
DVD 少年時代の夢が捨てきれず、サラリーマンの大原幸嗣は家族に内緒で、阪神タイガースのテストを受け、覆面で甲子園限定の抑え投手に…。 |
「じゃあ、好きなようにさせてもらいます。俺はルーキーじゃない、今からは大原幸嗣だ!」
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| プレイヤー |
大原幸嗣 |
| 所属球団 |
阪神タイガース HANSHIN TIGERS |
| 背番号 |
119 |
| ポジション |
ピッチャー(抑え) 右投げ |
| 打順 |
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1985年の優勝以来、深い深い暗黒の淵に沈みつづけていた、阪神タイガース。その暗黒時代最後の年に作られたのが、この映画である。野球映画というよりは、優勝を願望する阪神ファンに向けたファンタジー映画というべきだろう。ノリとしては弱小クリーブランド・インディアンスが奇跡の快進撃を見せる『メジャーリーグ』あたりを狙ったのだろうが、うーむ。2003年に本当にタイガースが優勝してしまったあとでみると「甲子園で1試合観ている方が、よっぽど面白いわ」と思ってしまう。
主人公の大原幸嗣はビール会社に勤めるサラリーマン。しかし、夜になると覆面をかぶって阪神タイガースの抑え投手となり、甲子園のマウンドに立つという設定だ。この覆面投手という設定自体はなかなかユニークだと思うのだが、話がすでに彼が活躍しているところから始まるのがもったいない。この設定で一番盛り上がるところは、低迷していた阪神に、ナゾの覆面投手が加わることでチームが生まれ変わったように強くなるというプロセスじゃないかと思う。「阪神は弱く、18年も優勝から遠ざかっている」という前提は阪神ファンなら暗黙の了解ではあるが、映画としてはやはり、ここをきちんと描かないと中途半端になってしまう。
ファンタジーとしても中途半端なのは、主人公の大原幸嗣がサラリーマンとプロ野球選手という二足のわらじを履いていること。今の生活も手放したくない、だけど夢も追いかけたい、とどっちつかずなのだ。もっと彼をナゾめいた存在にしておき、だんだん正体を明かしていくというふうにした方が、面白かったのではないか。主人公の野球に対する思いがあやふやなので、夢とか情熱という部分で熱くなれないのであった。
それと、いくら彼が優れたピッチャーだったとしても、抑え1人ではいくらなんでも優勝できないだろう。もう少し、チーム内の他のキャラを立たせてチームとしての活躍ぶりを見せてくれたら、この映画の中の阪神タイガースに愛着を感じることができたのだが。
実況中継がABCで解説に吉田義男や田淵幸一が登場したり、観客席に阪神ファンとして有名なアナウンサー、道上洋三がいたり、タイガースの選手(広澤、八木、矢野、桧山、藪)が出てきたりと、阪神ファンで、地元のテレビ中継を観ている人にとってはなじみのある顔ぶれ、なじみのある映像が続くが、逆にいえば映画的なスケールがなく、野球の試合もほとんどテレビの野球中継と同じアングルで、映画ならではの臨場感に欠ける。シーズンオフの甲子園にエキストラを集めて、あの独特の雰囲気を再現したのはすばらしいが、テレビ中継では見られないような迫力あるカットがもう少しあるとなお良かった。
大原幸嗣役を演じるのが元読売ジャイアンツの長嶋一茂というところに引っかかりを感じる阪神ファンも中にはいるだろう。だがそれ以前に役者としての実力に思いっきり引っかかってしまう。ただ、さすが元プロ野球選手だけあって、ピッチングフォームはさまになっていた。対戦相手のヤクルトや横浜の選手役に、社会人野球チームを起用していたのもいい。野球のシーンはそれなりにさまになっていた。面白いのは、この中から本当に阪神タイガースのユニフォームを着ることになった選手が出てきたことである。当時大阪ガスに所属していた能見篤史である。背番号14をつけてタイガースのピッチャー役で登場し、めった打ちにされるというかわいそうな役所ではあったが、それから3年後、本当にタイガースのピッチャーとなり、映画と同じ背番号「14」で甲子園のマウンドに立つことになった。役者の中に「ミスター・ルーキー」が眠っていたというわけだ。
(2005.12.27)
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