Mobilesuit Gundam Magnificent Theaters 2005.

An another tale of Zeta・・・INTERVIEW


(インタビュー 2018/11/25)




機動戦士Zガンダム ハヤト・コバヤシさん
※本作の記述とは関係ありません。



はじめに

ハヤト: 皆さんこんにちは、カラバのハヤト・コバヤシです。ATZのインタビュアーを務めています。

小林: 作者の小林昭人です。



1.19年は長すぎた(ゴーン逮捕)



小林: そういうことをするならフランスでと思っていたから、こともあろうに日本でこうなる(逮捕)とは本人も思っていなかっただろうな。

ハヤト: 拘置所での食事はどうなんでしょう? やっぱり麦飯にタクアンなんでしょうか?

小林: ゴーンは容疑者と呼ばれているが、これは新聞用語で、まだ起訴されていないから被疑者だな。用語上は被疑者>容疑者(被疑者のごく初期の段階)なのだけど、一般では容疑者の方が重そうに見えることもある。

ハヤト: ブラジルやレバノンの高級豪邸などすでに様々な事実が暴露されていますね。ほとんど日産からのリーク情報ですが。

小林: 企業の内部監査システムやコンプライアンスについては厳しくなっているのは本当だが、ゴーン本人の名義であるわけはなし、役員会でも承認されているのだから、これを罪と言ったら世の社長の大半は私的流用の罪人だろう。なお、金商法の虚偽記載の賠償責任はまず会社、役員、そして書類を監査した公認会計士や監査法人と幅広い。

ハヤト: 損害は立証が必要ですよ。

小林: 割と簡明な基準なんだ。虚偽記載の事実が明るみになった時点を基準に、その前後1月の株価を比較し、その下落額が損害の額となる(金商21条の2第3項)。分かったか村田こうへい、何かあったらこういうのをサラッと出せないとダメだぜ。

ハヤト: 隠し所得20億円とか、何か天文学的な金額が取り沙汰されていますが、前回のインタビューでアナタが最初にこのニュースに接した時、日産が率先して告発していたことについては一言二言言ってましたね。話題が違ったので聞きそびれましたが。



小林: 損害については以上の通りだが、ほか虚偽記載で不法行為責任を追及されることがあるんだ。リスク管理体制構築義務違反といって、だとすれば日産の役員としては自分らは善管義務を十二分に尽くしていた、ゴーンの悪知恵がそれを上回っていたと弁明するのはあり得る話で、この時点では私はクーデターとは見ていなかったな。定型的な会社による、定型的な(言い逃れ)答弁と西川社長の会見を聞いていたが。

ハヤト: しかし、問題の虚偽記載については、報道では株価連動型の報酬部分で、他の役員が申告していたのにゴーンだけが未申告というモノらしいですね。本人曰くプライバシーで、他の役員や顧問弁護士に相談した上での申告拒否ということですから、当然知っているはずの西川社長が責任を逃れることは難しいのでは?

小林: だから司法取引とかの説明も同時に報道しているんじゃないか。でもこれじゃ西川ももっと腹黒そうな志賀も減軽がせいぜいで、公訴は免れないねえ。それに虚偽記載では事案全体を説明するにはやや弱いんだ。これじゃ立件しないんじゃないか。

ハヤト: ゴーン氏のみの罪で何とかしたいとなると、やっぱり起訴は横領とか背任(特別背任)とかでしょうか。

小林: 背任については日産の企業規模からして、ゴーンの贅沢で株主に何か損害ある?

ハヤト: 「大山鳴動して鼠一匹」ということですね。

小林: 罪状認否ではゴーンは争うようだし、この辺の話はここではこのくらいにしておこう。金商法(旧証券取引法)で塀の中に入った典型はホリエモンがいるが、半ば詐欺まがいの手口で株主をだまし続けたホリエモンと、曲がりなりにも日産を立て直して三社連合の総帥になったゴーンとではその中身も事件も比較にならないよ



2.ダットサン時代から進歩のない日産

 

ハヤト: 誰ですか、このおじいさんは?

