Mobilesuit Gundam Magnificent Theaters 2005.

An another tale of Zeta・・・INTERVIEW


(インタビュー 2018/12/4)




機動戦士Zガンダム ハヤト・コバヤシさん
※本作の記述とは関係ありません。



はじめに

ハヤト: 皆さんこんにちは、カラバのハヤト・コバヤシです。ATZのインタビュアーを務めています。

小林: 作者の小林昭人です。


1.一罪一勾留のはずが



小林: どうも自白が取れなかったらしく、勾留延長に加え、今度は直近三年分の虚偽記載で再逮捕が決まったようだけど、我が国の刑事訴訟法による、事件単位の原則とか一罪一勾留の原則とかはどうなっているのかな?

ハヤト: まずいと思いますね。ホリエモンの場合は54日でしたが、今回の件の場合、会計年度は年単位ですから22~26年度の虚偽記載と27~29年度は別事件ともいえますが、実質的には同一の事件です。マア、22年度の決算書が公表されるのは23年ですから、金商法の公訴時効7年でできる罪は全部開陳したと。

小林: こういうことをするとさ、検察官の裁量で際限なく勾留を認めることになるから問題なのだけどさ。前罪では起訴しないところを見ると、やっぱり見込み逮捕だったのかな。いや、日産の役員会選任に合わせた時間稼ぎか。しかし、こうも勾留が長引くと(40日ないしそれ以上)、ゴーンさんのルノーでの地位も怪しくなるねえ。

ハヤト: ホリエモンだってこんな勾留の仕方はしてませんよ。彼の場合は風説の流布で起訴、次いで虚偽記載で追起訴です。鈴木宗男はもっと短かったですね。

小林: ゴーンの弁護についたヤメ検の日本人弁護士は罪を軽くするため、虚偽記載については認めるようにアドバイスしたと思うが、ポール・ワイスはそんなアドバイスはしないだろうな。それに巷に触れ聞くゴーンの性格からして、そんな陰険な駆け引きに応じるタマじゃないよ。

ハヤト: 不動産については、アナタの見立てがどうも正しいようですよ。

 

小林: 朝食は社員食堂でサケ定食、朝の7時から夜の11時まで仕事していて、休日は100円ショップで支払いは自腹、逮捕された日の夕食は焼き鳥、伝え聞く話を聞く限りでは年俸20億円の男とは思えないような庶民な生活で。

ハヤト: 世界の他のCEOとの比較では20億円は相当ですが、本人自身は内心忸怩たるものがあったのではないでしょうか。

小林: 会社の中に入れ子のように自分の資産運用会社を持っていたというゴーンはCEOの中でもユニークな存在だ。職務専念義務忠実義務の観点からは問題なしとはいえないが、そもそも会社法という法律が年俸20億円の経営者を想定していたとは思えないんだ。

  
不動産(左)もストックオプション留保も基本的に同じ発想、不動産は買い取り保証、右端は金商法が推奨する運用

ハヤト: 収奪どころか会社の利益になってますよ。普通のCEOだったらオプションで取得した株は値上がり時に売ってしまいますし、不動産だって実質的には報酬の値下げでしょう? 日産は同じストックオプションでも、16,000株分しか渡さなくて済む。

小林: 現金化を約束することで株主構成が変化しないこともあるんだ。そうはいっても日産は日本の会社で、ゴーン級の報酬だとストックオプションでも株主総会に影響を与えうる。マスタートラストなど大株主らがそれを嫌気したことはあるだろうな。ここでもゴーンと大株主の利益は一致している。上の図だと、元金が20億円として、ゴーンの犯罪で10年後に日産は4億円儲かるが、検察や経産省の勧めるやり方だと2億円損をする。その差は6億円、どちらが本当は会社や従業員の利益だったのかねえ、、

