MUDDY WALKERS 

ドリームガールズ DREAMGIRLS 

ドリームガールズ 2006年 アメリカ 130分

監督ビル・コンドン
脚本ビル・コンドン

出演
ビヨンセ・ノウルズ
ジェイミー・フォックス
エディー・マーフィー
ジェニファー・ハドソン
ダニー・グローバー
アニカ・ノニ・ローズ

スト−リ−

 歌が大好きなエフィー(ジェニファー・ハドソン)、ディーナ(ビヨンセ・ノウルズ)、ローレル(アニカ・ノニ・ローズ)の仲良し3人組は、ドリームメッツというグループを作って、ニューヨークのアポロシアターで開かれるコンテストに出場する。コンテストの勝者は、1週間この劇場でライブができるというのだ。観客の圧倒的な支持を得た3人だったが、ちょっとした裏取引があり、惜しくも優勝を逃してしまう。そんな彼女たちの才能に目を付けたのが、野心的なマネージャー、カーティス(ジェイミー・フォックス)。彼は強引なやり方で、ドリームメッツを、スーパースターであるジミー・アーリー(エディ・マーフィー)のバックコーラスとしてデビューさせることに成功するす。全国ツアーについていくことになった3人は、いよいよ夢の舞台に立つことに。やがて、スターであることをいいことにワガママ放題のジミーに愛想をつかしたカーティスは、ジミーを切って、ドリームメッツを「ザ・ドリームズ」という名前にして独立させる。喜びにわく3人だったが、カーティスはラジオからテレビへと移っていく時代の流れを見据えて、リードボーカルを、歌唱力のあるエフィーから、美人でチャーミングなディーナに交代させることを決断。そして、全米トップを目指すために、ブラックミュージックの魂ともいえるソウルを捨て、白人に受けるポップミュージックへの転向を図っていくのだった。そんなカーティスの強引なやり方にエフィーは傷つき、ディーナも疑問を抱くようになる。華やかなショウ・ビジネスの花道を歩み始めた「ザ・ドリームズ」にはやがて悲しい別れがやってくるのだった…。

レビュー

 1981年にニューヨークのブロードウェイで上演され、大ヒットとなったミュージカル「ドリームガールズ」が、世界の歌姫、ビヨンセをはじめ、ハリウッドが誇る豪華キャストによってスクリーンによみがえった。舞台となるのは、1960年代から70年代のアメリカ。この時代といえば、ソウルやR&Bをベースにしたブラックミュージック、モータウン・サウンドの全盛期。そして、モータウン・サウンドを盛り上げた立役者といえば、モータウン・レコードの創始者ベリー・ゴーディ・ジュニア、そしてビートルズと人気を二分したといわれる黒人3人組のコーラスグループ「シュープリームス」だ。映画『ドリームガールズ』は、彼らをモデルに、音楽業界でも根強かった人種差別を乗り越えて成功をつかんでいく姿、そして成功の後にやってくる悲しい挫折と再生を描くサクセスストーリーである。

 素人3人組がアポロシアターで圧倒的に観客を沸かせる序盤から、ライブ感あふれる音楽シーンが連続し、スクリーンの前で思わず立ち上がって踊り出しそうになる。ミュージカルというのは登場人物のエモーションが高まり、あふれ出す状況を歌とダンスで表現するものらしいが、この映画では、歌はステージシーンと直結しているから、むしろ目の前でライブを楽しんでいるような生々しい感覚があった。そんなナマな感覚は、スクリーンに描かれるキャラクターたちにも現れていて、華やかなショービジネスの決して美しくない舞台裏や、そこでぶつかりあう人間同士の生々しい感情が、すごくダイレクトに伝わってくる気がした。エフィーと深い関係になりながら、ポップミュージックへ転向を図るために容赦なく彼女を捨てるカーティス。そんな彼に向かって「絶対離さない」と歌い上げるジェニファー・ハドソンが素晴らしいのは、その歌唱力もさることながら、エフィーという人物のナマの感情が歌を通して心に響いてくるからだ。アカデミー賞助演女優賞受賞も納得の演技である。

 エディ・マーフィーについては、コメディー映画でおちゃらけた演技をする人という以外のことはよく知らなかったが、この映画では華やかなスターだがどこか心に満たされないものがある、二面性のあるシビアな役柄。何の違和感もなく観ていたけれど、後から思うと、歌もうまいし、ツボをおさえた演技で実によかった。
 対するジェイミー・フォックスは、演じるカーティスという人物が理性的で野心的、悪く言えば何を考えているのか良く分からない感じで、思ったほど存在感がなかったかな? 他のキャラクターがそれぞれに葛藤しまくっているのとは対照的で、それが狙いなのかもしれないが、やや物足りない感じがあったかも。

 単なる3人組のサクセスストーリーではなく、そこに当時の黒人の置かれた状況や音楽をめぐる時代の変化が絡んでいて、意外に奥の深さを感じさせるストーリーだった。ただ、その辺りの説明は映画の中ではあまり掘り下げられていないので、そういうことを知らなかったり、興味のない人はすーっと表面だけをなぞらえてしまうかもしれない。例えばエフィーの歌うソウルフルな「ワンナイト・オンリー」と、ドリームズのためにディスコ調にアレンジされた「ワンナイト・オンリー」を聞き比べさせるなんて、実にマニアックだなあと思う。どん底からの再起を誓ったエフィーの歌は確かにすばらしいが、この2曲を聞いてみて、ドリームズの「ワンナイト・オンリー」の方が頭の中に残っている私はやっぱりディスコ全盛80年代、MTV世代の申し子だなあと思ったりするのだった。

 そんな多様な要素がつまった映画で、グループの解散で終わるラストはありきたりのハッピーエンドというわけでもないが、生々しい感情のぶつかりあいの末としては驚くほどの爽快感があり、見終わったあとは「ああ、楽しかった、すごく良かった」と素直に言える映画でもある。それは立ち止まって余韻に浸るすきを与えないスピーディーな展開と、アメリカ映画ならではのドライな感覚、そして映画全編に漂うライブ感がそうさせているのだろう。何より観客を楽しませるという映画の基本を大切に作られた、軽くて重い、重くて軽い。そんな一本である。エフィーの“ソウル”とディーナの“ポップ”のように、それはどちらも欠かせないなのだ。

評点 ★★★★★

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