Mobilesuit Gundam Magnificient Theaters
An another tale of Z ATZ資料集(55)




19.エマさんの新しい機体

 RX−178、マラサイと立て続けに乗機を撃破されたエマは四十七話でソロモン製のディアスE(エコノミー)に乗り換えます。クワトロに続き二機目のエウーゴへのリック・ディアスの配備ですが、実は作者はその前に他にも色々乗せていました。



GMV

〇〇九八年七月下旬
月 グラナダ上空


すがにマラサイはご隠居ですってね!」
 ジェリド・メサ少佐はアッシマーを左右にロールさせつつ、追撃している「ジェスリー」の編隊を躱している。ジェスリーことGMVは旧態化したエウーゴの主力機「マラサイ」と新鋭機の繋ぎとしてエウーゴ本部がノースウェスト社から買い入れた機体で、装甲もスピードもパワーもスピードもマラサイを上回るエウーゴの最新鋭機である。
「おっと!」
 危ない危ない、旋回して光条を躱したジェリドはスロットルを上げ、ブーストのレバーを引いた。マラサイのビームガンと異なり、新鋭機のライフルは当たれば結構痛い。急激な加速が掛かり、椅子に押し付けられたジェリドとアッシマーは急加速して宇宙港の上空から離れていく。それを見てエウーゴの隊長機は追撃を止めた。
「全機、追撃中止!」
 減速した新鋭機のコクピットでエマ・シーン少佐は月の地平線に消えた大型機の交点を睨んだ。
「ブーストを使えば追いつけたのに!」
 二番機のコクピットからパイロットのロッテ中尉の声が響く、六月に乗機のマラサイを失ったエマはアルカスルでオーブル地上軍に救助された後、サイド1で機種転換訓練を受けている。エウーゴは戦隊長クラスの一二名をコースに派遣し、最初のロットとして五機のジェスリーが艦隊に配備された。新鋭機の性能を秘匿するため、最大出力での機動は禁止されている。
「向こうも本気で戦う気はなかったわ、ロッテ、続きは公海上で。」
 せいぜい数日先の話だ。その時にはブーストの使用許可も出ているだろう。エマは隊長機の機首を翻した。すでに戦艦ラーディッシュが彼女らの後方に進出してきている。
 エマの追撃を振り切ったジェリドは月を大きく廻り込み、安全圏に逃れたことを確認すると、操縦を自動装置に切り替え、寝台に戻ってベッドの上の探偵小説「ディアッカ・エルスマンの冒険」を取り上げた。



(作者メモ)
 と、エウーゴの機体をエマも含めて更新しようと思ったのですが、GMVは本作ではノースロップ社のF−20を念頭にアムロが諸国に売り込んでいる機体で、「高くて買えない」軽MSというこの機体はエウーゴでの装備は難しいだろうということでこの案はボツにしました。別にこだわる必要もないのですが、視聴率最悪の時期のZZで一カットくらいしか登場してないこの機体(上)は同作のジャルム・フィンとかクインマンサなんかと同じで知名度が低いので(それがF−20扱いの理由でもある)、そんなにデザインも良くないこの機体を本作であえて持ち上げる必要もないだろう(マラサイのままで可)ということです。で、考えたのが次のパーフェクトガンダム。




パーフェクトガンダム

〇〇九八年八月上旬
月 グラナダ上空

よこの機体、操縦しにくいったらありゃしない。分厚い増加装甲に囲まれた「パーフェクトガンダム」の操縦席でエマ・シーン少佐はぼやいた。操作のいちいちが重く、それでいて動きもラフで繊細さがないときている。動きを良くするためマグネット・コーティング技術が使われているというが、これは過負荷ですぐに音を上げ、超電導体が焼き切れないためには操作も騙し騙し行わなければならない。夕刻にグラナダを立ち、ラーディッシュとの会合地点に急いでいたが、慣れぬ機体の操縦は出発から悪戦苦闘の連続だった。
「ネモのフレームを元にしたが、アナハイムじゃ、ま、こんなもんだろうな。」
 先の戦いで機体を失った彼女にこの機体を薦めたクワトロと、基地で笑いながら彼女を見送ったハーヴェイ社のハーヴェイ・ダンの顔を思い出しながら、エマはまるで土木作業機のような機体のコクピットで頬を膨らませた。これはマラサイよりは確かに頑丈だけども、戦闘でまともに使える機体だとは思えない。
「新型機『ゼータ』がロールアウトするまで、悪いがこれで死な


