MUDDY WALKERS 

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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第39話「ラガーマンの涙」

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戦いが終わらない限り、
可住惑星の探査は遅れるばかりなのだぞ!

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第21恒星系補給基地
 ガルベストンが探査艦隊の物資を集積している補給基地、小規模な艦隊が駐屯し、一部は各惑星からの資源を本星に搬出する機能もあるらしい。地球艦隊によって制圧されたが本星の所在を示す情報はなかった。

あらすじ

 ガルベストンの補給基地を攻撃した戦艦ラガーガードとダイラガー、基地で多数の捕虜を囚え、彼らからガルベストンの情報を聞き出し、ラグビーなどで交流を深めるが、補給基地失陥を見たローチャーはダントン艦隊を使って基地を奪回しようとしていた。

見どころ

 冒頭は地球軍による第21恒星系制圧の光景、ダイラガーと地球艦隊の攻撃で基地は陥落し、安芸たちは多数のガルベストン兵士を捕虜にする。二枚舌管理職ローチャー対テレス司令官の第4ラウンドは、「第21恒星系」編。

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ローチャー 「とうとう地球側は第24恒星系までやってきたのか。」
サーク 「これもエンマ艦隊の作戦が失敗したためです。」

 バカな作戦でみすみすエンマを無駄死にさせたとテレスの副官サークはおかんむりです。しかし、ローチャーはこんなことでは怯まない。

ローチャー 「テレス司令! 直ちにダントン艦隊を基地奪回に向けさせましょう! あそこは、これからの探査にもぜひ必要な補給基地です!」
テレス 「、、、、」

 主戦論を展開するのは良いとして、また無駄な作戦で犠牲を増やすのかと白々とした視線を向けるテレス。ダイラガーと地球艦隊に負けが込んでいるので、空々しく探査にかこつけている所がいかにもローチャー。

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ローチャー 「テレス司令! 何を躊躇なされているのですか!」
テレス 「ローチャー、あの基地では我々の仲間が大勢捕虜となっている。そこで戦えば、仲間の命をも失うことになる。」

 どうせ問答無用で無差別攻撃だろうとテレスはローチャーに猜疑の視線を向ける。

ローチャー 「司令! お忘れになったのですか! エンマ艦隊を送り込んだのも、奴らが未探査宙域へ踏み入るのを阻止するためだったんですぞ!」
テレス 「それは分かっている、しかしあれを見ろローチャー。」

 この男に人道云々は言ってもダメらしい。これは第4ラウンドもローチャーWIN(テレス1:ローチャー3)か、そう思った矢先、テレスは立ち上がってパネルを指さします。

テレス  「敵は我がガルベストンの本星を目指しているのだ。我が方が艦隊を送れば送るほど、敵が未探査宙域に向かっていくことになる。
ローチャー 「それはそうですが、、」

 ちょっと補足が必要な話ですが、ローチャーらが到着したことによって、ガルベストン艦隊は攻撃艦隊と探査艦隊の区別がなくなっています。探査基地の艦隊が地球軍を攻撃するとすれば、継続していた探査を中止して艦隊を編成して向かっていくより他にありません。つまり、司令部が迎撃を指示すれば指示するほど、地球艦隊は本星の手がかりを得るために、彼らの出現する方向、つまり未探査宙域に向かうのだということです。この辺、元の脚本には書いてあったはずですが、まどろっこしいのか時間の都合で割愛されたようです。

テレス  「ローチャー、ダントン艦隊への地球軍への攻撃を中止させ、未探査宙域に向かわせろ。」
ローチャー 「くううっ、、」
テレス  「ローチャー!」
ローチャー 「は、分かりました、、」

 第4ラウンドはテレスまさかの逆転、2勝2敗でドローに持ち込みます。その頃、安芸は捕虜の一人、アントノフと話をしています。

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安芸  「可住惑星を探すのを急がなきゃいけないのに、なぜ俺たちに戦いを挑んでくるんだろう?」
アントノフ 「あなた方が銀河を制覇しようしていると思っているんです。」
安芸  「それは違う! 俺たちはそんな野心はないと再三言ってきたはずだ!」
アントノフ 「でも、手柄を立てたい者に取っては、平和はむしろ都合が悪いんじゃないですか。」
安芸  「ウウン、、そんなものなのかな、、」

 エンマのような隊長クラスは除き、捕虜になったガルベストン兵が良く喋ることはシムの件で分かっているが、それは捕虜を卑しむガルベストン軍の体質に起因している。シムの場合は交戦法規では捕虜でも話す義務のない内容(所属部隊とか軍事情報とか)まで喋っているが(グラモンが抹殺に走った理由である)、それは彼にその気があったと言うよりは、捕虜になった場合の対応を教えられていなかったという方が大きい。捕虜になった他の兵士らもラガーメンバーにガルベストン本星の窮状などを話している。アントノフは彼らより階位の高い士官で、上層部に対する観察など、内容的にも少し立ち入っている。彼は安芸らに現在の司令部がローチャーらの跳梁で統制が効かなくなっていることを話す。その後、アントノフは安芸らがラグビーに高じているのを見て、ガルベストンにも似たスポーツがあると言い、他の捕虜らとともに試合参加を申し込む。

