MUDDY WALKERS 

宇宙戦艦ヤマト 完結編 

宇宙戦艦ヤマト 完結編 1983年 日本 152分

監督
勝間田具治/西崎義展/舛田利雄
脚本
山本英明/笠原和夫/山本暎一/舛田利雄
西崎義展

出演
富山敬/麻上洋子/納谷悟朗
仲代達矢(ナレーター)

スト−リ−

 巨大な楕円軌道を描きながら地球に迫ってきている惑星“アクエリアス”。水の惑星であるアクエリアスの接近は、地球に大規模な水害をもたらす恐れがあっ た。一方、銀河の中心部では星同士が衝突し、崩壊するという異常事態が起こっていた。地球政府は古代進を艦長とする宇宙戦艦ヤマトを調査のために派遣す る。だが、調査中にやはり銀河の異変の影響で爆発したディンギル帝国の大機動艦隊に襲撃されてしまう。ディンギル帝国は爆発した自らの星の代わりに地球へ 移住しようとたくらんでいたのだ。もはや地球を救えるのはヤマトと古代しかいない。だが、ヤマトは艦隊との戦いで傷付き、古代も瀕死の重傷を負ってい た…。

レビュー

 1980〜81年にかけて放映されたテレビシリーズ「宇宙戦艦ヤマトIII」に続く作品で、このシリーズを完結させるために製作された。シリーズではある が、「ヤマトIII」の銀河系の覇権を争う2大国家「ボラー連邦」と「ガルマン帝国」が、映画冒頭で銀河の衝突という大異変で消滅し、「III」とは時間 軸はつながっているものの、新しい敵をめぐる最後のヤマトの戦いが繰り広げられる。

 「海から引き上げられたヤマトの最期は、再び海に沈めるべきだ」という西崎義展プロデューサーの美学を追及するためだけに創られたような作品で、映画と いってもある意味、イベントムービー的な色合いが強い。とはいえ、当時最高のネームバリューや技術を持ったスタッフを集め、手描きのセルアニメとしての技 術の粋を尽くして作り上げられた映像は、一見の価値がある。古代バビロニアの洪水伝説をモチーフに、水の惑星アクエリアスによって水没したディンギル星の 人々が、アクエリアスをワープさせて地球を水没させ、人類絶滅後に移住しようとするという設定も非常にユニークである。

 しかし、「ヤマトを沈める」という あるべきラストがあらかじめ想定されており、そのラストを理想通りのものにするためにすべての設定がなされているため、その独自の「美学」が受け入れられ ないものにとっては、ツッコミどころだらけ、穴だらけの作品と映るだろう。一作目で死んだはずの沖田艦長が「実は誤診で死んでなかった」こともそうであ る。またヤマトがディンギル星人の年衛星ウルクに「着陸」して砲撃する場面は、沖縄に向けて出撃した戦艦大和が、もし途中で沈まず沖縄にたどり着いていた らそうしたであろう作戦を思わせるものとなっている。「そうあるべき」という最期のためには、死人も蘇らせ、必然性のない攻撃もやってしまうのだ。

 そうした自身の美学に全身全霊を賭ける西崎プロデューサーの情熱には感服するが、作品としては、自分の思い入ればかりが強すぎて、独善的で普遍性に欠ける作品となってしまった。一流のスタッフを結集してできあがったが、映画は一流の出来とは言いがたい悲しい結末となった。

評点 ★★★

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