Mobilesuit Gundam Magnificent Theaters 2005.

An another tale of Zeta・・・INTERVIEW


(インタビュー 2020/1/14)




機動戦士Zガンダム ハヤト・コバヤシさん
※本作の記述とは関係ありません。




はじめに

ハヤト: 皆さんこんにちは、カラバのハヤト・コバヤシです。ATZのインタビュアーを務めています。

小林: 作者の小林昭人です。


1.今週のゴーン事件 



 「誰かがあのように認めてくれれば、かなり気持ちよく感じるものだ(グレック・ケリー)」

小林: ゴーンみたいにレバノンに逃げても良いことなさそうだし、これはつらいなあ。

ハヤト: 弘中弁護士も高野弁護士も辞任してしまいましたし、弘中氏には懲戒請求が出ています。ゴーン氏自身、「手引きはなかった」と言っているんですがね。

小林: 逃したところで彼にとって何のメリットもないじゃないか。ゴーンではないが、こういうことをやるには「家族にも秘密」でなければいけない。弁護士はもちろんだ。で、やっぱりサルゴジがゴーンにマクロン大統領の手紙を渡したそうだ。内容については「絶対に言えない」とのことだ。が、流れが変わったことはあるようだ。



ハヤト: これですね。直後にマクロン大統領が安倍氏にゴーン氏の処遇改善を再三求めたことをコメントしましたし、マクロン氏を避ける安倍氏の様子から分かっていたんですがね、ええ、変わったと思います。森法相がWSJに寄稿文を寄せましたが、恥の上塗りのような文面で焼け石に水でしょう。

 「被疑者には黙秘権があり、弁護士と立会人なしに接見をする権利がある(森雅子・法務大臣)。」

小林: コメントするのもバカバカしい。上のケネス・ロス(HRW)だが、別のインタビューでは「ゴーンは正しい」とまで言い放っている。マクロンの言葉もそれを受けてのものだ。で、日産自動車も30ページの改善報告書を東証に提出して同社のガバナンスの機能不全とゴーンらの悪行を列挙しているのだが。読むと会社法施行規則第100条(内部統制システム)はこの会社にはなかったも同然らしい。



会社法施行規則第100条第5号
五 次に掲げる体制その他の当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制
イ 当該株式会社の子会社の取締役、執行役、業務を執行する社員、法第五百九十八条第一項の職務を行うべき者その他これらの者に相当する者(ハ及びニにおいて「取締役等」という。)の職務の執行に係る事項の当該株式会社への報告に関する体制


「RNBVは日産とルノーによる出資比率がそれぞれ50%であり、重要性が乏しいと判断していたことから日産又はルノーの連結/持分法適用対象会社とされていなかったため、両社の監査手続の対象となっていませんでした(報告書8ページ)。」

ハヤト: そんなはずないですよね。監査対象でないからといって、事実上の子会社(50%)なんですから報告を受けていないなんてあるはずありません。監査手続云々は言い逃れです。

小林: ZiAの方は言い逃れもできないので(100%子会社)、これは華麗にスルーしてるな。探せばまだあるけどさ、これは報告書じゃなくニュースダイジェストだよ。どの話も聞いた話ばかりで目新しいものが何もない。スクラップとしては役に立つがな。

「RNBV は、ベルサイユ宮殿でのパーティー費用、リオのカーニバルやカンヌ映画祭におけるゲストの招待費用、マルモッタン美術館での夕食、パリのカルティエでの贈答品の購入、日産のビジネスが殆どないレバノンの法律事務所の弁護士費用等、ゴーン氏の個人的な費用及びRNBVの業務目的と無関係な費用として、少なくとも390万ユーロを支出したものと見受けられます(同左8ページ)。」

ハヤト: 実はこの報告書、少し前の話ですが、ボロレさん(ルノーCEO)解任の原因だというのですよ。彼は日産の監査委員会の委員でもあったのですが、レイサム&ワトキンス(日産の顧問弁護士事務所)の利益相反と、調査にあたった社内弁護士の離職を受けて、独立した第三者機関による調査を主張したらしいです。つまり、日産の調査は公正でないと主張したのですが、それがスナール会長の逆鱗に触れた。



小林: まさにその点がゴーンが日産を非難している理由じゃない。つまり、スナールは日産の調査を丸呑みしていて、現在進んでいるRNBVの捜査もその延長線上にあるということだな。それに報告書なのに「~見受けられます」とは何だ。支出先の一覧表も付けられないくらいいいかげんなのか(笑)。

