Mobilesuit Gundam Magnificent Theaters 2005.

An another tale of Zeta・・・INTERVIEW


(インタビュー 2022/11/24)




機動戦士Zガンダム ハヤト・コバヤシさん
※本作の記述とは関係ありません。




はじめに

ハヤト: 皆さんこんにちは、カラバのハヤト・コバヤシです。ATZのインタビュアーを務めています。

小林: 作者の小林昭人です。


1.正直者はバカを見る・・・ウクライナ戦争273日目


ポーランドに着弾したミサイル

小林: 数日前にウクライナの調査団がポーランドに入ったはずだが、案の定、ミサイルの出自については続報はないな。おそらくロシアのミサイルで、しかも狙って撃ったものだが、それを認めるとNATO参戦だからな。そう思ったのは数日前のハーバードの国際政治学者のある論説で。

ハヤト: ウチは原稿料貰って食べているマスコミさんじゃありません。なので資料については、こちらが読んでいるので後は調べてよというスタンスですね。

小林: 大事なことはさ、誰が言ったかとかソースがとかじゃなく、内容に真実が含まれているかどうかでしょ。それを見分けるのに必要以上の調査が必要とは思えないね。日頃から新聞やテレビを見て考えていれば足りる。だいいち、そんなことをしている余裕が無い時もある。政治家の判断なんか大半はそうだ。で、私の見る所、そのハーバードの先生は「ウソ付いてるな」と。

ハヤト: 影響力がある人が一定の見解を示すと、右に倣えになりますね。日本なんか特にそうだ。ポーランドは誤爆、ロシアとは停戦、ゼレンスキーはエキセントリックな過激派、そういったところでしょうか。

小林: ゼレンスキーは過激派などではなく、単に実直で正直な人だよ。それが異常、異端に見えるくらい、こういった人々の目は歪んでいる。

ハヤト: アナタがハーバードの先生を疑うのは、彼の論説にロシアによる次の誤爆ミサイルに対する対処法が書いてあったからですね。本当に誤爆でしたら文脈上必要のない話だったので。

小林: 先にも述べた通り、条約は守られなければならない。安全保障条約のような伸るか反るかの時に発動される条約は特にそうだ。政府所局のほか国際法学者や外交専門家、経験者を交え、決して言い逃れができないように書かれているものだ。

ハヤト: 安全保障条約に有事での留保を認めると、NATOもそうですが、日米安保や米州機構、ロシアの集団安全保障条約などあらゆる安保条約が無価値なものになります。侵略軍が分秒単位でどんどん国を破壊しているというのにですねえ、同盟国が自国の都合で出動しない、対処しないでは条約の意味がないわけです。そこが批判する理由ですね。

小林: ポーランドで味を占めたら、今後はもっときわどい手を打ってくるに違いない。ゼレンスキー(異常者)限りで条約を空文化するのはいかにもガクシャの考えそうなことだけど、人を貶めてひどいこと言ったと、ガクシャの世界じゃ当たり前なのだろうが、信じた人間は後で後悔することになるんじゃないかな。


2.Netflix 「ザ・クラウン」



小林: こういうドラマってたいてい主題に近い位置で有力な取材源があるものだけど、このドラマは誰なんだろう。ロイヤルファミリーの誰かでしょ。

ハヤト: こういうのは後で何か出てこないと分かりませんから、知的遊戯の域を出ないのですが、私は中心人物はフィリップ王配とチャールズ(現国王)だと思いますね。あと、エリザベス女王本人が少々。

小林: ダイアナの死でフィナーレ(シーズン6)だそうだけど、私としてはエリザベスの最期までやってほしいな。もっとも大河じゃないので初登場は21歳で、フィリップがギリシャ王子の特権を捨ててエリザベスに婿入りするところから始まっている。見ると作風も各シーズンで少しづつ違うよね。

