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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第19話「赤い月が昇る」

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しかし何だか複雑な気持ちだな、
自分たちが破壊しなくても、
自然の力で滅んでいく運命の星もあるなんて。

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惑星K
 惑星Jから1ヶ月の距離にある惑星で地球からの距離は3万2千光年。銀河系の中心部に位置し、当初からラガーガード計画の探査目標になっていた。特徴的な赤い月を持ち、かつては高度な文明が存在していたことを示す遺跡がある。都市の廃墟のある大陸は年5センチのスピードで沈降しつつあるが、なぜそうなったのかは謎に包まれている。物語のターニングポイントとなった星であり、この星の支配権を巡り、地球とガルベストンが熾烈な争奪戦を繰り広げた。

あらすじ

 探査目標である惑星Kでラガーチームは明らかに先住民の存在を示す廃墟を目にする。棄てられた高度文明の残骸に、ラガーチームの面々は星の住人の行方に疑問を持つ。一方、ガルベストン前線基地では、テレスが父親である内務長官テスと話していた。

見どころ

惑星Kに到着したラガーガードと支援艦隊は地球から基地建設の命令を受ける。銀河探査の任務を継続している彼らにとって、中間の補給基地は絶対に必要なものだった。ガルベストンの介入を懸念するクルーたち、伊勢は調査の上判断するとし、ラガーチームに惑星の探査を命じる。

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 惑星を調査したラガーチームは各地に点在する巨大な石像と、海に沈んだ超近代都市の廃墟を目にする。惑星Kは超近代的な科学を誇りつつも、自然に対する畏れも持つ、ユニークな種族が暮らしていたのだ。ドクター・サーチの調査で、超近代都市は大陸の沈降によって沿岸部から海に沈んだ都市であることが明らかにされる。そこに伊勢から連絡があり、地球探査隊は惑星Kに基地を建設することが決まったことを伝える。「天体図を作ったら引き払う」、基地は恒久的なものではないという伊勢に安芸は不安を感じる。

 一方、ガルベストン側ではテレスが父親である内務長官テスと交信していた。親子二人の対話もその内容は深刻さに満ちている。テスは息子にガルベストン星の近況を伝える。

「地表は干上がっており荒廃し、あれほど完璧を誇った我がガルベストン星の科学の粋を集めた都市は次々に錆つき、崩れ落ち続けている。都市は地下へ地下へと伸びていったが、もはや限界じゃ。それに食料もすでに、我が国民を賄う量を確保することは、不可能だ。」

dairugger 以前の話でテレスの探査隊に与えられた期限は2年という話だったが、この様子では2年を経ずしてガルベストン本星は滅びそうな勢いである。テスは絶望したガルベストン市民の間に広がっている、ある話を息子に伝える。

「もうすでに高度の文明を持った人間のいる地球を奪って移住してしまえば良いという声が、あっちこっちから起こっているのだ。」

 「何てことだ!」、テスの言葉にテレスは頭を抱える。「そんなことは絶対にできない」、地球とガルベストンが全面戦争になれば、双方に夥しい犠牲が出る。が、この土壇場で断末魔の状況においては、全く違った考え方、違ったリアクションをする人たちもいるのだ。「可住惑星を見つければ必ず独占したくなる」、地球の目的が天体図作りだけとは俺は信じない、発見した惑星を地球に取られた挙句、ガルベストンが滅亡したらどうするのか、その代表がドレイクに代わって惑星探査隊長に就任したラフィットである。

 「ガルベストンを救うのはテレス司令ではない!」、地球を排除して惑星Kを確保しようとするラフィットはタカ派の本性を露わにし、惑星Kへの総攻撃をテレスに具申する。一方、ラフィットから惑星Kの地球軍偵察を命じられたマリウスは上官の命令を拒絶する。「あなたは我々の探査を支援するためにいるはずだ!」、惑星探査のスケジュールに遅れが生じると言い、マリウスは通信を切る。どちらもガルベストンの危機を意識しての行動である。

