」の要素もある。それでも別に見て不快な作品じゃないからね。

ハヤト: バランスを考慮する必要があるということですね。

小林: 原作準拠と言ってもアニメ技術の進歩を睨んでいなければATZも艦隊戦の話にはしなかった。ファーストやヤマトのレベルじゃ、大艦隊を動かす作画は難しかったから。しかし、2000年以降なら簡単だ。船の大きさだって詰めることもできる。下絵のコングラが正確に船を動かすから。だからムサイやマゼランは原作よりずっと小さくした。戦艦ホワイトベースも「野球場に入る大きさ」なんだから、公式設定の250メートルはないわな。私は150メートルとしたけど、それでガンダム、ガンキャノンを三機並べて収納できるのか、できると分かったから公式設定は破棄したわけだ。

ハヤト: ATZは小説作品ですが、そういう考慮は普通以上にしてますね。作品のバランスについて言えば、人を上手に使う必要がありますし、各々の分野で自分の役割を弁えてもらう必要がありますね。

小林: それがハリウッドや東映とアニメ制作の現場の差で、以前に「日本アニメのシナリオ事情」で書いたけれども、今の人たちは富野あたりが便宜的に編み出した「型」を疑いもせずにそのまま墨守しているんだよね。同じ邦画でも山崎監督の「SPACE BATTLESHIP ヤマト」がそこそこ見れる作品で、出渕の2199が見るに耐えない作品になったのはなぜか、これは単に監督の有能無能だけで論じちゃいけない話だ。

ハヤト: 「ぬりかべ型」の手法も時に応じては認めて良いと、しかし、今のはいただけないと。

小林: ヤマトにはそういう手法を正当化する正当な理由がないし、そもそもアニメータがメガホンを取らなければいけなくなったのは日本アニメ史のオイルショック後の事情による話で、正当な手段である作家性の発露とか構想力の顕現と言ったものではないからな。1、2の型もまともにできない人間が3型なんかやったらまともにならないに決まっている。その方面の才能を示したいなら、やるべきことはちゃんとやった後で、富野みたいに新しい作品を作ってそれをやるんだよ。



ハヤト: いずれカオルさんとインタビューしますが、ファーストは合議型の作品でした、多士済々の中で監督の富野氏は十分に力を発揮できたとは言い難い点もあります。しかし、認められたので、その後はイデオンとかダンバインとかガンダムとは別の世界観、別の物語の自分の作品を作ることができました。それが本筋ということですね。

小林: いずれにしろ、アニメは一人ではできない。富野も最近はGレコとか変なの作っているからな。GレコとターンAはほとんど同じ作品だが、配下にいる才能が違いすぎた



閑話休題

 
何か変だぞこのモケー(右は「さらば」当時の戦艦アンドロメダ)

小林: 前から変だと思っているんだが、このアンドロメダ(左)、何か少し歪んでない?

ハヤト: 艦首が垂れていますね。これ、本当に発売中のモケーですか?

小林: リデザインだけど、作り手の頭が整理されてないとこういう変な造形になる。たぶん、前にも主砲撃てるようにと考えたのだろうが、地球防衛軍の艦艇のモチーフは日本海軍で、日本海軍の戦艦はそういう戦い方はしないんだよ。

ハヤト: 旧アンドロメダの方がスッキリしています。葉巻型船体でバランスもこちらの方が良いです。玉木さんの新しい方は葉巻型というより、紡錘形に角型の艦首を出来悪く接着した感じで、これじゃ航行中に折れそうですよ。3D・CADのある時代に金型職人の造形の方が良いというのは。



小林: このデザインが軍艦のデザインとしていかに出来悪いか説明してやろう。上は玉木のアンドロメダと三菱ミラージュだな。アンドロメダは操縦できなくてもミラージュなら免許があれば誰でも運転できるだろう。運転者の目線で先端がどう見えるかを図示するとこうなる。このアングルを良く覚えておいてくれ。

ハヤト: ヤマトの戦艦は第一艦橋で操縦しますからね。アンドロメダ艦橋の目線とミラージュの目線を一致させたということですね。下の黒いのは戦艦大和ですか。



小林: そしてミラージュを消して大和を上に上げるとこうなる(大きさは調整)。

ハヤト: 面白いことに操縦者(艦長)の目線が普通乗用車と同じですね。だから巨大戦艦も操船できると。

小林: これが「戦艦」をデザインする時の基本アングルでさ、それはSFだから多少アレンジして良いが、デザインするにしても実際に船をどう動かすか、視界をどうするかを考えてデザインするのとしないのとでは戦闘兵器としての迫力、凄味に違いが出る。一言で言えば玉木の戦艦アンドロメダはモニタが壊れたらビーム弾を回避できないが、ATZの戦艦ライオンやエイジャックスなら目視で回避行動が取れる。どちらが兵器として有用か、語るまでもないじゃないか。



ハヤト: 目線の問題は主力戦艦は辛うじて回避しているみたいですが、これも艦橋が大きすぎますね

小林: 当ててくれと言わんばかりの構造だな。少しは戦艦大和の爪の垢でも煎じて飲ませた方が、やはりアニメの影響で正面戦闘に固執しているのに参考にしているのが日本戦艦という時点でおかしいと思わないのかね? そういう戦闘をやるなら手本にすべきは下の戦艦なんだ。



ハヤト: ま、こちらでしょうね。バルト海は霧が深いのでヨーロッパ艦は遭遇戦を前提にした作りです。

小林: 船の絵が動いていればいいという宇宙戦艦ヤマトの時代と違って、大艦隊も動かせるほど技術も進歩しているのだから、デザインもそれに合わせて見直さないとな。それをやってのリメイクだ。それにしてもアンドロメダの垂れ艦首、あれ、カッコ悪いよ。

ハヤト: 小林さんがアンドロメダの艦橋に余計なお荷物を付けて「空母型」としたのは、このデザインのバランスの悪さに気付いていたのでしょうか。

小林: 見苦しいから足すというのは客船の発想な、軍艦は足し算でなく引き算で作らないといけない。奴の才能はその方向だ。



ハヤト: アナタ、酷評しているくせに小林誠さんはあまり叩きませんね。

小林: 自分より国語力や表現力の劣る相手を叩くのは単なるイジメなので。言いたいことを筋道立てて説明する能力に欠けているからといって、それを理由に叩くマネは私はしない。私は2ちゃんねらーではないので。明らかに劣る相手の言動に、目くじら立てる理由もない。デザインは別だけどな

ハヤト: 確かにアナタは小林さんのツイッターの内容には怒っていませんね。では、今回はここまで。