Mobilesuit Gundam Magnificent Theaters 2005.

An another tale of Zeta・・・INTERVIEW


(インタビュー 2016/04/27)




機動戦士Zガンダム ハヤト・コバヤシさん
※本作の記述とは関係ありません。


はじめに

ハヤト: こんにちは、カラバのハヤト・コバヤシです。ま、伝統的な当サイトのスタイルですね。長々書かずに込み入った話題は分断というのは、今回も先の続きです。

小林: 読みにくいからね、それにしてもAddictoeさん、知らない間に復活していたんだね。だけどウチと違ってブログは重くて遅いよね、ヤマトは復活後のブログに目を通したいのだが、全部はとても無理みたいだ。


2199批判の急先鋒、作家集団Addictoeさんのブログ

ハヤト: この方は確かコメント欄の誹謗中傷が酷くて2199からは一度手を引いたのでは?

小林: 本編が終了して、「ステマ野郎が解散」したらしいので復帰したらしい。一時期はこのサイトとウチくらいしか2199批判のサイトはなかったことさえあった。

ハヤト: 反対の意見があまりに多いので、「感性が老いたのだろうか」と、小林さんが自分を疑っていたのもこの時期ですね。

小林: ダイラガーみたいな完全版じゃなく、ガンダムAGEなんかと同じ簡易版だけど、レビューを書き溜めておいたのが今効いている感じだな。本当を言うと、せめてゼータ並みにはしておくべきだったかもしれないけどね。

ハヤト: 別に書かなくてよいでしょう、2199は駄作です。誰も見向きもしません。


1.銀英ファンの半分が設定ヲタク



小林: バンダイが版権買ってまたぞろ復活(リメイク)だってさ、銀英ファンはアニヲタには多いけど、実は作品本体より戦艦のデザインとか設定ヲタクの方が多い作品という印象だな。このサイトみたいにOVAで登場した戦艦の設定なんかにやたらとこだわって、作品それ自体には実はあまり関心がない。以前に山口二郎の板で「ヤン・ウェンリーが中国人か韓国人か」といったつまらん論争を吹っかけてきた奴がいたがね。

ハヤト: 原作では東洋系という以外、出自を類推させる記述はないですね。小林さんは朝鮮系と言っていましたが。

小林: 朝鮮だろうと中国だろうと、これが作者の田中にとってそれほど重要なこととは思えないんだ。別にどちらでもありそうな名前だし、原作ちゃんと読んでりゃこれは普通の感覚だわな。田中は明らかに人種差別主義者じゃない。何でこだわるんだろうね。

ハヤト: ま、一例でしたが、作品を評価するにつけ、絵柄とか設定とかに傾注しすぎて作品それ自体が分かっていない人の存在が分かってきたと。

小林: 銀英伝はちゃんと読んでりゃ嫌韓だとかネトウヨだとかにはならないはずなのだけどね。作品の筋が読めなくて、目で見える絵や架空のウンチクばかりに目が行くから、それで知っている気になっていて、実は何も知っちゃいない。ヤマト2199を作った出渕裕も同じだと思うよ。彼は元作品の宇宙戦艦ヤマトについては何も分かっちゃいなかった。



ハヤト: しかし、小林さんの仮説のように、同じ作品を見ていても感想や言い分がこうも分かれる理由は「ストーリー重視派/設定ヲタク派」の違いとしてみれば、説明はできるような気がしますね。我々も2199ファン相手に険悪になることもなかった。

小林: 大昔の雅楽の青海波とか歌舞伎とか、今の我々から見ると何が面白いんだか理解できないというのも、当時の人と我々とでは見ている部分が違うと考えれば説明はつく、表現方法が限られていた昔の演舞はたぶん、見る人間が想像力で補う部分がかなりあったのだろうな。



ハヤト: しかし、上のような演劇を楽しむにしても、見る側が「見方を学ぶ」必要はあると思うのですよ。

小林: 残念ながらこの言い分は「設定ヲタク派」の我々に対する抗弁にはまるで使えなくてさ、我々は歌舞伎や青海波の見方を学ぶ必要があるけど、それはこれらが現在我々が見ているものよりずっと想像力や抽象性が必要なものだからだ。が、銀英伝や2199の「設定」を楽しむのに頭は必要ない、文字が読めれば足りる。

