MUDDY WALKERS 

哀しみのラストランス 

哀しみのラストランス In a Shallow Grave

監督ケネス・ボウサー
脚本ケネス・ボウサー
原作ジェームズ・パーディ

出演
マイケル・ビーン
モーリーン・ミューラー
マイケル・ビーチ
パトリック・デンプシー

スト−リ−

 ガーネット・モントローズ(マイケル・ビーン)はジョージナ・ランスと愛し合う仲だったが、第二次世界大戦のとき、ガダルカナル島で日本兵に襲撃され、 友軍の火炎放射を浴びて大火傷を負う。そして美しかった顔はケロイドで覆われてしまった。1年後、故郷の農場に戻ったガーネットは誰とも会わずに隠遁生活を送っていた。そんな彼の元に、若い青年ポッター・ダベントリー(パトリック・デンプシー)が転がりこんでくる。ガーネットは彼を雇い、ジョージナに宛て た手紙を届けるメッセンジャーをさせるようになる。しかし次第に、ダベントリーがジョージナと寝ているのではないかという疑惑に苦しめられるようになり…

レビュー

 「ターミネーター」「エイリアン2」で人気スターとなったマイケル・ビーンの初主演作。非常にマイナーな映画で、アメリカでもDVD化されていない。仕方 ないだろうなあ。だって、彼が人気スターになった一番の理由はルックスだ。ところがこの映画では、特殊メイクで顔が醜くなっている。一番見たいものが隠されているというわけだ。これじゃヒットしないのも無理はない。だけど私は結構好きだ。なんだか暗くて分かりにくい物語だけれど、心中を推し量る楽しみがある。

 戦争で傷ついた主人公が雇った少年ダベントリーと、元恋人との仲を疑うようになる…というストーリーで、実はダベントリーが愛しているのは元恋人ではなく主人公だったことが分かり、映画の紹介文によると「悲劇的な結末」を迎えるのだが、えっ?これは案外、ハッピーエンドじゃないのかなあと思うラストだった。というのは、これはダベントリー という不思議な青年を通してガーネットが死んだも同然の人生から救われる物語なんだな、と感じたからだ。原題の"In a Shallow Grave"は日本語にすると「浅い墓の中」という意味で、そういうテーマに則していると思う。邦題はちょっと、映画のテーマに合っていない。ダベント リーがガーネットと踊ったダンスは文字通りラストダンスとなったが、ダベントリーはきっと幸せだったはずだ。そしてガーネットとジョージナのダンスも、哀 しいものではなかった。ダベントリーが感じ、ジョージナも知っていたように、そこはガーネットは若くて美しく、幸せでいられる場所だった。そしてその場所で、彼は二人で踊っているのだから。

 いい話だけれど、脚本のせいでテーマがうまく伝わってこない気がする。ガーネットの苦しみをマイケル・ビーンはよく表現していたけれども、観る者のためには、彼が美しかった頃、ジョージナとどんな風に愛し合っていたかという絵が必要だったと思う。そうすれば彼の苦悩を観る者ももっと共有することができた だろう。

評点 ★★★ 

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