キャプテンハーロック

第16話「蛍・わかれうた」

あらすじ
 父母の墓参りに地球を訪れた蛍はかつてのフィアンセ一也と再会する。過去を謝罪し蛍に研究への協力を申し出る一也だったが、それは一也の妹になりすましてアルカディア号の秘密を探ろうするマゾーン・サキの罠であった。

Aパート:一也との再会、サキの拷問
Bパート:サキの正体、別れじょんがら節

コメント

 怪エピソード3部作の第3弾、ある意味傑作の16話はアルカディア号のオペレータ有紀蛍の悲しい過去と艦に乗り組んだ経緯が語られる。なお、本作では蛍は科学者の娘だが、後の作品の無限軌道SSXでは新聞記者の娘となっており、育ちの良い知的な家庭の出身という点は共通している。そのせいか、蛍は同じ松本作品である宇宙戦艦ヤマトの森雪に外見は酷似しているが、よりクールで成熟した印象である。
 ハーロックもそのように見ているようであり、一也との問題も蛍の自宅の門前まで来ていながら「彼女の問題」として突き放すなど、むしろ本妻ミーメが心配して助言するほど素っ気ない。ミーメは「恋は盲目(暗喩)」と言い、蛍がまだ一也に未練があることを指摘するが、マゾーンと結託している現場を見て目が覚める。
 一也に聴かせた三味線は「別れじょんがら節」と紹介されたが、「じょんがら(ちょんがれ)」とは「早口でまくし立てる」という意味で、これは三味線を伴奏に節を付けて唄う浪花節の一種である。そのため本来の演奏には詞(コトバ)が付いているが、詞歌の入らない「曲節」という演奏のみのじょんがら節もある。詞のある場合は「ハア〜」と節を入れ、七七調三句の唄で力強く唄い上げる。下記は代表的な歌詞の例。

お国自慢のじょんがら節よ
若い衆唄えば主(あるじ)の囃子
娘踊れば稲穂も踊る

 じょんがら節の三味線弾きは琵琶法師と同じく盲目が多いといわれ、編み物をしている蛍の母も編みつつ手元を見ている様子がないため視覚障害者と思われる。一也を操っていたサキも車椅子の身体障害者を装ったことから、元々蛍は障害者には深い共感があり、それを彼らに利用されたようだ。
 蛍が17歳という年齢の割に大人びているのは家庭による影響が大きいが、本作ではあまり生かされているとはいえず、後のSSXでも三味線話はきれいさっぱり忘れられ、東北女性であったことさえ分からないものになっている。蛍と障害者との関わりが描かれたのはマゾーンが扮したサキが最初で最後になる。松本も「次元航海」などで変な辻褄合わせに没頭するよりは、こういう設定をこそきちんと描いてほしいものだ。

評点
★★★★ 蛍の母が視覚障害者だと見抜ける者がどれだけいるか。



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