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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第28話「エルドラの悲願」

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バカめ! つまらん小細工をするからだ。
作戦を立てなおせ!

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惑星エルドラ
 偵察中の安芸が発見した女王ズノウが統治する惑星、すでにガルベストンに植民化されており、ドールンがラガーチームを誘い込むのに利用する。一見古代文明の水準だが、迎撃ミサイルを持ち、女王の居宅であるピラミッドの内部は近代的であることから、実はかなりの科学力を持っていると思われる。

あらすじ

 先行偵察中のラガーチームは前方の惑星からミサイル攻撃を受ける。「まだ我々を苦しめ足りないのですか、、」、攻撃の合間にシルエットで流れ込む悲痛な声から、安芸は自分たちがガルベストンと間違われて攻撃されていることを知る。惑星に降り立ったラガーチームはそこで大量のピラミッド状の建造物とズノウと名乗るエルドラの女王に接触する。

見どころ

「エルドラの女王、ズノウだ」、敵味方双方に重厚なドラマが設定され、相異なる二つの文明の対話の物語である機甲艦隊ダイラガー、しかし、惑星Kの遺構を除けば三惑星連合の3つの星とガルベストン以外に他の宇宙人が描写されたことはなく、惑星エルドラの人々はラガーガードが初めて接触する第三者宇宙人になる。が、ミサイル攻撃の合間に名乗った女王の様子からして、この接触はあまり歓迎されていないようだ。トンデモ司令官ルチアーノ編の第4弾はエルドラ星を巡る飽くなき誤解の物語である。

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 「あの星の者は我々に対する拒否反応が強い所、
それを逆用して地球艦隊の者どもを葬るつもりでしょう」

 参謀チャーチが作戦を説明する。作戦を担当するのはドールン、古参の謀将で、テレス時代から参謀を務めているチャーチにも古なじみの隊長である。加えて、エルドラ星のガルベストン嫌いは前線司令部でも札付きである。が、司令官のルチアーノは疑念を隠さない。「しかし我々に屈服したような星を当てにしていいのか」、悪玉らしく猜疑心の強い性格のルチアーノは中途半端な作戦では満足できず、ドールンへの不信を露わにする。ファシストの司令官の下では日和見(グラモン、美形チャーチ、ドールン)は生きていけないのだ。

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「ガルベストンの悪名は宇宙に轟いているようだな」、安芸らをガルベストンと決めつけ、執拗に攻撃するズノウに司令官の伊達は呆れる。「話せばすぐ解決するでしょう」、誤解はすぐ解けるという伊勢だが、上陸した安芸たちの様子はそんな雰囲気ではなかった。「悪魔をやっておしまい!」、話し合いを求める安芸に問答無用でアマゾネス兵士を繰り出すズノウ、そこに空気の読めないウォルター(アメリカ人)とキーツが乱入し、誤解はますます広がっていく。そして一悶着の後、ズノウはようやく安芸との謁見に応じる。

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 「女王、ガルベストンの隊長をお連れしました。」
「何度言ったら分かるんだ! 俺はガルベストンじゃない!」

 ようやく現れた女王ズノウ、金髪の美しい女性だが少し病んでいる。ガルベストンであることを否定する安芸に、「ガルベストンではない証拠がどこにある!」と迫る。「今度は略奪ですか!」、答えに窮する安芸に、待ってましたとばかりにドールンからの電話が女王に掛かる。「ズノウ、お前はなぜ我々の仲間を攻撃した?」、安芸は仲間だと言うドールンにズノウは血を逆流させる。「我々に反抗したら、この星の男たちは直ちに処刑するぞ」、エルドラ星はガルベストンの植民星で、男たちは強制収容されて他の星で働かされているのだ。

 「我々を散々痛めつけて、さらに何をしようというのか!」、もう許さないと女王はたとえ全滅してもエルドラ星はガルベストンと戦うとドールンに言い放つ。「お前たちに何ができる、ヌハハハハ、、」、嘲笑するドールンに杖を投げつけ、女王は怒りに震える。背後にメラメラと炎まで燃えており、ここまでこじれていると、これはちょっと一筋縄ではいかない。

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 「ズノウ、出て来い! 貴様もガルベストンの一味だったのか!」、外からはアマゾネス兵士に囲まれた安芸がわめき叫ぶ声が聞こえてくる。「ガルベストンの一味」、無神経な地球人に言ってはならない言葉を言われ、憤怒の表情で再び謁見の間に現れるズノウ。

