MUDDY WALKERS 

 ガンダム精神世界探索

アムロ・レイとヒロインたち(1)

このイラストは、以前、当サイトと相互リンクさせていただいている「Quattro's SIDE -birds in basket-」のquwatoroさんにプレゼントしたものです。Quattro's SIDE -birds in basket-」の考察コーナーにある「アムロを取り巻く女たち」は、男性から見たアムロの女性関係ということで、参考にさせていただいております。

 昨年3月に発売された「別冊宝島 僕たちの好きなガンダム アムロVSシャア編」に、アムロとシャア、それぞれの恋愛遍歴をまとめたコラム「A HERO and his LOVERS」を寄稿させていただきました。

http://tkj.jp/book/book_20152101.html

この考察はなかなか面白かったのですが、紙面では文字数に制限もあり、あまり深く掘り下げることができなかったので、今回、アムロとシャアの「恋愛」をテーマに、その心理を追究してみようと思います。書き手の私は女性ですので、あくまで女性から見た視点ということになると思いますが、そのキーポイントとなるのは、次の観点です。

「男の心理は、言葉よりも態度に現れる」。

CASE 1. フラウ・ボゥ

 さて、アムロと最初から絡んでいるのが、幼なじみというポジションにいるフラウ・ボゥです。従来のロボット物では定番のポジションですが、フラウは、アムロの隣りに住む女の子で、母親のいないアムロの家にあがりこんでは何かと世話を焼いていたようです。しかし、女の子にとってそれは単なる口実なのです。たとえ母親がいなくて家事全般で困っていたとしても、もしフラウがアムロにまったく興味を持っていないなら、こんなことはしないでしょう。アムロに好意を持っているからこそ、いろいろと世話を焼きたくなるのです。 それに対して、アムロはどうでしょう。第1話を見ればわかりますが、食事の用意をしたり、避難勧告が出ているのを知らせにきたりしているフラウに対して、まるで注意を払っていません。部屋に飛び込んできて呼びかけるフラウに対して、面倒くさそうにあくびをし、さらに「うるさいなあ」などと言い放っているのです。この関係に甘え、安心しきっているのでしょう。そんな二人は、まるで倦怠期を迎えた半同棲カップルのようです。

 フラウ・ボゥは好意を持っているがゆえに、アムロに対して母親がわりのような役目をして世話を焼いていました。女性なら、誰でもそういう母性本能的なものを持っているので、好きな人には何かしてあげたいという気持ちになるものです。しかしそれに対するアムロの態度を見てもわかるように、それはまったく逆効果。母親のように世話をしたり、ああしろ、こうしろと口やかましく言うようになったら、もし、最初は好意を持っていたとしても、だんだんそれが鬱陶しくなり、「頼むからオレを一人にしてくれ」といわれるようになってしまうのです。なぜなら男にとって母親は、恋愛の対象にはなりえないから。

 アムロの母からの自立は、地球に残っていた母との再会と別離によって描かれていますが、それとは別に母親的存在となっていたフラウ・ボゥもまた、アムロにとっては「離れていくべき」存在ではなかったでしょうか。

 ところで、フラウに対しては一貫して冷めていて、ぞんざいな扱いだったアムロですが、最終回、ア・バオア・クーで一人取り残されたとき、テレパシー(?)で「僕の好きなフラウ」と呼びかけています。ということはやっぱりアムロはフラウが好きだったんじゃないの?と思いませんか? そこが、男の発する言葉のワナ、なんですねえ。確かに彼の言った言葉は、そのときの正直な気持ちではあるのでしょう。しかし、この場合の「好き」は“like”であって“love”ではない。家族の一人、例えば母親や姉、妹を「好き」というくらいの「好き」で、一人の女性として愛しているわけではなかったのです。もしこれが“love”であったのなら、テレパシー(?)で会話するなんてまどろっこしいことをせず、彼女の所に自ら飛んでいったでしょう。なぜならそのあとちびっ子3人組の呼びかけで、彼はちゃんと帰還できるくらいに動くことができたのですから。

 余談ですが、ガンダムシリーズで主人公と幼なじみカップルがくっついた例として、Gガンダムのドモン・カッシュとレイン・ミカムラがいます。この二人はパイロットとメカニックという関係で常に行動をともにしていましたが、アムロとフラウの関係とは大きく違う点がありました。それは、ドモンは少年時代から長らく東方不敗のもとで修業をしていて、大人になって久しぶりにレインに再会したことです。大人の女性になっていたレインにひそかにときめき、そしてレインは決して母親のようではなく、常に医者、あるいはメカニックというプロフェッショナルな立場で接していました。好きになると、どんどん距離を縮めていきたくなるものですが、レインのように常に自分の立場をわきまえて、一線を引いておくことはとても大切なことです。この一線を乗り越えて二人の関係を定義づけるのは、男性のなすべき役割です。

CASE 2. マチルダ・アジャン

 フラウに対してアムロがぞんざいな態度を示していたことは、図らずも次にアムロの前に現れた女性に対する態度との違いによって明らかになってしまいました。そう、マチルダ・アジャン中尉です。彼女が現れた当初から、アムロは彼女に興味津々でした。そしてそれは、態度にもしっかりと表れていました。ブリッジへ上がろうとするマチルダを呼び止めて「案内します」と言ったアムロは、一度は断られるものの「これでも要領があるんです、近道の」と食い下がり、見事エスコートの役目を果たします。そうして、マチルダさんに感謝されただけで、天に舞い上がるほどの勢いで喜びます。これこそ、恋する男の姿です。

(1)自分から声をかけ、
(2)断られても食い下がり、
(3)彼女から感謝されて大喜び。

何度見ても微笑ましくなる光景です。しかしフラウにしてみれば、こんなアムロを見て、自分に対する態度とのあまりの違いにショックを受けたことでしょう。けれども、これが恋の現実で、いくらフラウががんばってみたところで、アムロの思いを変えることは出来ないのです。恋愛模様には、こうした残酷な一面が必ずあるのです。
 さて、このようにマチルダ・アジャン中尉には驚くべき態度で接したアムロですが、悲しいかな、「逆シャア」までのシリーズの中で、このような態度に出る機会は二度とめぐってきませんでした。それはなぜかを考える前に、もう一人のヒロイン、セイラ・マスについて見てみましょう。


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