Mobilesuit Gundam Magnificient Theaters
An another tale of Z ATZ資料集(95)




28.インチキ教団ジュピトリス

 第四部で登場するムーン教団、元はシロッコが百式の生産のために作った宗教ですが、現在あるエピソードは断片的で、必ずしも教団の全容を書き込んではいません。ジャブロー事件で開発能力を失ったティターンズ、その窮余の一策として彼らは宗教にその魔手を伸ばします。





〇一〇一年
宇宙ステーション「ジュピトリス」


ラ・ザビアロフの案内で瞑想室に入室した大柄な黒人大将は瞑想室で坐禅を組んで空中浮遊しているパフテマス・シロッコ少将の前に来た。
「エセ宗教家の面目躍如だな。」
 ジャクソンはそう言い、彼の部屋の周囲を見廻した。
「大したものだ。」
 得体の知れない教団とはいえ、数万人の信徒を擁している。信者は木星にも連邦にもおり、大勢の信者が全財産を寄進して入信している。ペテンもこれだけやれば立派なビジネスだとジャクソンは瞑想している聖大師に言った。
「全ては神のご加護で。」
 目を瞑りつつ、唇の端を上げたシロッコがうそぶいた。



「あの姉妹はティターンズ学園の二期生だ。サラサ・ムーンとラサラ・ムーン、本名ジャスミン・カマラにティアラ・カマラ、ジャスミンが姉でティアラが妹だ。」
 アマルティア・センが調べてくれたと、ジャクソンはコピーした古い新聞記事をシロッコにかざした。双子で最難関のティターンズ学園に合格した霊媒師一家の奇跡の姉妹は、彼女らの出身地アンゴラでは話題になっていた。
「ある程度の霊感があることはどうも本当らしいが、なぜこんなものを作った?」
 ジャクソンの疑問にシロッコはクククと笑った。
「この世の中では、いや、地球連邦のことですが、選択を誤った人間には行き場がありません。ジャブロー事件は大きな誤りだった。」
 故マイノル大統領が設置した調査委員会はティターンズの乱脈を糾弾し、グリプスの開発施設を閉鎖に追い込んだが、それは何千何万もの人間の職を奪うことに繋がった。特にグリプスの開発技術者と工員はほとんどが解雇された。
「フランクリン博士のようにジェガン計画に加われた者もいましたが、多くの技術者、製造工には行き場がなかった。RX−178を開発していた人間が、グリプス市が提示した救済事業のゴミ集めや草刈り、フォークリフトの運転手など、できるはずがない。」
 連邦は何もしてくれなかった。そこに手を差し伸べたのが姉妹の教団だった。小さなヨガ道場だったムーン印度ヨガ研究所は姉妹の関与以降、急激に信徒を拡大し、シロッコが求めていた百式の製造要員はもちろんのこと、潤沢な資金と組織を提供した。彼らは地球からそれら技術者、技能者を呼び寄せ、信徒に加えることで教団は百式の製造要員はもちろんのこと、かつてのグリプス以上の開発力も手にした。やや難があった宗教理論は信徒となったティターンズ学園のインテリ、ベン・ウッダー博士が体系化した教義を編み出した。
「サラサによると、地球に来てから信者はむしろ増えているそうです。彼らが社会から受けた仕打ちを考えれば、そうする人間を提督も非難はできないのではありませんか。」


「耳の痛い話だな。」
 ジャクソンはそう言い、シロッコに中将の階級章を投げた。金色の将官章が空中を浮遊している聖大師の前まで漂い、目を開いた彼がそれをはっしと掴んだ。
「貴官にはお偉方の贔屓があるようだ。」
 連邦議会の議員には先の戦いでシロッコが戦力の温存に成功したことを評価する向きがある、と、ジャクソンは昇進の経緯を説明した。シロッコの昇進は連邦議会の議決を経ており、これによりパフテマス・シロッコ少将は正式に地球連邦軍中将に昇進し、第四艦隊の司令官となった。
「が、アマルティアは貴官を疑っている、注意するんだな。」
 ジャクソンはそう言うと踵を返し、彼の前から歩き去った。
「俗人に何が分かる、、」
 階級章を掌に載せたシロッコは組んでいた両足を伸ばして立ち上がった。






〇〇九八年
サイド7「グリプス」 ティターンズ本部


────三年前

〇九八年夏、ティターンズがサイド2・ハデス政府軍への肩入れを強化している頃、ティターンズ本部のあるサイド7・グリプスでは次期主力モビルスーツの計画が討議されていた。以前はフランクリン・ビダン博士が計画のチーフだったが、博士が次期制式機の「ジェガン」計画に加わったため、現在のチーフはカミュ技術中将である。実際はカミュの部下の若い男が計画を指導している。
 その男が新型機のモックアップをティターンズ幹部に説明している。
「サイド2における対エウーゴ、オーブル戦の戦訓では、これ以上の隊員の損耗を防ぐためにはより強力なモビルスーツを艦隊の主力機にする必要があります。現在基地に配備されているタッキード社の「アッシマー」、または私が試作した「メッサーラ」はその任に十分耐える機体ですが、これらは大型でもあり、必ずしも全ての用途に適しているとは言えません。「エウーゴ」が新型機の配備に遅延している今、私はTMS−100「百式」を制式採用することを御提案いたします。」
 パネルを操作して、元第三艦隊の技術士官、現在はティターンズ少佐のパフテマス・シロッコが居並ぶティターンズ幹部たちに説明している。
 TMS−100「百式」はシロッコの開発チームがフランクリンが開発したRX−178の資料と機材をもとに、より廉価かつ扱いやすいモビルスーツとして再設計したものだが、試作機はテスト段階から驚異的な性能を発揮している。「百式」は大型ビームサーベルによる斬り込み攻撃を得意とする格闘戦用の機体である。
「新型制式機「ジェガン」ではいかんのかね、すでに第一、第八艦隊に配備されている。」
 異論を唱える幹部にバスク大佐(ティターンズ上級大将)が高価すぎると反論した。新鋭制式機「ジェガン」はかつてのRX−178に比肩する優秀なモビルスーツだが、一機一億フェデリンと高価である。それに領袖のジャミトフ・ハイマンがティターンズ・オリジナルの機体に固執していることをバスクは知っていた。
「ジュピトリスではこれを何機生産できるのかね。」
 ジャミトフ(ティターンズ総裁)の質問に対し、現在の陣容は開発陣で人数も少なく、昼夜兼行でも月産二〜三機がせいぜいと答えたシロッコに幹部たちは話にならんという顔をした。しかし、作業員を五千人に増やせば月産一六機が可能と聞いてジャミトフは目を輝かせた。すでに試作機が試験飛行に入っている。いかにも有能そうな若いエンジニアの自信に溢れた説明にジャミトフは胸をときめかせた。
「シロッコ君の開発陣の優秀さは、儂もかねてから目を付けていたところだ。」
 シロッコの目論見では実際には自由になる開発陣は製造
(つづく)




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