ハヤト: シーズン1,2は2016年から一挙に配信されていますが、制作自体は2014年下半期頃でしょう。シーズン3は2019年、シーズン4は1年措いて2020年なんですよね。そして現在のシーズン5は2022年、2年も空いていてエリザベス女王も亡くなってしまいましたが、フィリップ殿下の体調不良と重ねると平仄が合います。シーズン3以降はやや緊張した作風で、殿下も2018年以降は体調を崩して入院することが多くなっていましたからね。彼(フィリップ)の動向が私が彼を黒幕と見る理由です。

小林: おそらくこの辺でチャールズが父親の事業を引き継いだんだろう。シーズン3まで見たが、4の作風は想像付くよね。そして4と5の間が2年もあるのは、フィリップがいよいよ寝たきり(ではなかったらしい)で、2020年は質の良い取材源の確保に苦労したからだろう。

ハヤト: フィリップ殿下は2021年の4月に亡くなっています。ドラマへの協力は難しいでしょうね。

小林: イギリス王室には同じエリザベス女王を扱った映画「クィーン」があるけど、ここでのエリザベスは美化されすぎ、フィリップはほとんど付録の変なおじさんのような扱いだった。その意趣返しもあっただろう。同じ脚本家だし、その後も王室舞台劇を書いたから、チャネルはあるよね。


ウィンザー公役のアレックス・ジェニングス

ハヤト: 私としてはウィンザー公を演じたアレックス・ジェニングスの怪演ぶりが見ものでしたね。やや軽躁ですが策士で、資質自体はひょっとしたらエリザベスよりも国王に向いているかもと思わせた演技はさすがです。

小林: それシーズン3でチャールズの言葉として言わせてるね。ひょっとしたらシーズン1,2を見たチャールズ自身がジェンキンスの印象に取り込まれたかもしれない。チャールズとウィンザー公が文通していたなんて話は初耳だし、それにしてもチャールズは「オジ専」で色々な人と文通してるねえ、マウントバッテンとか。

ハヤト: 少しややこしいんですが、姉の葬儀でフィリップの肩を抱いていたマウントバッテンは兄の方で、「ディッキー」というあだ名でゴードンストウン校でチャールズの悩みを聞いていたのは弟マウントバッテンです。シーズン1,2ではチョイ役なんですが、3ではずいぶん存在感あります。クーデター起こそうとしたり、登場頻度もはるかに増え、これは「取材源が変わった」せいじゃないかと。シーズン3で女王役のクレア・フォイがオリビア・コールマンに変わりましたが、女王の雰囲気も変わり、フォイの愛くるしさが消え、なにか近づきがたい人という感じになりました。これも「王子から見た母親像」と解釈すればそう見えますね。ただ、この作品の歴史描写には正確性という点で批判が多くあります。

小林: その批判だって外野の「私だけが事実を知っている」的なものばかりじゃない。ポストセブンのような、事実というのは当事者により見た目が違い、様々な解釈ができるものなんだよ。何が真実かなんて知る必要もないし、証明する必要もないじゃない。お芝居なんだからさ。

ハヤト: 我々みたいな人間はこのドラマは「誰のメリットになっているか」、「誰にメリットを与えるか」という点に注意しますね。「鎌倉殿の13人」でしたら、登場人物全員鬼籍ですから、何を書いても文句を言う人はいないでしょうが、この作品の登場人物の何分の一かは今も生存している。

小林: フィリップはともかく、チャールズは十分動機あるよね。フィリップの生前の評判は芳しくなかったし、チャールズに至っては「国王不適格者」の烙印まで押されている。

ハヤト: それをエリザベスと面会したウィンザー公の言葉で言わせているんですよ、チャールズは資質としては母親の女王に遠く及ばないが、カミラの助けがあれば良い国王になれるとまで言わせている。当時ダイアナいませんでしたからね。視聴者の多い番組で、ものすごいチャールズ推しじゃないですか。

 
(ザ・クラウン)昭和天皇はあまり似ておらず、ウィンザーに対する態度も辛辣。実際は右のような和やかムード。

小林: シーズン3のウィンザー公はデレク・ジャコビで完全に老いぼれていて見ていて哀れだったが、昭和天皇がウィンザー邸を訪問した理由が「憐憫(末期がんのため)」だったというのも、天皇のウィンザーに対する言葉がずいぶん辛辣(国民に見られたくない、死んだほうがマシ)というのも、日本皇室はイギリス王室みたいに饒舌な人少ないから、これは違うと思うけれども、たぶん取材は日本皇室には及ばなかったんだろう。

