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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第16話「二つの反逆」

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愚かな奴だ、どんなことでも、
戦う以外に解決する道がないと思っているのか。

あらすじ

 第5惑星で地球軍に敗戦したバラタリアはテレスによる粛清の悪夢にうなされる。一方、ラガーガードと支援艦隊では地球政府が萩艦隊に駐留と基地建設を指示、ガルベストンとの約束を反故にすることになると伊勢らは反発する。そこにドレイクの戦艦が到着し、地球軍に惑星からの退去を勧告する。

見どころ

 惑星滞在3週間、探査艦ラガーガードのクルーは気まずい雰囲気に包まれていた。艦長アシモフの判断で「機関の点検と修理」の名目で惑星に着水したラガーガードだったが、後に萩艦隊が同惑星で合流し、基地を建設したことでガルベストンとの戦闘が行われ、さらに地球の行政府が彼らに惑星の確保と艦隊の駐留を命じてきたからだ。「それでは我々が言っていたことは、全て嘘になってしまいます」、ガルベストンとの関係悪化を懸念して抗議する伊勢とアシモフだが、司令の萩は「行政府の命令には逆らえない」と彼らを拒絶する。そして地球艦隊の退去を求めに、ドレイクの艦がラガーガードの直前に着水する。

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 前線基地では一人テレスの会議から外されたバラタリアがテレスによる粛清に恐怖していた。密かに同志を募った彼はラフィットを引き入れ、テレス殺害を計画する。そもそも探査活動が停滞し、ダイラガーとの戦闘に負け続けているのはテレスの優柔不断のせいだ。それにこのままでは自分は粛清される。「ガルベストンの未来の為に!」、ラフィットと同志の前でバラタリアは激を飛ばす。

 ドレイクとの交渉相手に指名されたのはやはり伊勢だった。前回単身でドレイク艦に乗り込んだ伊勢だったが、今度はドレイクが単艦で地球艦隊の前に現れている。ドレイクは1時間の猶予を与え、伊勢に地球行政府と交渉するよう求める。が、交渉は困難が予想された。「全てはまず君たちが惑星を去ることから始まるのだぞ、改めて伝えておく」、伊勢に念押しし、ドレイクは交渉の結果を待つ。

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前線基地ではついに反乱が開始され、武装したバラタリアが作戦室に乗り込む。護衛が次々と撃ち倒される中、一人作戦室を逃れたテレスは残ったグラモン以下諸将を糾合する。「私に対する反逆は、私をここに派遣したコルセール帝への反逆である!」、テレスの激に諸将が反乱鎮圧に動き出し、バラタリアの反乱は早くも頓挫の様相になった。そして馳せ参じたグラモンに、テレスは第5惑星のドレイクを呼び戻すように命じる。

 「行政府の返事は思わしくない」、通告の一時間が過ぎ、伊勢は地球政府の返答をドレイクに伝える。彼らへの指示は変わらず、憤怒の表情を浮かべるドレイクに伊勢はラガーガードの撤収を伝える。それは地球の命令に背く行為だった。「本星の命令に背くということはどういうことか、君にも分かるだろう」、伊勢は萩にも撤収を呼び掛け、ラガーガードは第5惑星を離れる。そこに前線基地から反乱の急報がもたらされ、ドレイクも惑星を離れる。

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 ラガーガードに続き、ドレイク艦が惑星を離れたことを見た萩は艦隊に発進を指示する。「軍人としての誇りよりも、彼らとの約束を守る方が大事ではありませんか」、伊勢の言葉が司令を動かし、こうして両軍は惑星を離れた。そしてその頃、前線基地の反乱も鎮圧されつつあった。「これ以上罪を重ねるな、降伏すれば再起の機会を与える」、呼び掛けるテレスにバラタリアは目を剥く。「テレス司令、それがあなたのやり方かもしれんが、俺はそのやり方が嫌で反乱を決意したんだ」、テレスの対話路線はガルベストン軍人の彼には諸事生ぬるく、手ぬるいものに映っていたのだ。「よく見ておけ、これがガルベストン軍人の生き方だ!」、テレスの目前でバラタリアは自決し、首謀者を失った反乱軍は投降する。

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「愚かな奴だ、どんなことでも、戦う以外に解決する道がないと思っているのか。」

 作戦室に戻り、死んだバラタリアを見下ろしたテレスは一人自嘲する。そこに帰還したドレイクが駆けつけ、テレスに地球艦隊の撤退を報告する。ラガーガードが地球の命令に背いて撤退したという報告にテレスは驚き、諸将と死んだ隊長に向かって嘆息する。

