Mobilesuit Gundam Magnificent Theaters 2005.

An another tale of Zeta・・・INTERVIEW


(インタビュー 2022/11/25)




機動戦士Zガンダム ハヤト・コバヤシさん
※本作の記述とは関係ありません。




はじめに

ハヤト: 皆さんこんにちは、カラバのハヤト・コバヤシです。ATZのインタビュアーを務めています。

小林: 作者の小林昭人です。


1.ザ・クラウン(シーズン1~3)続き



小林: 6~7年ならともかく、10年続くとはスタッフも思っていなかっただろうし、やっぱり現代に近づくにつれ話が気難しくなるな。シーズン2で終わらせればきれいな話だったのだが、シーズン3は作風に粗さが目立つというか、4、5とますますひどくなるんだろうな。

ハヤト: 我々の仮説では主要な情報源であったフィリップ王配の病状悪化が3以降の作風に影響したと思いますよ。2まででしたら彼はまだ元気でした。

小林: 1~2、そしてシーズン3の中頃までは当時の世相を活写する緻密さもあったと思うんだよね。3も7話(月の正体)くらいまでなら、このシリーズ独特の精神性の高さが垣間見えて見応えがあった。8話(宙ぶらりんの男)あたりから崩れるんだが。

ハヤト: 私は3話でしたね。どうも何か突っかかったような、アバーファン炭鉱事故がエリザベスに落とした心の影が十分に活写されていなかったと思うんですよ。彼女はこの事件を教訓にしていて、その後十数回も慰霊に訪れたんでしょう?  その闇が十分に描かれていない。1,2の様子ならできたと思うのですが。

(政治家)

小林: ウィルソン首相も少々残念な描かれ方だった。彼は労働党の党首で、これまで女王が相手にしてきたチャーチル以下保守党の首相とはぜんぜん違うタイプでしょ。ある種の友敵感情があり、互いに評価しつつ緊張関係があるという。概ね良かったんだが、退任は唐突だし、10話で復活するけどすぐ引退とそれ以前の首相に比べて扱いにぞんざいさが目立った。

ハヤト: もっとひどいのはヒース首相でしょう。保守党の政治家で、ある意味ウィルソン以上の逸材と思わせておいて2話で消滅(文字通りの意味)している。2シーズンのアトリー氏(マクミラン後の首相)よりはマシでしたが、アトリー氏の登場はシリーズ最終話でした。

(ラッセルズ秘書官)

小林: シーズン3では失望はまだある。マーガレットの夫で写真家のアンソニー=ジョーンズ(スノードン伯爵)は2ではエキセントリックなバイセクシャルで秘書官のラッセルズに「王室の生活に絶対に馴染まないし馴染めない」とまで言われた男だが、3での常識人ぶりはどうだろう。まるでマウントバッテン将軍みたいで、写真家としてやっていられるのかと思うくらい人格者の丸い普通の男になっていた。

ハヤト: ラッセルズ秘書官については、1~2では大きな存在感を示したキャラでした。調べると貴族ではないんですが(伯爵家の係累ではある)、トレンズ演じるラッセルズは王室メンバーや自他ともに認める「最高につまらない人物」を好演しています。押しても引いても何も出ない堅物なんですが、王室は彼がいないと廻らない。行事作法慣習法全てに精通していますが誰とも馴れ合わず、引退しても女王や後任の秘書官からアドバイスを求められるくらい有能な人物です。その事実上最後の仕事がスノードンの身辺調査

小林: 女王も認めていたマーガレットとタウンゼント大佐との恋愛を破局に追いやった人物だが、アンソニーについては彼の放埒な生活は芸術的感性を磨くために必要不可欠なもの(だから相容れない)と指摘するあたり、ただの堅物ではないことをちゃんと描いている。こういうのが見たいんだよね。

ハヤト: 王室であれほど権勢を振るった人物が引退したら人形細工に没頭というのも真のイギリス紳士の理想を見るようです。ホンモノはキャリアを金に替えたり天下りなんかしないんです。調べると分かるんですが、何と憲法にまで業績を残しているんですよ。ラッセルズ原則といって、議会に一定の条件が欠ける場合には君主は解散を拒否できるというもので、これはイギリスの憲法の一部になっています。

