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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第49話「絶対防衛圏侵入」

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その万が一が心配なのだ!

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絶対防衛ライン
 ガルベストン本星の絶対防衛ラインは本星を取り囲む小遊星のアステロイドに敷設されている。ガルベストン星は元は地球に似た星の割には衛星やこのようなアステロイドが多いが、これは元からこうであったというよりは、過去の兵器実験で打ち砕かれた衛星の残骸と見るべきである。一部は要塞化され、ホルテスの防衛司令部が置かれている。

あらすじ

 ついにガルベストン本星の絶対防衛ラインに到達した地球艦隊、逆転を狙い、戦力を結集するガルベストン艦隊に対し、地球艦隊は最後の艦隊戦を挑む。

見どころ

 地球艦隊はすでに第6惑星を抜け、ガルベストン本星に接近している。第5惑星であるガルベストン本星の防衛ラインを固めるホルテス司令にカポネーロが迎撃準備を確認する。どうも見る所、ホルテスは士官時代のカポネーロの元上官の老将のようである。正規の隊長が枯渇し、今や内惑星を守るのは若年兵のほかはホルテスのような召集された老司令官、老隊長、老兵士ばかりである。軍部では絶対権力者のカポネーロも旧知のホルテスには頭が上がらないようである。

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兵士A 「カポネーロ総司令、ホルテス司令がお出になりました。」
カポ 「おう、ホルテス、どうだ、我が艦隊はそろそろ防衛ラインに到着したであろうな。」
ホルテス 「ご安心ください、抜かりはありません。」
カポ 「そうか、、ああ、さすがにやることが早い。だがホルテス、言うまでもないがお前の指揮する防衛ラインは我がガルベストンの最後の砦だ。何としても守り抜かねばならん!」
ホルテス 「心得ております。」
カポ 「備えは万全であろうな?」
ホルテス 「はい、目下の所、いささかの不安もありません。」
カポ 「しかしホルテス、私としてはバトルアタッカーをあと2、3機、そちらに向かわせようと思うのだが?」

カポネーロが老将を評価している様子が伺える。しかし、ホルテスの軍事知識はやや古く、また勇猛に走る余り、地球艦隊の戦闘力を過小評価している不安がある。案の定、ホルテスは激昂して増援は不要と返答する。

ホルテス 何をおっしゃるのですか総司令! 敵とてダイラガーはただ1機、しかも両軍の戦力は5分と5分、ですが地の利を得た我が方が有利、あとはすべてこの私にお任せ下さい。」
カポ 「しかしだな、、」
ホルテス  「お気持はわかりますが、バトルアタッカーは万が一に備え、本星にとどめておくべきです。」
カポ 「その万が一が心配なのだ!」

 今週の言葉はカポネーロ総司令。見かけ上、ガルベストン艦隊の戦力はまだ地球艦隊と拮抗しているが、問題は見かけではなく中身である。練度の低い兵士に粗製の戦艦や戦闘機、バトルマシン戦に不慣れな戦闘指揮官、ラインの現状はかなりお寒い。「総司令、それほど私を信用なされないのですか!」、ホルテスの一喝にカポネーロは口をつぐむ。

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 一方、地球艦隊の接近は廃墟に潜伏するサークたちのレジスタンスにも伝えられていた。テスからの連絡はまだ無く、総司令部のシンパからの情報にメンバーは色めき立つ。サークは救出作戦の開始をテレスに伝える必要があると言い、バッキが伝令役を志願する。防衛ラインでは命令を受けた兵士が戦闘機の整備ができないと抗議していた。

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兵士B 「2時間! たった2時間で終わるわけないだろう!」
兵士C 「上からの命令なんだ、頑張ってくれ。」
兵士B 「頑張れ? こんな状態でどう頑張れっていうんだ! 物資は少ない、たまに来る材料はガタが来て使い物になんない! 機械だけじゃない! 俺たちだってここしばらくロクなもん食ってないんだぜ!
兵士C 「そんなに怒鳴ると、腹減るぞ。みんな同じ気持ちさ。本星があの状態じゃ、補給は無理だし、可住惑星の移住計画が進まない今は、他の惑星からの補給も望めない。ガルベストンは、今追い詰められている。」
兵士C 「だがな、まだあの星は俺たちの星だ。どんなことをしても、守らなきゃならないんだ。戦うってことは、腹が減ることだからなあ。」

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 ガルベストン戦闘機を整備する兵士は準備を急げという命令を伝えた兵士に怒りをぶちまける。ホルテス司令の自負とは異なり、絶対防衛線を構成する個々の部隊、兵士はすでにギリギリの状態であった。ガルベストン戦闘機それ自体が地球の新鋭艦やラガーマシンに対しては乗員虐殺用のような機体だったが、バージョンアップはおろか、性能の維持さえできないことが分かる。突撃銃は簡素な品物に変えられ、食料の質も低下している。また、兵士の言葉から、可住惑星の探索が日に日に生産力が低下していく本星のための物資調達を兼ねていたことが説明される。探査基地の陥落は惑星の発見可能性ばかりでなく、ガルベストンの生命線をも断ったのだ。