ハヤト: 言うまでもありませんよ。

小林: 三菱自動車の燃費偽装事件もそうだったが、実は三菱は他社よりも充実したテストコースを持っていて、テストドライバーが国交省より優れた測定方法(高速惰行法)を編み出していたんだ。けれども横並びでないという理由で、方法の妥当性も検討せずにバッシング、あたかも社長以下従業員全員が罪人のようなキャンペーンだったが、私としては国交省の役人の能力の低さと退嬰性が目についた事件でもあった。

 日本メーカーでは最も広大な三菱十勝研究所テストコース

ハヤト: 他社のやっかみもあったのですかね、高速惰行法は広いコースのある三菱ならではのテスト方法です。同じく偽装でコースのないスズキの場合は実走行すらしないコンピュータ・シミュレーションでした。こちらの方が悪質だと思うのですがね。世情の評判は違うと。

小林: 我々にとって望ましいのは柔軟に考え、最善の判断で会社に利益をもたらす経営者か、建前や決まりにこだわって会社を潰す経営者かということだが、この件でルノーが株式を放出したら、それを買うのは中国企業となる。西川氏のクーデターが日産に利益をもたらすとは思えんな。特捜部も国交省の役人と同じで、国益を弁えず、事件にすべきでないものを事件にしている観は拭えない。こういうことがあるあたり、やっぱり、この国は色々な点で劣化が進んでいるのだろうな。



2.時間稼ぎの意味?



小林: ゴーンとマクロンが仲が良かったという話は聞かないが、たまに会話するとして、話題が電気自動車だっただろうことは想像に難くない。米国と異なり欧州はガソリン代が高いし、都市インフラも老朽化している。そのせいか、ことクルマに関してはトレンドは常に欧州から来る。カーシェアリング然り、マイクロカーに自動運転、環境規制とここ20年来、世界の自動車界をリードしていたのは欧州だ。



ハヤト: 世界初の電気自動車リーフを持つ日産は、フランス政府としては手放したくない会社でしょうね。

小林: その割には妥協しないし強面だよねえ。日産については検察が捜査を引き伸ばしたり、三社協議の申し入れも明らかに時間稼ぎだが、ゴーンを拘束して何の時間を稼いでいるんだか。そういえばマクロンが協議を申し込んだのを安倍が一蹴という茶番もあった。たぶん関係者から何も喋らないように言い含められていたんだろう。

ハヤト: 意外な所に飛び火していて、マクロン氏は福島第一の廃炉作業核燃料サイクルの技術供与を拒否という脅しも掛けていますね。現状ではフランスの技術がなければ廃炉作業は不可能だそうですが。

小林: 日本政府相手なら無駄だろうね。この政府には利害調整の意識はあっても、政治をやる意識はないから。このまま行くと強引に51%取得か、株式を中国企業に売却となるけど、どちらも我が国にとっては望ましくない結末で、暖簾に腕押しじゃ事態が悪化するだけなのだが。

ハヤト: 自動車メーカーの事案に国家元首が介入するのは欧州では良くある話ですね。



小林: 揮発油税の値上げで今フランスではデモが起きているけれども、ここで強引に日産を乗っ取って、電気自動車と雇用を持ってくれば一発逆転、マクロンは英雄だよ。それだけの資力がフランス政府にあるかということがあるが、ルノーの仲間にはあのダイムラーがいる。ダイムラーは以前は三菱と組んだが、元々は日産と組みたかったという話もあった。



ハヤト: 日産の役員会は西川社長が会長を兼務という方向で調整に入ったようです。経団連の社長経験者という話もあったのですがね、話がアナタの言う通りとすると、新しい日産のトップはルノーとフランス政府、ダイムラーの連合軍を向こうに回すことになりそうですね。



小林: EVの技術は日産ばかりでなく、ダイムラーも持っているから、これが入ってくると日産もルノーと有利な交渉はできなくなる。単に日本企業のトップは日本人程度の見識じゃ、歯が立たないんじゃないのか? せめて政府でもという目算だが、自動車業界は経緯から経産省と仲悪いし、時間稼ぎの意味がそれだとすると、我々はこの20年間の日本社会の退嬰化を問題にしなければいけなくなるな。