小林: この原則だと安倍や小泉がやったような7条解散はほとんど阻止できるし、費用ばかりかかり、もっぱら自民党の都合の総選挙、ほぼ1年おきもできないことになる。不文憲法の国の方が優れていることはあるんだね。脇にある人物もその人柄信条を描きこんでいたことは良かったんだが、3では余裕がなかったようだ。

(チャールズの恋愛と人格)

ハヤト: 4の時期ではエリザベス女王は訪日(1971)するはずですが、8話の昭和天皇に対するぞんざいな扱いを見ると期待できないでしょうねえ。まあ、皇室に関心あるのは日本人だけですが。

小林: 訪日場面自体ないという話だ。まあ、シリーズ3の数少ない美点としては、「若いカミラが見られる」ことだろうか。何せイギリス国民を含む大方の視聴者にとっては、チャールズ国王の后のこの夫人は登場した時から「おばさん」あるいは「おばあさん」だったから。

ハヤト: それもチャールズ不人気の理由ですね。あんな超美人のダイアナを放り出して、何であんなおばさんに走ったのか。そこの説明は良かったと思います。カミラはチャールズより年上ですが、昔のクラスメイトのような、彼にとって気心の知れた女性だったのですよ。容姿とか年齢とか関係ない。

小林: 王室伝記作家の説明では、チャールズの男性としての魅力が足りなかったので、カミラはより魅力的なボウルズに走ったとある。ドラマではマウントバッテンとエリザベス王太后の策略でボウルズとカミラの両親を呼び、結婚させてチャールズから引き離すんだが。

ハヤト: シリーズ2にゴードンストウン時代の話があり、片鱗はあったのですが、チャールズの人柄については3でかなり描かれますね。この時代は父フィリップの毒父ぶりが言われるんですが、毒父といえば2の方がよほどで、まあ、この時期(制作時)寝込んでましたから同情もあったのでしょう。その分、気が優しくて個人主義者でもある彼の人柄に多くを割くわけです。

小林: ウェールズでの留学で大公就任時に用意された原稿に手を加えたことはエリザベスは厳しく叱責したけれども、どういうわけかこれまでこういう場所では必ず口を挟むフィリップがいなかった。つまり、息子の演説を暗に支持していたという描写だが、3では全般的にフィリップはスノードン伯爵同様「いいもの」になりすぎていて逆につまらないな。死にかけた90超の年寄りに鞭打つような描写はできない事情はあったと思うが。

ハヤト: 対象となった人物の意向というのは、こういうドラマでは無視できないものがあります。4話でも制作されたドキュメンタリーをエリザベスが不出来だからとお蔵入りを指示する場面があります。チャールズ国王やフィリップ殿下の意向を無視してまでドラマ制作を強行することは、この作品ではできないと思いますよ。

(話が見にくい理由)

小林: 現代に近づくほど映像資料を含む資料は豊富になるが、単に事実を羅列していても面白いドラマにはならないわけで、そこにセンスが問われるんだが、3の時点で4年目、1~2が好評だっただけに口を挟む人間も多くなる。先のことを考えると、これは大変なものに手を出したなという感じだな。

ハヤト: ま、Netflixの看板作品です。お手並み拝見と行きますか。


2.ちむどんどんの次の作品



小林: 実はこの作品については見ないことに決めているんだ。あのちむ子の後だし、テーマも優等生的で面白くなさそうだから。それをちむ子を散々酷評した連中が必要以上に褒めちぎるに決まっているからさ。だってネットで書く人って、我々より精神的に強くもなければ公平でも聡明でもないでしょ。以前書いた言葉に縛られて、ロクな批評にならないことが目に見えている。

ハヤト: ま、出来は朝ドラの平均点はクリアしていますよ。前がちむ子でなければ普通の朝ドラでしょう。ですが興味が無いとまでいう理由は?

