小説版「機動戦士ガンダム」のすべて
買わなくてもすむ! 読む手間がはぶける!ずばり書きます!

 このサイトに、小説版「機動戦士ガンダム」についての情報を求めてやってくる人が散見されます。親切にしてちょっといじわるな私は、それなら、せっかくだから、その内容紹介とレビューを書いておくのも悪くないと思い、一文をしたためることにしました。

小説版「機動戦士ガンダム」は富野喜幸氏が、ガンダムブームの最中、テレビ版が再放送され、ガンプラ人気が過熱する中で執筆したもので、全3巻。最初は朝日ソノラマから出版され、私も中学生当時にこれを読みました。劇場版はこれより後に制作されたものと記憶しています。のちに版元が角川書店に変更となり、現在は角川スニーカー文庫から発売されています。

この作品の大きな特徴は「テレビ版とまったくストーリーが違う」ということです。以下に、相違点を箇条書きにしてみましょう。

・アムロ、リュウ、カイ、ハヤトらは民間人ではなく、当初から「パイロット候補生」として登場する。
・アムロとセイラはサイド7に住んでいたときの顔見知りで、アムロにとっては憧れの人だった。
・彼らはホワイトベースに搭乗して戦うことになるが、地球に降りることは一度もない。
・よって、アムロは母と再会しない。また、父と再会することもない。
・フラウ・ボゥはホワイトベースに避難民として乗るものの、ルナツーで降ろされて、カツ・レツ・キッカを養いながら軍需工場で働いている。
・ガルマやマ・クベとの戦いはすべて宇宙を舞台に繰り広げられる。
・「ザクとは違うのだよ、ザクとは!」の名台詞で有名なランバ・ラルは、登場していたがほとんど記憶に残らない。
・ホワイトベースは中立コロニーのサイド6に立ち寄らない。
・よって、ここでアムロがララァ・スンと出会うこともない。
・また、ミライと婚約者カムラン・ブルームとの再会話もない。
・スレッガーとミライの恋愛話もない。
・1巻でホワイトベースはテキサスコロニーにて撃沈される。
・そのとき、ホワイトベースからニュータイプ能力によってクルーたちを導くのは、セイラである。
・ララァはサイド5出身の、戦災孤児である。戦災にあったあと、サイド6に逃れてくるものの、2か月ほど“ひどい生活”をしていたようだ。
・そんな境遇から、シャアが救い出してフラナガン機関に預けた。
・シャアはそんなそんな彼女に「好きだ」と告白。
・2人は相思相愛になる。
・アムロは、テキサスコロニーでララァと出会う。
・シャアが、ララァをかばって抱くところを見て、アムロはコクピットで欲情してしまう。
・アムロは、シャア、ララァと戦ってニュータイプとして覚醒するが、ララァは死に、ガンダムも大破してアムロはコアファイターで漂流することに。
・ここまでが、1巻。
・2巻以降、まったく違ったストーリーが展開されていく。
・ホワイトベースの2号艦、ペガサス・ジュニアが新たな舞台である。
・ララァにかわって、クスコ・アルという女性のニュータイプ戦士が登場する。
・アムロは、コアファイターで漂流していたところを、たまたま通りがかった船に乗っていた彼女に発見され救出される。
・助け出されたアムロは、彼女を口説こうとする。
・しかし、失敗する。
・無事ソロモンに帰還すると、今度はセイラを誘う。
・どうやら1巻さいごで色気づいてしまったアムロ。
・ホワイトベースでは、不純異性交遊が活発に行われているようだ。
・例えば、ミライがブライトを個室に連れ込んでいたり。
・セイラを食事に誘うことに成功したアムロは、あっという間に寝てしまう。
・それがアムロの初体験であった。
・しかし、セイラにはセイラの野望があった。
・ベッドでアムロはセイラから、兄であるシャアの殺害を依頼され、愕然とする。
・気持ちは萎えるが性欲はおさえきれす、2人のただれた関係は続く。
・もはや、戦況がどうこうなどということはすっかりどうでもよくなってしまう。
・アムロが本当に抱きたかったのはララァであった。セイラは兄に構ってもらえない寂しさからアムロと寝てしまった。2人は互いの満たされない思いをもてあましながら、関係を続けていくのである。
・そうこうしているうちにも戦闘は続いている。
・そんなこととはつゆ知らず、けなげなフラウはアムロと再会したときのために、なけなしの給料で口紅を買う。
・そういえば、マチルダさんも出てきていた。どこだったか忘れたが。
・アムロは、彼女に目を奪われる。
・セイラは、ちょっと焼きもちを焼いたような気がする。
・アムロは、マチルダさんの婚約者を知って、劣等感を感じる。
・おまえ、いい加減にしろよ。
・マチルダさんは、死ななかった。
・再び、アムロは戦場でニュータイプ戦士のクスコ・アルと対戦することに。
・以前、そうとは知らず口説こうとして失敗した女性であるとわかって、アムロは愕然とする。