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「私とてそれは覚悟の上だ、再び生きて帰ろうとは思わぬ」、地球艦隊では偵察衛星から堅固な防衛ラインの布陣を知ったアシモフが幹部たちにすでに第3連合艦隊の派遣を要請したことを伝える。ここで全滅しても無駄死ではない。アシモフは艦隊幹部に作戦を伝える。ただ、あの「防衛軍」の名前が出たことから見て、第3連合艦隊はたぶん寄せ集めで、第2艦隊以上に強力な艦隊でないことも確かである(これがその通りなのがダイラガー)。アシモフの口から初めて決死の言葉が出たことに伊勢は驚く。たとえ全滅するにしても、第2連合艦隊は絶対防衛ラインだけは壊滅させなければならないのだ。

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 王宮に戻ったバッキは配膳係に戻り、軟禁中のテレスに接触する。サークの指示はあくまで慎重だった。テレスに地球艦隊が絶対防衛圏に近づいていることを伝え、バッキは彼女がゲリラのリーダーになったことをテレスに話す。脱出計画はなく、テスが動かない以上、サークはこの対面をテレスとバッキの面会だけにとどめることにした。そして地球艦隊は絶対防衛ラインに到着する。

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 防衛ラインの手前で艦隊を停船させたアシモフは第2艦隊を敵陣に突入させる。激しい砲火の応酬の中、第2艦隊が防衛ラインを突破し、総司令部のカポネーロは手に汗を握る。「ホルテス、何をしておる」、やがて各陣地から反撃が始まり、第2艦隊は後退を始め る。「そうだ! その調子だ!」、カポネーロの嬌声にホルテスは追撃を命じ、第2艦隊の戦艦の被害が増えていく。「奴らは今に必ず動き出す」、背後から攻撃しつつ、ホルテスが気にしていたのは動かない本隊の存在だった。「連中、いったい何を考えておるのだ?」、地球艦隊の動きにカポネーロも首を傾げる。やがて第2艦隊が持ち堪えられなくなったことを見て、アシモフが次の指示を下す。

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アシモフ 「よし! 第3艦隊は第2艦隊の援護に向かえ! 第1艦隊は防衛ライン司令部を叩く! 全速前進!」

 第2、第3艦隊でホルテス艦隊を吊り上げ、本隊で司令部に突進するアシモフにホルテスは戦闘機隊の出撃を命じる。

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ホルテス 「我が方の戦力を分断し、叩こうという作戦か! だが、アステロイドベルトでの戦いは我々が有利なのだ! きゃつらを1隻たりとも通すな! 我々は防衛ラインの勇者なのだ! ゆけっ!」

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 カポネーロもホルテスも突出した第2艦隊が叩かれるのを挙手傍観していたように見えたアシモフの本隊の動きには注目していた。しかし、彼らが裏を掻かれたのはアシモフが第2艦隊を支援に動かした本隊をさらに二分したことだった。カポネーロに艦隊の実力は5分と5分と言っていたホルテスだが、アシモフはホルテス艦隊を相手にするには全艦隊の3分の2で十分と判断したのだ。残りの3分の1、アシモフの本隊は旗艦を先頭にホルテスの司令基地に突進する。その迎撃を命じられたのは、先に部品がない、食い物がないとこぼしていた第32竜騎兵隊の戦闘機部隊だった。

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管制官 「第32番、竜騎兵隊(ドラグーン)発進用意! 第32番竜騎兵隊発進用意!」
兵士C 「ほーら、おいでなすった。出撃するとこんなまずい物も食えなくなるなあ。」
兵士D 「よーし! 行くか!」
管制官 「竜騎兵隊、発進!」

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「よし! 安芸、ウォルター、キーツ! ダイラガーで出撃だ!」、ついうっかり忘れてしまうところだったが、艦隊戦が始まってほとんど出番がなかったこいつらにも出撃命令が下ったのだった。別に出なくても十分緊迫感のある戦いだが、バトルマシンにはバトルマシン、ガルベストンがアタッカーを繰り出したのを見て安芸たちにも出撃命令が下る。

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ホルテス 「左翼! 弾幕が薄いぞ! 右翼艦隊はもっと前に出ろ! 撃って撃って撃ちまくれ! 1艦たりとも残すな!」

「ダイラガーパンチ受けてみろ!」とアタッカーを殴りつける安芸、しかし、基地でアシモフを迎え撃つホルテスの気迫は(いろいろな意味で)ダイラガーをも上回っていた。あっという間にバトルマシン2機は画面の外に追い出され、地球艦隊とガルベストン艦隊の血で血を洗う艦隊白兵戦の光景が続く。