小林: 主人公の人力飛行機が飛んでいるのを見た時点で見るの止めた。何でかって、あの飛行機が飛ぶのは当たり前だからさ。ああ、これ書いてる人、飛行機とか女性パイロットとかについて通り一遍程度の関心しかないんだなと分かってしまった。

ハヤト: 毎年琵琶湖で行われている鳥人間コンテストですが、出場機の多くが発射台を離れた途端落ちるのが大半ですね。

小林: ところが常連で落ちるどころか十数キロも飛ぶのがいてさ、その人力機の特徴があの形。鳥コンテストとかいう特殊な飛行に特化した構造で、二十年以上出場しているからノウハウは完璧、それがいつもトリを取るんだよね。チャンネル変えるけど。

ハヤト: アナタ高専のロボコンも嫌いですね。

小林: あれもつまらないね。高専じゃなく中学生ならやっても良いけど。技術開発ってもっとコツコツした、もっと発想のスケールの大きいものじゃない。あれ見てると高校模試でやれ偏差値だ東大だと囃しているアホどもと同じ匂いを感じるんだよ。決まったテストで良い点取りました。しかしそれで良い技術者になったり、ウクライナ戦争みたいな戦争を戦える良い指導者になるわけじゃない。それを強く感じたのは福島原発事故だけどさ。

ハヤト: ま、最初から飛ぶのが分かっている人力機を選んだのはスタッフでしょうが、それで人力機を作る過程の大半が略化したのは事実です。おかげで大会は操縦する主人公の脚力勝負になってしまった。

小林: あの飛行機には昇降舵もないんだ。重くなるから付けられないこともあるが、レギュレーションだよね。つまり、ピッチ方向のノウハウはあの飛行機の製作ではいくら作っても得られない。そんなもの価値あるのか。少なくとも現実の航空機には全く関係ない

ハヤト: 時代の選択もありますね。現在放送中で2010年代というのは適切なのか。歴史としてまとめるには近すぎる年代です。女性エアライン機長の最初は2011年ですがね。主人公が2022年に機長というのは冒頭でやってますから既定です。

小林: それで主人公が一流大学(大阪大)卒の人力飛行機部員で実家は人工衛星のネジも作っている羽振りの良い中小企業で兄貴は東大、どこに視聴者の共感の余地があるのさ。制服も買えない非正規家庭の子供が子ども食堂に並んでいた時代なのにさ。そういうものを描くなとはいわないけど、描くなら描くで楽天的でない、真剣に時代を分析する目がほしいね。「舞いあがれ」の面子じゃ無理だ。

ハヤト: で、あなたは早々に投げたと。制作姿勢が安直というのが理由ですね。単純なサクセスストーリーに酔えるほど楽観的な時代じゃない。できないとは言いませんが、人力飛行機に「失敗しないモデル」を選んだ見識でアウトと。

小林: 主人公が暇を見て書いているという飛行機の絵もおかしいんだ。ホントに飛行機が好きな人間ならあの歳であの絵はないよ。翼の位置とか尾翼の角度とか機体自体のフォルムとか見てごらん。航空力学について知識があるか否かはひと目で分かる。とても阪大の学生には見えない。せいぜい小学生だ。そんなことも分からない人間に難しい2010年代(リーマン危機、東日本大震災、原発事故)なんかまとめられるわけないだろ。


閑話休題

小林: エールを送るつもりがどちらも辛口になってしまったな。

ハヤト: ま、ドラマを作るのは難しい時代です。情報化社会でどんな事柄でも豊富な情報が入りますから。目の肥えた視聴者を納得させるのは難しい。

小林: 「鎌倉殿の13人」は「草燃える」という大河の先行作品があるが、「草燃える」の方は今は視聴に耐えない。古い大河でも「徳川家康」や「武田信玄」は大丈夫だけど。

ハヤト: 作りすぎるとダメですね。虚構の部分は視聴者にすぐ見抜かれてしまう。お涙頂戴も昔ほど簡単じゃないです。

小林: 話自体に検証検証と騒いでいる人間を黙らせる強さがないと。つまり、話自体のまとまり、流れといった目に見えないポイントにキモがあるんだな。それはウィキペディアに書けないからそういう部分をきちんと評価できるマネジャーを選ぶ必要がある。

ハヤト: そこさえきちんと押さえれば、ウィキの意見は「評論家のご託宣の一つ」として聞き流せる。

小林: そういうこと、虚構か事実かは実は問題じゃない。ザ・クラウンが3の後段から急に面白くなくなったのはそこにあると思うよ。舞いあがれは言うまでもない。

ハヤト: では、今回はここまで。