ハヤト: ゴーン氏名で寄付したというベイルートの大学、一覧がないのでどこか分かりませんでしたよ(笑)。



2.ぬか喜びだったか



――これは大事なところだが、取締役会の幹部に隠したのか
 「そうだ。でも、それが犯罪か? 会社に費用は発生しない(ゴーン)」


小林: 仕方無しに朝日新聞の記事買ったけどさ、こういう官邸と自民党の振り付けでみんな同じことを書く日本の新聞を買うって、購読者にとってリスクが高いのよ。先の話でjunkoさんが「証拠発見!」と狂喜乱舞していたが、これを読むと「はて?」とはなる。利益相反取引の承認についての判例は米国と日本で違うからだ。ゴーンも気づいていないようだが。

ハヤト: 発見された議事録だと監査役4名を含む11名で決議とありますが、これは無効と。



小林: 利益相反の当の本人が議決に参加しているからな。それと内容は確かゴーンも含む外国人役員の為替取引だと思うが、だとすれば同席したルノー役員2名も議事に参加することはできない。彼らも利益相反の関係にあるからだ。が、アメリカの場合は実質的公正の法理でこれは有効とされる。つまり、365条の承認は不要だ。

 新生銀行の政井さん

ハヤト: 日本では認めていないので、アメリカで勝って、日本で犯罪(特別背任)という構図は成り立つと。でも、新生銀行はこれを呑んだんでしょ?

小林: アメリカでは有効だからな。が、金融庁から横槍が入り、仕方なく日産との契約を解消してジュファリ氏のご登場となった。金融庁はアメリカの判例なんか見ていないからな。実損については、書かなくても賠償義務あるし、実際にも補填されているが、一時的にしろ利益相反の構図があったことは否定しがたい。ウチも成り立つと言っていたしな。新生銀行については、こと日本では、これで善意の立証は難しいだろう。つまり、新生の政井も共犯

ハヤト: しかし、アメリカでは無罪を勝ち取った案件です。実際の損害もないのに、これで有罪にしますか?

小林: タダでさえ日本異質論が言われているのに、そんな判決書ける裁判官はいないと思うよ。それに考えれば分かる話で、この契約がなければゴーンを始めとした外国人役員の相当数が為替差損で報酬大幅ダウンか無給状態になったんだ。正論を通した結果が経営陣崩壊では割が悪すぎる。「船長」のゴーンはともかく、他の役員は三行半突き付けて辞めるのに躊躇ないだろうからな。

ハヤト: 日産の給料は本社が東京都港区にあることで円建てですからねえ。

小林: 本当に利益相反の話なのか、そこは吟味の必要があるな。為替相場の変動は彼らには関係ないし、CEOといえども労働者だから、会社には給料を支払う義務がある。給料が翌日になったら半減してましたなんて会社で誰がマジメに働くか。



3.先ず報酬を決めよう

 GMのバーラCEO

小林: ゴーンの話が毀誉褒貶も交えた泥仕合になるのは、彼の「適正な報酬」についての理解がないこともあると思うんだ。ゴーンが率いていたのはGMと同規模だがはるかに複雑なグループで、彼はルノー・日産を筆頭とする9つの会社から報酬を受け取っていた。規模が同じなら、当然報酬も同額であるべきだ。先に議論したGMのバーラは20億円の報酬に加え、10億円ほどの特典を享受しているよね。ジェットは公用私用問わず使え、行き先には警護員が付く。が、この辺の規定は会社ごとにマチマチだ。

ハヤト: 日産はGMの半分の規模ですから、役得含め15億程度が適当とアナタ言ってましたね。ルノーは10億と。ただし、会社から供与される特典は説得力のある理由を付して有報に明記する。でも、日本では記載義務ないんですよねえ。あと、アメリカの場合は他社との比較や貢献度もありますね。

小林: この辺をきちんと決めないと、井上久男みたいに「3億円くらいでいい」とか、いいかげんな議論になるわけで。じゃあその金額で業績が上げられたかと、アライアンスが維持できたかと。

  マツダはランク外

ハヤト: マツダは1億円でしたが、社長は33%保有のフォードから派遣されたリーマン社長でした。ルノーより保有比率が低いのに、主従の関係は明白で、フォードが主人、マツダが下僕の関係でしたね。ゴーン氏に日産や日本についての理解がなければ、同じことになったと思いますし、現在フォード・マツダの提携は解消されています。どちらの会社も販売台数ランキングに入らない程度で、フォードの規模が日産くらいで、マツダがその3分の1ですね。販売台数もほぼ横ばいで、上のグラフの日産みたいに伸びていません。