「それにしても、バラタリアの反乱は何も実らせぬ、虚しい、、とても虚しい、、」

 軍人であることに拘り、上官テレスに銃を向けたバラタリアと、軍人であることを捨てて地球政府に背いた伊勢とラガーガード。「何も実らせぬ」、二つの反乱の本質を一言で言い表したテレスの言葉は、両者の違いを浮き彫りにしている。そしてバラタリアの運命は、そのままガルベストン帝国の運命でもある。「平和を守るのが軍人の任務なら、たとえ地球に反乱軍と呼ばれようとも」、命令違反を難詰する萩に言い放った伊勢の言葉は、少年の時代にバラタリアのような、「軍人としての誇り」、「軍人としての生き方」が国を滅ぼした時代を目にした藤川桂介の、現代を生きる我々へのメッセージでもある。

キャラクター紹介

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バラタリア(CV佐藤正治)

 テレス麾下の極右のガルベストンの隊長、初期の前線司令部ではタカ派は故ラッカルを除けば彼しかいなかったが、それは上官テレスが筋金入りの「ハト」のため、ドレイク以外の他の隊長が深層心理を隠しつつ、表面的にはハトないし日和見を装っていたためである。その点、「自分はテレス司令以上にガルベストン帝国に尽くしている」と広言し、毎週打倒ダイラガーを叫んでテレスの顰蹙を買っていたバラタリアは軍人としての職務には忠実な人間だったのかもしれない。そのタカ思想と好戦性が災いし、会議からはつまみ出される、隊長職は剥奪されるなど、テレスに白眼視されていたバラタリアだったが、ドレイクと伊勢との会談をぶち壊すなど相応の仕返しも上官にしている。第5惑星での敗戦による粛清を恐れテレス殺害に動いたが、結局反乱に失敗し、テレスの投降勧告を拒んで自決する。

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サキ

 ガルベストン帝国軍前線基地の警備隊長、いわゆる憲兵隊の将校であり前線基地の治安を統括している。反逆を起こそうとしたバラタリアを捕らえようとして逆に捕らえられる。その後の消息は不明だが、テレス解任以降は全く姿を見せないことから、同時期に解任され、本国に帰国したものと思われる。

今週のバトルマシン(0分)

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ハンドビーム

 今週もバトルマシン戦はなかったため、ダイラガーの装備を紹介する。ハンドビームは合体したダイラガーの両手に装備されている、いわゆる「手からビーム」で、この種ロボット物ではおなじみのものである。ただ、合体前の右手はキリガッスマシン、左手はチャッカーマシンのため、両マシンのデフォルト武器(ビーム、ミサイル)をそのまま合体後も使っているだけである。そういうことなら、すでにキーツマシン(腹)が合体したまま爆雷を使用した例があるので(ダイラガー爆雷)、劇中には登場しなかったがハンドミサイルも可能だろう。あと、同じく伊豆マシン(右足首)、長門マシン(左足首)はキリガッスらとほぼ同等の装備を持ち、彼ら同様ほとんど変形しないで装着されるため、ダイラガーは設定上は足ビーム、足ミサイルも可能である。ハンドビームは初期の戦いではしばしば用いられたが、ダイラガービーム(目ビーム)同様、後にはほとんど使われなくなる。

ガルベストンの銃器

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アサルトライフル

 ガルベストン軍兵士の持つ標準的なアサルトライフル。有機的な造形にマズル付近にガルベストンの国章があしらわれているなど凝った作りで、高価だったらしく、後にガルベストン突撃銃に取って代わられ、王宮警護隊など一部にしか用いられなくなる。

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ガルベストン突撃銃

 ルチアーノ後に制式採用された新型アサルトライフル。前型のような装飾性は鳴りを潜め、より簡素で実用的なフォルムになっている。性能は前型の方が良さそうだが、大量に生産され全軍に配備された。

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ゲリラ用突撃銃

 反帝国勢力、「コルセール帝に反対する市民のグループ」が独自に調達した小型の突撃銃。ガルベストン突撃銃同様簡素な作りと思われ、サークらにより大量に配布されて帝政打倒のツールとなった。

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士官用拳銃

 ガルベストン軍士官の携行する大型の軍用拳銃、普段から携行している様子は見られないため、使用時のみ携行しているものと思われる。フレーム部分にガルベストンの国章が刻印されている。後により簡素で携帯も容易な新型拳銃に取って代わられる。

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新型拳銃

 士官用に後半から採用された中型拳銃。以前の士官用拳銃と比べると簡素な作りが特徴である。この銃や新採用のガルベストン突撃銃はコストダウンのため、ブルーイング処理された金属地肌剥き出しの簡素な作りとなっている。親衛隊長ドランの銃。

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民生用拳銃

 ゲリラが用いていた中型拳銃。新型拳銃に類似しているが、さらに簡素な作りで、マズル部分の造形がより角張っている。この銃はテレスの銃。

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サークの銃

 元王宮警護隊でテレスの副官サークの使う銃、彼女の場合はなぜかゲリラ組織に属した後もゲリラ兵の武器を用いず、新型拳銃(テレスは民生用)にガルベストン突撃銃と制式採用の武器を用いている。これは軍の武器がゲリラに流れていたことと同時に、彼女の属する警護隊の一部がガルベストンの末期に反帝政勢力に合流したことを示唆している。

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