Mobilesuit Gundam Magnificent Theaters 2005.

An another tale of Zeta・・・INTERVIEW


(インタビュー 2018/4/5)




機動戦士Zガンダム ハヤト・コバヤシさん
※本作の記述とは関係ありません。



はじめに

ハヤト: 皆さんこんにちは、カラバのハヤト・コバヤシです。ATZのインタビュアーを務めています。

小林: 作者の小林昭人です。


1.作り手の引き出しの問題(新銀英伝)



小林: 二年ほど前にインタビューで取り上げたことがあるが、銀英伝は最初の部分(アスターテ会戦~キルヒアイスの死)までは全10巻のうちの1巻くらいで、実は結構演出家のオリジナルを入れる余地があった。そんなに長編として書かれていなかったんだよね。というわけで、特に第一部はクリエイターのオリジナリティを入れる余地がかなりある。例えば銀河帝国は封建社会だから、こんな感じのオープニングだって良いんじゃないか?

<新銀英伝・オープニング>
① 帝国領のどこかの辺境惑星
② 出陣の下知の恒星間通信
③ 古ぼけた戦艦に乗って出陣する地方貴族(帝国騎士・ラインハルトの実家と同じかそれより下くらいの身分)、見送る身重の新妻
④ 発進する主人戦艦、それに続行する家老戦艦二隻、ほか数隻の郎党戦艦
⑤ 星系外で同様の小艦隊と合流して20隻程度の艦隊になってワープ
⑥ 20隻程度の艦隊が数個合流して100隻に、ワープごとに100隻が500隻、1,000隻と数を増やしていく
⑦ ラインハルトのいる主力艦隊に合流
⑧ 艦橋で集結した数万隻の戦艦と、中心にある旗艦ブリュンヒルトを見上げる③の地方貴族(ファーレンハイトとか)


ハヤト: それから小説にもあるラインハルトとキルヒアイスの冒頭のシーン(星はいい)に繋げると、ええ(笑)、やってもいいんじゃないですか。え、戦闘シーンですか、このノリならこんな感じでいかがでしょう。



<新銀英伝・戦闘シーン>
① 全軍突撃を指令するラインハルト
② 突撃する大型戦艦(主人戦艦)の群れ、ファーレン戦艦に続く家老戦艦郎党戦艦
③ 同盟軍と乱戦になり、巨大なユリシーズ級戦艦に突撃するファーレン戦艦
④ ユリシーズを倒すものの、相打ちでエンジンに被弾して落ちるファーレン戦艦
⑤ 郎党戦艦が進出してとどめを刺す、その様子をビデオに収める家老戦艦吉兵衛「お手柄じゃあ、これで功名間違いなし!」
⑥ 戦いは続く、艦橋のラインハルト「単なる数の問題だ、勝つのが当たり前ではないか」
⑦ 漂流する同盟旗艦レオニダスの残骸と、家老戦艦に先導されつつ側方を通過する中破したファーレン戦艦


小林: こんな小話なら各々数十秒でできるな。話も壊れないし。

ハヤト: 同盟軍はどうします?



小林: 連中は志願制なんだから、普通にやれば良いじゃないか。アメリカの南北戦争みたいに連中も州軍とか州知事任命の大佐とかの雑多な部隊で、中央の旗艦にいるヤンが地方兵の戦意の低さ同盟内の地域差装備にバラツキがあるとか、旗艦による中央指導に地方の部隊は反感を持っているとかをボヤくとか。

ハヤト: こちらも帝国みたいな小集団を合間に出すんですかね。

小林: もともと銀英伝はさ、軍記物の影響で「何万隻の艦隊」が登場する作品だけど、作者の田中も含め、そういったものをどう統御するかをあまり考えた形跡がないんだ。だから担当セクターに移動する前にラインハルトの急襲で戦わずして敗走するとかあっても良いな。

<新銀英伝・同盟軍の戦闘>
① 命令でX445セクターに移動中のトリブラ州艦隊、指揮官は州知事任命の元雑貨屋の若い大佐、部隊の規模は帝国より少し大きい
② 「何でこんなに陣形を広げるんだ(時間かかるじゃないか)」、ボヤく徴兵された兵隊、彼は何にでも不平を言うのだ
③ 突然周囲に煌めく無数の光球、「帝国軍の襲撃だ!」
④ 「まだ配置についてもいないのに!」、近づく核爆発、続けて司令部全滅の通信
⑤ 「退却だ!」、一発も撃たずに逃げる艦隊、追う帝国軍
⑥ 「戦闘不能の敵など相手にせずとも良い」、追撃を中止するメルカッツ艦隊
⑦ 追撃を逃れたトリブラ軍、艦橋の大佐、「俺たちは何をしに来たんだ、、」
⑧ 旗艦に流れるヤンの通信、すでに第4、6艦隊は壊滅している


ハヤト: ま、入れすぎると何の話だか分からなくなりますが、このくらいのことはやっても良いでしょうね。

小林: やっても10秒だな、でも、銀英伝で抜けている部分なのだから、そういうのを補完するのがリメイクじゃないか? 短切な描写で帝国と同盟の違い、制度なんかを説明できるわけで。元作はちゃんと考えていたよね。

ハヤト: この感じだと帝国は戦艦は自腹でしょうね。リップシュタット戦役で貴族たちが艦隊を率いて要塞に集結する場面があったでしょう? 同じ帝国軍なのに何でと思いましたが、自腹戦艦の描写は原作でもあるのですよ。それを説明するとしたら、アナタが今言った感じでしょうね。



