MUDDY WALKERS

ヒーローインタビュー HERO INTERVIEW(1994)
 監督:光野道夫 出演:真田広之/鈴木保奈美/武田鉄矢/いしだ壱成/安達祐実



DVD
エリート経済記者がスポーツ部に転属、そこで引退間近の落ち目の選手と出会うラブ・ストーリー



「100分の1でも
可能性があれば賭ける。
それがプロじゃないですか」

---轟仁太

プレイヤー 轟 仁太 Jinta Todoroki 
所属球団 ヤクルト・スワローズ 
YAKULT SWALLOWS
背番号
ポジション 代打・代走
打順 ---(かつては3番)

 脚本が当時ヒットメーカーだった野島伸司、そしてメインキャストが『高校教師』の真田広之、その娘役が『家なき子』で話題をさらった安達祐実。さらに『東京ラブストーリー』で一世を風靡した鈴木保奈美が主役となれば、これはもう野球映画というよりはテレビドラマの世界なのだ。真田広之演じる落ちぶれたプロ野球選手が所属するのがヤクルトスワローズなのは、製作がフジテレビだから(フジテレビはヤクルトスワローズの株式を所有している)。つまり野球への愛はない。離婚して男手一人で娘を育てる落ちぶれた職業人である男が、若く美しい女性と出会って恋に落ち、もう一度夢をつかもうと奮起するという筋書きの職業がたまたまプロ野球選手だったというくらいのものだ。それでも、ヤクルトスワローズが全面協力したという神宮球場での試合シーンなどがあるというと、野球映画ファンとしては観ずにはいられないのだ。

 ヤクルトスワローズの轟仁太は、頭部にデッドボールを受けて以来それまでの打撃が出来なくなってしまい、かつては3番を打っていたのに今ではスタメン落ちどころか二軍に落とされ、引退の噂も流れるようになっていた。私生活でも奥さんに逃げられ、オンボロアパートで小学生の娘、球子と二人暮らし。打てないウサをお酒で晴らし、借金取りに押し掛けられるというどうしようもない毎日を送っていた。
 一方、主人公の霞は東京経済新聞の辣腕女性記者として活躍していたが、ある日、スポーツ部への異動を命じられる。スポーツに関してはド素人の霞だが、経済紙でのスポーツ面は付録みたいなものだから大丈夫ということで(実際はそんなことないよ。日経新聞のスポーツ面はしっかりしているしコラムも充実していて面白い)、いきなりプロ野球の担当にさせられ、ヤクルトスワローズの試合の取材に行く羽目に。そこで出会った轟仁太の口から出任せのウソ話をトクダネと騙され、それを記事して同僚記者たちから顰蹙を買うことになる。

 筋書きはオーソドックスなものだから、細部をきちんと取材してしっかり作り上げればそれなりにしっかりした映画になっただろうに、こういったドラマの中の嘘臭さが、この作品をとっても安っぽいものにしてしまっていて残念だ。まずは、轟仁太から。頭にデッドボールを受けたぐらいで(というと言い過ぎかしらん?)これほどの打撃不振に陥るものなのか。それに、普通のサラリーマンじゃないんだから、いくら毎日飲んだくれているといったって、あのオンボロアパートとか借金取りに追われるなんていうのもちょっとプロ野球選手のイメージとはかけ離れている。
 真田広之演じる轟は「ヒーローインタビュー」というタイトルが示すところのヒーローであるはずなのだが、初めはかなり、おちゃらけキャラである。これもどうかと思ってしまう。もう少し哀愁を持たせて、笑いを取る部分は他のキャラに任せた方が良かったのでは? 打撃不振から脱出するためのトレーニングも、何だかマンガみたいで笑えてしまう。最初のおちゃらけキャラのイメージがあるから、余計にである。

 ストーリーはある意味定番で、悪くはないが良くもない。娘の球子の誕生日には毎年ホームランボールをプレゼントしてきた轟だが、去年は他の人のボールだったという。今年は絶対またプレゼントするからと約束したというのだが、野球映画ならここは奇をてらわず約束を果たすエンディングに持っていくべきだろう。「その通りになる」と分かっていても、多分試合の場面になればドキドキするのだ。轟がどうやってホームランボールを手に入れようとするのかは予想がつくが、ここでヘンに期待を裏切る必要がどこにあったのだろうか。こんなカタルシスのない野球映画は本当に困ってしまうのである。

 何よりいけないのは、「100分の1の可能性に賭ける」という轟の信条だ。そんなことを考えているから一流のプレイヤーではいられないのだ、と小一時間説教したくなるような台詞である。野球というのは、そもそもそういうスポーツではないのだ。打率、長打率、得点圏打率、出塁率、守備率、防御率…と選手のプレーの実績がすべて数値化されるスポーツである。100分の1の可能性などと言うと聞こえはいいが、要は100打数で1ホームランと考えれば、それがいかに間抜けな考えであるかが分かる。この脚本家は、野球とギャンブルを、間違えているのではないかと思わずにはいられない。

 そんなわけで、野球映画としては三級品のこの映画。恋愛映画として見ればまあ、それなりに面白い…かもしれないが、個人的には、人間としてもだらしなく、しかも三流プレイヤーにしか見えない轟に惹かれる霞の気持ちがあまり良く分からなくて、盛り上がれなかった。 ちなみに、映画の中でヤクルトスワローズが対戦する相手は、どういうわけか、常にベイスターズである。ここらあたりも、悲しいところである。

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