◇MUDDY WALKERS
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2000年 アメリカ 127分 監督■ナンシー・メイヤーズ 脚本■ジョシュ・ゴールドスミス/キャシー・ユスパ 出演■メル・ギブソン/ヘレン・ハント/ローレン・ホリー マリサ・トメイ/アラン・アルダ/アシュレイ・ジョンソン/マーク・フュアースタイン |
シカゴの大手広告代理店に勤めるニックは自他ともに認める「男らしさを絵に描いたような男」。それが原因で妻と離婚したばかり。女の気持ちがちっとも分からないのだ。得意な広告はビキニの女の子を使ったもの。それで出世街道をまっしぐら、次のクリエイティブ・ディレクターの座は自分のものだとすっかり有頂天になっている。ところが「これからは女性の時代」と、社長はニックが待望していたクリエイティブ・ディレクターの座を、ライバル会社を退職したばかりのダーシー(ヘレン・ハント)に任せてしまう。すっかり落胆するニック。しかも最初のミーティングでダーシーは、ニックの苦手な女性向け商品のサンプルをスタッフに配って「明日の朝までに広告プランを考えてくるように」と宿題を出す。パンスト、口紅、脱毛ワックス、マニキュアなど、これまでまったく縁のなかった商品を前に戸惑うニック。仕方なく全部を試してみることに。自宅の洗面所で四苦八苦しているうちに誤ってドライヤーで感電。そのショックで一晩倒れていた彼は、翌朝になって自分の異変に気付く。女性の考えていることが分かるようになったのだ。あまりの恐怖に結婚カウンセラーのところへ飛び込むが、そこで妙な考えを吹き込まれたニックは、この能力を利用してやろうと企んで…。
「人の考えていることが分かったら、面白いだろうなあ」と思った子どもの頃。10代にはまったSFも、そんな話が多かった。竹宮恵子の「地球(テラ)へ…」は、人の心を読む能力を持った新人類ミュウの苦難の物語。「機動戦士ガンダム」シリーズも、人の心を洞察する能力を持ったニュータイプたちが苦悩する物語だった。眉間にシワを寄せて苦悩するのがカッコイイんだと思っていたのだ。そこに青臭さを感じるようになったら、オトナになったんだなということかもしれない。
広告業界といえば、口八丁手八丁の世界。そんな中でトップを走るニックには、苦悩とはまるで縁がない。彼はオトナの男なのだ。女の気持ちが分かるという、突飛な特殊能力を身につけても、そこでウジウジ悩んだりしない。この業界お得意のポジティブ・シンキングが身についているのだ。
だからニックは女の気持ちが分かったら、それを利用してにっくきダーシーを会社から追い出してやろうとする。持てる能力はすべて利用するのが、できる広告マンの生き方というわけだ。男ってバカで単純だなあ。と、女性ならみんな思うだろう。そこがこの映画の面白いところ。女には分かっているのだ。表向きは決して見せないけれど、内側には表面からは伺いしれない女の気持ちが隠されているということを。
だから業界ナンバーワンのダーシーが心の中で「本当の私はこんなのじゃないのに」とつぶやくとき、そうそう、そうなのよ!と膝を打ちたくなった。監督が、「女の心の声が聞こえる」という突飛にしてやや安直なアイデアでもって描きたかったのは、そこなんだと思う。つまり原題にあるように「女は何を求めているか」を男はいかに分かっていないし分かろうという努力をしていないかということである。女性は、心の中に鍵のかかった「秘密の花園」を持っている。その中には、表向きの自分とはまったく違う、傷ついた少女がいる。ニックはそのことに気付いたとき、女性の心の声がわかるという特殊能力の正しい使い道がわかったのだ。
ニックを演じるのはメル・ギブソン。マッチョなアクションスターというイメージしかなかったが、こんなコメディにもばっちりハマって見事である。フランク・シナトラのレコードをかけて一人自室で踊るシーンはとにかくカッコいい!50年代ハリウッドのロマンティック・コメディの雰囲気を現代によみがえらせた、女性監督による女性のためのラブ・ストーリーである。
MUDDY WALKERS◇