MUDDY WALKERS 

パーフェクト・ワールド A Perfect World

パーフェクトワールド 1993年 アメリカ 138分

監督クリント・イーストウッド
脚本J・リー・ハンコック

出演
ケヴィン・コスナー
クリント・イーストウッド
ローラ・ダーン
T・J・ロウサー

スト−リ−

 1963年のアメリカ。脱獄犯ブッチ・ヘインズ(ケヴィン・コスナー)は、8才の少年フィリップ(T・J・ロウサー)を人質に取り、逃亡を図る。州知事の威信をかけて、何としても被害者なしにブッチを捉えようと、テキサス州警察署長レッド・ガーネット(クリント・イーストウッド)は自ら陣頭指揮を執りつつ、最新機器を搭載したトレーラーでブッチを追跡していく。しかし、レッドの周辺には、州知事から派遣された犯罪心理学者サリー(ローラ・ダーン)やFBI捜査官など、自己主張と自分なりの流儀でもってこの事件を取り扱おうとする者がおり、捜査方法をめぐって始終ぶつかりあっていた。一方のブッチと人質の少年フィリップとの間には、立場をこえた不思議な友情が芽生えはじめていた…。

レビュー

 私の買ったDVDのケースには「イーストウッド×コスナー 2大スター夢の初顔合わせで贈る、スリリング・サスペンス」というキャッチコピーがついているが、これを鵜呑みにし、期待して見ると、がっかりするかもしれない。これは作品に問題があるのではなく、内容とはそぐわないキャッチコピーをつけた販売元の方に問題があるのだ。むしろ、脱獄犯と人質の少年との奇妙な逃避行を描いたロードムービーというべきであろう。

 60年代という時代のせいなのか、脱獄犯の追跡といっても、ずいぶんとのんびりした感じがする。現代の感覚に慣れた私たちにとっては、むしろ間延びしているようにも思われる。しかし、ここで描かれるのは追跡劇のスリルではなく、追跡する者と追跡される者、それぞれの心理である。特に、脱獄犯ブッチと人質の少年フィリップのバックグラウンドが大きな意味を持っている。映画の中では決してくどくどと語られたりしないが、短いセリフや表情の裏に隠されたブッチとフィリップの「探し求めるもの」に思いをはせるとき、ふたりの目指した“パーフェクト・ワールド”が何なのか、見えてくるのではないだろうか。

 ケビン・コスナーには珍しい悪役で、彼の演技には賛否両論があるようだが、私は特に悪いとは思わなかった。ケビンよりもむしろ、彼と行動をともにする子役の少年がすばらしかった。口数が少ないが、それはこの少年が複雑な家庭環境で育ったことによると思われる。単に口数が少ないのでなく、自由に思ったことをいったりしたりすることを抑圧されてきたのだな…ということを思わせる演技があったからこそ、ラストの感動もより一層大きなものとなった。

 DVDの日本語吹き替えでは、クリント・イーストウッドの声を山田康雄があてている。まさにはまり役である。ただ、子役は子供が声をあてているのだろうか、ちょっと演技力にギャップがありすぎて、辛いものがあった。できれば、最初は字幕でご覧になることをおすすめしたい。

「彼は父の心をその子供たちに向けさせ、子供たちの心をその父に向けさせる。」 (旧約聖書 マラキ書4:6)

評点 ★★★★

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