ハヤト: 昭和天皇は相手によっては結構いろいろ言う人です。最近言行録も出版されていますし、ウィンザー邸の訪問は宮内庁の反対が強かったものを天皇が特に要望して日程に加えたものです。当時の日本と欧州の関係はまだ戦争の記憶を引きずっていて、英国王室と対立関係にあるウィンザー公訪問は外交上のリスクもありました。訪問して公を愚弄するなんてことはなかったと思いますよ。

小林: やっぱり取材源との遠近によって歴史的精度の差が出るな。ウィンザー公の件については、ドラマで彼に最大の敵愾心を燃やしていたのがフィリップで、エリザベスが和解しようとすると必ず止めに入っていた。昭和天皇の言葉(とされるもの)もフィリップ視点なら理解できるよ。

ハヤト: どうもスタッフは英国王室と日本皇室を同じようなものと捉えているみたいですね。良質な取材源の確保がこの種ドラマの成功の決定的ファクターです。

小林: やっぱりシーズン1、2が傑作だと思う。しかし、ドラマとしてはシーズン3以降は(事件が多いので)見応えがある。シーズン4はサッチャー、ある意味、エリザベスといちばん付き合いの長かった首相(11年)で、しかも関係は悪かったとされるから、どう描くかは見ものだろう。


閑話休題

小林: 実はシーズン3までしか見ていないんだ。

ハヤト: しかし、近年のドラマにしては珍しく、長期のシリーズで作風も安定していると思いますよ。それはシーズンごとのギャップはありますが、ブレは比較的少ないといえます。ギャラクティカなんかひどかったですからねえ。

小林: しかし、取材源がフィリップ王配やチャールズ、エリザベスだとすると、シーズン5以降の制作には困難が生じるだろうなあ。シーズン3の昭和天皇の描写で我々が感じたようなブレの補正が難しい。フィリップはシーズン4に関われる状態ではなかったし、エリザベスは故人でチャールズは国王、ドラマについて助言を得ることは難しいだろうね。

ハヤト: 彼らが脚本を書いたりメガホンを取ることはありえませんが、助言や事実の指摘からインスピレーションを得る源です。フィリップがアポロ月着陸の飛行士にコンプレックスを感じて、実際に会ったら落胆したなんて本人以外の誰に分かるんです?


(ザ・クラウン)不遇なフィリップの母アリス

小林: シリーズ前半でフィリップの影響が大きいことは否定出来ないね。このドラマの隠されたテーマがフィリップの実家、滅亡したグリュックスブルク家(ギリシャ王家)の復権にあることは見れば分かるし、BBC王室アルバムの制作で窮地に陥ったイギリス王室を救ったのが彼の母親アリスなんてそうじゃない。それにアン王女は最もフィリップの資質を受け継いだ女性として描かれている。

ハヤト: アリスは一発キャラじゃありませんでした。シーズン1、2では1カットだけ、しかも精神病質者としての出演でしたが、シーズン3では3話も出演して、ほとんど聖女の扱いでした。精神病も実はそうではなく、滅びた旧弊な王室における誤った治療の被害者という説明で、ま、エリザベスは映画やドラマになってもフィリップ実家がテーマになることはないでしょうからね。

小林: たぶん、何十年か後に明らかになると思うけど、「ザ・クラウン」は英国王室が共同で作り上げたアートだよね。エリザベスは亡くなって10年もすれば現国王に国民の関心は移ると思うけど、アートは滅びない。「英国王のスピーチ」で観客がジョージ6世に親近感を持つようにね。現時点での王室メンバーが個々に知恵を出し合って、そういった存在になることを目指したんだろう。

ハヤト: それは王室もマスコミも必死で否定していますよ。

小林: それはしょうがない。が、視聴者は作品に単なる思いつきの虚構以上のものを映像に見ているはずだ。

ハヤト: では、今回はここまで。