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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第12話「宇宙の樹海伝説」

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それ以来、俺は奴を追って森から森を捜し回った。
だが、ついに奴にめぐり合うことはなかった。

あらすじ

 遺跡惑星の探査を続けるラガーチーム、しかし、古代遺跡以外めぼしい成果もなく、調査は打ち切られようとしていた。クウラガーチームのクロイツはわずかに残った樹海に故郷サラ星の記憶を思い出す。

見どころ

 三惑星連合の二星、サラ星、ミラ星のうちサラ星人はメインキャラ以外にも艦隊司令や乗員など比較的登場頻度の多い人種だが(ミラ星人はキーツとキリガッス以外は数人しか登場しない)、全般的に地味なキャラが多く、また、ミラ星人のような超能力も無いため、つい作品に埋没しがちである。また、星自体の描写もほとんど描かれることはない(ダイラガーの続編があったら描くつもりだったのだろう)。そんな中で過去の記憶ではあるが、クロイツの故郷、サラ星の光景が描かれるある意味貴重な回である。

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  クウラガーチームの一員クロイツは探査終了を前に惑星の樹海で物思いにふけっていた。実は彼には兄がおり、彼がサラ星にいた時代に良く似た樹海で死亡していたのだ。兄を殺した森の怪物を思い出し、沈鬱な気分になるクロイツ、彼を除き母艦に帰還したラガーチームはドクター・サーチから惑星絶滅の仮説を聴講していた。ドクターによると惑星は原住民の乱開発で大気成分が変わり、食物連鎖が破壊されて生態系が絶滅したのだという。「文明が滅びれば修復する者がいなくなり、ますます生態系の破壊が進む」、二〇〇年前の地球での乱開発による自然破壊を例に取り、ドクターは文明の進歩に警鐘を鳴らす。二〇〇年前とは言うまでもなく現代の時代である。

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 一方、ガルベストンでは司令テレスがグラモンに代わり新たにラガーガード監視の任に就いたバラタリアに辟易していた。その後の調査で第6惑星には価値がないことが分かり、テレスは地球探査隊を監視したままこの星に足止めすることで、自らの惑星探査を円滑に進めようとしていたのだ。しかし、好戦的なバラタリアはテレスの意図を無視し、ただ一機残っていたクロイツマシンの捕獲を目論む。dairuggerバトルマシンの攻撃でクロイツは気絶し、交信を断ったマシンを探しに惑星に戻ったラガーチームはそのままバトルマシンとの交戦に入る。戦いの最中、森の怪獣による兄惨殺の場面を思い出し、正気に戻ったクロイツは合体してバトルマシンを倒す。それは非命に倒れた兄の仇討ちでもあった。

「それ以来、俺は奴を追って森から森を捜し回った。だが、ついに奴にめぐり合うことはなかった。」

 こういうキャラクターの内心、しかもあまり重要でないサブキャラにスポットを当てる話というのは、ついつい地味話として敬遠され、評価が低くなる傾向があるが、筆者はこのエピソードを高く評価したい。主人公以外のマイナーキャラでこういう挿話を作れること自体、作品の世界観の完成度の高さの証明で、そういう作品は滅多にないからである。上の言葉はバトルマシンを倒した直後のクロイツの述懐であるが、その後の彼の言葉、「バトルマシン、お前が奴の身代わりだ、兄さん、ついに敵を取ったぜ」、昼なお暗い鬱蒼としたサラ星の樹海を彷徨し、ついに仇を見つけられなかったクロイツの心の闇が晴れた瞬間である。この挿話をあえて入れたことで、制作者はクロイツの視線を通じてラガーメンバーの背後にいる人々、サラ星の宗教観、人間観を表現することに成功しているのである。

キャラクター紹介

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ショータ・クロイツ (CV塩屋浩三)

 クウラガーチーム、クロイツマシン(右上腕)のパイロットでサラ星人、幼少の頃に兄を怪獣に襲われて失った記憶を持つ。サラ星人らしく朴訥で内省的な性格である。なお、サラ星は野生生物と原生林の多い星らしく、クロイツは第6惑星の樹海に故郷の光景を見出す。兄の助言に従ってバトルマシンを倒したことで過去の呪縛から解放される。


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サラ星の怪獣

 クロイツの故郷サラ星の森に住む宇宙怪獣、見たところ爬虫類のようであり、森を通る旅人を襲うこともあるらしい。サラ星は地球の同盟星で三惑星連合の一員であるが、高度な恒星間航行の技術を使いこなす反面、旅人がクルマやレーザーガンを使わず、徒歩で森を縦断するような旅もしているらしいことが分かる。クロイツの実家の近くは四国八十八ヶ所巡りのような、その種の宗教的聖地で、彼らが手製の槍で怪獣に立ち向かった所を見ると、サラ星の森ではレーザーガンの持ち込みは禁止されているのかもしれない。クロイツ兄の死後、大規模な山狩りが行われた形跡もないことから、サラ星人はテクノロジー以上に、この種の怪獣も含む自然を愛する種族であると分かる。

今週のバトルマシン(3分0秒)

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武器:三連電気ムチ、フラッシュビーム

 今回初登場のバラタリア隊のバトルマシン。久々に登場した生粋の土建屋フォルムのマシンで、4本の足に2本の腕を持つが、武器らしい武器は電撃ムチくらいしか装備していない。後は目くらましのフラッシュビームで、土木マシンとして回転する頭頂部がドリルとなって地中を突き進む特殊能力を持つが、これはトンネル工事用で、どうも自身を地中に隠すくらいの掘削力しかないようである。素の状態では対抗できる武器さえなく(フラッシュビームは目くらまし用である)、ダイラガーキックに蹴られ殴られとダイラガーの戦闘力に圧倒されて地中に潜ったが(比較的交戦時間が長いのはそのせいである)、クロイツに露出した部分を見つけられ、浮上したところにラガーソードを突き刺されて爆散する。ポリバケツを逆さにしたようないいかげんな風体といい、性能といい、元々戦闘用のマシンですらなさそうで、そんなものをダイラガーに差し向けたバラタリアが悪い。監視の命令に背き、このマシンで勝手に戦端を開いたバラタリアを見たテレスはさすがに形勢不利と見て撤収を厳命したが、時すでに遅しであった。

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