アクイナス・マグヌス・ド・カミュ
地球連邦軍技術中将、ティターンズ技術総監、パリ出身、地球連邦のロボット工学の第一人者でエコール・ポリテクニクの元教授、エコールのほか、ロンドン大学やフランクフルト工科大学で教鞭を取った一流の研究者で、一年戦争時のG計画では最年少の研究員として参画している。その関わりから戦後も軍関係の研究をすることが多く、地球連邦製のモビルスーツの多くに彼の開発したプログラム、デバイスが用いられている。木星視察中に当時木星開発協力隊隊員として現地で医療活動をしていたシロッコと出会い、以降、彼を助手として雇って教育する。人間とロボット工学の融合を研究テーマとしており、彼の開発した技術の多くはシロッコに引き継がれた。
代々医業を務めるフランスの伯爵家に生まれ、医師免許を持つカミュは大戦中はしばしば戦争捕虜を用いた人体実験に関わっていたとされ、計画自体は連邦でも存在しないものとされているが、大戦中の捕虜の不審死のいくつかに彼が関わっていた疑いが提起されている。大戦後は人間とロボット工学の融合をテーマに研究を進めたが、その研究ノウハウには大戦時代の資料が用いられたとされる。が、その真相は〇〇九九年のカミュの死と研究施設の焼失から明らかになることはなかった。
〇〇九九年の事件でカミュはバスク大佐の制止を無視して自ら開発したコロニーレーザー砲をオルドリン市に掃射しようとしたが、直後、カクリコン大佐に射殺されてこの計画は阻止されている。このように医学から工学まで幅広い分野に精通し、連邦軍やティターンズの資金を通じて当時の水準を超えた兵器を次々と生み出したカミュは地球連邦の生んだ天才であった。彼が最後に開発した「サイコG」は二機が作られたが、強化人間専用機であり、その性能は同時代のどのモビルスーツ、モビルアーマーをも圧倒するものであった。
(第十六話「陰謀のトライアングル」)
「いよいよエウーゴ粉砕作戦の発動だ。核融合エンジンの何たるかも分からぬ俗物どもに教えてやりたまえ、君の創り出した「メッサーラ」の真の力を。」
(第十八話「エウーゴ受難」)
「男女間の事故(アフェア)はどこの艦隊でも割とあることでな、痴話ゲンカということであれば、誰も当事者の言うことなど取り上げない。それが真実でもな。それにこの娘、君に気があるようだからな、フッフッフ。」
(第二十話「つかの間の休日」)
「旧ジオンにはコロニーを改造したビームガン「ソーラ・レイ」も存在した。ソーラ・レイといい、このJミサイルといい、旧ジオンの兵器技術は素晴らしい。」
(HIA資料「青い空と白い雲」第40話)
見たかね、シロッコ君、これが師の作品(masterpiece)というものだ。武運つたなく圧倒的多数の敵の前に敗れ去ったが、あの抗堪力、あの機動能力、ジオンやソロモンの誇る大戦艦も手も足も出ないではないか。エンジンが完全なら、あんな砲撃はかわし、『サイコG』は戦艦の艦橋を次々と叩き潰したはずだ。拡散メガ粒子砲など通用しない。マスターピースとは、『メッサーラ』のような中途半端なゲテモノではないのだよ。
(作者メモ)
作品では脇役の割に二〇〇八年の討論会では人気のあったカミュ技術中将ですが、私も好きな人物で、ある意味作者の本性を出せたというか、やりたい放題やっていたという感じのキャラです。反面、作品での彼の異常さがシロッコなどの比ではなかったために、本来はカミュの位置を担うはずのシロッコのキャラが彼が死ぬまで霞んでしまったという反省もあるキャラです。本作ではシロッコの活躍は専ら第四部です。
アーサー・ハリス
自由コロニー同盟軍大尉、軽巡洋艦『ホープ』副長
木星沖海戦、レダ星域会戦では『レイキャビク』のセンサー担当士官(SIO)を務めた士官。専門学校卒だが上級の資格欲しさに同盟軍に入隊した。その後士官に昇進し、『レイキャビク』に配属される。大尉昇進と『ホープ』への転属でベテラン艦長ケン・バニス中佐の指導を受けている。『ホープ』機関士のヤナ・カバエフスカヤとは恋仲。かなり後年であるが、後に自分の艦『フォックスハウンド』を与えられる。サイド5出身、三三歳。
アシュリー・プレスコット
自由コロニー同盟軍少佐 大型巡洋艦「レイキャビク」航海長
戦後にオルドリン警備隊学校を卒業したレイキャビクの航海長、航海科を専攻し、艦隊大学の後にレイキャビクに配属される。寡黙な性格だがその航海知識は確かである。レイキャビク後は同艦の後継艦エイジャックスに配属され、引き続き航海長を務めている。デルタ基地に五歳になる娘エリカがおり、バーゼルの娘キャロラインと同じデルタ小学校に通っている。
(第三十三話「クロスボーン強襲」)
「速度最大戦速(トゥト・ヴァプール)!」
