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機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 

機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 1988年 日本 120分

監督富野由悠季
脚本富野由悠季

出演
古谷徹/池田秀一/鈴置洋孝 ほか

スト−リ−

 宇宙世紀0093。新生ネオ・ジオン軍の総帥となったシャア・アズナブルは、宇宙民族の解放を唱え、地球軍との敵対を続けていた。表向きは政府と和平交渉 を行いながら、小惑星アクシズを地球に衝突させるという暴挙を計画するシャア。そんな時、彼は宿敵のアムロ・レイと再会する…。

レビュー

 テレビシリーズの続編を映画でやるという発想自体、どうかと思うが、ガンダムシリーズの映画としてはバツグンの出来。何よりも「地球への隕石落下によるパ ニック」というSF的アイデアを、あの「アルマゲドン」や「ディープ・インパクト」に先駆けて取り上げた先見性は特筆に値する。「アルマゲドン」で描かれ た核ミサイルを隕石に埋め込んで爆破するという作戦は、まるごとここからのパクリじゃないのか、と思う。戦争の道具として隕石を地球に落とすというアイデ ア自体は、ロバート・A・ハインラインの小説「月は無慈悲な夜の女王」に登場したか? ガンダム自体がハインラインの「宇宙の戦士」をベースに考案された ものだから、これもシリーズものとしてはイイ感じである。問題は、シリーズとしてのパターンを引きずっている部分。アムロとシャアの対決はいいにしても、 クェスという少女を絡める必要はあったのか? クェスの存在は話をただ複雑にし、あり得ないバカバカしさを付け加えているにすぎない。13歳の少女を数 日?で一流のパイロットに仕立て上げるなど、いくらなんでも無理がありすぎる。クェスとハサウェイのエピソードはいらないから、「アルマゲドン」がそうし たように、最初の隕石落としによる地上でのパニックをもっときちんと描くべきだった。そうすれば、最初のアムロとシャアとの説明口調のやりとりは必要なく なるし、映画としての緊迫感もぐっと高まる(ただし、大勢の人間がパニックに陥る描写はアニメの最も苦手とする部分だ)。だいたいアムロとシャアは 「ニュータイプ」という設定をいいことに、戦闘中に会話し過ぎだと思う。いろいろ話をさせたい気持ちは分かるが、戦いながら能書きをタレられると、観てい る方はどんどんテンションが下がっていくのだ。登場人物の大半が死んでしまう陰惨さは富野監督の真骨頂。実は多くの兵士たちの犠牲によって隕石の軌道が奇 跡的にはずれていくのだが、こういう感動的なラストはベタでもいいから本当に涙が出るほど感動的にみせて欲しかった。

評点 ★★★

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