小林昭人作
機動戦士広東麺ガンダム 第2話
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プロローグ C・E74年
プラント最高評議会議長・ギルバート・デュランダルが提唱した「デスティニー・プラン」の導入実行が引き起こした、ザフトとクライン派・オーブ首長連合国の戦いは、デュランダルの戦死と宇宙要塞メサイアの陥落により、クライン派・オーブ連合軍の勝利に終わった。
デスティニー・プランは中止されプラントの政治経済は強力なリーダーを失ったことで停止状態となってしまった。プラントは拠出国の一つであり、戦後は世界のリーダーとなったオーブ首長連合国の管理下に置かれ、その軍事力は解体され、高度なMS設計技術も失われた。
やがて世界はオーブ首長連合国初代主席、カガリ・ユラ・アスハが頂点に立つ「宇宙統一連合」となり、世界は平和になったかに見えた。
しかし、強大な一国の主導によりもたらされた平和は、いつしか各地で貧富の差を生み出し、世界各地でレジスタンスが起こるようになってしまった。統一連合を構成する各国は武力でレジスタンスを抑えようとしたが、レジスタンスの数は一向に減らず、カガリはクライン派の象徴であるラクス・クラインを総帥とする独立部隊「ワルキューレ」を設立。ワルキューレは投降したザフトの技術者が生み出すMS、MAで多くのレジスタンスを鎮圧するが、民衆の嘆きと苦しみは収まらず、新たなレジスタンスが増え続ける結果となった。
そして統一から2年後、圧制と貧しさに苦しむ民衆に支持されたレジスタンスと、カガリ、ラクスら率いる統一連合・ワルキューレ混成軍の争いとなり、世界は再び、戦いと混迷の時代を迎えようとしていた。
第2話 「梁山泊攻略作戦」
<Aパート>
オロファト市街 深夜
どこかの路地裏にて
若い女 「キャーッ! ギャアアアアッ!」
ばけもの 「キエッ!ギャッ!ギャッ!ギャーッ!」
バサバサバサ(羽音)
北京 対梁山泊作戦本部
北京に出現した梁山泊の情報を受け、入手した壕に囲まれた要塞の図面を前に統一連合軍の参謀達は作戦計画を練っている。その中にはキラとアスランの姿もある。
参謀A 「致死率90%のバイオ生物弾を要塞に撃ち込み、、」
キラ 「却下、非人道的すぎる。」
将軍 「いっそ核を使えばと申し上げたのですが、、」
アスラン 「それはやめろと言っただろう!」
統一連合軍、東ユーラシア軍の面々を前にアスランが声を荒げる。多くが旧ユーラシア連邦の軍人で、戦役後に強制併合された鬱憤もある。口論を続けるアスランと将軍の様子を横目に参謀らの討議は続いている。彼らは要塞の中心にある壕で囲まれた中心部に注目している。これは装甲されており、砲撃のみでの陥落は難しい。旧ユーラシア連邦は多民族国家であり、軍人らの多くは内乱鎮圧の経験を持っている。
参謀B 「要塞の装甲を鋳造した南京鉄工公司によると、この要塞の天頂円蓋部の厚さは80センチ、中心部は110センチ、ヴィッカース硬さは200。周辺のベトン(コンクリート)の厚さ1メートル。周囲は山岳地帯で大部隊の展開には適していません。」
参謀C 「要塞自体は要するにただの鉄とコンクリということだな。M1500オルトロスから射出できるように改造された120o徹甲榴弾を使う。直射で5千メートルまで近づけばぶち抜ける。」
参謀D 「砲兵隊は200門で山間から一昼夜砲撃し、要塞と周辺施設を叩く。その間に地中侵攻用のグーン三機が地下から接近、直下に爆薬を仕掛ける。徹甲榴弾の攻撃と併せ、要塞は木っ端微塵だ。」
参謀B 「敵の装備は?」
参謀C 「広東とかいうモビルスーツとジンが数機、あとは鎧兜を付けた義賊気取りの妙な奴らだけだ。」
参謀D 「話にならんな。」
素手でモビルスーツを相手にできる梁山泊を理解するには、彼らは軍人でありすぎた。
将軍 「侵攻する兵士は三個連隊5千人。モビルスーツはダガー30機、ウィンダム30機。敵にカテゴリーSがいるという情報もあるから、この3倍は欲しいが無い袖は振れない。いかがでしょう、キラ将軍、アスラン将軍。」
キラ 「いいんじゃない?」
参謀A 「1平方メートルあたり約3トンの爆薬を撃ち込みます。この環境で人類は生きてはいけません。また、周囲に機体を隠すことも不可能です。」