「今我々をガルベストンの一味と言ったな!」

 被害者面をして惑星に誘い込んだと言う安芸に、ズノウは「お前にこの喪服の意味は分かるまい」と言い放つ、喪服はガルベストンに対するエルドラの抵抗のシンボルなのだ。

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「死ねっ! ガルベストンの回し者!」、ズノウが処刑を命じ、安芸は光線銃の飛び交う中、ピラミッド内部を必死で逃げまわる。女王ズノウも銃口を向け、絶体絶命の安芸。策士ドールンの思惑通り、地球とエルドラは決裂し、外ではラガーマシンとエルドラ軍、そしてガルベストンとの戦闘が始まる。バトルマシンによる無差別攻撃の隙を突いて安芸は脱出に成功し、合体したダイラガーがバトルマシンを迎え撃つ。ちょうどその時、戦艦ラガーガードがエルドラに到着し、ドールン艦隊と戦闘を開始する。

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「すまなかった、、私は最後までガルベストンに騙されていた、、」

 戦いが終わり、流れ弾に当たって瀕死のズノウを安芸が助け起こす。あのままガルベストンに間違われたままじゃ癪だと言う安芸にズノウは詫び、前線基地の位置を教えて息絶える。そして、死んだ女王の周囲に喪服を着たエルドラの女たちが集まる。彼女たちに安芸はガルベストンを倒し、エルドラの男たちを救出することを誓うのだった。

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「バカめ! つまらん小細工をするからだ。作戦を立てなおせ!」

 今週の言葉はルチアーノ司令。女王の猜疑心を手玉に取り、見事な策略でラガーチームを追い詰めたものの、ツメの甘さでダイラガーと地球艦隊に敗北したドールン、今までの隊長の中ではかなりレベルの高い策略を駆使した隊長だと思うが、しょせん外様なので、敗れた彼に対するルチアーノの言葉は冷たい。この心が洗われるようなガルベストン前線司令部の心地よい人間関係も、この作品を読み解く面白さの一つである。

キャラクター紹介

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ズノウ

 猜疑心の強いエルドラ星の女王、女王らしく気品のある美しい女性だが、嫌ガルベストンの感情はほとんど憎悪の域に達しており、地球人の安芸たちをガルベストンと決めつけて殺そうとする。常に纏っている喪服は強制連行されたエルドラの男たちを悼むものであり、星はガルベストンの植民星となっている。全話を通じてヒステリックな神経症の女性として描かれるズノウだが、ドールンの詐術が火に油を注ぎ、安芸たちとはそんじょそこらで和解できるようなムードではなくなっていた。エルドラ国民には信望があるらしく、エルドラの女性は女王に倣って喪服を纏っており、後に安芸たちと出会ったエルドラの男たちは女王の死に涙した。なお、声は増山江威子(青二プロ)に酷似している。

今週のバトルマシン(2分30秒)

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武器:ハンドドリルなど多数

 ドールン隊のバトルマシン第2号は元は惑星開発用マシンだと思われるが、対ダイラガー戦を研究し、全バトルマシン中最多の多彩な装備を誇っている。また、元が鉱物探査用のため、デフォルトのビームやミサイルの他、掘削系の装備が多い異色の機体である。

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 多彩な武器を駆使したため交戦時間も長く、2分間もダイラガー相手に奮戦したが、これはやはり隊長のドールンがテレス時代からの古参の幹部で、ダイラガー相手に苦戦した他隊のバトルマシンの戦訓を良く研究していたことがあったと思われる。工作系マシンの長所を生かし、合体前の安芸をピラミッドを掘り崩してエルドラ女王ごと生き埋めにしようとするなど、その戦法も卓抜としたものだった。敵の意表を突くギロチンカッター、巨大ドリルなどマジック系(びっくり系)の武器はラフィット隊が用いた本国建造の機体の影響を受けている。全身武器のドールン2号だが、基本的には土木系マシンで、巨大ドリルでダイラガーを刺し貫こうとした所を斬りつけられ、ラガーソードの刀の錆となった。


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バトルマシン語録

「地球のリーダーは我々の仲間と勘違いされて閉じ込められているはずだ。
女王ごとぶっ飛ばしてしまえ!」

(大胆にして狡猾、策士ドールンの面目躍如である)

「逃がすな! 叩き潰せーっ!」
(土木ドリルで宮殿を貫通して乱入し、安芸と女王を無差別攻撃する)

「逃がすな! あいつらを逃すと折角のチャンスがフイになるぞ!」
(辛くも安芸を収容し、逃げるラガーマシンを追う)

「いかん! エネルギータンクがやられたぞ! 一気に勝負をかけろ!」
(ダイラガーランサーに被弾、しかし、マジックの種はまだある)

「ハハハ! 今だ! ダイラガーをスクラップにしてしまえ!」
(秘技鎖鎌でダイラガーを緊縛)

「どわあああーっ!」
(秘技巨大ドリルの動作中にダイラガーに斬りつけられて爆発)

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