MUDDY WALKERS 

コンタクト CONTACT 

コンタクト 1997年 アメリカ 150分

監督ロバート・ゼメキス
脚本
マイケル・ゴールデンバーグ
ジェームズ・V・ハート
原作カール・セーガン「コンタクト」

出演
ジョディ・フォスター
マシュー・マコノヒー
ジョン・ハート
ジェームズ・ウッズ
トム・スケリット
デヴィッド・モース
ウィリアム・フィクトナー

スト−リ−

 父からアマチュア無線を教わった少女エリー(ジェナ・マローン)はフロリダ州ペンサコーラとの交信に成功し、ペンサコーラの光景を絵に描く。しかしその父は若くして心臓発作で倒れ、帰らぬ人となる。父の死を受け入れられないエリーは葬儀の場を抜け出して無線で父に呼びかけるが、返信はなかった。大人になったエリー(ジョディ・フォスター)はその才能を天文学の研究に注いでいた。ニューメキシコにある巨大な電波望遠鏡を使って、地球外の知的生命体を探すという研究だった。宇宙から地球に届く電波の中に、人工的に発せられた電波がないかどうかを調べるのだ。その研究の地でエリーは神学者ジョス(マシュー・マコノヒー)と親しくなる。しかし先の見えないプロジェクトに対して懐疑的になった天文学者ドラムリン(トム・スケリット)から研究費を打ち切られ、彼女はスポンサー探しに奔走することになる。望みが尽きかけていたころ、ハデン(ジェームズ・V・ハート)という大富豪が出資者となり、研究は続けられることに。ある日、エリーはついにヴェガから発した電波をキャッチし…。

レビュー

 オープニングの地球から宇宙へ、さまざまな通信の音声が飛び交う中を飛び立ってゆく映像の美しさだけでも、一見に値する。太陽系を出て銀河へ、その外へ出て銀河の点在する宇宙へ…と移り行く風景は、やがて吸い込まれて一人の少女の瞳がスクリーンにとらえられる。ひょっとしたら、このオープニングが映画のすべてを語り尽くしているかもしれない。

 父を亡くした少女が、その才能を生かして「地球外生命体」を探すという壮大なプロジェクトに挑み、ついに地球外生命体からの電波を捉えてメッセージを解析し、ワープ装置を作って旅立ち、地球外生命体とのコンタクトを果たす、というお話である。原作者は天文学者として宇宙の科学をわかりやすく解説したことで知られるカール・セーガン。それだけに、科学考証や科学的分析プロセスのしっかりした、本来のSFらしいSF映画となっている。そこに、学者としてのスポンサー探し、国家プロジェクトとなってからの政治・宗教との関わりなど現代社会との絡みが現実的に描かれ、リアリティを持ったエンターテイメント作品として、難しいテーマながら引き込まれるものとなっている。

 特にエリーが砂漠の中の巨大電波望遠鏡で、宇宙からの電波をキャッチし、その規則性からその意味をとらえ、メッセージとして解析していくプロセスは、場面としては地味ながらとてもエキサイティングで楽しかった。他の人から理解されないまま、地道で孤独な作業を繰り返してきたエリーが、まさに報いられる瞬間である。このメッセージを解読してエリーが夢見た宇宙人との出会いを果たすのだ、と思うだけでワクワクするが、映画はそこから、政治的断面としての現実をも逃さずに描いていく。問題となるのは、地球人の代表として「誰が」宇宙船に乗って、このコンタクトしてきたウチュ人と会うべきか、ということだ。ここに宗教の問題が絡みはじめ、国家プロジェクトとなったことで主人公のエリーが次第に脇に追いやられてくため、やや見ていてストレスのたまる展開となった。

 主人公のエリーは無神論者で、そのことが問題とされるのだが、見る側にとっては、なぜ神を信じるかどうかが、宇宙船に乗って宇宙人とコンタクトするのにふさわしい人物であるかどうかの条件としてそれほど重要なのか、ピンとこないのだ。私はキリスト教の信仰を持っているが、だからといってここで神を信じるかどうかを問題にすることがそれほど重要だとは思わなかった。これはむしろ、アメリカ人が、アメリカ人を代表する人物としてはどういう人物がふさわしいか、という問いかけではないかと思う。科学と信仰との関係を取り上げているという点ではユニークだが、なぜここで神を信じることが問われるのか、という理由がいまひとつ分からないため、この議論の場面が面倒臭く感じられた。

 しかし一方で、個人的に親しくなった神学者ジョスとのやりとりは、興味深かった。政治的な絡みで信仰の有無を問題にするよりも、科学者と神学者というそれぞれの個の立場で議論を深めるほうが、科学と信仰の関係を描くには良かったのではないかと思う。エリーは神の存在を証明できない以上、科学者として信じることは出来ないという。それに対してジョスはが「父を愛していたか」と質問する会話は、端的にそれを表現していてとても印象深かった。この会話が、その後のエリーを待ち受けるものを暗示する。エリーは確かに宇宙へ旅立ち、地球外生命体とコンタクトするが、その結末は意外なものだった。科学の話をしていたのに、気がつくと別の話になっていた感じがして、それはそれで非常に面白いと思った。

 主演のエリー役ジョディ・フォスターが、一途で非常に頭が良いが研究に没頭するあまり少々偏固になっている女性をよく表現していて、素晴らしい。恋人となる神学者のジョスは、なんか残念な感じだった。恋愛がらみの話は別にいらなかったのではないか。もう一つ気になるのは、エリーが行き詰まったところで、都合良く善意の支援者が現れることだ。出資者のハデス、そして神学者のジョス。あと、なぜ宇宙船に乗れるのが1人だけなのかも理解に苦しむ。ある意味、エリーが輝くように作られた映画だ。ラストの場面もそれを表している。彼女を「信じる」人々が、教祖のようにエリーを出迎える。科学で始まったお話しが、いつの間にか宗教で終わった、みたいな感じに思えるのはそのせいかもしれない。

評点 ★★★★

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