参謀C 「部隊の展開前の襲撃を避けるため、周囲に散兵線を張り、ウィンダム部隊による上空援護を行います。仮に敵が奇襲を仕掛けても未然に察知できるはずです。」
参謀B 「敵の飲料水である壕の上流から毒薬を流します。毒性は40時間あれば消えますので環境にもクリーンです。」
アスラン 「やりすぎだ!」
将軍 「では諸君、作戦開始だ。キラ様、アスラン様、統一宇宙軍に栄光あれ!」
オロファト市
情報管理省
ダゴスタが部屋に入った途端、焦げたような据えた匂いが鼻を突いた。古式なサイフォンを前にコーヒーを沸かしているのは彼の直属上司の情報管理大臣、アンドリュー・バルドフェルド閣下である。
バルドフェルド 「ライヒはやっぱり”eternal plan”には反対かネ。」
ダゴスタ 「『ラクス抜き』なら賛成するそうです。彼の言によれば『ラクス・クラインはもう古い。これからは綾瀬はるかだ』ということです。」
バルド 「それは認められない。閣議は全員一致が原則だ。奴が反対となるとこれはかなりまずい。」
ダゴスタ 「プランを修正すればいいでしょう?」
バルド 「コトはそんなに簡単じゃない。君はコーネリアス村の虐殺事件は知っているカネ。」
情報管理大臣バルドフェルドはそう言いつつ、プレーヤーのスイッチを入れた。優雅な民族音楽が部屋中に流れる。
ダゴスタ 「
アニー・ローリー、、いい曲ですね、どこの楽団ですか?」
(筆者・TOTOほど趣味は悪くないからな)
バルド 「これは私の私物だからな。「ピュア」な演奏だ。」
優雅なメロディを楽しみつつ、バルドフェルドは皮肉っぽい笑みを浮かべる。
ダゴスタ 「ピュア? どういう意味です? それとコーネリアス村、確か私が次官に抜擢される前の話ですね、それが何か?」
ダゴスタの質問には答えず、バルドフェルドは別の曲を流した。ラクス・クラインの新曲だ。相変わらず清楚な歌姫の可憐な歌声に彼はつい魂を奪われた。
ダゴスタ 「やっぱり、こっちの方がいい。」
バルド 「良いに決まっている。私が情報管理省の大臣に就任以来、ありとあらゆるメディアにラクスの歌声や映像を刷り込んだ。このニュースを見てみろ。」
バルドフェルドはテレビを付けた。何のことはない、普通のオーブのニュースだ。北京での戦闘、痴情による殺人、スキャンダル、天気予報、ありふれた内容ばかりだ。
バルド 「連合市民の視聴する全ての番組に1秒間に2回のラクスの映像を挿入している。映像ばかりじゃない、可聴域ギリギリの音声メッセージ、ネットワークにも仕掛けがある。現政権の支持率98%はこういう涙ぐましい努力に裏付けられているのだよ。ラクス・クラインを永遠のスターにするためなら何でもするのが今の政府だ。」
ダゴスタ 「もはや犯罪なのでは、、(冷汗)」
大臣はニヤリと笑うと手製のコーヒーを彼に振る舞った。
バルド 「そういうケースも、時にはある。」
ダゴスタはコーヒーを啜った。ほろ苦い味がする。バルドフェルドは話を続けた。
バルド 「もはや統一連合の市民はラクス無しには生きていけない。2年に渡る洗脳の結果、進んだ地域ではより高度なメッセージもテストできるようになった。そこで半年前、西ユーラシア、コーネリアス村でその成果を試したのだが、、」
『ほ〜し〜の〜降る場所で〜♪ 殺してえ〜♪ 殺してえ〜♪』
ダゴスタは背筋が凍るのを覚えた。
ダゴスタ 「まっ! まさか! あの事件は!」
彼は頷いた。
彼は半年前の東ヨーロッパ(ルーマニア)で平和に暮らしていた住民が突然互いに斧やまさかりで殺し合った狂気の事件を思い出した。原因は不明で、悪魔に取り付かれたのだという隣村の住民のインタビューも見たが、そんなバカなことがと一笑に付していた。原因の一つとして件の地域の民間伝承を紹介する番組も見たが、まさか目の前の上司が仕掛人だったとは。
バルド 「この計画に投入した費用は宇宙艦隊より多いかもしれない。事情を知らぬ鈍感な耳の治安警察の改造人間が言うほどコトは簡単ではない。」
ダゴスタ 「よく、ラクス・クラインが承諾しましたね、、」
悪魔の所行だ、と、彼は思った。
バルド 「今のラクス・クラインはただの歌姫ではない。人心を操作するためのありとあらゆる情報科学の集大成なのだ。もちろん彼女はこのことを知らない。あれは合成音声だった。ラクスの魅力の99%は解析済みだが、残りの1%は今だに分からない。その1%が分かれば、あるいはラクス自身が情報操作に積極的に協力すれば、、」
