◇MUDDY WALKERS
■心の旅 REGARDING HENRY
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スト−リ−
ヘンリー・ターナー(ハリソン・フォード)は辣腕弁護士。医療ミスの裁判では被告の病院側の弁護人を務めて不利な戦いを見事勝利に導いた。その合間に家に電話すると、購入したダイニングテーブルが気に入らないから返品するよう家政婦のロゼラに指示を出す。判決にがっくりとうなだれるマシューズ夫人。そんな様子には目もくれず、ヘンリーは弁護団である事務所仲間とオフィスで乾杯する。そのあと夫婦でパーティーに出かけるが、外出前、ヘンリーは一人娘のレイチェル(ミッキー・アレン)に、ピアノにジュースをこぼしたことで厳しく叱り、部屋に閉じこもっているよう指示する。妻のサラ(アネット・ベニング)とともにパーティ会場から帰宅すると、サラはヘンリーに、レイチェルに謝るように言い、しぶしぶヘンリーは了承するが、レイチェルにかけた言葉は謝罪にはほど遠いものだった。そのあとタバコを吸おうとするが、買い置きがないことに気付いたヘンリーは家政婦に腹を立てながら、近くの店に買いに出かけた。ところが、店に入るとそこには拳銃を持った強盗がいた。「金を出せ」という要求に渋る様子を見せると、強盗は発砲。鎖骨と額に弾が当たり、ヘンリーはばったりと倒れる。 | ||
レビュー
記憶喪失という症状の人に出会ったことがある人は少ないだろう。しかしドラマや映画、少女漫画などには昔からよく登場する。記憶を失うという出来事はそれほど劇的だ。もっとも、高齢者が認知症(いわゆる痴呆)になると記憶喪失に似た状態になる。亡くなった祖母がそうだった。家族のことがまったく分からなくなったばかりか、自分が結婚したことも忘れて、私が聞いたことのない旧姓を名乗ったこともあった。幼い頃のことほど、残るのである。この祖母は痴呆が進んで口がきけなくなる少し前に洗礼を受けたが、そのとき病床に来てくれた牧師と母が賛美歌を歌うと、祖母は歌詞も見ずに一緒に歌った。幼い頃、教会の日曜学校に行っていて、そこで覚えたというのだ。母もそんなことは、一度も聞いたことがなかったという。病気や事故で記憶を失ってしまっても、なお頭に残るもの。それはその人にとってかけがえのないものなのだろうか。 | ||
MUDDY WALKERS◇