<新銀英伝・恩賞の場面>
① 旗艦ペルガモンを討ち取り、証拠ビデオを手にラインハルトに言上するファーレンハイト
② 「同盟の司令艦でございます」、キルヒアイスの報告に満足げに頷くラインハルト、チッと舌を打つシュターデン、パストーレの首を持参したオフレッサー
③ 「よくやった、ファーレンハイト、アスターテ星系、加増200石といたす」、すぐにキルヒアイスがコンピュータに入力し、電光掲示板でファーレンハイト家の石高が加増される。
④ 「ローエングラム侯は恩賞をすぐに与えるのでありがたいでござる」、旗艦に戻る船上で若い司令官への好意を露わにする家老吉兵衛、他の司令官とは違うと頷くファーレンハイト、恩賞は帝国の中央で集計され、徴収も帝国が代行している。
⑤ 「若いがなかなかの人物だ」、チラリと直参で官僚軍人のメルカッツを見るファーレンハイト、少し眉をひそめるメルカッツ


小林: この場合は地方領主のファーレンは恩賞で配下を食わせなきゃいけないが、直参のメルカッツにはそういう負担はないか少ないとしても良いな。

ハヤト: 後の伏線にもなりますしね、ま、このくらいやっても大丈夫なくらいスキが多いと。

小林: 回転砲塔の戦艦を出したって良いしね。艦隊については、帝国はファーレンみたいな地方領主が半分くらいで、何かと目立つラインハルトは皇帝の直参で、戦いの度に皇帝から軍を借りていて、自前の軍隊は持っていないという設定でも良いだろう。だから彼は自分と同じ直参のメルカッツが背くことは理解できないが、ファーレンハイトが背くのは立場が違うから理解できる。帝国が何度も同盟に勝ちながら、途中で征途を中断してきた理由にもなる。後で出てくるケスラーはファーレンと同じ郷紳だがラインハルトに加担で良いだろう。

ハヤト: 原作の描写はというと、ゴールデンバウム王朝は絶対王政ですね。でも、諸侯制みたいな描写もある。作者はあまり考えていなかったんじゃないですか? それにこんな描写、原作の欠けている部分の補完にはなりますが、今の人じゃ扱いきれないですよ。妙に比重を増やして話を歪めてしまうに決まっています。

 

<新銀英伝・十貫文の戦艦>
① アスターテ会戦後、帝都オーディンに戦艦市が立つ、仲間と共に市を見回るファーレンハイト
② 並み居る戦艦の中に老フェザーン商人が引いて来た「すごい戦艦(アースグリム)」が引き出される。
③ 垂涎の艦だがケンプ(銀5枚)、ワーレン(金2両)、ミュラー(4両)らの値付けに首を振るフェザーン商人、遠目に肩をすくめるミッターマイヤーとロイエンタール
④ 同盟戦艦を百隻まとめてしばき倒すアースグリム砲を見せる商人(あきんど)、「これは戦艦ではない、雷槌じゃ」
⑤ ファーレンに目を付け、言い値を言ってみろと促す商人、金10両と言うファーレン、頷くフェザーンの老人、「さすがじゃ」
⑥ 帰宅して新妻に市のことを話すファーレン、加増により戦艦や家来を増やしたため、ファーレンハイト家の家計は火の車
⑦ 「まっかせなさーい!」、鏡台から金十両を取り出す新妻、妻に感謝しつつ市場に走るファーレンハイト
⑧ 数ヶ月後、アムリッツアの戦場を疾駆する戦艦アースグリム、誇らしげに艦上に立つファーレンハイト
⑨ 「あの男(ファーレン)が買わなければ、我が陣営の提督は貧乏人ばかりと吹聴され、あの戦艦は大貴族どもの所に行っていた、、」、ラインハルト一派の声望を高めたファーレンとその新妻に一目置くラインハルト。

ハヤト: これはまあ、ミュラーとかでも良いかもしれませんね。その後、アースグリムが同盟艦を背負投げでしばき倒すんでしょ。

小林: リメイクするなら帝国封建社会を描き込んだ方がどうも面白そうだな。


閑話休題

小林: ま、少しふざけたけど、30年も経ってるんだし、同盟の政治体制みたいに前作から進歩したり、結論が出た概念もあるんだからさあ、そういうのを盛り込むのが本当のリメイクでしょ。単にコピペでイカの沖漬けみたいな戦艦を並べただけとかさ、小説の記述をそのまま脚本にしたから良いとかさ、そういう次元の低い話しかできない連中がやれ老害だの、懐古厨だのステマだと思うけど、下品な言葉で正当な批判を汚濁するのはやめてくれんかなあ。

ハヤト: 掲示板で「ワレ」なんて書いてあったら私は身構えますよ、ステマですからね。

小林: あのワレは色んな作品でバカ書いてるからバンビジュの手先の煽り厨だと面が割れてるんだよ。

ハヤト: しかし、ここ数年は最低のレベルにも達していない作品がチト多すぎませんか。

小林: 世代交代でもしたのか、、私は制作環境が歪んでいるのは日本会議と東京オリンピックのせいだと思うけど、要するに力のない人間がコネだけで仕事が取っているのが実態で、実力や才能がある人間が参入しないように、うず高く壁を築いているのね。ホント、安倍さんの時代にドンドン進んだわ、こういうミニモリカケみたいな現象は。

ハヤト: ガンダムはUCで終わりましたし、ヤマトも2199、2202で終わりでしょう、人気のある過去の名作に乗っかるのも種が尽きてきた感じですね。

小林: 銀英伝までポシャったら、ホント、次はどうするのだろうね。二部は作画監督小林誠、脚本福井晴敏じゃないか?

ハヤト、悪い冗談と言えない所が恐ろしいですね、では、今回はここまで。