小林: ということもあるので、ゴーンや日産の自己査定はともかく、実のところはいくらくらいが適当だったのか、これこそ第三者機関を鑑定人として、裁判所でハッキリさせてもらいたい事柄であるな。日産がゴーン氏の(適正な)給料の一部を留保して、代わりに役得を与えていた構図は明白だ。



ハヤト: このベイルートの家も、所有が日産であることには争いないのですが、日産は不法占拠として立ち退きを求めていますし、ゴーン氏は退職金の一部として引き渡しを拒んでいますね。日産が、報告書では「ブラックボックス」としながらも、ZiA社を通じてゴーン氏の退職時に適正価格で氏に売却と契約していたことが原因です。ゴーン氏に自身の報酬の一部、おそらくは半分程度、を、会社に「貸し」にしていたという認識があることは今までの発言からも分かります。

小林: 退職時に清算すれば良いくらいの考えしかなかっただろう。コーポレート・ガバナンスにおける日本法と監督官庁の懈怠といえばそれまでだが、この件についてそれ(背任)を主張することは、ゴーン氏にとっては詐欺(日産に騙された)という認識だろうし、日産が繰り延べにした本来彼が受けるべき利得が正確に分かれば、何が罪で何が罪でないかも明らかになるだろうな。

ハヤト: 外形上から見ますと、ゴーン氏は経営の専門家ではあっても法律や会計の専門家ではありませんから、報酬の一部を社内に留保したという認識がある場合、顧問弁護士や監査法人、監督官庁が認めているなら、現にケリー氏は金融庁にお伺いを立てましたし、彼に過失はなかったわけです。詐欺という表現は当たらずといえども遠からずですね。こういう事情がある場合、外国人の有能な役員は日本に来なくなると思います。騙されたんですから



4.反アライアンス



小林: これはさ、ゴーンは彼を追い落とす陰謀と言っていて、その通りなんだが、動機はより小役人的、紋切り型のそれだったと思うぞ。一言で言えば、日本政府は外国人が支配する会社に年金資産を投じたくなかった。憲法89条類似の考えがおそらくあり。

日本国憲法第八十九条【公の財産の支出利用の制限】
公金その他の公の財産は、宗教上の組織もしくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。


ハヤト: 日本トラスティサービスは私企業で、国の機関じゃありませんよ(笑)。ま、運用しているのは年金(GPIF)で、これが私企業だとは誰も思っていませんがね。純国産の「優良な」企業の場合は他の信託会社も含め16%くらいです。

小林: 私学助成などもあるので、「公の支配」の対象は比較的緩くなっており、経営支配までは含まないが、それでも助言指導したり、監査したり、役員の選解任に口を出す必要は認めている。原資からして多分に公金的性質を持つGPIFの出資に際し、経産省と資金を預かる厚労省、そして彼らを束ねる金融庁(旧大蔵省資金運用部)が、同様の基準で日産に対したことは想像に難くなく、また、FCA合併に反対したこともこの文脈で説明がつく。



ハヤト: ま、日経ビジネスで経産省とのメールのやり取りが公開されていますが、だいぶ前の話で確かフランス(フィガロ)がすっぱ抜いたんですよね。経産省が交渉に介入して、助言指導していたことは分かりますね。ゴーン氏の解任も彼らにとっては資金投入の条件にすぎなかった。

小林: まず犯罪ありきでゴーンを追い払うことが増資に必要と判断したのだろう。「公の支配」に属さない企業に公金投入できないからな。ここでは彼が日本側の人間か、フランス側の人間かといった色分けが決定的に重要になる。「日本側」であれば、彼は会社を追われはしなかった。

ハヤト: しかし違いましたよねえ。彼はフランス側の人間ではありませんでしたが、統括会社を中心とした巨大自動車グループという全世界的な構想を持っていた。

小林: それでアウト、統括会社での日産の持ち株比率、なかんずくGPIFの支配力は決定的に弱く、フランスも弱くなるが、公金を投入した意味がなくなってしまうからだ。この場合、経産省はトラスティサービスに指図して保有する日産株を全部売らなければいけない。経営効率が良かろうが悪かろうが関係ない。巨大グループは「公の支配」に属さないからだ。そしてこれが彼らがFCA合併に頑強に抵抗した理由だ。