ハヤト: 思考活動のレベルに大きな差があるということですね。

小林: 連中はすぐ人の言い分をブーメランみたいに自分の言い分にするから、釘を刺しておくよ。このサイトに絡んできた連中より、我々の方がずっと上等な人間だ。少なくとも連中には理解できない、「作品の筋」、「ストーリー」を理解できるからな。理解できない人間が理解できる人間より劣ることは論ずるまでもない。

ハヤト: そうなると田中芳樹さんもちょっと気の毒ですね。


2.銀英伝の包容力(その1)



小林: 前から不思議に思っているんだが、自称銀英ファンの連中は銀英伝の戦略とか戦闘シーンとかは問題にするくせに、この作品の持っている変な点は問題にしないよね。

ハヤト: 元の作品がアバウトなんですよ、何せ作中に戦艦や兵器のスペックはほとんど出てきませんから。設定のほとんどがアニメ化時の後付けです。戦艦の名前も原作ではラインハルトの旗艦ブリュンヒルトくらいしか設定がありません。

小林: 命名法も田中は別に軍艦の専門家じゃないから、別に規則性はないし、原作のは結構適当だよね。ブリュンヒルト(北欧神話)がいると思えばバルバロッサ(英名)だったり、ヴィルヘルミナ(ドイツ語の女性名)だったり。

ハヤト: 大きさも適当ですよ、第1巻でオーベルシュタインが艦橋から「60階建てのビルに相当」するエレベータで艦底の格納庫に降りていくと書いてあるから、戦艦の大きさはおおよそ1キロとアニメ化時に設定されたわけで。


帝国軍の旗艦ヴィルヘルミナ(1160メートル)とサンシャイン60

小林: これだって船の形状は原作じゃ書いてないから、下みたいなヤマト型の戦艦だと全長も大きさもかなり違ってくる。


ヤマト型の水上艦艇ルックでは大きさも長さもだいぶ小さくなるが、小説での描写は同じ

ハヤト: 原作の描写はむしろ「ヤマト型」ですね。回転砲塔の挿絵も出てきますし。

小林: ま、原作の設定が無いに等しいので、OVAやファンで設定補完の余地が大きい作品なのだが、確か原作では自由惑星同盟との戦いは5年間続いたんだよね。しかし、戦闘機スパルタニアンは一度もモデルチェンジしてない(笑)。

ハヤト: 現実の戦争じゃ考えられないですよ(笑)。

小林: 銀英伝の戦争は星間国家同士の小競り合いみたいな話が何百年も続いていて、ある日突然帝国陣営に現れたラインハルトという天才が全面戦争を仕掛けて宇宙を統一するというものだけど、そういう構図って現実世界ではあるのかな?

ハヤト: ラインハルト一人の知略で自由惑星同盟を完全併呑できる実力が帝国軍にあったのなら、これは戦争にさえならず、とっくの昔にやっていてよさそうなものですね。

小林: 補給とか国内基盤の整備とか色々ありそうだよね。でも、銀英伝の世界では、ほぼあり合わせの軍事力一本で話が済んでしまう。アムリッツアで敗れて以降の同盟軍の回復力のなさは不自然なほどで、10年で10万隻整備できるのなら、ラインハルトが攻めてくるまでに3万や4万は整備できるだろう。それに、こういう感じの整備だと部隊編成が終わった頃には最初の部隊は10年前の兵器を持たされているわけで。

ハヤト: 遅くても2年くらいで揃えないとまずい感じですね。そうなるとラインハルトはアムリッツアで勝った2年後に同盟に侵攻しているのですが、迎え撃つのは10万隻の同盟軍の最新鋭艦のはずですね。原作では3万隻くらいですが。

小林: それに対するに帝国軍はリップシュタット戦役と大差ないロートル戦艦の寄せ集めで、しかも数も増えてない。むしろ少ないくらいだ。ラインハルトが政略の天才なら、少なくとも戦艦30万隻くらい揃えておかんと同盟軍には勝てんわな。それを田中は全部合わせても15万隻くらいで片付けようとする。

ハヤト: たぶんホントはそうなんでしょう。でも、銀英伝は戯曲ですからね、そういうリアリティは実はあまり追求してない。

小林: 指揮方法も実はおかしくてさ、あの作品ではだいたい1隻に200~300人くらい乗っていて、外伝では准将時代のラインハルトが「巡航艦40隻、駆逐艦130隻、砲艦25隻、ミサイル艦10隻」の艦隊を指揮という記載があるけど、ま、准将と言えば旅団指揮官だから大佐はその三分の一だ。このラインハルト艦隊が計算だと3万人の部隊だから、その算式で行くと大佐が1万人でその下の大隊(少佐ないし大尉)が3千人、中隊が千人で小隊(プラトーン)が300人くらいになる。

