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 宇宙戦艦ヤマト2199(2013)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2022レビュー

 第22話「向かうべき星」 脚本:大野木寛


あらすじ  (人類滅亡まで211日・収容所惑星から19日)

 レプタポーダに寄港したヤマトはディッツら反乱派の援助で修理を受けイスカンダルに向かう。一方、拉致された森雪はガミラスにイスカンダルの王女として迎えられ、デスラーは両星の大統合を宣言する。

Aパート:ナレーション、森雪バレラスに行く
Bパート:ドメル国葬、デスラー砲の攻撃

コメント

 レプタポーダで補修を受けるヤマトだが、つい先日までデスラーの陪臣だった(ついでにドメルやフラーケンの上官でもある)ディッツと会談するとか、イスカンダルが崇拝の対象だとか、ガミラス本星の情報とか、どれ一つとっても重要な内容を沖田のナレーション一つで済ませてしまうというのは、スタッフに取ってこういう話のストーリーというものがいかに軽いかを思い知らされる。捨て駒同然の作戦で夫を失ったドメル夫人にしても、この場所でできるドラマはあったと思うのだが、何かそういう人の琴線に触れる内容にまるで無神経、無視というのは2199のポリシーである。

 デスラーの「大統合」演説にしろ、住人2人しかいないイスカンダルとの統合のどこがガミラス臣民の希望なのか(難民保護ではないのか)、それが英雄ドメルを失ってまで進める価値があるものなのかは全く触れられない。そして合間は沖田倒れるとかメルダの機体とかマゼランパフェとかいつものGdGdタイムである。特にパフェのシーンはディッツとの会見を省いてまでして挿入すべき内容ではないだろう。拉致された森雪の性格がいわゆる今風タカビー女で、面会したノラン、エリーサ、ディッツ、デスラー、セレステラ、そしてヒルデといった面子からほとんど何も聞き出せていないことも話を平板にしている。最近は女性の自衛官が艦長などに登用されているが、その彼女がこんな人格だったらそもそも艦長に相応しくないし、平時の任務にも支障を来すだろう。軍事ヲタクのくせにアニメのみならず現実の軍隊や官僚組織もどうもちゃんと見ていないらしいのである。たぶん、人間にも関心がないのかもしれない。

 ラストの沖田の演説の場面も「背後には地球」と、今さら改めて彼らの使命を説明しているが、そもそもの2199、ここに至るまでただの1カットも荒廃している地球の情景が映し出されることはなかった。乗員たちはガミラスとの戦争ゲームや恋愛に興じており、とても地球を救う使命に邁進しているようには見えなかったし、「イスカンダルの場所は分からない」とか「ユリーシャ半死人ナビ」といった余計な挿話が彼らの使命をますます見にくくしていた。そういうわけで、この場面も視聴者の心に響くことなく、話は最終章に突入していく。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと

 ユリーシャのふりをして一歩先にガミラスへ行ってしまう森雪。イスカンダルを崇拝するというガミラスの文化とデスラーの「大統合」に驚愕。いったいこの話はどこへ向かうのか? 

 無理に無理を重ねたような話、今さらやる話か。(小林)
★★ 一番の盛り上がりは、メルダがパフェに感動するところ。
   それでええんか? ヤマト!!(飛田)


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2202第22話 宿命の対決!」


あらすじ

 時間断層で損傷を修復する戦艦ヤマト、分散していた元クルーも集結し、彗星帝国迎撃に再び出撃する。そこにズォーダーからヤマト撃滅の指令を受けたデスラーが現れ、デスラー砲をかわしたヤマトは接舷してデスラーに白兵戦を挑む。

Aパート:修理中のヤマト、プリンセス山南入院
Bパート:デスラーの襲撃、デスラー対キーマン

コメント

 同じような湿ったオープニングを二度繰り返すのは構成力が相当ないのだろう。前回はこれも湿った藤堂母の自殺シーンであった。森雪は記憶喪失のまま、古代たちは時間断層でヤマトの修理をしている。「最終決戦仕様」ということで変なレーダーが取り付けられ、改造は今のところ彗星帝国は戦艦と大型ミサイル中心だが対空砲が増強され、また、ほとんど活躍しなかったコスモタイガーを積む空母型アンドロメダが増産されて配備されている。やっぱりこのAI、どこかおかしい。

 少し前にゲーニッツが送った薬で加藤の息子も全快したようで、マジックワード「ゴレム」について知った古代たちはもう完勝ムードである。玉座を壊せば良いので次の作戦はヤマト1隻で、前回は雲霞の如くいたコピペ艦隊は随行せず、出撃直後にヤマトはデスラーの襲撃を受ける。山南とコピペ艦隊がいれば、デスラー砲の一発や二発は受けてもノイ・デウスーラくらいヤマトに関係なく簡単に撃沈できるが、僅差でデスラー砲をかわしてデスラー艦に突入したヤマトはモビルスーツによる白兵戦に移る。ロボットが主役なので名誉回復した加藤とコスモタイガーは今回も活躍の場がない。

 斉藤が蘇生体であることも明らかになるが、実はもう一人いるはずで、マニアの間では雪の補佐で美少女クルーの西条が有力候補らしい。本作では彼女は艦外に出ていないし、戦闘にも参加していないが桂木を刺殺しようとしたシルエットは女性で、オリキャラでストーリーに絡まないキャラなので、7章で思いっきり湿った話(両親が離婚したとか援交女子だったとか)をした後に自爆して死ぬはずで、それで雪の記憶が元に戻るのだろう。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと

 ヤマトと銀河は怪しい魔改造を受けている。本土決戦を前に、銀河の艦長が実は藤堂司令官の娘だったことが明かされる。またアベルト・デスラーが狂った独裁者ではなかった、と語るキーマン。いろいろと再会の会話で適当に状況を忖度させる話である。「私は人間でありたい」と語る娘藤堂だが、前話でAI信奉者から急にヒューマニストに心変わりしたのが唐突すぎ、こうしたセリフも上滑りするばかりである。
 決戦前にトランジット波動砲というご都合主義兵器の説明があるが、そのとき、古代がズォーダーとの再度の話し合いを提案する。熱血で独断専行するタイプだった古代が変わった?と思うところだが、同じような展開が「銀河鉄道物語」にあり、主人公の学は本作の古代よりはるかに熱血独断専行男だっただけに感動があった。そう思うと、本作の古代は何をやっても空気で存在感を表せていない。そしてまたもや唐突な白兵戦は、斎藤が蘇生体であることを暴くための仕掛けでしかない。

評点
 ヤマトに拘る理由が意味不明。(小林)
 AI艦隊を否定する藤堂娘。いやそれは主人公の古代がなすべきことでは?(飛田)


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