ハヤト: あまりにも頑なな考えじゃありませんか? これまでの推移だと、巨大グループ誕生を市場は歓迎するでしょう。売り抜けてもたぶん利益が出る

小林: でも、日産に資金投入を促した官僚のキャリアはピリオドが打たれるよね。やってはいけないことをやってしまったわけだから。それに間違えば「日産ゲート」事件にもなりかねない。そういう例は豊富に蓄積していると思うよ。

ハヤト: つまり、流布されている記事と異なり、ゴーン氏の経営や日産にそれほど問題があったわけでもなかった。悪人も特にいなかった。けれども経産省の官僚の小役人的打算が一連の事件をもたらした。そういうことですか。ゴーン氏を深く恨む人間は関係者にはいない。事件は嫉妬や怨恨ではない。



小林: 彼もマジメだったんだ。合併交渉にフランス政府が出てきたのを見て、彼は対抗上日本政府を交渉に引き入れるべきと考えた。フランス同様、実質的政府株のGPIFの比率を増やし、日本政府関係者を役員として交渉のテーブルに立たせようと思ったのだが、彼らの論理については失念していた。

ハヤト: ゴーン氏も別に日産をルノー化することまでは考えていませんでした。それが弊害しかないことを彼は17年間力説し続けましたし、ルノーの対応も独自性を尊重するものでした。ですが、日本政府を交渉に引き入れたことで、より大きく飛躍するはずの合併交渉は異質なものになってしまった

小林: どこかの計画のようにルノーと物別れしても、ルノーは他の提携先があるだろうけれども、経緯を見れば、日産は国内以外どこも相手にしないよね。だからホンダなんかとくっつける話が思いつきの泥縄のように出てくるわけで。また、西川前社長をあまり悪く言うのも考えものだ。ルノーと経産省の板挟みでいちばん苦悩していたのはこの人物だからだ。ついでに言うと、私はあの報酬受領は別に悪くないと思っている。

ハヤト: その件に関しては彼を擁護してましたね。つまりこの事件はマネロンだとか陰謀だとか色々ありますが、「小役人の発想」で俯瞰した方が良く見えると。

小林: そういうこと、ゴーンの豪遊とかマネロンとか井上久男の記事などは、経産省の出来の悪い仕事を隠すための、目くらましの枝葉に過ぎない。



閑話休題



ハヤト: しかし、ほとんど裏が取れない事件を1年間見続けた我々の結論としては、いちばん割を食った人はこの人(ゴーン)ということになりますね。世界最大の自動車グループの総帥になるはずが、ケチな小役人の陰謀で国外脱出までやって、ICPO指名手配の本当の犯罪者にされてしまった。

小林: あと裁判所な、特捜部は解体になるだろうが、国際的孤立を招いたという点、政財界にもダメージがある。会見でも見た通り、ゴーン自身は巨大な個性であり人格だが、その他の面子はごく平凡な小利に汲々とする小市民ばかりだ。多分ほとんどの関係者はその時点では良かれと思って行動したのだろうが、合成の誤謬で大変な結果になってしまった。

ハヤト: 組織のために個人を犠牲にすることが美徳という日本的価値観の異質性がクローズアップされた事件でもありました。ゴーン氏個人の犠牲と引き換えに組織の保全を図るという論理は、彼の一個人の勇気と力で家族の元に辿り着くという行動を見せつけられた後では、色褪せたものに見えます。

小林: ゴーン一人をやっつけたところで日産やこの国の凋落は止めようがないよ。世界は国ぐるみで一人の人間の尊厳を踏みにじる国を認めない。で、森法務大臣はレバノン国に何か返答したの?



ハヤト: いいや何も、それとインターポールの赤手配ですが、独立機関(CCF)による審査制度があるようですね。すでにHRWにより日本の検察庁の被疑者・被告人に対する「巨大な圧力」が言明されていますし、日本人の我々が見てもこの事件は不当性が強いものでした。特捜部はそれ自体政治的捜査機関ですし、事件に政治性が認められれば、日本にとっては災難ですが、ゴーン氏にとっては弁明の機会、手配の解除もありうることになりますね。

小林: ホント、みっともないよね。国家間の礼譲も守れないのか、この国は。それと、落ち着いてきたようだから、特に進展もなければ、しばらく様子を見よう。

ハヤト: では、今回はここまで。