Mobilesuit Gundam Magnificent Theaters 2005.
An another tale of Zeta・・・INTERVIEW
(インタビュー 2016/1/3)
機動戦士Zガンダム ハヤト・コバヤシさん
※本作の記述とは関係ありません。
はじめに
ハヤト: 皆さんこんにちは、カラバのハヤト・コバヤシです。ATZのインタビュアーを務めています。
小林: 作者の小林昭人です。
1.真田丸と大河ドラマの制作環境の劣化
小林: 大河ドラマはここ数年ロクなものがないけど、ヤマトもあんな感じだし、ガンダムだって死に体だ、「クール・ジャパン」で刑事ドラマの相棒と並んで唯一視聴率を取れるコンテンツだと思っていたのだが、、
ハヤト: 視聴率は良かったらしいですよ、今年の紅白歌合戦は40.1%だそうです。
小林: 最初の一時間だけならそれくらいだろう。真田丸は見ていたけれども、ゲーセンのシブサワ・コウが入っていたせいか最初からひどかったね。
ハヤト: 「テレビゲーム大河」と言った感じでした。合戦シーンなんか全然レベル低いですよ。エキストラもあまり使ってなくて練習もしてないからシーンが見るに耐えなくて。
小林: 「そんなもんCGでチャッチャと修正できる」とか言っていたんだろう。一知半解のバカの妄言を真に受けちゃいけないよね。
ハヤト: ウィキペディア大河といった感じもありました。ディティールなんかは結構細かくて、あまりツッコミを入れられない、入れてもらっては困る的な面白みのないドラマ仕立てで。で、話自体はどうかというと、全然面白くない。
小林: オープニングもひどいんだ。映像は実在する備中松山城だけども、全然断ってなくて、クレジットにも松山城のある高梁市の名前がない。勝手に撮影して素材として使っていたんだね。
ハヤト: NHKですよ? 大河ドラマですよ? そんなことあって良いんですか!
小林: このサイトも一〇年以上やっていて、ガンダムSEED以降をフォローしているけど、SEEDあたりで試された、あるいは最初の「好ましくない方法」がついにメインストリームに出てきた感じで。
2.パクリし放題、著作者の権利の軽視
小林: このバカっぽいサイトの元はコミケでさ、設定原作依存の劣化イラストのような同人作品なんか、それ自体で著作権を主張するような代物でなく、本来は「二次的著作物」で、創作の動機さえなくなるような代物だった。それじゃ誰も何も作らないよね。
ハヤト: しかし、DeMAのような会社がバンビジュの別働隊として動いて、「本当は違反なんだけれども暗黙の了解を得ている」形でアニメのカットとか動画とかをを切り貼りして提供していますね。
小林: 宣伝になるのは本当なんだ、コミケでは行き過ぎれば著作権を主張するが、企業とグルだからもっと大っぴらなDeMAは行き過ぎないように気をつける。一般読者は全くそのことを知らない。で、アニメ実況中継、カット山盛り、創案性ゼロのまとめ記事が提供されるわけで。
ハヤト: しかし汚いですよ、個人でやったらイリーガルな代物でしょう。
小林: この構図だと「しばき隊」もセットだよね、企業が著作者と合意して見た目著法違反をしているわけだけれども、お調子者が真似してホントの著法違反になりかねない。で、そういうのを牽制するチンピラの集まりが必要なわけで。
ハヤト: ウチにもさんざん来ましたよ。
3.評判は自分で作るもの
小林: いや、この作品見ていて思ったんだが、役者が脚本家の三谷幸喜を誉めなければ役がもらえないのかと、、
ハヤト: 正面切って三谷脚本を批判していた役者さんはいませんでした。後半では割と好演の真田昌幸役の草刈正雄さんも最初の頃はラストの「~の大博打じゃあ」の台詞しか見せ場がなく、滑舌が悪いと週刊誌で叩かれていましたね。
小林: 草刈正雄はベテランで他にも大河に出ているけど、別に滑舌が悪くもなければ聞き取りにくくもないよ。明らかに演技指導の問題で、そう思って「信州ことば指導」のスタッフを見たらアクション役者の丸山昭恵、確かに長野出身だが、別に方言指導の専門家でもないし、これはホントに名前を並べただけ。だから実は三谷が悪い。
ハヤト: 細かい所では確かにウィキなんかに突かれないように細かい話は取り込んではいました、しかし、登場人物の性格に一貫性がないというのはありましたね。
小林: 北条氏直なんか前半と後半とでキャラ違うんじゃないかと。たぶん、書き手の中にキャラが入っていないんだね。Zガンダムみたいだ、進行に誰も責任を負わない「私生児大河」とでも言おうか。
ハヤト: そこそこ有名でこの物語ではキーパーソンと言える人物の描き込みがひどいのですよ。ウィキみたいに小エピソードの切り貼りじゃストーリー作れません。
小林: 幸村の姉の村松殿なんか重要キャラのはずだが崖から落としたり。幸村の姉への手紙は現存する数少ない同時代資料のはずだが、真田丸では結局幸村は姉に手紙を書かなかった。
ハヤト: その場面は同時代資料の少ない真田幸村という人の人間観、人物像を知る数少ないもののはずです。源義経で言えば腰越状、それをオミット。あと、NHKドラマの特色として、登場人物が死ぬと「~ロス」とか言って囃し立てるのも見苦しくて。戦国時代の話で人が死ぬのは当たり前じゃないですか。
小林: それ以前にロスキャラの掘り下げがどのキャラもきちんとしていなかったから、死んでも余り感情移入できない。
ハヤト: スポット的には良い場面もあるのですよ。例えば林邦史朗の武田信玄、遺作だそうですが、無言棒立ちキャラの割には存在感ありました。