閑話休題

ハヤト: もう少し進展するかと思っていましたが、思ったほど情報が出てきませんね。ゴーン氏に限らず、私はCEOの高額報酬には批判的なのですが、ゴーン氏については、アナタの見立てのような見方が案外真実に近いかもしれませんね。

小林: ゴーンの出身は工科大学校(エコール・ポリテクニク)で、その後は鉱山大学校(ミンヌ)を卒業している。フランスではエリートだが、見ての通りこれらは技術系の学校で、MBAのような経営者養成じゃない。経営に才があるというのはその通りだろうが、基本的には技術者で、この点、スティール・パートナーズの面子なんかとは違う。法律なんかも実はあまり詳しくない。

ハヤト: MBAの定石はリストラによる事業カット(選択と集中)と短期的収益ですが、そういう考えのトップではないと。

小林: これまで見てきた感じでは違うと思うな。2004年のV字回復があまりに印象的なので彼も他の経営者と同じと思うが、思うに手法のいくつかはMBAとはかなり違うと思う。例えば、ゴーンが来るまでは日産では禁忌とされていた片山豊の功績を掘り出して顕彰したのもビジネススクールの発想じゃないでしょ?

ハヤト: ゴーンさんというと、車名変更が印象的なのですよ。例えばサニーはティーダに、ブルーバードはシルフィ、セドリックはフーガでしょう? 名前が変わると同時にアメリカナイズしてしまって、これらの顧客がソッポ向いたという印象がありますね。

小林: ウィキペディアではゴーンは長い歴史のあるこれらの名前を廃止することを嫌がったという話だが、私は違うと思うな。実はこれらのネーミングは日産暗黒時代の遺産でさ、ゴーン以前に独裁的な権力を振るっていた川又会長やそのシンパの塩路一郎なんかの影がちらつく。例えばブルーバードはメーテルリンクの「青い鳥」、セドリックは小公子が名前の由来で、どちらも川又がミュージカルを見て感動したというのが名付けの理由で。

ハヤト: 極めて個人的な事情強大な権力を感じさせる逸話ですね。

小林: なので日産は社内紛争が多かった。労働組合も過激で、ユニオンショップ制や御用組合の「第二組合」なんてのは日産が発祥だ。塩路はヤクザみたいな人物で、会長の川又の意図を受けては反抗勢力を次々と潰していったんだよね。それで「長いものには巻かれろ」的な社風もできてしまったし、ついでに日本社会のある種の後進性も形作られてしまった。反抗的な社員を国会議員にしてパージするというのは川又の常套手段だった。この件で野党も事実上無視、政治の動きが極めて鈍い理由も分かるでしょ。日産の経営陣に対抗できるような議員が国会にいないんだ。与党も野党も古株ほど後難を恐れて動けない

ハヤト: 日産は元々はトヨタよりずっと大きな会社でしょう。国策会社だったんですから。

小林: 日産にはフォードのような創業者一族はいなかったが、初代ヘンリー・フォードに通じる横暴な権力者はいた。それがトヨタに負けた原因だし、時代の変化に対しても会社の柔軟性を著しく低いものにした。ネーミングの変更は、たぶん、そのあたりの文化的背景を考慮しての判断だろう。社員に浅草のミュージカルではなく、世界を見るように意識改革した。こういう発想もMBA的ではない。犯罪を犯したかもしれないが、ゴーンの改革で古い川又日産が完膚なきまでに葬られたことも本当だ。

ハヤト: しかし、光には必ず影がありますね。それが今度の事件と。

小林: 根が深いよね。ゴーンも19年間と長く居すぎたこともある。権力は必ず腐敗するからな。

ハヤト: じゃ、今回はここまで。