ハヤト: 小隊というのは士官学校出たての少尉が指揮する最小単位で、現在は10人ほどですね。銀英伝の話だとそれが戦艦1隻を指揮しているとか。

小林: 実際のプラトーンだと少尉が脅したりすかしたりして何とか新兵に銃を取らせるのだけど、銀英伝の場合は戦艦でさ、外の見えない鉄の箱の中にいる300名を経験不足の少尉が一人で敵に向かわせるのは統率の点からも、人間心理の点からいっても無理だと思うよ。ましてやコンピュータ制御で人間はただ乗っているだけのOVA式の宇宙戦艦じゃ人道性にも問題があるよ。

ハヤト: アニメならともかく、これを戦争活劇としてみるとリアリティがないと言うわけですね。


3.銀英伝の包容力(その2)



小林: まあ、戦略戦術の話は銀英伝は相当アバウトだ。畑を耕せば戦艦が採れると言わんばかりの仕様だが、もっとあるのは作中の自由惑星同盟が民主国家だという設定だけども、あれは共産国だよね。

ハヤト: OVAではアメリカみたいな描きようですが、小説では自由惑星同盟の統治機構はソ連や中国のそれに倣っていますね。

小林: 北朝鮮の統治機構が一番近いわな。一院制の代議員会があって、「○○委員会」が施政を担当するという。書かれたのが70年代だからやむを得ないけれども、OVAでもこれはほとんど委員会の独裁政治で代議員会が抑制機関としてほとんど機能してない。三権分立は少なくともこの世界には見られない。共産国もそうだよね、全人代はセレモニーだ。

ハヤト: あまりそういうことを理解して書かれた小説には見えないんですよ。

小林: その辺も原作があまりきちんとしていないから、やはり設定補完の余地があり、器としては実は結構使える作品なんだよね、銀英伝というのは。象徴大統領制のヤマト、軍人が議員の代議員会しかないガンダムみたいな変な縛りがない。

ハヤト: ストーリー派としては、これはやはり原作者の田中芳樹の世界観や哲学を味わう作品でしょうね。現実にこんな世界ならこうだとリアリティを考える作品じゃない。

小林: そういうわけで、いわゆる「銀英ファン」のこだわっている部分というのはさ、作品にとってはむしろ枝葉、作者さえ考えてもいない部分でしかないということは言っておいても良いことだろうな。この作品をちゃんと読むなら、「国家の存亡より個人の自由の方が大切」とか、「民主共和国家の軍人は(たとえ理不尽でも)民主的に選ばれたリーダーに従う」といった戦後民主主義に基づく田中の民主主義観や、そのアンチ・テーゼとしての「独裁政治の強力なリーダーシップ、社会変革力」といった作者があえて入れた毒を玩味するというのが本当の読み方だろう。

ハヤト: そういう部分を「戦後民主主義的だからオミット」なんてやったら、2199みたいにこの作品も見るに堪えないものになりますね。

小林: 銀英伝の本当の価値というのは、実は上に挙げた戦いのリアリティとか、統治機構や最初のヤンの人種問題みたいな話じゃなく、作者と読者の間の共感という、文字面でもなく、目にも見えないものだよね。見方も何通りもあり正解というものはない。今のヲタクみたいにその部分できちんと自分の意見を言え、意見交換のできない人間に作品の価値が分かるとは思えないし、論ずる資格があるとも実は思えないな。

ハヤト: 田中芳樹氏の作ったその器の中に、例えば戦艦の専門家とか政治学とかの方々が自論を展開する余地があり、それが世界観を精緻なものにしているけれども、それだけで見るのは片手落ちということですね。

小林: むしろそういう展開ができるほどにしっかりとした土台を未来SFというジャンルで提供したことを評価すべきだ。が、アバウトと言っても変えてまずい部分はあるし、後付け設定のような枝葉が作者の作った土台より前に出るなんてのは論外だ。ヤンの人種がどうのなんて話は議論に値する話じゃないんだよ。

ハヤト: 最近はそういうのが多いと思うのですよ。何とかならないんですかねえ。

小林: 少なくとも当サイトの記事を読んで誹謗讒謗を始めたなら、2199同様、ソイツは作品を理解していないんじゃない?

ハヤト: それじゃ、続きは次回。