 宇宙港の廃墟でハルカはシンボル様の銘板を見つける。惑星Kのシンボル、赤い月をあしらった銘板は彼女の気を惹くものだった。

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「しかし何だか複雑な気持ちだな、自分たちが破壊しなくても、自然の力で滅んでいく運命の星もあるなんて。」

 今週の言葉はウォルター・ジャック、大陸が沈みつつあり、全て沈降してしまえば滅んでしまう運命にある惑星K、作品で地球、ガルベストンと同等の科学力を持つ文明が廃墟だけでも現れたことは初めてのことであり、これは惑星の地表に所々散在する石像の存在と併せ、宇宙や文明に対して、地球、ガルベストンの行き方とは異なる「第三の道」が、この作品にあることを暗示している。

キャラクター紹介

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ソクラット・テス (CV蟹江栄司)

 テレスの父のガルベストンの内務長官(ハト)、まるで光の国のようなキラキラ光るバックに、ウルトラの父のようなふさふさと髭を生やした容貌で登場するが、彼の星ガルベストンはM78星雲にある国とは異なり、地表は放射能嵐に襲われ、住民は地下都市に避難して星の余命はあと1年という悲惨な状態にある。ガルベストンには放射能除去装置を送る謎の美女の存在もないので、テスは首都の治安に責任を持つ内務長官として絶望的な状況にある国民を鼓舞しつつ、息子テレスに可住惑星の発見を急ぐように伝える。カポネーロの陰謀に陥れられて内務長官の職を解かれるが、後に皇帝コルセールの指示で復帰する。ガルベストンの良心であり、市民の信頼は厚い。

今週のバトルマシン(1分30秒)

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武器:拡散ビーム、アイアンクロー、爪ロープ

 ラフィット隊のバトルマシン第5号、18話の対ダイラガー用にガルベルトン帝国の科学の粋を結集して作られたマシンF(ラフィット4号)には同型機が存在する。2足歩行機能にゲド譲りの高性能アーム、充実した装甲、強力な爪と拡散ビーム砲を持つが、特筆すべきは過去に散々煮え湯を飲まされたダイラガーに対抗すべく装備されたバトルマシン初のスピーチ(しゃべる)機能である。

dairugger 対抗するダイラガーが当初からスピーチ機能を持ち、「ダイラガーランサー!」、「ダイラガーソード!」と技名を叫んでいたことは、対抗するバトルマシンの搭乗員を大いにビビらせ、戦意を喪失させていたと思われるが、19話では毎週ダイラガーと戦っていたバトルマシンが実は有人機であり、ガルベストン兵士によって操縦されていたことが明らかとなる(それまでは無人機と思われていた)。ガルベストンのバトルマシンには主操縦士である士官1名を含む、3名の操縦士が搭乗している。感情のないロボットならともかく、人間が操縦するメカであれば、搭乗者の動揺を誘う、この地球マシンの機能は大いに問題である。

dairugger そこでマシンF以降のバトルマシンにはダイラガーの主操縦士安芸マナブによる言葉の暴力に対抗するため、搭乗する士官の音声を増幅して外部に放送するスピーカー機能が装備された。以下、そのすばらしい機能をご紹介しよう。

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バトルマシン語録

「グヘヘヘヘッ! 殺せ! 奴らを殺ればダイラガーにはなれないのだ!」
(逃げ遅れたハルカとキーツを追い回す)
「今だ! 踏み潰せ!」
(転んだハルカを踏み潰そうとする)
「逃がすな!」
(逃げられる)

dairugger「何をしておる! 早く奴らを撃ち落せ!」
(拡散ビーム発射)
「くそおぉぉーっ!」
(合体阻止失敗)
「うわあああーっ!」
(ダイラガーランサーにやられる)

