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An another tale of Z ATZ資料集(36)




15.ヤクルートの秘密

 オーブル工作員カガリナが勤務するヤクルート社、製品には結構こだわりのある会社のようです。






〇〇九八年三月一日
オルドリン市 ハドソン区
ヤクルート社の工場


ンナさん、実はアルカスルに行くことになった。」
 配達から戻り、他の従業員と一緒にヤクルート社の製造機械を磨いていたカガリナにマルコ社長が言った。すでに外出着に着替え、背にはナップサックを背負っている。
「それは構いませんが、どうしてです?」
 金属製の容器を磨きながら、カガリナが言った。ヤクルート社の工場は品質第一で、一二時間の稼働時間中、発酵中の乳酸菌容器を除けば、製造機械の実働時間は一日四時間しかない。残りの八時間は休憩や機械の清掃に充てられており、特に清掃はほとんどオーバホールといった感じで、機械を部品単位に分解して行っている。実は社長の趣味ではないのか。
「まあ、大量生産を志向してもそんなに売れないし、品質を落としたり、製品で事故を出すくらいなら、工場と機械の洗浄だけは徹底的にやろうと思ってね。おかげで創業以来一〇年間、製品事故ゼロという輝かしい記録を誇っている。しかしだ、実は品質を維持するには、それだけではまずいんだ。」
 そう言うと、マルコ社長はガラス張りの材料庫にある、アルカスルから送り届けられた菌類のパッケージを指差した。キノコのようなものとか、他にもいろいろある。彼女の馴染みのない形状や色の物体がほとんどで、ほとんどホラー映画の世界だ。これがヤクルートの材料か。
「そろそろ在庫が尽きてきてね。ノボロシスク村から船便で送ってもらっているが、最近は品質が落ちていてね。現地に行って様子を見てこようと思っている。」
「そういうことをいつもやっているんですか?」
 カガリナが怪訝そうに聞いた。
「二年に一回ほどかな、何というか、時折行って顔を出さないと、同じパッケージでも質が落ちることがあるんだ。原料が自然物だし、採取している職人が変われば品質が変わることもある。オーブル政府発行のパスポートがあるし、一週間ほどで戻るつもりだが、その間は在庫もあるので、副工場長のサイードに任せても大丈夫だと思う。ああ、私がいない間も清掃はきちんとやるように言ってくれ、我が社は品質第一だからな。」
「お気をつけて。」
 お土産を買って来ると言い、お気に入りのフライトジャケットにナップサックを背負って工場を出て行った社長を見送ったカガリナは、工場に戻ると機械の清掃を続けた。
(ノボロシスク、、ノボロシスク、、どこかで聞いたような。)
 ヤクルート社従業員アンナ・ヴァレーニナ、本名、オーブル義勇軍諜報部第二工作隊、カガリナ・ヤペトフスカヤ・ブリャーヒナは、旅行に出かけた社長の言った地名に引っ掛かるものを感じていた。





オルドリン市 ハドソン区
ヤクルート社の工場


れはヤクルートじゃない。」
 副工場長のサイードはそう言うと、従業員にロットを廃棄するように言った。
「あまり変わらないと思うけどなあ、、」
 コップを持ったカガリナが言った。その言葉にサイードが首を振る。
「これではオルドリン市五万人のヤクルートの顧客の方々に申しわけが立たない。ロットは全部廃棄だ。やはりマルコがいないと、、」
「変わらないよ!」
 落ち込む副工場長にカガリナが抗議する。冗談じゃないぜ、またヤクルートカレーかよ。彼女に難詰された副工場長は虚ろな目で材料庫の方を見た。
「菌もあるんだ。ヤクルート菌はアルカスル、それもノボロシスク村でしか手に入らない。細かいことはマルコしか知らないが、最近は送られてくる菌株は品質が低下していた。」
「よくこれで商売になっているなあ、、」
 ヤクルートの製造ロットの廃棄率は平均二〇%、多い時は四〇%ほどであり、多くは規格外品としてマルコ夫人や従業員に分け与えられている。製品がヤクルート社の厳格すぎる基準を満たさないというだけで、物自体は別に毒でも害悪でもないため、これら不良ヤクルートの多くはこれらの家庭で消費されている。特にカガリナは社長の家に下宿しているため、いちばん被害を受ける立場にある。ヤクルートカレー、ヤクルートコロッケ、ヤクルートピザ、豆腐ヤクルート、他にもいろいろある。もううんざりだ。






ソロモン国防省

、いうわけなんだ。品質第一、一生懸命作っているんだから買ってくれよ。」
 伝票を持ち、両手を合わせたカガリナが休憩時間中の士官たちに話しかけている。

(おわり)




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