コーネリアス村の殺し合い程度では済まない、と、彼は部下に言った。
オロファト市
行政府
統一連合の美少女主席、カガリ・ユラ・アスハは最近市内で続発している吸血事件について、苦情を申し立ててきた官僚に向かって毒づいた。
カガリ 「大した話ではないではないか。たかだか20ミリリットル位の話だ。それで死にはしないし、適度な献血はむしろヘルシーだ。それで各省の女子職員を午前中で退出させろだと? ふざけるな! こちとら忙しいんだ!」
官僚 「とは言いましても、ここ2ヶ月で26人が犠牲になり、女子職員の中には入院した者もいます。公務員労組からの要求もあります。なにとぞご容赦を。」
カガリ 「私は夜中まで仕事をしている! 私は吸血されても良いというのか!」
ふざけるなと机を叩いたカガリだったが、結局要求は呑んだ。長官にはもう少し発作を押さえるように言っておこう。
<Bパート>
北京郊外 梁山泊要塞
北京郊外の山岳地帯にある梁山泊の要塞は壕に囲まれた中央にある。その謁見室で玉座に座っている壮年のリーダーが軍団員らと共にシン・アスカ、陳孔明と謁見していた。
劉備 「私はこの梁山泊の頭領・劉備玄徳と申す。」
劉備が自分の名前を言うと、他の者達も続けて名乗った。
宋江 「わたくしは梁山泊の副頭領の、及時雨・宋江という者です。」
呉用 「私は梁山泊の参謀役を努めている、智多星・呉用といいます。以後お見知りおきを。」
何とか 「私は梁山泊の○○を努めている、何たらかんたら。」 (筆者・他にも数十人ほどいるが、紙面の都合で割愛する)
いずれにせよ、統一連合の討伐部隊が迫っている。12世紀の水準では難攻不落だろうが、コズミック・イラの要塞としては役不足である。ヴィアーズ将軍率いる連合軍の展開は速い。
劉備 「仮に敵が此処に攻め入ろうとも周囲には壕がある。」
シン 「壕の外からの砲撃で要塞ごと叩きつぶされるのがオチだと思いますよ。」
関羽 「おのれ! 我らを侮辱する気か!」
シン 「剣や槍で近代兵器に立ち向かえるわけが無いだろう!」
劉備 「その意見は説得力が無いぞ、シン・アスカ。隣を見ろ。関羽も口を慎め。孔明殿は何か策がおありですかな。」
孔明は作戦を説明した。ASCこと陳孔明は神龍油揚拳の使い手であるのみならず、知能指数1600の天才軍師でもある。
孔明 「オレのセンシティブイヤーが連合兵士のささやき声を捉えている。奴ら、飲料水に毒薬を流すつもりだ。」
陳孔明のセンシティブイヤーは500メートル向こうのささやき声も捉えることができるのだ。
張飛 「下流の住民も巻き添えになる! おのれ! 何という凶悪な!」
劉備 「なりふり構わぬとはこのことだな。」
さらに、彼の頭髪は極超短波アンテナとなり、飛び交うトランシーバーの通信を傍受できる。
ピキーン、ピキーン
孔明 「既に連合の斥候が近くまで来ている。キラ、アスランも同行している。」
宋江 「あのスーパーコーディネーター達か!」
副将の驚きに孔明は頷いた。恐るべき孔明の能力にシンが戦慄する。
シン 「アンタがいるとオレの出番が無くなるんだけど、、」
孔明 「鍛えれば鍛えるほど、人は無限の能力を発揮できるのだ。」
シン 「物には限度がある!」
呉用 「いずれにせよ、シン君の言葉ではありませんが、人間外の者も多いとはいえ、この程度の要塞で戦えるわけが無いでしょう。古来、孤城は持ちません。常識考えてください。婦女子の避難を急ぐこととし、我々は敵陣を突破し、後日、他のレジスタンスに合流するのが賢明かと思います。」
劉備 「ウム、そうだろうな。戦えないとは思わないが、私もキチガイの集団の頭領として後世に名を残すのは嫌だ。ここはレジスタンスの本領を発揮することとし、孔明先生、呉用先生の計画に従おう。関羽、楊志もこれは良いな。」
劉備の言葉に部屋の隅で話をじっと聞いていた長剣の男が頷いた。それを見て、劉備が玉座から立ち上がった。鎧兜の男たちを見回し、檄を飛ばす。
劉備 「これで決まりだ。せいぜい派手に戦って、ここで連合の奴らに一泡吹かせてやろうではないか!」
オーッ!(鬨の声)
午後 梁山泊要塞付近
将軍 「撃ていっ!」
どどどどどっ! どーん! どーん! どーん!(効果音)
シン 「来たな連合軍!」
ひゅるるるる、、どーん! どかーん!