 新装備の効果のほどはともかく、このように革新的テクノロジー(しゃべる)を搭載したマシンFだが、戦いの方は18話同様、我に利あらずの結果に終わった(1分0秒)。しかし、対戦する敵のバトルマシンに人間が搭乗していることが明らかになったことは、彼らと対峙するダイラガーの搭乗員たちを大いにビビらせ、場合によっては仲間割れ(15人もいる)もありうるだろう。そこで、今後のこのコーナーでは新たに「バトルマシン語録」を作り、対ダイラガー戦における彼らガルベストン兵士の言葉の軌跡をご紹介することとしたい。

16人いる? ラガーメンバー?

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 惑星Kで勢ぞろいしたラガーメンバーだが、良く見ると結構怪しい面子がいる。そもそも勘定が合わないので筆者なりに推測を考えて見る。

 1.はどうも見たところセル画の黒ベタのようである。筆者も人影と勘違いしていたが、良く良く見ると安芸のパイロットスーツの影である。

 2.はやはりキーツの影とも考えられるが、それだけでは説明付かないのでキーツの背後に隠れるほどの背丈のメンバーというと一人しかおらず、2.は陸奥ヤスオである。

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2.の正体、陸奥ヤスオ(CV間嶋里美)

 3.は4と比較すると大柄で体格の良い人物と分かるが、陸奥を除く4人で体格の良いのはカッツと甲斐の二人である。しかし、3の人物を見ると頭髪がラウンドしており、この特徴に当て嵌まる人物はカッツただ一人である。そういうわけで、3.はサルタ・カッツ、また、4.の人物は角刈りであり、この特徴を持つのは残りでは甲斐である。というわけで4.は甲斐シノブ、そして謎のメンバーは見たところ地球人のようなので5.はショータ・クロイツと容易に判別できる。

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3.の正体、サルタ・カッツ(CV佐藤正治)

 ラガーチームでチャッカーの次に体格が良い丸刈りはカッツ。

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4.の正体、甲斐シノブ(CV山本竜馬)

 微妙だが、角刈りはこの男しかいないので。

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5.の正体、ショータ・クロイツ(CV塩屋浩三)

 影だけではほとんど判別付かないが、地球人でないのはクロイツ。

 こうなってくるともう消去法で残りの一人の面は割れる。バーロス・カラテヤが謎の人物の正体である。彼は黒人のはずだが、彩色ミスで色白に描かれることが多い。

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謎の人物の正体、バーロス・カラテヤ(CV山口健)

 カッツと並ぶ無言キャラ、背景キャラの二大巨頭であるカラテヤは彩色を間違われたり、黒ベタや背丈などかなりいいかげんに描かれる例が多い。

 話も20話近くなると、いくら主要メンバーが15人いるダイラガーと言えども、レギュラー・準レギュラーの区別がだんだん付いてくる。どうもチーフの性格にメンバーの目立ち度が左右されるようであり、コメディメーカーのリックラガーチームは全員描かれているのに対し、割とまともな主人公である安芸マナブのいるクウラガーチームは2人、沈着冷静なキーツとヒロイン加賀を擁するカイラガーチームは3人が描かれており、これはほぼ作品の登場頻度である。安芸はチーフ3人の中では一番の出世頭だが、様子を見ると安芸よりもくだけたチーフのいるリックラガーチームに所属した方がメンバーは目立てるようである。キーツ率いるカイラガーチームはリーダー(キーツ)が美形で完璧主義で超能力まで持っているので、加賀のようなずば抜けた美女ならともかく、並の容貌では宇宙人(カッツ)でもほとんど浮かび上がってこれないようである。これは見るからに並の顔の長門や伊豆(リックラガー)がチームを仕切っていることとは対照的である。つまり、銀河警備軍での出世ゲームを考えるなら、リックラガー>クウラガー>カイラガーの順になり、ハプニング込みで活躍の場面の多いチームほど手柄も多く、出世も早いということになるだろう。

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