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 一方、ローチャーにそそのかされ、テレスからの指令を無視したダントンは艦隊を二手に分け、陽動作戦で基地を襲う作戦を実行する。敵の接近に試合は中断され、戦闘配備に着く地球軍兵士を見送るアントノフに仲間のガルベストン兵が声を掛ける。この機に乗じて武器を奪い、行動を起こそうという仲間にアントノフは疑問を投げかける。「本当に我々を救うためなのか」、案の定、基地上空に到着した別働隊は味方に助けを求めたアントノフたちにも無慈悲な攻撃を加える。「ローチャーめ! 私の指令を無視したのか!」、勝手に戦闘を始めたダントンにテレスは怒る。アントノフの見立て通り、探査基地の司令部は功を焦る高級幹部たちによって統制が効かなくなっていたのだ。そしてアントノフ自身も落ちていたラグビーボールを拾おうとした際に流れ弾に当たって命を落とす。

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 「私の命令を無視した結果がこれだ」、ダントン艦隊が壊滅したという報告を受け、テレスは報告に来たサークに激昂する。「それが何だというんだ!」、第29恒星系では地球艦隊を打ち破ったという報告にテレスは不快感を露わにする。

「戦いが終わらない限り、可住惑星の探査は遅れるばかりなのだぞ!」

 今週の言葉はテレス司令、アントノフとラガーメンバーの交流がメインのこの回だが、実はこれまで明確に触れられていなかった多くのことが明らかになった回でもある。テレスとローチャーの視点の違い、ダントンのようにテレス麾下でありながらローチャーに寝返る隊長の存在、そして、探査基地以外にも活動しているガルベストン部隊の存在、そして、そういった上級幹部の様子を鋭く観察するガルベストン兵士の存在など、39話はストーリーを読み解く鍵となるエピソードである。

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パティ 「さっきまであんなに楽しくゲームをしてたのに、、」
チャッカー 「ガルベストンの奴ら、平気で仲間を殺して、、」

 ボールを握ったまま事切れているアントノフを見下ろした安芸は死んだガルベストン士官からボールを取り上げる。それから走り出し、中断された試合のゴールを決めた安芸はヘナヘナと地面に座り込み、戦争という巨大な力の前には無力な自分たちに、ただ嗚咽するしかなかったのだった。

キャラクター紹介

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ダントン

 探査基地、テレス麾下のダントン艦隊の隊長(タカ)、単調な探査活動に嫌気が差しているらしく、ローチャーと通謀して地球艦隊による21恒星系基地襲撃を奇貨として地球艦隊への奇襲を目論む。多数の捕虜が地球側に囚われていることを知りつつ作戦を遂行するなど冷酷な性格だが、諸部隊の連携が思わしくなく、地球艦隊の反撃を受けて戦死する。地球艦隊の一部であるラガーガード艦隊に敗戦したところを見ると、彼の艦隊の戦力は十分ではなかったようだが、新型ガルベストン戦艦は複数が配備されている。新型ガルベストン戦艦は旗艦設備を持つ艦が限られるため、彼の旗艦も設備のない粗製艦だったことも、挟み撃ち作戦など策略を弄しながらも、結局作戦倒れで敗れ去った理由だろう。


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アントノフ

 ガルベストン補給基地に駐屯していた士官、一応ガルベストンの指揮官は全員隊長と呼ばれているので彼もその一人だが、軍隊で言えば少佐くらいの将校と思われる。探査基地司令部の様子を鋭く観察しており、安芸たちに示唆に富むアドバイスを行った。味方の攻撃から逃れる途中、バトルアタッカーの流れ弾に当たって死亡した。ガルベストンにもラクビー類似のスポーツがあることを伊勢に教える。

今週のバトルアタッカー(1分50秒)

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武器:ビーム砲

 ダントン隊のバトルアタッカーはローチャー1号と同じく古い攻撃型バトルマシンの流れを汲む機体である。アタッカーでありながら武器はビーム砲2門しかなく、対艦戦に投入された所もこれはバトルマシンである。ダイラガーとの空中戦では相応の機動性を示したが、この程度の機動性は後期バトルマシンではむしろ標準的という程度のものだった。ラガーガードに取り付いた際も以前のバトルマシン・ゲドは砲台を破壊するなどそれなりの戦果を示したが、このマシンは一方的に撃ち落されてラガーマシンに背後から攻撃されている。つまり、近接戦闘能力もバトルマシン以下である。ダイラガーとの空中戦に敗れ、墜落したところをラガーソードに斬り下げられて爆散し、ラガーソードの刀の錆になった。

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