小林: 片山豊(1909-2015)といって、業界では「フェアレディZを作った人」と言った方が通りの良い人だが、アメリカ日産の初代社長で、日産車がアメリカに地歩を築いたのはこの人の功績が大きい。当時の日産はトヨタ同様無名でメカニズムも遅れていたし、米国に伝手もなかった。片山はほとんど独力でアメリカに販売網を築き上げたわけで。まあ、日産では足を向けて寝られない大功労者であるはずなのだが。ゴーンの一件を見て、私はまずこれが思い浮かんだな。

ハヤト: ネットにはあまり情報がないですね。ですが、実際はかなり陰惨な追放劇があったとか。

小林: 片山は確かに米国日産で多大な貢献をしたけれども、日産本社ではアメリカナイズされすぎ、私生活が派手で贅沢と批判されていた。本社では役員でもウサギ小屋のような家に住んでいたのに、米国での彼は車庫付きプール付きの大邸宅を構えていた。当時の為替レートを考えると、この辺の格差は今で言うならゴーンと今の日産従業員と同じくらいの感じだろう。

ハヤト: それで追放されたわけですね。ウィキペディアには書いてありませんが。

小林: 自分らと価値観が違う(異邦人)、法外な贅沢(浪費家)という理由で有能な社員を放逐した歴史は過去の日産にあったわけで、ゴーンを非難する西川や特捜部(リーク)の言い分を聞いていると、まるで半世紀前の片山豊追放事件が隔世遺伝のように蘇ってきたというか。

ハヤト: その後の日産はどうなったんです?



小林: 妬心による追放劇だから、それ自体女々しいが、80年代の日産は「ジョブスのいないアップル」状態だった。今回もおそらくそうなる。ゴーンを追っても、連中にはゴーン後のビジョンがないからな。



3.独裁というけれど



小林: 規模はまるで違うが、要するに中小企業のオヤジ程度がやっているちょろまかしを特捜部まで使って告発するというのは企業社会のルールとしてはアンフェアだし、必要性も合理性もないものだ。長期支配の経営者の責任を追及するなら、まず株主総会でというのが会社法のルールだからな。現に高額報酬については日本はともかくEUでは総会で批判されている。EUにできて何で日本でできないのか。

ハヤト: 中小企業と違って上場企業の取締役、CEOの任期は1年です。高額報酬の論拠の一つですし、失策には賠償責任もあります。どうも我が国はその辺が甘いようですね。ええ、できたと思いますよ。経営に失敗して会社に損害を与えたら、ルノーだって黙ってはいないはず。でも、これといった失策もなかったんですよね?

小林: 聞いた話だが、失策があったのはどうも日本側のようなんだ。グローバルで日産は業績を伸ばしていたけど、国内販売は低迷していてシェアも下がっていた。日産は生産台数の80%を輸出に依存する会社で、国内には国内担当の日本人役員(志賀)がいたのだが、彼の采配ではシェアは2位から3位にずり下がり、その自動車は技術的には凡庸で、一番売れていたのが三菱に製造させたeKワゴン(オッティ、デイズ)という体たらくで。たぶん、もっと前に退任するはずだったが、この不手際でゴーンのCEO退任は2017年と数年遅れた。逮捕当時のゴーンは執行社員じゃなく会長だ。知っての通り、CEOのいる会社では(兼務を除けば)会長含む役員に業務執行権はない。

ハヤト: ゴーン氏が昨年に業務執行権を譲り渡していたとなると、独裁だったという西川社長の言い分には誇張があると言えますね。

小林: ゴーンも、一緒に逮捕された取締役のケリーも年に数度しか日産に来なくなったというのも、現在の彼らの地位からすればおかしくもなく。ちなみに最近のゴーンが日産でした仕事を列挙すると、電気自動車リーフの改良(2015)自動運転システム(2016)シリーズハイブリッドe-Powerの投入(2016)、燃費偽装問題で困窮した三菱自動車の買収(2017)と西川にCEOを譲り渡す前にもずいぶんと仕事をしている。本当はルノーの会長兼CEOに就任した2009年で日産は数年やって辞めるつもりだったのだろうが、東日本大震災(2011)があったし、その後2017年まで辞める時期を逸し続けたのではないか。

