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An another tale of Z ATZ資料集(26)




 一年戦争の知られざるターニングポイント、サイド6の暗礁で行われたパッチの戦いについて参謀長のバーゼル准将がコメントする。「ヘパイスコス」はサイド6本土への侵攻を目論んだギニアス・サハリン少将のグワジン級戦艦で、これはやはり同じような場所でフォルティナのプリマコフ提督の迎撃を受けて撃沈され(第一次ラブレーヌ会戦)、サハリンも戦死している。ブッダは対艦砲に射撃を命じた。
「撃て(ファイア)!」
 榴弾砲では敵に致命傷を与えられないが、兵器を破損させ、炸裂する光球と破壊音で敵の恐怖心を煽ることはできる。巨砲が咆哮し、ティターンズ艦隊の前面に巨大な火球が次々と炸裂し、艦隊の前進が止まる。
「ファルコン抜きなら突破できると踏んだのだろうが、そうは問屋が卸さない。」
 巨砲の砲撃で敵艦隊の動きが止まったことを見たブッダは一挙に畳み掛けるべく、ロンバルディア以下の全艦に砲撃しつつ前進を命じた。発砲を停止していたQシステムも装弾を完了し、四散したアッシマーや恐慌しているハイザックはもはや問題にならない。






〇〇九八年九月一日 一一時一五分
高速戦艦「エイジャックス・ファルコン」


ッダが包囲戦術を採ったのを見たマーロウは機関長のブニコフの顔を見た。側背攻撃の計画は頓挫し、彼の高速戦艦は同じく速度を上げたアレキサンドリアと高速格闘戦に入っている。バルセロナ級の真の性能をガディが知っていたとは誤算だった。アレキサンドリアがミサイルを放ち、数十の光球が彼らの至近で炸裂する。
「機関長、ハイパーメガ粒子砲用意。」
 司令官の命令に、ブニコフ機関長が充填時間が足りないので使えないと返事を返した。ハイパー砲は宙域殲滅的な威力を持つ強力なビーム砲だが、充填に数時間を要し、しかもコロニーや遊星など静止目標に向けての射撃がマニュアルでの原則だ。抗議したブニコフに彼は部分チャージでの射撃を命じた。
「コンデンサーが持ちません、エネルギーの無駄です。」
 機関長の説明によれば、理論上はハイパー砲の小出力での連射は可能だが、充填効率が悪く、しかもコンデンサーが焼けるので撃てても数発、おそらくは三発が限度という。それ以上では流入したエネルギーが暴走し、発砲どころか艦そのものを溶解させかねない。
「一発当てればいい、重巡の対ビーム装置なら打ち破れる。」
 司令官の命令に機関長は渋々ハイパー砲の射撃準備を始めた。戦艦ファルコンの艦首から二門のビーム砲がせり出し、コンデンサーに送電回路を接続する。
「カウント開始、八%出力なら充填も三分で済みますが、三発が限度です。」
 ブニコフがハイパー砲のコントロールを砲術長のローに渡した。砲術長が敵艦をロックし、マーロウに照準完了を伝える。
「撃て(イレディエット)!」
 エイジャックスの艦首から戦艦大の強力なビームが敵艦に向けて放たれた。周囲数キロまで拡げられたヴェガシステムのデフレクターを打ち抜き、太い光の束がアレキサンドリアに迫る。