「ユニオン語ですね、分かります(アフィルマティフ)。」
したり顔をした司令に苦笑したプレスコットがテレグラフを最大に押し上げると、ソロモン共和国の誇る一二万トンの巨大なバトル・クルーザーは六基のエンジンを咆哮させ、唸りを上げて「ギア」に向かっていった。
(資料集「合体戦艦エイジャックス編」)
「合体戦艦エイジャックス、まるでスターガイアンの船だが、後始末が大変で、面白うてやがて悲しきという感じだな、貴官は楽しんだと思うが。」
「エイジャックスは最高ですよ!」
巨大戦艦の高速戦闘に興奮しているバーナードが言った。
アダム・リックス
タイタニア警備隊代将 宇宙戦闘隊司令官
タイタニアの首都アカイアの名門出身のタイタニア警備隊の若い指揮官。タイタン防衛の総指揮を担っている。しかし、力量不足を実感しており、より経験の勝るブレックスに師表を仰ぐ。謙虚で礼儀正しく、そして祖国防衛の強い信念を持つ勇敢な指揮官。人望もあり、マウアーやレオンチェフなど警備隊員の信任も厚かったが、0094年のタイタンの戦いで戦死する。死後、彼の役割はレオンチェフに引き継がれた。
(第十二話「タイタンの戦い」)
「退艦(リーブ)してください、クストーと僚艦は最後の攻撃をかけます。」
巻き添えにするわけにはいかない。彼に促され、ブレックスがゆっくりと立ち上がると、いずれ来るとは思っていた瞬間ではあったが、彼に敬礼した。被弾や衝撃で傷つき、両者とも煤けたボロボロの軍服を着ている。
「退艦の許可(パーミッション)を求めたい。」
「タイタニア国に対する、准将のこれまでの御尽力に感謝します。退艦を許可(グランティッド)します。」
アダム・T・メイスン
工作艦「スカパ・フロー」艦長
デルタ基地工廠長ドルンベルガーの片腕メイスンはドルンベルガーが中将に昇進して艦隊大学に退いた後にデルタ基地工廠長を引き継いだ。土星派遣艦隊には木星から技師長として参加し、艦隊唯一の工作艦「スカパ・フロー」の艦長も務めている。土星艦隊が前例の無い速度で土星に到達できたのはメイスンを初めとする同盟軍整備班の優秀さによる。
(第十一話「逃避行」)
「敵はバルセロナ級二隻を中心に艦隊補給艦を備えています。土星への遠征ですから当然ですが、新たに補給基地を持つとして、どの程度の物資が搬入されたのでしょうか、具体的な説明をお願いしたい。」
アッシマー TMA-044(原作NRX-44)
原作ではブラン・ブルターク操縦の地球連邦軍の空中戦用モビルアーマー。作品では後期ティターンズの有力スポンサーであるタッキード社開発の可変モビルアーマーで専ら宇宙で活躍する。モビルスーツの戦闘力と宙雷艇の積載力を兼ね備えた戦闘爆撃機的な機体。作品後半の事実上のティターンズ主力機。本作ではヤザン・ゲーブル、マウアー・ファラオが主に搭乗する。
(第三十八話「投資家ヴァリアーズ」)
セイバーフィッシュ戦闘機やガルダ巨人機の製造元、サン・ノゼに本拠を置く巨大航空機メーカー、タッキード社はモビルスーツ時代への転換が遅れ、「GM」や「ネモ」を開発した後発のノースウェスト社の後塵を拝するようになっていた。危機を感じた同社が、それまでの航空機や宇宙艇の製造技術を結集させ、攻撃用モビルアーマーとして完成させた機体がMA―044「アッシマー」である。地球・月間を余裕で往復しうるほどの航行性能と良好な居住性、重厚な装甲防御、ネモの三倍のペイロード、レールキャノン運用可能、対モビルスーツ戦から重爆撃までの多彩なオプション、そして可変機構による強大な加速性能でヒット作となり、同社の経営を救っている。
(第四十七話「グラナダ・エクスプレス」)
帰路も半分を過ぎ、機内でシャワーを浴びたジェリドは厨房の電子レンジで朝食のハンバーガーを温めると、ベッドでそれを囓りながら探偵小説の続きを読んだ。ちょうどクライマックスを迎えるところだ。犯人はモロサワだな、間違いない。エルスマンがリビングルームに一同を集め、事件の背景を説明している。
「グゥレイト!」
事件を解決した時の「ディアッカ・エルスマン」シリーズの決め台詞だ。
アッシマー重爆型
重モビルアーマー「アッシマー」は後期ティターンズの馬車馬的存在であるが、たいがいの戦闘艦の船体を打ち抜ける300oレールガンの基本武装の他、このような焼夷攻撃用の重爆オプションも存在する。レールガンを取り外した結果、大量の爆弾を積み、多様な攻撃に殲滅的威力を発揮する。
(第三十八話「投資家ヴァリアーズ」)
「あんなのがもう一機いるだと?」
負傷し、苦悶の表情で報告する参謀に彼は素っ頓狂な声を上げた。今見た機体でさえ圧倒的な破壊力を持っていた。彼とウズミラが苦心して整備した機械化部隊を赤子の手を捻るように蹂躙したあの巨大機が二機だと?