ハヤト: CEOは退任しましたが、報道によると少し後に役員会を開いてルノーとの提携関係に触れ、これが日産側役員の恐怖心を煽ったようですね。

小林: 少し調べたが、ゴーンは人となりとしても、会長職でふんぞり返って部下任せというタイプではない。後任CEOの西川が就任後一年以上経っても業績拡大に何のアクションも起こさないことに苛立ちがあったんじゃないだろうか。自分がやった方がマシと。実際、上の業績も2018年度は空欄だし。



ハヤト: 確かに、買収した三菱自動車にしても、一年あれば何かできることはあったように思います。しかし、経営家としての能力で及ばないとなると、西川さん、なんでクーデターなんか起こしたんでしょう?



4.要するに「でもしかクーデター」



小林: 西川氏や日産リーク人はゴーンのせいで日産がルノーの植民地化、ルノーの利益の半分を日産が稼いでいるというが、恩知らずな話だ。潰れかかった会社を助けてもらったのだから、そのくらいの役得は当然だし、そもそもゲゼルシャフトの企業社会で無償の白馬の騎士などいると思っているのかとナイーブさに呆れる気分だね。

ハヤト: この辺良く分からないんですよ。確かゴーン氏はルノーによる合併には反対の立場で、CEO続投を機に合併派に変節したというのが日産側の見方ですが。

小林: 曲がりなりにもゴーンは日産にとっては対ルノーの盾だったわけで、使えないと分かって陥れたのだが、それで日産の問題が解決するかというと。

ハヤト: 報道では日産が保有するルノー株は優先株の15%で、ルノーは日産株の43.4%を持っています。日産の言い分ではルノー株を買い増して25%にすれば、今の会社法の規定では、持ち合いでルノーの議決権がなくなり、会社としての独立性を担保できるということですが、どうなんでしょう? ああ、この辺の話、アナタ昔、ATZで書いてましたね。第三部はアナタやりたい放題でしたから。



小林: 実はこの事件、日本とフランスじゃ連日大騒ぎなんだけど、アメリカは平静なんだよね。平静というより両社ともアメリカ記者には情報をほとんど与えてない。これが意味するところはさ、日産の言うような切り札はルノーも持っているんだよ。

ハヤト: 公開買付けですか、確かに日産はルノー株を10%買う必要がありますが、ルノーは6.7%で日産の支配権を握れますね。

小林: 決裂した場合だけどな。ルノーに日産株を買う力があることは明白だ。フランス政府が全面支持しているのだからな。逮捕でゴーンを馘首しなかったのも、後は分からんが、支配権を手にした後、ゴーンにはまだ使い道があると踏んでいるんだろう。しかし日産に10%買い増す力があるかというと。

ハヤト: 買うこと自体はできそうですがね。

小林: 買った所でルノーが役員を送り込めなくなるというだけで、その年の決算は多分赤字だし、「会社の独立性」という曖昧な目的で赤字や無配を正当化できるかというとできないから、何より現在でも多数を占める外国人投資家が黙ってはいまい。代表訴訟を起こされ、商品開発は停滞し、業績も振るわなければ、ゴーン事件の顛末(濡れ衣)によっては役員の特別背任や収監もありえるので、そんなパンドラの箱は誰も開けたがらないだろう。

ハヤト: だから、「でもしかクーデター」、ルノーのフランス政府同様、西川さんらはイザとなったら安倍ちゃんが助けてくれると踏んでクーデターを起こしたと。

小林: 西川氏らの言い分も分かるのだがな、たぶんこれが動機その1



閑話休題

小林: 長くなったから閑話休題な、動機その2は今までも政局や転機になると現れては変革を潰してきたあの東京地検特捜部、極秘任務で社員が内偵? 誰が信じるか。西川の手引きで社章を付けた検事が潜り込んでアラ探しをしていたんだろう。80億円のゴーン退職金の下りは創作としても笑い話だが。