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アシモフ  「敵の懐に入り込め!」
ホルテス 「奴らを潜り込ませるな!」

 艦隊戦の最中、第32竜騎兵隊の兵士が地球艦の一隻を爆撃することに成功する。「貴様らなんかに俺の星を渡せるか! 喰らえっ!」、しかし、出撃前に彼が懸念していた部品の製造不良が仇になり、発射スイッチが作動しない。「くそおーっ! このポンコツがーっ!」、旋回した彼の機体を地球艦のビームが無慈悲に撃ち落とす。バトルマシン同士の戦いはアステロイドでの決闘でダイラガーが辛くも勝利する。そして主将同士の艦隊戦も決着が着きつつあった。

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アシモフ  「もはや後には引けん! 勝敗は気力の差だ!」

 アシモフは残る艦隊に攻撃の強化を命じるが、一方ホルテスは艦隊の損傷とバトルアタッカーの破壊で戦意を失いつつあった。「それだけ追い詰めておきながら、こんなに苦戦しているのはなぜだ、、」、地球艦隊の3分の2を撃破したものの、残る艦もあと10隻という報告にホルテスは督戦に出たカポネーロに詫びを入れる。

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カポ  「ホルテス! このザマは何だ! 早く態勢を立て直せ!」
ホルテス 「総司令、、」
カポ  「何だ、、」
ホルテス 「申し訳ありません、もはや勝利の道は、閉ざされました。」
カポ  「う、、何、、(絶句)」
ホルテス 「かくなる上は全員死してお詫びをします!

 「全軍に第一非常警戒態勢を発令しろ! 本星決戦だ!」、ホルテスは司令部との通信を断ち、ついに万が一の事態になってしまったカポネーロは本星決戦を命令する。しかし、艦隊戦に勝ったアシモフの艦隊も力尽き、もはや敵司令部を撃破する力は残されていなかった。「うぬぬ、、ここまで追い込みながら、あと一押しなのだ!」、アシモフ艦の通信を聞いた安芸はパティにダイラガーミラクルビームの準備を命じる。地球艦隊が撤退し、代わりに突撃してきたダイラガーにホルテスは唸り声を上げる。


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士官  「ダイラガーです! ダイラガーが向かってきます!」
ホルテス 「うぬぬ、、ダイラガーでここを落とそうというのか!」

「集中砲火を浴びせろ!」、司令基地の弾幕をかいくぐり、ダイラガーが基地にミラクルビームを浴びせ、絶対防衛ライン最後の砦はホルテスもろとも業火に包まれる。

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「絶対防衛ラインが全滅!」、ホルテス玉砕の報告は内通者からの連絡でサークにも届けられ、彼女は全滅という結果に驚愕する。次はいよいよガルベストン本星。そしてやはり甚大な損害を受けた地球艦隊とラガーメンバーは戦場で戦死したクルーたちの霊を慰霊すると、最後の戦いの準備に入るのだった。

キャラクター紹介

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ホルテス

 絶対防衛圏の守備を統括する高齢の司令官、本来、守備軍司令はルチアーノだったが、ルチアーノが前線基地の戦いで戦死し、より若いローチャーも探査基地で戦死したために司令官級の将校が不足したことで予備役から召集された元司令官ないし隊長で、ガルベストンの宍戸錠の異名を持つ。総司令のカポネーロとは何らかの関係があったように見え、老年の隊長や若年兵など雑多な部隊をまとめる統率力も高かったため、おそらくカポネーロの士官時代の上官と思われる。しかし、その軍事知識はやや古く、新兵器のバトルアタッカーについては使いあぐねている様子が見られた。絶対防衛ラインの責任者としてガルベストン軍のほぼ全兵力を率いてアシモフの第2連合艦隊と壮絶な死闘を演じた後、カポネーロに玉砕を打電し、ダイラガーミラクルビームで基地ごと粉砕されて戦死する。

今週のバトルアタッカー(2分15秒)

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武器:胸ビーム

 ホルテス隊のバトルアタッカーはアタッカーと言うよりは以前のバトルマシンに近い重装甲の機体である。上下半身を分離する機能はラフィット9号が用いたものであり、この9号はやはり同隊の1号を原型とした機体であることから、そのオリジンは相当に古く、また、装備水準、パワー、運動性も同程度である。ただ、ラフィット隊の時代と比べるとダイラガーもラガーガードもパワーアップしており、もはや並程度のアタッカーやバトルマシンでは相手にならなくなっていた。近接格闘戦では全く相手にならず、辛うじて強力ビームと重装甲でフォローしたが長くは続かず、ダイラガーランサーで身動きできなくなった所をラガーソードで斬り下げられて爆散し、ラガーソードの刀の錆となった。分離機能以外は特に見るべきところもない機体である。

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