「モビルスーツなんかじゃないです、モビルアーマーです。」
「人型をしていたじゃないか!」
バンベドフが怒鳴った。今見た機体は確かに人型をしていた。足跡もある。
「ま、間違いありません、、あれは、、ティターンズの、、」
参謀はそう言い掛け、将軍の前に倒れ込んだ。
「おいっ! しっかりしろ!」
負傷した参謀を抱き起こした将軍は大声で救護班を呼ぶと、破壊の様子をもう一度見廻した。
「クロスボーンとは比べものにならん。レベルが違いすぎる。あれがティターンズか。」
アスター・ダイクン
ハマーン政権外務大臣
故ジオン・ダイクンの甥のジオンの外交官。バランスの取れた判断力と手堅い実務手腕を持つが、当人は国父である叔父の引き立てで出世したと思っており、自分自身を余り高く評価していない。戦前から戦後にかけてを外交のプロとして過ごしており、思想的に淡泊なことからギレン派やキシリア派から粛清を受けることも無かった。旧ダイクン派からの登用ということでハマーンによって外務大臣に任命されたが、当人は過分な地位だと思っている。無思想という点、ソロモンのリーデルと似たタイプの政治家だが、彼自身はあらゆる点でリーデルに及ばないと思っている。しかし、クーデター時に狙撃されたハマーンを擁して共和国への亡命を画策し、亡命政権を樹立してクーデター派に対抗した手腕は非凡である。クーデター後はハマーンの最も信頼する重臣の一人になっていく。
(第十九話「ハマーンの初舞台」)
「FNVというテレビ局はどんな局なんだ? 偏向がかなり激しいようだが。」
ハマーンはダイクンに訊いた。
「何のことはない、普通のテレビ局ですよ。ジオンのZCVのようなものですな。他はもっとひどいと思って下さい。」
アナハイムGTO
アナハイム自動車製造の大型スポーツカー。水素エンジンを搭載し、最高速度は時速350キロに達する。エウロパ市ではレンタカーにもなっており、休暇で訪れたマーロウが使用した。乗用車ベースのあまり上等な自動車ではないが、頭を空っぽにして飛ばすには十分なクルマである。モデルは三菱GTO。
アナベル・ガトー
ジオン陸軍少佐 デラーズ・フリート戦隊指揮官 正常化同盟『小ナイトメア』
デラーズの部下で狂信的ジオニスト、その過激思想はジオン軍内部ですら異端と呼ばれたもの。崇拝するデラーズと共に『星の屑作戦』に参加し、ソロモン要塞を核攻撃するなどの活躍を見せるが、抹殺しようとしたコロニー住民の反乱とサイド5防衛隊、そして連邦第5艦隊の集中攻撃を受け、デラーズ共々宇宙に散る。反乱の内容は支離滅裂だったが、彼らの勇戦ぶりは後のジオン陸軍に影響を及ぼした。
(第四十八話「仲裁者」)
リューリックから見て、陸軍でもある程度まともな将官だった禿頭のエギーユ・デラーズは、一年戦争後、つまらない反乱事件を起こして連邦軍に討伐された。デラーズは英才だったが、アメリカ大陸にコロニーを落として地球市民を飢えさせようという迂遠そうな彼の計画は、どう美化しても無益な大量殺人計画(ホロコースト)でしかなく、落とされそうになったサイド3「ジオンスドルフ(ジオン村)」住民の手でコロニーの軌道が変更されたことによって挫折した。デラーズの艦隊は背後を第五艦隊とオルドリン警備隊に襲われ、降伏を拒否したデラーズは宇宙の藻屑と消えた。核をサイド5で使って感涙して見せるなど、彼らはどこか劇画調の時代錯誤(アナクロニスムス)な集団で、それは今でも大差ないとリューリックは思っている。
アーナンダ・ブッダ
ソロモン共和国軍少佐 大型巡洋艦『レイキャビク』艦長