ハヤト: その話はすぐ消えましたが、退職金って何なんです? タダでさえ巨額報酬をもらっているのに。

小林: 保険のルールで年収×勤続年数に一定の係数を掛けた金額は退職金原資として税額控除という制度があるんだ。ゴーンの場合なら報酬10億円(公表)×19年×0.7で133億円。40%は支払時に所得税で持って行かれるとして80億円。



ハヤト: 内容はアナタと違いますが、金額は合ってますね。50億円とかほかにもあります。

小林: この発想がさ、保険会社に養老保険を積み立てる中小企業のオヤジそのものでさ、検事の中に保険業ドブ漬かりで思い込みの激しい人がいたんだなと、いくら長期政権とはいえ、毎年株主総会で選任される巨額報酬のCEOが、万年社長の中小企業のオヤジやリーマンと同じ賃金体系でやっているはずないだろう。そういうのは報酬にすでに入っているんだ。ゴーンは19年だが、3年で切られたピシェッツリーダー(VW)のようなCEOもいるんだ。むしろそっちのほうが多い。

ハヤト: すると何ですか、アナタは取り調べた検事がCEOの実際を無視して、自分で「ありそうだ」と思っているものを書類から抜き出して証拠として吹聴していると。

小林: そうとしか思えんな。相手がホリエモンや小沢一郎ならそれでも通用しただろう。情報は全て握っているし、被疑者の言い分については検察を通してでしか分からないのが今の日本の司法だ。角栄なんかもそうだったが、特捜部はいつもそうやって捜査の正当性を国民に納得させる世論操作をしてきた。しかし今回の相手は違う。



ハヤト: フランス政府はゴーン氏の留任(ルノー)を認めましたし、会長を逮捕されたルノーは日産に調査情報の開示と後任会長の人事権を要求していますね。主張は食い違っていて、外交的儀礼(アライアンスの維持)を除けば、歩み寄る気配は全くないです。

小林: 特捜部の情報操作は国内限定だ。フランスは日本の司法を信用していないし、ルノーは日産を信用していない。だから「でもしかクーデター」なのさ、発作的な「ゴーン憎し」じゃなければ、日本政府も日産も犯罪の立証に必要な情報は相手方にとっくに開示しているはずだ。

ハヤト: 事件の性質上、保釈もできませんしね。保釈したらフランスに逃げられてしまいます。これで情報まで閉ざしているとなると、特捜部と日産、いずれ苦しい立場に追い込まれるのでは。



小林: 日本政府が日産の西川氏が期待するほど有能な政府なら、この件では安倍ちゃんがマクロンと電話会談するか、パリに向かって飛び立っているよ。不起訴で釈放されれば何なんだという話になるし、いつまでも勾留を続けるわけにもいくまい。トップ同士の話し合いが必要だが、安倍ちゃんにその能力があると思っている人は、当のマクロンも含め誰もいないだろう。プーチンなんかは良く知っていることだがな。

ハヤト: 政府がグズグズしている間に日産の社内も特捜部もグズグズになる、そういう見立てですか。

小林: 乗り切っても、「ジョブスのいないアップル」になるだけだ。いずれ中国企業の傘下か。私の見立てでは特捜部がまず手に負えずに放り出し、次いで日産役員会が空中分解、政府は知らんぷり、会社はルノー化がますます進む、業績は別の話でゴーンは無罪、が、いちばんありそうな感じだが。もちろん状況によって見方は変わる。安倍ちゃんがプーチンみたいな政治家だったら、西川さんの期待通り、日産をマクロンの手からもぎ取ってくるだろうが、今まで見た様子では、そんなことは絶対にないから。

ハヤト: では、今回はここまで。