MUDDY WALKERS 

天使にラブソングを… SISTER ACT

天使にラブソングを 1992年 アメリカ 100分

監督エミール・アルドリーノ
脚本ジョセフ・ハワード

出演
ウーピー・ゴールドバーグ
マギー・スミス
キャシー・ナジミー
ウェンディ・マッケナ
メアリー・ウィックス
バーヴェイ・カイテル
ビル・ナン

スト−リ−

 デロリス(ウーピー・ゴールドバーグ)はカジノのステージで歌うさえない歌手。しかもマフィアのボス、ラロッカ(ハーヴェイ・カイテル)の愛人だった。奥さんと別れて結婚して欲しい、と願っているものの、プレゼントでもらった毛皮のコートに奥さんの名前が入っているのを見つけて怒り心頭。ボスに毛皮を突き返すが、そこで殺人現場を目撃してしまう。現場を見たものは生かしておけない、と豹変して愛人デロリスを殺そうとするボス。デロリスは刑事(ビル・ナン)の発案で、街中にある修道院に身を隠す羽目に。そこでは、これまでとは正反対の清貧な暮らしが営まれていた。辟易するデロリスに、修道院の院長(マギー・スミス)は一つの働きを持ちかける。

レビュー

 夜の街で酔客相手に歌っていた歌手が、それとは正反対の修道院に身を隠す。その清貧きわまる窮屈な生活に辟易する中、歌を武器に、超へたっぴーな聖歌隊を歌って踊れるゴスペルクワイアに返信させてゆく。ある意味娯楽の王道をゆく、安心して楽しめる一本である。

 尼僧の格好をしたウーピー・ゴールドバーグの姿があまりにもよく知られているので、何となくそれだけでストーリーが分かったような気になる。その「分かったような」の部分は決してはずさないのだが、不思議と映画を鑑賞していると、最初は尼僧ではなくシュープリームズもどき、ダイアナ・ロスもどきの安っぽい歌手だったり、場違いな修道院の暮らしが辛くて抜け出そうとしたり…と、ゴスペルクワイアにここからどうやってたどり着いて発展していくのか、と逆にハラハラしながら楽しむことができた。そして唐突に聖歌隊の指導を任されるデロリス。おずおずと声を出す見習いシスターがきれいな声で歌い出す場面でぐっと引き込まれ、そこから最後まではじけていく感じがとても楽しかった。これまでとは打って変わって美しいハーモニーで荘厳に歌う尼さんたちの聖歌隊が、突然はじけたようにリズムに乗って体を揺すりながら歌い出す場面は、そうなると分かっていても感動してしまう。

 ただ、もっと楽しく歌いましょう、だけではなく社会や社会の悪から隔絶して清貧を保ちましょう、という姿勢できた修道院を、外に出て人々のために仕えましょう、と方向転換させていく発想も素晴らしいと思った。だからこそ、自ら進んでこの道に入ったはずの尼僧たちも、デロリスを受け入れ、彼女と一緒に行動することが出来たのだと思う。コメディーだけど、それだけで終らないものを投げかけてくれるところが、この作品をより愛されるものにしていると思う。

 残念なのは、歌って踊れる尼僧たちの歌う歌の大半が、ゴスペルではなくて普通のポピュラーソングだったこと。ラブソングを神様に向かって歌うという発想は良いと思うのだけれど、それなら、もう少し、デロリス以外の修道院の尼僧たちが、どうしてここに来てこういう人生を歩もうと決めたのか、そういうところも語られると良かったかな〜。

評点 ★★★★★

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