巡洋艦『レイキャビク』副長、少佐、35歳、サイド5出身。実家はオルドリン市のカンダカ寺で彼自身僧侶の資格を持つ。同寺はサイド5で唯一仏舎利を祀っている名刹で、彼はその三男である。一年戦争後、修業の一環として同盟軍の前身オルドリン防衛隊に教誨師として入隊したが、デラーズ事件の際に非凡な戦術的センスを見せ、当時の上官の強い推薦で士官に任官する。マシュマーらより先に木星に赴任していたが、『レイキャビク』の到着後にヤゾフ中将によって同艦の副長に任命された。独特の求道者的外観を持ち、非番時は読経に、休日には食堂で乗員に対する仏法説話に励む彼は『レイキャビク』の乗員の中でも異彩を放っているが、彼のヘアースタイルはハイスクール在学中のパフテマス・シロッコに影響を与えたと言われる。おっとりした性格だが艦長マーロウには信頼されており、また、他の乗員からの信頼も厚い。生涯独身の誓いを立てているが、はるか後年のエマ・シーンとの出会いは彼のその誓いに動揺を与えている。
(第四話「レダ星域会戦」)
「止めてください、ディーゼル少佐、ツポレフ少佐、砲術長と機関長が争ってどうするんです。とにかく、これはあなた方の罪じゃないんです。それに過去はどうであれ、今の我々は自由コロニー同盟軍です、連邦でもジオンでもない。」
アプザラック(輸送空母)
フォルティナ独自の兵器である巨大モビルアーマー『アプザラス』は艦艇数の少ない同国の不利を補うために開発され、1年戦争中を通じておよそ120機が生産された。現存するのはその約半数だが、本来はサイド6専用兵器であるこれを周辺宙域でも使用可能とするため考えられたのが「アプザラック」級特殊輸送艦である。これによりコロニー間往還能力の無い『アプザラス』を遠征中の艦隊の護衛機として使用することが可能となった。
この計画は当時関係が親密化していた自由コロニー同盟政府が一年戦争の余剰品である大量の『アプザラス』の処理に困っていたフォルティナ政府に提案したもので、これにより複雑で精妙な兵器である『アプザラス』を完全整備状態で保管し、有事の際に投入することが可能になった。サイド6では建造不可能な(しかし、同盟の民間船レベルでは普通の大きさの)大型の船体はプラント社で建造され、フォルティナ防衛隊の指示を受けて10隻が建造されている。
0097年のジオン内乱では旗艦『ベルン』と共に出動し、搭載機はソロモン、フォルティナ艦隊の護衛として連邦艦隊に睨みを効かせた。
本級は宇宙母艦、軍艦というよりは大型の輸送船のようなものであり、アプザラス支援設備の他は武装は最小限に留まっている。アプザラスの他、マリーナ社の開発した「格納パック(アタッチキャリア)」を取り付ければ空母としての使用も可能であるが、フォルティナ軍所属モビルスーツの数の少なさから、この計画は見送られた。
アブドゥル・ハッサン
自由コロニー同盟軍軍医少佐 病院船『ボストーク』医長
サイド5から派遣された艦隊病院船の医師、緊急避難的なタイタニア難民の移送とそれに伴う環境の悪化に苦慮している。
(HIA資料「青い空と白い雲」第45話)
「批判ではありません、私個人の武人としての心構えを申し上げたまでのことです。」
アマルティア・セン
地球連邦軍大将 連邦第8制式艦隊司令官
対ジオン防衛の最前線に立つ第8制式艦隊の司令官。艦隊戦闘の知識と技量は連邦軍の諸提督の中でも屈指のものであり、ソロモンのマーロウさえ手玉に取るほどのものである。彼の上官のブルックス曰く、当代一流の用兵家。また、いち早くジオンのクーデターを察知するなど、戦略や政治のセンスも一流のものを持っている。が、実情は奇人変人の風評の方が先立っており、司令官室をバラの花で飾るとか、ターバンを巻いて出仕するという奇行の方が知られ渡っており、気難しく、扱い難い人物という評価である。実家はインドの藩王家の出身であり、第6夫人までを持つ、生まれながらの貴族である。父親のユディシュティラはラジャスタン藩王で母親のシーマは国際法学者、叔父のシヴァムは連邦議会議員である。
(第十五話「アーガマ入港」)
「そうか、それなら良いが、私はてっきり君の艦隊がエウーゴ討伐に出ると思ったのでね。知っての通り、エウーゴの本拠は月にあり、第八艦隊の守備範囲だ。せめて一言あってしかるべきと思ったが、そういうことなら了解した。」
(第三十五話「贖罪の代償」)
「先の戦争でガンダーラの美術品の大部分が失われましたから、これは貴重な品物です。」
(追加予定)
アプザラス