〇〇九八年九月一日 一一時二〇分
重巡洋艦「アレキサンドリア」


ペレータから追尾する戦艦がメガ粒子照準を始めたと報告を受けたガディは即座に操縦桿を左に倒した。艦を照らすメガ粒子の密度の増大に防御(ダメコン)オペレータが悲鳴を上げる。
「粒子レベルα波からω波へ、発射レベルです!」
「回避だ(イベイド)!」
 直後、艦の三倍ほどの太さのビームが巡洋艦を掠め、直前にあった小遊星が光の渦に没するようにして消失した。遊星帯の中でコースを大きく逸したアレキサンドリアはそのまま遊星の一つに接触して弾き飛ばされた。
「うわっ!」
 接触で側面砲の一つがもぎ取れ、船体がひしゃげた反動で艦が横転してクルクルと回転する。制御不能で別の遊星に衝突しそうになった時、もう一条のビームが彼らの鼻先を掠める。
「ヴェガシステム大破!」
 直撃こそ受けなかったが、強力なビームは彼らが衝突するはずだった遊星を原子に分解し、艦の対ビーム装置をオーバーフローさせた。サージ電圧で艦のコンソールが吹き飛び、装置のコンデンサーが次々と破裂する。
「畜生、あいつら何でも持っていやがる。」
「合体戦艦はひきょうだ!」
 レールキャノンの砲弾なら躱せる自信はあるが、レールガンより一〇倍も速いメガ粒子砲は躱しようがない、こんなオンボロ巡洋艦であんな化け物に立ち向かうこと自体が間違っているんだ。異臭と立ち込める煙の中、打撲や衝撃で傷だらけの副長ゼメキスが青筋を立てて操縦桿を握る艦長に文句を言った。エイジャックスはアフターバーンを点火して速度を上げ、デフレクターで遊星帯を跳ね飛ばしつつ、艦首のハイメガ砲を向けて彼らに迫る。
「だが、あんなもの、何発も撃てん。」
 コンデンサーが持たないはずだ。ガディはビーム攻撃を避けるため、艦隊の方向に大きく舵を切った。やはり射撃回数に限りがあるのか、三発目のビームはまだ放たれていないが、ヴェガシステムは先の砲撃で壊れ、今度撃たれたらアウトだ。






〇〇九八年九月一日 一一時四〇分
ティターンズ艦隊 重巡洋艦「アレキサンドリア」


し、今だ。飛散する小遊星を背に、眼下に応戦している装甲要塞空母と艦隊を見たガディは操縦桿を大きく倒すと艦を急降下させた。降下しつつエンジンを点火すると一気に加速して空母に迫った。その後方を同じくデフレクターを全開にし、アフターバーンを点火したエイジャックスが追う。
「全パワーを解放!」
 アレキサンドリアのエンジンが咆哮し、艦をマッハ三の速度に加速させた。周辺の岩片がみるみる飛びすぎ、宇宙塵との衝突でデフレクターが鈍く発光する。空母が射界に入ったエイジャックスは発砲を止め、速度を上げた重巡洋艦はそのまま空母の上空を飛び過ぎた。
 ガガガッ! ガガッ!
 追いすがる対空砲火の火線が彼らの周囲に伸び、やがてそれも振り切ると、艦隊を突破したガディはそのままサイド7への針路を取った。追撃を中止したエイジャックスは減速し、ソロモン艦隊の砲火が止んだ。遊星帯を抜け、安全圏に逃れた時、ガディは操縦桿から手を放した。
「フウ、、」
「お見事です、艦長。」
 副長のゼメキスが艦長に拍手し、ハンカチで額の汗を拭いて周囲を見廻したガディは乗員たちの顔を見た。
「何とか、ここの面子は生き残らせたな。」
 そう言い、ガディは操縦席から立ち上がった。
「ヘルメス・ピークなんて冗談じゃないですよ。」
 代わって席に着いた操縦オペレータが艦長に言った。作戦前にガディがジャマイカンにそっと教えた航路は強度の放射能が充満し、しかも暗礁で操艦は困難を極める危険宙域だ。通過できたとしても艦は放射化して使い物にならなくなる。
「この艦一艦だけなら、最初からあの艦隊は突破できた。サラミスと足の遅い輸送船が邪魔をしていた。」
 自艦に数倍する高速巡洋戦艦にたった一隻で戦いを挑むのは無謀なようだが、実は計算づくの行動だった。バルセロ
(つづく)




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