・彼女に「ネンネ」とバカにされて逆上し、彼女の乗ったを撃墜する。
・その瞬間、ニュータイプ能力により彼女の過去を見てしまう。
・連邦軍の兵士に両親を惨殺され、性的暴行をされるという過去であった。
・アムロは後悔するが、後の祭りである。
・そういえば、福井某が書いたというなんとかユニコーンという小説に、似たような話があった。
・ここまでが2巻。
・3巻では、戦争終結に向けて、星一号作戦が発動されていく。
・一方ギレンは、コロニーを使ったレーザーという大量破壊兵器を手に入れ、一発逆転を画策する。
・ホワイトベースでは、アムロやブライトを中心に、戦争を終わらせるためにシャアと敵味方を超えて共同戦線をはり、ザビ家打倒を目指すというトンデモ案が飛び出している。
・最終決戦を前に緊迫するホワイトベース。
・アムロはセイラを呼び出して、「お守り」を所望する。
・恋人の陰毛を携えて出撃すると、生きて帰れるというご利益があるらしい。
・しかしセイラにすげなく拒絶され、アムロは失意のうちに戦場に出ていくことになる。
・アムロ、かっこわるい。
・ちなみに、小説では「恥毛」と書かれていた。
・意味がわからなかったので、わざわざ辞書を引いた。
・知らない方がよかった。
・シャア側には、シャリア・ブル、ルロイ・ギリアムという新たなニュータイプ戦士が加わっている。
・シャアも同様に、ホワイトベースを味方につけて自らの野望達成を試行錯誤しはじめる。
・ニュータイプ能力を使ってアムロに呼びかけよう!
・しかし戦場で出会ったとき、アムロは若気の至りで、シャアに、セイラから兄の殺害依頼を受けていることをバラしてしまう。
・ララァを寝取られた仕返しなんだろう。
・そんなこんなで、アムロを味方につけることに難儀する。
・そうこうしているうちに、ルロイがアムロを撃墜する。
・アムロは戦死。
・死んだアムロは、幽体離脱してフラウの枕元に立つ。フラウはアムロが死んだことを悟って大泣きする。
・こんなヤツのために泣くなー、フラウ…とこっちが泣きたくなる。
・死の間際に、アムロにシャアの意図が通じて、それがアムロを通じてホワイトベースのクルーに伝達されるという怪奇現象が起こる。
・かくして、ホワイトベースにシャアが乗り込んできて、打倒サビ家を目指して戦うことに。
・ちなみに、このシャアの企てにはキシリアが一枚かんでいる。
・シャアはキリシアの秘書のマルガレーテ・リング・ブレアに目を留めたようである。「子を産んで欲しい」とつきあってもいないのに、思っている。 ・ララァのことは、もう忘れてしまったようである。
・シャアの軍勢とともにズム・シティに乗り込んだホワイトベースの面々は、ギレンをやっつける。
・しかし、シャアはここまで共闘してきたキシリアを最後に裏切って、あっけなく殺してしまう。
・かくして、シャアの野望は達成され、ホワイトベースの面々はバカを見た。
・死んだアムロもこれでは報われまい。
・だけど、とっても悪い男だったから、もはやどうでもいい。
・シャアとアムロのドロドロ関係から解放されたセイラは、自由を感じながら、素っ裸で海に飛び込む。
・おわり。
・振り返ってみれば、何といってもこの話の一番の悪役はアムロであった。
・死んでバンザイ!である。
・めでたし、めでたし。
・以上、宇宙世紀と昼ドラ、そして火曜サスペンス劇場の見事なコラボレーションをお届けしました。
・テレビ版ガンダムは、数々の名台詞を残したが、小説版で最もインパクトのあった台詞はずばり。
・「乳首って小さいのだな…」
・すいません、何も言えね〜(泣)

 というわけで、わざわざ小説を買って読まなくてもおなかいっぱいになれるくらい余すところなくご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。ちなみに、いちいち読み返さずに記憶だけで書いたので、細かい部分が違っているかもしれませんが、大筋はあってると思います。ウブな中学生だった当時の私には、あまりにも刺激的な内容だったのですが、今から思えばひどいものです。中年のオッサンの、愛すべきキャラクターに対するセクハラ小説。そんな感じです。
 シャアとホワイトベースの面々が共闘してザビ家を倒すという内容は、のちの続編であるZガンダムにアイデアが「転用」されたんじゃないかと思っています。ファーストガンダムは、視聴率の低迷で打ち切りになった作品ですが、もし打ち切りにならなかったら、こういう展開になっていたんでしょうか。そうじゃなくて本当に良かったです。だって、そんな厨展開は現実離れしすぎていて、面白くないから。
 最後になりましたが、私が言いたいのは、この一言です。「こんなアムロは、いやだぁ〜!」


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