スカイグラスパーパックを装着したシンの「カン・トンメン」ガンダムが宙を舞い、ビームライフルで飛来する砲弾を撃ち落とす。山岳地帯の各所に設置された連合軍陣地からの砲弾の数は毎分千発を超える。華麗に空中を泳ぎ、それを撃墜するシンの広東麺ガンダム。そのシンの背面に装着されたグラスパーを操縦するのは日本忍者・猿飛佐助。
佐助 「シン! 右だ!」
シン 「畜生、数ばかりは沢山と!」
広東ガンダムを吊したグラスパーを操縦する佐助が別の陣地から打ち上げられた砲弾群を視認した。上空をウィンダムに護衛された陣地から次々と砲弾が打ち上げられていく。シンの出現にも関わらず、連合軍のモビルスーツ隊は戦闘に入ろうとしていない。その理由はすぐに分かった。
けたたましく鳴り響くコクピットの警戒アラーム!
シンと佐助の間に閃光が走る。急速力で迫る敵機にすかさず警戒態勢を取るシン・アスカ。シンから吹っ飛ばされ、そのまま操縦不能になる佐助のグラスパー。
佐助 「うわあああーっ!」
落ちるスカイグラスパー、その刹那、入れ替わりに飛来した純白の機体、キラ・ヤマトのエターナルフリーダムがシンにMA-M21KF高エネルギービームライフル、MMI-M15E『クスィフィアス3』レールガンの一斉射撃を浴びせる。お得意の飽和攻撃だ。普通のパイロットならこれで撃墜されていたはずだ。落下するエネルギーをスラスターで制御して方向を変えつつ、広東ライフルをエターナルに撃ち込むシン。
即座に左腕を上げ、MX2351『ソリドゥス フルゴール』を展開してそれを防ぐキラ。
キラ 「ははははっ! そんなもの!」
シンの攻撃をいなし、腹部のMGX-2235『カリドゥス』複相ビーム砲を放つエターナル。最高のコーディネーターによる、流れるような一連の攻撃。エターナルと異なり、スラスターの推力だけで機体を支えきれない広東ガンダムは重力に抗することができず、そのまま地上に落下していく。
シン 「う、うわっ! 何だこれ!」
戦機を見たキラはすかさずシンの上位を取る。エターナルはドラグーンの代わりに空対空ミサイルを装備している。ミサイルを放ち、ビームライフルでシンを下方に追い詰めるキラ。スラスターを全開にしつつ、シンは落下速度をコントロールしながら付近で炸裂するミサイルと砲撃をかわしていく。
スーパーコーディネーターならではの超絶的な操縦技能!
シン 「くそっ! 上がれっ! 広東麺ガンダム!」
ズボボボボボ、、ドドド、、(広東ガンダムのエンジン音)
しかし、パイロット一流、機体三流という現実の壁は、スーパーコーディネーター、シン・アスカの力をもってしても余りにも厚かった。燃料も悪かったのだろう。黒煙を吐く広東ガンダムのエンジンに一瞬の余裕を得、機体を安定させて砲門を構えるエターナル。
シュオーン! キュイーン! ビュイーン! (エターナルのエンジン音)
キラ 「当たれぇーっ!」
ビシュビシュ! ドギュドギュ! バシュバシュ!