ずにいてくれたまえ。」
 肩のキャノン砲に二連装ビームライフル、バルカン砲に盾のグレネード、増加された装甲と脚部に増設された二基のジェネレータと装備は揃ってはいるが、装備があるということと、実戦で使えるということはどこまでも別のことだ。限界時のほんの僅かの出力の違い、旋回性の違い、防御力の差が宇宙戦では致命的な結果になることを彼女は肌身を通して知っていた。
「PG01、こちらグリーン・ピース、聞こえますか、、こちら、、」
「こちらドリスコール、よく聞こえます、オーバー。」
 新しく付けたコールサイン(ドリスコール)もまだ覚えてもらっていないらしい。「PG」というのは彼女も使っている石鹸メーカーのプロクレス&ギャンブル(P&G)ではなく、「パーフェクトガンダム」の略語だが、今も手こずっている忌まわしい機体を彷彿とさせるコールを彼女は忌み嫌っていた。「ドリスコール」という彼女のコールサインはアイルランドの姓から探し、名前にこだわりはないので、適当に考えてパイロット登録簿に登録した。
「失礼した、ドリスコール、エマ少佐、艦長のヘンケンだ、着艦を許可する。」
 聞き覚えのある艦長の声にエマは顔をこわばらせると、操縦桿を緩慢に操作して機を旗艦の着艦コースに導いた。沈下速度が速いので、スラスターとメインロケットを交互に操作しつつ、艦のフレネルレンズの誘導光に機の軸線を合わせた。まったく、ヒヤヒヤするったらありゃしない。
「一〇〇、、六〇、、四〇、、二〇、、タッチダウン!」
 ドン! と、大きな振動と共に重量感のある機体が艦の飛行甲板を踏みしめた音が聞こえ、エマは一瞬前のめりになると、反動で座席に押し付けられ、次いでコンソールに頭を叩きつけた。着艦の衝撃が収まった機体で筋肉痛に痛む体を起こした彼女はキャット・オフィサーの誘導で機体を格納庫に導いた。もうこりごりだわ。
 降機したエマは艦橋に出頭すると、ラーディッシュ艦長ヘンケン大佐に挨拶した。ヘンケンははるばるグラナダから機体を運んできたエマの労をねぎらうと、運行科の士官に彼女を部屋に案内するように言った。
「疲れましたわ。」
「まあ、貴女のためにアナハイムが作ったような機体だ。元ガンダムライダーにはそれにふさわしい機体がある。どうだ、この機体は、すごいだろう。」
 RX―178とは似ても似つかないが、と、ヘンケンは言い、エマの肩をポンと叩いた。自分で操縦しないから、気楽なものだ。



 この機体はそもそもファーストで登場さえしておらず、「ガンプラ」ブームのさなかにコミックボンボンで連載されていたマンガ「プラモ狂四郎」のオリジナル機体である。見ての通り、何とも品が悪くカッコ悪く、書いては見たもののとても本編で使う気になれなかったので、この件はこれで沙汰止みになった。



 三十七話ではアッシマーに搭乗、この時はRX−178はまだ失われていないが、この辺から乗機を巡る彼女の迷走が始まっているように見える。



ドワッジ

ロブコフ高地
「リック・ディアス」 クワトロ機

※クロスボーン開発の巨大電気ウナギに苦戦するクワトロ、食用だとしたらさぞ大味だろうと思いますが、こういうものを出すなら話を変えるべきでしょうね。本作の趣旨にそぐわないとカット。他にも装甲服を着込んだトカゲとか考えていたのですが、この辺で作者も正気を取り戻しました。

ティングに追い詰められ、ホバーを吹かしつつ沼地に後退したクワトロのディアスは湖沼の上に出た。水面をかき混ぜつつホバリングし、アッシマーの砲撃をかわす。その時、クワトロの機体は何かに足を取られた。
「!!」
 モビルスーツの足を絡め取られ、水しぶきを上げて沼に転倒したクワトロは目の前を跳ね飛ぶ巨大な生物を見た。
「巨大ウナギ!」
 機体を絞めつけて沼に引きずり込みつつ、巨大な生物は数百万ボルトの電圧をクワトロに浴びせかける。
「電気ウナギか! ぐわああああーっ!」
「いい気味だなクワトロさんよ。」
 湖沼からは距離を取り、巨大ウナギに巻きつけられたディアスを見たスティングは勝ち誇って言った。見たところ三〇メートルはありそうだ、ワニではなかったが、恐るべき生物だ。
(つづく)




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