MUDDY WALKERS 

テッド  TED

テッド 2012年 アメリカ 106分

原案・監督セス・マクファーレン
脚本セス・マクファーレン

出演
マーク・ウォールバーグ
ミラ・クニス
ジョヴァンニ・リビシ
パトリック・ウォーバートン
ビル・スミトロヴィッチ
セス・マクファーレン(声)
パトリック・スチュワート(ナレーター)

スト−リ−

 気弱な少年ジョン・ベネットはいつも仲間はずれで友達が一人もいなかった。両親はそんな彼にクマのぬいぐるみを贈り、彼はテッドと名づけて大切にする。しかしどうしても親友が欲しいと切望した彼が、祈りをささげると…テッドは目をパチクリさせて、話したり、歩き回り始めた。ジョンとテッドは、ずっと一緒だよと「雷兄弟」の約束をする。「生きる」テディベア、テッドはたちまち人気者になるが、それから月日は流れ、35歳になったジョンの傍らには、一緒に大麻を吸引し、映画を観てダラダラ過ごすテッドの姿があった。ジョンの恋人ローリーはジョンを愛しているというものの、だらしのない二人にやがて愛想を尽かすようになり・・・。 。

レビュー

 くまのぬいぐるみ、といえば妹を思い出す。起きるのも寝るのも一緒で、最初は明るい水色のかわいいくまだったが、あまりにも肌身離さずにいるためにあちこちすり切れ、色も黒ずんで薄汚くなっていた。見るに見かねて母親が、洗濯機に放り込んで洗濯したところ、くまはきれいになったが、妹は大泣きしてしまった。彼女にとっては「生きて」いる友達を、よりによって洗濯機に放り込むなんて、言語道断だったのだろう。
 本作のジョンにとっては、まさにくまは文字通り、生きて一緒に生活している友達である。幼いジョンの願いがかなって命を宿すテッドとの出会いの場面は感動的だが、この「おとぎ話」には後日談があった。我が妹は、洗濯機で洗われてきれいになったことをきっかけに、次第に「くまちゃん」から離れて行ったように思う。しかしジョンにとっては、ことはそう簡単ではなかった。何しろこのくまは、本当に生きていて、一緒にいると楽しくて仕方ないのだから・・・。

 で、その後日談が本作のメインなのだが、まず、30代になったジョンとくまのテッドの、かつての面影のなさに大笑い。二人はソファに並んで大麻を吸いながら、お気に入りのB級映画を見るのを何よりの楽しみにしているのだ。仕事はレンタカーショップの店員だが、この大麻とビデオのせいで遅刻した上、営業所の車を破損させてしまう。さぞや所長はお怒りか、と思いきや、トム・スケリットと知り合いであることが自慢の所長は小言もそこそこに、ジョンにピントはずれの自慢を始め・・・。トム・スケリットって誰だっけ? そんな有名人いたっけ?聞いた覚えがあるけれど・・・、ああ、そうか。「エイリアン」の船長だったな、途中でエイリアンに殺されちゃう…。それと、なんといっても「トップガン」! バイパーっていう教官だったよね? ……と、微妙な小ネタに笑いつつ、ついついこの下品でだらしない、30男と生ける伝説のくまの醸し出す、独特の世界観に巻き込まれてしまったら、あなたはこの映画を十分に楽しめるはず。

 実はこんなに冴えないくま付きオタクのジョンに、ローリーという広告代理店勤務(だから結構稼いでいるだろうな)の美しい恋人がいるのは(しかも、4年も続いている!)、くまも含めて一緒に暮らすジョンのその生活すべてをひっくるめて、ある意味「男の願望」をそのまま絵にしたようなものだろう。結婚したいというローリーの気持ちに感づいてはいながらそれを無視する現状維持男になのだから。
 で、あの生けるくま、テッドはそんなジョンの心のこういう部分をあらわしている〜などと、分析したくなってしまうのは悪いクセだが、それは言わないでおくほうがいいだろう。多分、女性が感じるほど本当は単純じゃないと思うのだ。

 テッドと離れろ、じゃなきゃあなたは大人になれない、と迫るローリー、そこにテッドをどうしても我が物にしたいキモい父子と、ローリーを狙う二代目セレブの社長が絡んで、ドタバタの展開に。この先どうなるのか、一番気になるのはテッドはどうなってしまうのか、ということだが、それはネタバレになるので内緒にするにしても、とにかく強引すぎるくらいのハッピーエンド、しかしこれはある意味、とっても「妥当」な落ち着きどころなのかもしれない。

 下品なギャグが多いのは確かだが、とっても心に残るもののある映画である。特筆すべきは、テッドの動き。CGには違いないだろうが、まったく不自然なところがなく、登場人物がすんなりテッドを受け入れるように、見る立場としても違和感なく引き込まれてしまった。ジョンとの殴り合いの場面は圧巻だが、すごい技術を用いながら下世話で笑える話に仕上げるところが、またナイス。

評点 ★★★★

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