シン 「のわっ! うわっ! ぐわっ!」
おののいたシンの背後の地上では連合軍の砲弾が炸裂し、ありとあらゆる物を吹き飛ばしている。突如警戒アラームが鳴り、振り向いて爆発の中から上昇する赤いシルエットを見たシンは驚く。
アスラン 「シン!」
シン 「アスラン! 貴様まで何だ!」
MA-M02G 『シュペールラケルタ』ビームサーベルを引き抜いたトゥルージャスティスが背面リフター『ファトゥム01』で倍加した推力でぐんぐんと上昇してくる。正面をキラに阻まれ、背後から迫るジャスティスからマッハ2の超高速で切り離されたリフターの斬撃を受け、空中でのコントロールが乱れる広東麺ガンダム。シューティングゲームでいえば初心者からいきなり上級者モードに放り込まれたようなものだ。そして相手はエターナル以上の比推力を誇るトゥルージャスティスと統一連合軍の星、キラ・ヤマトのエターナルフリーダム。あまりといえばあまりに不利な戦況だ。
シン 「お、お前たちはーっ!」
機体を転回させようにも、広東ガンダムの機動力がシンの反射神経に追いつかない。爆発を背景に、あっという間にシンの眼前に迫る「赤い稲妻」トゥルージャスティスの鮮紅の機影。
アスラン 「シン! お前はっ!」
アスラン、斬撃!
4本のビームサーベルが広東ガンダムに同時に突き刺された!
グリーバス将軍か、貴様わっ! 動揺するシン!
シン 「グワッ! お前ら、、ひっ! ひきょうだーっ!」
シンの抗議も虚しく、機体の一部を切り取られ、制御を失ってスピンする広東麺ガンダム。さらに上昇するジャスティスと交叉して急降下したエターナルが全砲門を広東ガンダムに向ける。
キラ 「これで終わりさ!」
ドシュドシュ!バシュ!グバッ!ドガガッ!
エターナルの砲撃を受けた広東麺ガンダムは空中でボロクズのように吹っ飛び、クルクルと回転しながら要塞の壁に激突した。
どしゃっ! ばきっ! ぐしゃっ!
シン 「ぐはあっ! デッ、、デスティニーさえあれば、、(筆者・あっても同じだと思うがな)」
直後に広東ガンダムの背中で炸裂する連合軍の155ミリ砲弾!
どがーん!
シン 「ぐわあああーっ!」
広東ガンダムはそのまま吹っ飛び、コクピットを含む残骸は要塞内部に墜落して爆発した。その上空を旋回するエターナルとジャスティス。
キラ 「アスラン、やったね。」
アスラン 「前より弱くなったのでは、、シン、お前は、、お前はっ! こんなことでっ!」
墜落したシンに舌を出すキラをよそに、機上無線で炸裂するアスラン節。長い付き合いで、この粘着質の友人が話し始めると止まらないことを知っているキラが呆れ顔をする。
アスラン 「ルナマリアはどうしたんだシン! なぜおまえがこんな所でっ! お、俺はっ!」
キラ 「いずれにせよ、終わったんだ。」
ジャスティスの肩を叩くキラ。これ以上喋らせると何を言い出すか分かったものじゃない。
アスランの独白は続いている。あの慰霊碑の前の誓いは何だったんだ。仲間になったんじゃなかったのか。オマエはまだステラのことを。ムウはネオじゃない。ネオは死んだんだ。悪いのは議長だ。彼の言葉はやがて世界の全てを殺す。だからシン、俺は、俺は、、いつものように様々な話題と問題発言を周囲に提供しつつ、悩める青年の主張の権化のような男、統一連合軍少将、アスラン・ザラは涙を拭きつつジャスティスの機位を北京の方角に合わせた。既にキラのエターナルは戦場を去っている。勝負はついた。
緒戦で最大の敵「カテゴリーS」を撃破した連合軍の攻撃は要塞に迫りつつあった。要塞の奥の院で戦況を見守る梁山泊の劉備と陳孔明、そして軍師の呉用と宋江。
劉備 「先生の出番ですかな。」
その言葉を聞き、劉備と共にシンの戦いを見守っていた陳孔明が立ち上がった。
呉用 「青面獣の楊志は夜戦のエキスパートです。」
ウム、劉備が頷く。勝てるはずも無い戦いである。しかし、そうたやすく勝てもしないことを、傲慢なラクスとカガリの軍隊に教えてやろう。
壕の水が蒸発し尽くした小さな要塞の周辺で連合軍の砲弾が炸裂している。
機動戦士広東麺ガンダム「第2話」完
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