小林: 個々の要素がいくら良くても、そんなに良くもなかったが、全部組み立てて「ドラマ」になるかといったら、それは違うんだよ。
ハヤト: マア、我々の評価では真田丸は前作の花燃ゆ同様、完成度の低い大河ドラマということですね。
小林: 最後の家康との対決なんかどこの50年代かと、演出がクサすぎてこれは今やって良い代物じゃないよ。
ハヤト: 確かに緊迫感ゼロ、単騎で本陣に乗り込んだ幸村が撃たれもせずに家康に10分間も説教するというのは前代未聞でしたね。
小林: 確かにこの幸村斬り込み(大阪夏の陣)とか、川中島の謙信対信玄というのはどのドラマもリアリティを追求すると面白くないので多少は演出するがな、真田丸のはひどすぎた。三谷は「他もやってる」と言うだろうが、その他のドラマでも他は三谷のそれよりはずっとレベルの高い「やらせ」だ。
ハヤト: そういうのを大雑把に味噌糞一緒に同じと言って強弁するのはガンダムUCやオルフェ千葉氏のやり口ですよ。
小林: ある意味10年間このジャンルを「観察」させられてきた我々としては、「いつか見たような手口」がNHKを中心に散見されるのが痛々しくて。
ハヤト: このコメントもかなり痛々しいですよ。
小林: どこをどうやったらあの弥縫策の出来の悪いドラマにここまで感情移入できるのかと。
ハヤト: 自分の頭で考えてないんでしょう。あと、真田丸にはもう一つ特徴的なことがありました。出演俳優がほとんど「三谷組」の古株ばかりで、新人がほとんど起用されなかったことがあります。今の芸能界の事情でこれはまずいでしょう。
小林: すでに功成り名を遂げたような堺雅人みたいな俳優じゃなくて、もっと若い才能を抜擢してスターダムに載せ、ベテランがそれを支えるというのは大河ドラマの重要な機能だったはずだがな。
ハヤト: 斯界の再生産でも問題のあるドラマでした。何だか今の日本を象徴していますね。
小林: 次もゲーム美人の「女領主直虎」だから、たぶん、数年後には大河ドラマはその存在理由自体問われる事態に直面するだろうな。
4.テレビの地位低下
小林: 真田丸くらいで感涙できるような呆れ果てた学者はもういいよ。今回の紅白だが、視聴率は40%だそうだけども、少なくとも私の廻りには最後まで見た人間は一人もいなかった。
ハヤト: あと、大晦日といえばこれがあります。これもひどかったですよ、そもそもちゃんとしたスポンサーがついていないんです。トヨタとか日清食品とかじゃなくて、アディーレ法律事務所とか健康食品の会社とか変なCMばかり。
小林: 年末年始の華番組にグルコサミンとか過払い金請求のCMを見せられたらそれだけで萎えるわな。これも来年はもういいよという感じだ。
5.見えている問題
小林: 真田丸はホントにひどかった。演技指導をほとんどしていないのか、役者が動けはOKといった感じでリテイクなんかほとんどしていないんじゃないか、特に若い役者。これが大河ドラマだからねえ。
ハヤト: 出ている役者さんは堺雅人にしても長澤まさみにしても全然下手な人じゃないです。でも、肝心の演出者が何を演技すべきかをきちんと伝えていないんです。一言で言えばドラマに血が通ってないんですよ。
小林: つまり、放映ドラマとして水準以下の出来なわけで、最低の技術水準さえ満たしていない。こういうのはさ、見る人が見れば指摘できるよね。実はそこにアニメ研究家の我々が指摘できる以前からある問題というのがあってさ。
ハヤト: 日本のアニメーションの場合、特にサンライズ・バンビジュ系列の作品ですが、作品自体はそれほど重要でもありませんでした。併売されるプラモデル、グッズの売上が大事だったわけで、番組自体「30分の玩具CM」的なものから始まっています。
小林: つまり、作り手自身が「いっぱしの芸能作品」と認めていなかったわけで、その見方を変えられなかったことが後々まで祟った。
ハヤト: 一言で言うと、「批判を認めない」というスタンスですね。番組の内容を検討されたり批判されたりするとグッズの売上が落ちる、だから、「批判は敵」というスタイルでヤマト以降ずっと来ていますし、特に宮﨑駿の諸作品やガンダム系列の作品は顕著でした。Zガンダムがかなり叩かれましたからね。
小林: あの時すべきはちゃんとした批評ジャーナリズムを育てることだったのだが、そうはしなくて広告を引き上げる、取材をさせないなどイヤガラセで対処した。バンビジュも徳間(宮崎)もね。近視眼的で長期的戦略がなかったんだ。一流の批評家というのは一年や二年では育たない。あの時育てておけばとは今になって慨嘆する内容だ。
ハヤト: 結局、作品と批評との関係については十二分に検討されないまま、21世紀になってしまったのですが、そこにネットという新しいメディアが加わりました。しかし、上みたいな精神文化の延長上ですから、、、
小林: 批評は育たず、自家中毒のような自画自賛に溺れるようになってしまったわけだ。
ハヤト: 作品の本当の評価というのはステマが一巡した一年以上後というのが定説ですね。
小林: 「失われた20年」というけどさ、20年掛かって取り組めるなら、少子高齢化問題も、世界的に信頼のおけるグラミー賞のような批評ジャーナリズムも作れたんだよ。アニメで味を占めた、斯界の中でも特に怠慢な連中が石原と東京オリンピックのせいでNHKに出てきてしまった。これはがん細胞で、早めに駆除しないと大変なことになるが、もはや死病に侵された病人には言うだけ野暮か。
ハヤト: では、今回はここまで。